ウクライナ製の《木製スプーンを削り出す工具》をガリガリ使ってみる面白さ

ゆらめく炎に酔いはじめる。美しく静かな河畔の夜が更けてゆく。明日もいい釣りになりそうだ。今回は木製スプーンの製作に使う「カービングナイフ」に注目。

●文:柳沢公明 ●写真:Atsushi Sekino

2024 新製品情報

ビーバークラフト製 カービングナイフ Made in Ukraine

スプーニングで木と遊ぶ

どんなに高級なナイフでも木製のスプーンの凹み部分をきれいに仕上げることは難しい。

この先端の部分が湾曲した奇妙な形をしたナイフは、木製スプーンの凹み部分を切り出すためのウクライナ製ナイフだ。カービングナイフというらしい。このカービングナイフを使った木製のスプーンづくりは欧米では、スプーニング、と呼ばれ、古くからアウトドアライフの中で楽しまれていて、今も人気のようだ。

なかでもこの楽しみに取りつかれたアウトドアズマンは、スプーニングのために、まずは大木を切り倒し、板にする。そのために、大木を切るチェーンソーの技術を習得し、大木を運び出す運搬方法を考え、木材の性格や、木が生息しやすい環境を学ぶらしいのだ。

そんな話を聞いてまずは、ウクライナ製ビーバークラフト社製の一番ポピュラーなカービングナイフを買ってみた。

とりあえずホームセンターで買った板を見よう見まねでスプーンに仕上げてみた。とても実用に向く作品には程遠いものではあるが、スプーンの凹みを掘り進む面白さは、いままでのナイフワークでは味わえない異次元の木工作業だ。

いくつかトライしてみるうちに工作しやすい木となかなか工作がしにくい木などが分かってくる。そのうちにホームセンターでは手に入れることができない木を試したくなる。それが自然と雑木林に足を向かせることになる。

このカービングナイフでうまく凹みのカーブが仕上がった時は、例えば釣りで良型のトラウトがヒットしたときの感覚にも似た、大きな満足感が味わえるのだ。ハンティングでは千載一遇の大きな鹿を捕らえた時の感覚に近いのかもしれない。

野に出て最適な木を見つけてそれを加工する楽しみはフィッシング、ハンティング、そしてバードウォッチングなどアウトドアアクティビティの目的である自然探訪そのものだ。

スプーニングに興味を持つと、釣りや、山歩きの際に、切り株に目がいったり、今まで知らなかった雑木の名前が気になりだす。スプーニングを通じた新しい木との遊びは、自然のかかわり方として新しいアウトドアライフのメニューになることを感じる。

釣り人が釣りを楽しむことで、魚を守りたくなるように、またハンターが自然の恵みを慈しむように、森に出て木材で小さなスプーンを作ってみることは、今まで見過ごしていた自然を見直すことにも通じるようだ。

柳沢公明

数々のアウトドアギアを所有する実践主義のトラウトアングラー。趣味は低山ハイク、そして本物の俳句! 鵠沼閑人会、ウラヤマアンリミテッド会員。

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