シーバスゲームにおけるタックルの選択肢は、圧倒的にスピニングが多いのは周知の事実だろう。しかし、一方でベイトタックルをシーバスゲームで活用するアングラーも存在し、各メーカーからもロッドなどがリリースされる。では、ベイトタックル、ベイトロッドでのシーバス釣りにはどのようなメリットがあるのか? テンリュウのフィールドスタッフ、久保田さんに解説をお願いした。
●文:ルアマガプラス編集部
久保田剛之(くぼた・よしゆき)
地元湘南を中心に活躍するアングラー。豊富な経験から導かれるランカーシーバス捕獲理論で、コアなファン持つ。サラリーマンとして働きながら釣りも極めるというスタイルに共感するアングラーも多い。テンリュウのフィールドスタッフ。
【ベイトタックルを使用する6つのメリット】
- メリット1「重いルアーにも対応できる」
- メリット2「ランカーシーバスに対して有利」
- メリット3「サーフゲームで有利」
- メリット4「太いラインでも安定した飛距離を出せる」
- メリット5「着底感度が高い」
- メリット6「手返しが良い」
久保田さんが実際に使用するシーバス用ベイトタックル
本題に入る前に、久保田さんがシーバスゲームで実際に使用する、ベイトタックルを紹介しよう。ロッドは、2023年に新しくリリースされる、TENRYUのスワットシリーズのベイトモデル。現時点で2機種がラインナップするのだが、その内の長い方「SW932B-ML/MH Variable Caster」をメインで使用する。
ベイトリールは、バスフィッシングだけでなく、ソルトアングラーからも定評のあるジリオンTW HD、ラインは、張りのあるコーティングライン、ファメルPEレジンシェラーを巻く。
【久保田さん使用タックルデータ】
- ロッド:スワット SW932B-ML/MH(TENRYU)
- リール:22ジリオンTW HD 1000(DAIWA)
- ライン:ファメル PEレジンシェラー オレンジ 1.5号(山豊テグス)
- リーダー:ファメル 耐摩耗ショックリーダー16lb(山豊テグス)
久保田さんが普段、主戦場とするのは、中〜大規模河川。比較的オープンなフィールドが中心となるため、ベイトタックルでも9ft3inという長めのロッドを使用し、キャスタビリティ(遠投性能)を重視するスタイルだと言えるだろう。
では、シーバスゲームでベイトタックルを使用する上で、久保田さんが感じるメリットを解説して頂こう。普段、スピニングタックルのみを使用しているとなかなか見えてこない、ベイトタックルならではの利点とはどのようなものが挙げられるのか?
ベイトタックルのメリット1「重いルアーにも対応できる」
ベイトタックルのメリットとして、最初に挙げられるのはやはり、ヘビーウエイトのルアーもキャストや操作がしやすい点だろう。
久保田「ベイトタックルって、結構重たいものにも対応が効きます。スピニングタックルの適合ルアーウエイトが、例えば20gがベストだったとして、30gを背負うとちょっとしんどい、不安を感じることも多いと思います。その点、今使っているスワットシリーズのベイトタックルを例に挙げても、かなり幅広いルアーウエイトを背負うことができます」
それは、ルアーの種類によっても変わってきますか?
久保田「仮に30gのルアーでも、メタルジグだと空気抵抗が少ないので、キャスト時の負荷ってそこまで大きくない。でも、プラグなど面積のあるルアーだと、空気抵抗があるので、キャスト時は30gという重さ以上の負荷が、ロッドにのしかかってきます。ベイトリールは、クラッチを切って親指でスプールを押さえながらキャストしますよね、その際、負荷が高いと親指が少し滑ってくれるので、ロッド破損などの最悪の自体が起きにくいとも言えますね」
ベイトタックルのメリット2「ランカーシーバスに対して有利」
メリット1の「重いルアーに対応できる」というテーマと地続きとも言えるが、ランカーシーバスなどの大型のターゲットに対しては、スピニングタックルよりもベイトタックルの方が、ファイト時は圧倒的に有利に展開できるというのが、久保田さんの考えだ。
久保田「人生で初めて出会うような魚がヒットした場合などの、安心感というか、ファイトでは圧倒的にベイトタックルが有利だと感じています。デカい魚だけじゃなく、元気の良い魚が掛かった際、ランが速い魚が掛かった場合などにも、キャッチ率という点で見ると、スピニングタックルとは比べものにならないほど、ベイトタックルは有利だと僕は思っています」
ベイトタックルのメリット3「サーフゲームで有利」
3つ目のメリットは、やや意外なものが挙がったが、これに関しても、経験から導かれたものとなっている。
久保田「特に、シーバスゲームという点で見ていくと、サーフでのベイトタックルのメリットはめちゃめちゃ有利に作用します。例えば、ナイトゲームでサーフで狙っていると、波打ち際で喰ってくるパターンが非常に多い。もう、自分が立っている位置から数メートルといった所で、80cmを超えるシーバスが勢い良く喰ってきて、沖へと走る」
目の前でそんなサイズが喰ってくると、その後の対処が難しそうですね。
久保田「そうですね、魚が元気な状態で、近距離でファイトがスタートするんで、スピニングタックルだと、態勢を立て直す前に最初の突っ込みでラインブレイクすることが多い。でも、ベイトタックルだと瞬時にクラッチが切れるんで、そのまま沖に走らせることで、コチラが態勢を整えることができます。つまり、キャッチ率がUPする」
なるほど。確かにそれは、スピニングタックルにはない、ベイトタックルならではのメリットですね。
ベイトタックルのメリット4「太いラインでも安定した飛距離を出せる」
ベイトタックルは、スピニングタックルと比較して、ラインの太さが飛距離に影響しにくいと、久保田さんは考えている。
久保田「スピニングリールの場合、太いラインを使用してロングキャストすると、スプールが痩せていくことで、スプールエッジとのギャップが生じ、それが抵抗となって飛距離が変化してしまうんですね。つまり、PE1号を使用している場合と、PE1.5号を使用している場合とでは、ルアーの飛距離が変わってきます。これは、構造上、避けられない現象です」
1.5号を使っているときの方が、スプールが痩せていく率が高いので、エッジの抵抗で飛距離が落ちやすいということですね。
久保田「そうですね。一方、ベイトリールはスプールが痩せても、構造上、抵抗に変化はりませんから、ラインが太くても細くても、飛距離にはあまり影響しません。これは、ベイトリールの大きなメリットだと思います」
ベイトタックルのメリット5「着底感度が高い」
スピニングタックルよりも、ベイトタックルの方が着底感度が高いと言われても、いまいちピンと来ない人も多いのではないだろうか?
久保田「ベイトリールの場合、ラインに対してスプールの軸が直角です。ラインを通じて伝わってきた振動が、しっかりと伝わりやすい構造なんです。だから、ルアーの着底など、水中の状況が手元に伝わりやすいんです」
確かに、スピニングリールは、ラインに対してスプールの軸は平行ですね。なるほど、そういう構造の違いが、感度面にも影響するわけですね。
久保田「例えば、着底後すぐに巻き始めたい場合などでも、ベイトリールはワンテンポ遅れることなく、すぐに次のアクションに移りやすい。そういったメリットが、ベイトタックルにはありますね」
ベイトタックルのメリット6「手返しが良い」
最後は、多くの人が、ベイトタックルのメリットとして、すぐに思い浮かべるであろう、手返しの良さについて。
久保田「これはもう、言わずもがなのメリットですが、スピニングのようにベイルを起こすという作業がありませんので、親指1つでクラッチが切れて、即座にキャストに移れるんで、素早く次のキャストを繰り出したい場合などは、大きなメリットになると思います」
シーバスゲームにおいて、手返しの良さがいきてくるシチュエーションは?
久保田「どんどん移動しながらキャストを繰り出していくような状況なんかは、ベイトタックルが有利なシチュエーションの1つですね。テンポよく探っていくような場合にマッチすると思います」
この記事の解説は、動画でも視聴可能
シーバス釣りのおけるベイトタックルのメリットは? と、問われると、具体的な返答が難しく、答えに窮することもあるかもしれないが、久保田さんは、経験を通して得られた知見を元に、6つのメリットを具体的に解説してくれたので、非常にわかりやすかったのではないだろうか?
ちなみに、この解説は、動画でも視聴可能で、メリット意外にも、久保田さんが使用するスワットのベイトモデルについても詳しく解説されているので、興味のある方は是非、見てみて欲しい。
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