ただ、我々の住む日本という国土にとりまく環境は、日に日に悪くなっているように思うのです。我々の取り組みとともに、広くは釣り場を救うひとつの商品をご紹介したいと思います。少しだけ聞いてください。
●文:ルアマガプラス編集部(フカポン)
日本の水辺を救いたくば、山を救え
『木を見て森を見ず』。『海を見て山を見ず』。こうなっていませんか?
すべての環境は、緻密に連動しています。我々の愛してやまない釣りは、当たり前ですが『水辺の環境』が健全であるからこそ成り立つ趣味といえます。日本は四方を海に囲まれた島国です。
川にしろ、流れつく先の海にしろ、それを魚豊かな環境に保つには『山』が非常に重要であることは、この記事を見ている読者の皆様ならお分かりかと思います。
山が力を失えば、海は力を失います。山や大地の養分が魚たちの餌となるプランクトンの餌を育てています。なので、え?山のことでしょ?海には関係ないじゃない。では済まされないのです。しかも比較的直接的、そして短いスパンで山で、その環境変化による影響が海に出てくるのです。雪があまり積もらず、雨が降らない年の海況はあまり良くないことが多いことは釣り人の皆様ならご承知おきのとおりです。これはほんの一例。
埼玉県、飯能市で生まれた特許炭が日本の森林を救うかもしれない理由
実は、我々は釣り場環境面での取り組みにも注力しています。意外に思うかもしれませんが、とある『炭』を林業関係者とのセッションをしながら販売しているのです。どちらかというと利益を得るというよりは、『環境面』に配慮した商品を皆様に紹介していこうという取り組みの一環です。
ただ? 炭?? なんで釣り場と関係があるの??? と思われるかもしれません。
はい。この炭を買っていただくコトで、釣り場の環境を改善していくことに貢献できるのであります。理屈はひとつ、海に繋がる『山』を守るコトに繋がるからです。OK能書はいい。信じるぜって方は使ってみてください。損はさせません! え?なんで?って方はよかったら記事をそのまま読んでください。
山が荒れ、川が荒れる。すると海も荒れる
いま、日本の山を管理し、木を育てるコトを生業にしている林業が窮地に立たされています。後継者不足、人手不足、儲からないという負のスパイラル。日本の各所で林業を営む人たちは生き残りのための効率化に奔走しているといっても過言ではないでしょう。
植林にせよ、自然林にせよ林業を営む人たちの体力が失われていけば、山は荒廃し力を失っていきます。これらの人たちは、ただ生活のために木を切り木を植えているだけではないんですね。山も守りながら木を売ることを生業にしている共生の関係なんです。
そろそろ本題に入っていきます。
実は、いま、我々が販売に力を入れている炭は、林業における製材の過程で生まれる未利用資源を使って作った炭なんです。商品名を『ペレタン』と言います。
埼玉県飯能市で開発された炭です。飯能市は、古くからブランド材として知られる西川材の産地で、林業の盛んなお土地柄でもあります。で、この炭、原材料は、製材時に出る木の樹皮なんですね。
この樹皮、実はものすごく厄介。燃料にしようとしても燃えにくく、二時資源として利用し難い厄介ものなんです。つまり、処分にものすごくコストがかかるんです。こういった、価値を生まない利用できない廃材って、製造業にとってかなりの負担になってくることは読んでくださった方も理解いただけると思います。
まごうことなき『天才』が開発した特許炭
さて、ご紹介した『ペレタン』。ひとりの木のマニアによって生み出された、ものすごい炭なんです。ただの炭じゃないんです。
開発者ご本人はあまり目立ちたくないとのことなので、さらりと触れますが、日本から失われつつある『木』そのもの『木材』としての知見を体系化して後世に残すべく、還暦近い年齢になってから東大大学院に受験、合格し、さまざまな木に纏わる知見をまとめあげて研究、データ化。そんな『木のマニア』が開発に携わっています。
廃材となって、処理に困っていた樹皮。捨てるだけで林業経営者にとってはただの『コスト』にしかならない。これをなんとか少しでもお金に変えることで、コストの圧縮につなげたいという思いがありました。再利用する道筋をたてることで、同じ悩みを抱える林業関係者にその技術を共有したいという思いもあったそうです。
奇跡の炭『ペレタン』。その小粒ながら溢れるパワーを知ってほしい!
まず、樹皮を小さなペレット状に加工する。そして、それを加工して炭にする。素人が聞くと、へぇ、それだけのことか。と思ってしまいがちですが、実はコレ、すごいことなんです。
試行錯誤の中で出来上がった、樹皮ペレットの炭。炭のマニアでもなければ、これがどれだけエポックメイキングな炭なのか見過ごしてしまうかもしれません。5mm程度という小さな炭であるにも関わらず、20〜30分の燃焼持続が可能な点。通常の木屑を固めただけのペレット炭では得られない特性です。
そして、小さいが故の着火スピードの速さ。着火だけに止まらず、炭の機能状態と言える熾火(おきび)に即移行します。つまり、着火即機能する炭なのです。これほどの特徴を持つ炭はそう見当たりません。
また、その機能は熱を発している時に止まりません。大きさや構造的な特徴から、完全燃焼しやすく炭は残らずほぼ灰化します。ペレタンから出た炭はミネラル分が非常に高く、土壌改良剤としても機能します(家庭菜園などに転用可能)。
実はペレタンの灰のph値が12前後となっているため、環境にインパクトを残さない洗剤としても活用できます。つまり、アウトドアの利用に際しても非常に扱いやすく、片付けが非常に楽な炭なのです。油を落とすのにも使えるのでいいですよ。
他にも可能性を秘めています。消臭剤としての機能性、水質改善媒体としての機能性についても従来の炭よりも高機能といえるのです。アンモニアの吸着、トリメチルアミンの吸着能力にも優れています。
ここまできたら、どうしてそのような特徴をペレタンが持つのか。構造上の特徴についても触れておく必要があるでしょう。
ペレタンの凄さは構造にあった!
ペレタンの原料は先に申し上げたように製材時に発生する木の樹皮です。通常の木片などはペレット化した燃料として活用することができたのですが、実はこの樹皮に関して言えば、ペレット化してそれを燃料として活用するには難点がありました。簡単に言えば『燃えにくく、通常の木部ペレットより灰が多く出る』点でした。
樹皮にはカルシウムや珪酸塩などの無機成分が多く含まれており、燃焼温度が木部よりも10%ほど低くなる傾向にありました。端的に言えば、製材時に発生するこれら樹皮の用途は燃焼材として不適切であるという問題に直面します。通常の木部ペレット比べても性能が劣り、灰が多くでるわけですから使用にコツがいる燃料となってしまいます。
とはいえ、製材する限り多くの樹皮が発生し、価値どころか処分のためにコストが発生する始末。これは林業に関わる企業にとっての悩みの種。しかし、大河原さんは正に逆転の発想でペレタンを生み出します。
『逆に無機成分が多いということは、炭化させると面白いのじゃないか?』
そこに着目した大河原さんは開発にとりかかります。試行錯誤し、最適な炭化温度を見つけ出し、炭化のためのプラントを見つけ出し、そして樹皮ペレットを炭化させたペレット炭の開発に成功します。デメリットをメリットに変えて出来上がったのがペレタンなのです。
ペレタンは(1)無機成分が多い(2)密度が低くポーラス(穴のようなもの)が多いという他の炭にはない特徴を持っています。
無機成分が多い。これはただの樹皮ペレットでは『燃えにくい』というデメリットでした。しかし、炭化した樹皮ペレット、ペレタンでは『燃え尽きるまでの時間を稼いでくれる』というメリットに変化しました。これが小さい炭であるにも関わらず長時間、熱を発生させることのできる秘密です。
しかし、燃え尽きるのが遅いということは、温度が上がらないのでは? それは樹皮という素材を炭化させることによって起きた副次的効果が炭の機能を底上げしました。通常の炭に比べて密度が低いのです。簡単に言えばスカスカで空気が通りやすく、それにより温度が上がりやすいのです。
密度の低い炭は、基本的に一瞬で燃えてしまいます。しかし、無機成分の多い樹皮ペレット炭ペレタンは燃えにくい。このいかにも二律背反な特徴が見事にマッチしたのです。
これで、本来、ありていに言えば『ゴミ』、『産業廃棄物』として処分せざるを得ない、未利用資源が、価値のある資源に生まれ変わったのです。この炭の価値が多くの人に理解されれば、苦しい背景で日本の森林を守り続けている人や企業を助ける光明になるのではないかと、大河原さんは考えました。
しかし、『良いものが必ずしも売れる』時代ではありません。なにより、炭という商材は非常に地味です。凄い炭だよ!高機能だよ!と宣伝したところで、こういったモノは実際に使っていただき、その凄さを体感していただくしかないのです。
我々も無理筋で環境に絡めたわけではありません。いま、歪になりつつあるエコサイクル。これを少しでも機能させ、人と山、人と川、人と海の共存を願っています。ホームセンターで売られているような海外製の炭にくらべれれば高価かもしれません。でも、その機能と背景を知っていただければ、この炭の利便性と相まって、注目していただけるのではと思った次第です。
ペレタンが少しでも盛り上がれば、山が活気を取り戻し、そして釣り場にも結果還元される。ご理解いただければ嬉しい限りです。
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