エギングエキスパート池内さんは常々、「適水温」「回遊と居付き」「シャロー&ディープ隣接」というワードを使って春イカについて解説してくれる。これがキーワードになるのだが、今回は肝心の「水温」がまだまだ上がらない状況だった…。自然相手の釣りでは好条件が揃わないことも、もちろんある。今回は、厳しい条件下で、ゼロをイチに近づける術を、根掘り葉掘り聞いてみた!
●文/写真:ルアーマガジンソルト編集部
実釣アングラー紹介
池内 修次(いけうち・しゅうじ)
太平洋側にも日本海側にもアクセスしやすい京都府在住。年間通してアオリイカを追い続けるエギングのスペシャリストだ。中層のエギングを得意とし、釣り場で釣果と笑顔を絶やさないのが持ち味。デュエル・ヨーヅリのプロスタッフ。
仙波 勝也(せんば・かつや)
今回の取材にサポート役として参加してくれたデュエルのフィールドスタッフ。スタイルはラン&ガン派。釣り大会への参加、マナー、知識向上を目的としたエギンガーズミーティングを開催するなど、その活動は多彩。
実釣フィールド
誰よりも早く春のでかイカを釣りたければ、条件が揃う前から釣り場に向かうべし!
池内「春は大型のアオリイカが狙える時期ですね。その中でも最初に浅場に入ってくる個体はさらに大型が狙える可能性があります。近年は黒潮の蛇行が続き、以前よりもタイミングを狙いにくくなってきました。それでも誰よりも早く釣果を得たいのであれば、厳しい釣り覚悟で早めに動き出すことも大事ですね。大丈夫と思っていましたが、今日も厳しくなりそうです…」
実際に釣り場に到着し水温を測ると15℃。池内さんが説く“春イカ攻略の3ヶ条”の1つ「水温16℃以上」を満たせていない状況だ。この状況でもイカは反応してくれるのだろうか?
池内「最低でも水温16℃。これはアオリイカが活動する適水温の目安です。16℃を超えると捕食行動が活発になったり、産卵行動に入りだしたります。水温が11℃以下になってしまうとアオリイカは生きられないのですが、それ以上あれば活性は低いながらもいなくなるわけではなく、捕食行動に入らずじっとしていることが多いですね。周辺に水温が安定している場所があれば、そこに移動していきます」
水温が安定している場所とはどんな場所なのだろう? またアオリイカはどうやってそのような場所を探していくのか?
池内「ラン&ガンで移動が可能な釣り場では、低い水温の場所で粘らずに1℃でも高い場所に移動するべきです。大きく動く場合はエリアを変えたり、小移動であれば岬の先端部や潮通しの良い場所で水温を確認し直して釣行するのが賢明。地形としては岬から一歩奥まったワンドのような場所が有力です。例えば大きなエリアで言えば、紀伊半島の潮岬周辺。紀伊大島側の大きな潮流が直接当たらない場所がよく知られています」
ワンドや直接潮が当たらない場所がよいのはどうしてなのか?
池内「1つは潮が流れすぎて産卵に適していないためです。潮がある程度落ち着き、産卵を行なう藻(特にホンダワラ)があることが重要なポイントです。水深15m前後にある藻場はベイトも集まりやすくエサ場になるだけでなく、身を隠す場所にもにもなります。また細かく見ていくと、川が流れ込んでいる場所があれば、周辺はプランクトンが豊富でベイト、アオリイカ共に集まってきやすいですね」
でも、今回は渡船で磯渡し…。移動が難しい時はどのように対応するのか?
池内「同じ釣り場でも水深が高い場所は、表層に比べて水温の変化が少なく安定しています。そのような場所を狙うのですが、深場と浅い場所が隣接し水深が急激に変わるブレイクの存在が重要になってきます。水温が安定している深場で体力を温存し、浅い場所の水温が上がればベイト追いかけ上がってくる。この行動が取りやすい場所を狙いましょう!」
池内流「春イカ攻略の3ヶ条」
条件1:水温「低水温でもイカがいないわけではない」
水温が安定して16℃以上になると、アオリイカの捕食行動が活発になり産卵を意識した行動をとりだす。このことから16℃以上が好条件とされているが、それ以下でも活性は低いだけで生息している可能性はもちろんある。水温の上がり下がりも重要で、低くても安定していれば可能性は上がる。水深が深い場所は水温が安定しており、深場にいることが多い。
条件2:地形の把握「ディープに隣接したシャローエリアが好条件」
ホンダワラ等の藻場があるシャロー場は、水温が上がると捕食や産卵を意識したイカが集まる。水温が安定しているディープエリアから急激に水深が浅くなる地形は、移動距離を少なく行動に移すことが出来る条件のよい地形となる。
沖側の深場に隣接した大きなシモリがあり、写真左上の本土との間を潮が流れる。潮流は干満の違いで流れる向きが変わる。
池内「シモリが見えやすくなり、沖側へ潮が流れる干潮の時間帯で釣れています。そのタイミングでディープから入ってくるんだと思います」(池内)
条件3:潮汐&天候「同じ場所でも刻々と状況は変化する」
水温以外にも、潮の満ち引きや天気によっても状況は大きく変化する。潮による影響は、流れがどの向きに流れているかや釣り場の水位の違いによって、ベイトの有無やイカの捕食行動を活性化させる。また天候は太陽の日照具合で浅い場所の水温上昇を促し、雨が降ると海水温や塩分濃度を変化を及ぼす場合がある。
エギを舐め濃度をチェックする池内さん。感覚的な判断に近いが、釣れた状況と比較するという。
池内「舐めすぎ注意です!」
場所によって平均的な濃度があり、大きく変化しない事が望ましい。雨や河川の真水が入ると濃度が下がってしまうことがある。
池内「深場は濃度が安定しているのでそこまで気にしなくてもよいのですが、特に浅いところでは雨後で波気やうねりが出た時に気にしたいポイントです。時期的には梅雨時期など雨が多い時、流入河川からの水は栄養素でもありプラスに働きますが、日本海側等の河川が多いエリアでは結構気をつけています」
春エギングにオススメ! 池内さん厳選エギを紹介!
では、上記のようなシチュエーションで貼るイカを狙う場合に、池内さんがよく使用する、ヘビロテエギを2点紹介しよう。1つは、大型アオリイカの釣果が期待できる実績エギ、そしてもう一つは、今年発表となった、斬新過ぎる新製品だ。
オススメ1:EZ-Q キャスト 喰わせ 3.5号(デュエル)
警戒心が強くスレたイカが嫌がるダートは小さく、腹部に取り付けられたパタパタフットが水の抵抗を受け細かく動く。微波動でナチュラルに誘う喰わせ特化モデル。
オススメ2:エビQ 3.5号(ヨーヅリ)
パタパタと波動を起こす手やフワフワと動くラバースカートでエビを再現。生命感を出すインナーシートと合わせ、フォール中やステイ時にイカを魅了する非ダート系エギ(水中のアクションは下記youtube動画をチェック!)。
春エギングタックル&利用渡船を紹介!
【池内さん使用ライン】
【仙波さん使用ライン】
利用渡船:清丸渡船
取材は沖磯へ渡って敢行、那智勝浦の清丸渡船を利用した。大小40程の島々へ渡ことができ、定期巡回で磯代わりなどにも対応してもらえる。エサ釣りでの利用者も多く、仮眠所や広い駐車場がある。最終帰着は16時と、長時間釣りをしたいエギンガーにとってもありがたい。
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