近年、オフショアで人気のキハダマグロのキャスティングゲーム。50kgオーバーの夢がある釣りだ。このキハダをはじめ大物狙いのキャスティングゲームで使うタックルはスピニングが主流だが、ベイトタックルで…というのはかつてないニュース。このトピックの発信源を直撃。実釣詳報をどうぞ!
●文:ルアーマガジンソルト編集部
高木 響(たかぎ・きょう)
たかぎ・きょう 京都府出身、高知県在住。大学進学で高知に移住し、アカメやシーバス釣りを本格的にはじめ、2022年末にはキャリア6年弱で137cm、推定40kgの怪物アカメをキャッチ。オフショアのベイトキャスティングにも積極的に取り組むソルトゲームの若き熱血漢だ。
初のキハダが35kg超!ファイト時間6分で決着
そのニュースは2023年6月初旬、締め切り間際で混乱する編集部に突然舞い込んできた。
“ベイトタックルのキャスティングで35kg超のキハダを捕獲”
35kgのキハダマグロは良型だが、記録ものの大型ではない。だがベイトタックルで、となると話しは別だ。
「ジギングでもエビングでもなくベイトでキャスティング?」。「そもそもキハダのキャスティングで使えるベイトロッドなんてあるのか?」。「ベイトでやる意味は? メリットは?」と仕事そっちのけでザワつく編集部。急遽、記事を組むこととなった…。
というわけで、高木さんに実釣の模様をうかがいます。まずは、いつ、どこで?
高木「6月7日、三重の尾鷲沖です」
当日の状況は?
高木「その頃、黒潮がちょうど尾鷲沖に当たっていて、5月末頃からキハダが湧いている状況でした。ただ、台風が通過して、僕が行く前日まではどの船も釣れていないと船長に言われて」
台風2号の影響で状況が変わってしまった?
高木「はい。キハダが居るか心配していたけれど、海に出たら単発ですけど沖に鳥山が立って、キハダの跳ねも見られた。実釣中はずっとそんな感じでした」
35kg超が釣れたのも鳥山?
高木「船長が鳥の動きを見ながら魚を追いかけてくれて、鳥が進むのを止めて海面を見て、エサを捕る態勢に入ったんです。そのタイミングで船を横付けしてくれて、おそらく鳥の群れの下でキハダがエサを食べに水面に上がろうとしていたタイミングだと思います」
ナブラ撃ちではなく?
高木「はい。キャストして着水して10秒くらいステイしたところでボンッと出た。魚体もしっかり見えて、小さくはないなと思いました」
ファイトはどうでした?
高木「ファーストランの速さはすごかったです。でも、その後は思いの外、余裕がありました。ベイトリールは巻く力が強いし、使っていたロッドも曲がるけどバットがある。そのせいかもしれません」
キハダマグロは30kgを越えると俄然ファイトが強くなると言われている。スピニングタックルなら悪戦苦闘するサイズですよね?
高木「ファイト時間は6分くらいでした。朝イチに1尾バラしていて、翌日は天候が悪く船が出ない。動画のロケだったんですけど、実釣は実質1日だけで絶対にバラせない、というプレッシャーのほうが大きかったですね(笑)」
高木さんにとって自己最大サイズのキハダマグロになる?
高木「実は初めてキハダを釣ったんです、4年くらい追いかけていて(笑)。でも、オフショアのキャスティングで20kg近いヒラマサを釣ったり、大きなサメをかけたりして、キハダと戦うイメージはできていました。そのためのロッドも開発して、今回、キハダにも通用することが実証できた。そこが一番うれしいですね」
ヒットルアーはセミロングスリムポッパー
ヒットルアーは何になりますか?
高木「釣れたルアーはビーコン180(ディークロウ)。重さは約70gですがボディが硬質発泡素材で、中身が詰まっているので風が強くても良く飛びます。垂直に近い浮き姿勢でアクションをつけたときのエラーが少ない点も気に入ってます。バレットブル(デュエル)と、プロトですけどガチポップトゥリーパ(ブルーブルー)もベイトタックルと相性が良く、投げやすいので良く使います」
キハダの狙い方でベイトとスピニングの違いは?
高木「そこは共通です。狙い方の一つがナブラ撃ち。水面でベイトを捕食するキハダをダイレクトに狙います。もう一つは鳥の動きや魚探に映る魚の群れを見て、回遊ルートで誘い出し。トップウォータープラグでアピールして水面に誘い上げて喰わせます。キハダはステイで喰うことが多いので、ナブラ撃ちも誘い出しもアクションをつけたら必ず止めて喰う間を与えます」
新境地への挑戦! ベイトのメリットが浮き彫りに!!
ベイトタックルによるキハダマグロのキャスティングゲーム。オフショアの新境地になりますが、はじめたきっかけは?
高木「僕は大型シーバス、アカメから渓流のトラウトまでルアー釣りはすべてベイトタックル。キハダなどの大型魚を狙うオフショアのキャスティングでベイトを使う方はほとんどいない。遊びとして面白いし、新しいことに挑戦したい、という思いではじめました。メリットもしっかり感じています」
メリット、具体的には?
高木「今回のファイト中にも思ったんですけど、ベイトタックルは巻き上げる力が強い。スピニングとの一番の違いはここですね」
大型魚とのファイトが楽になりますね。
高木「あとベイトリールはスピニングと違ってラインが直線的に出る。僕はキハダでPE5号を使いますが、スピニングではラインが螺旋状に出てガイドに当たって磨耗しやすい。ベイトは一日投げ倒してもリーダーを結び替えなくても良いくらいラインの磨耗も結び目の傷みも少ないです」
太いラインでも直線的に出れば飛距離も?
高木「出ます。オフショアでも50gくらいの小さいルアーじゃないと喰わないケースもあります。でも太いラインは使いたい。そういうときは、スピニングよりベイトのほうが飛びます。そもそもオフショアは、トップウォータープラグをフルキャストすること自体が快感で、そこもベイトタックルの魅力ですね」
クロマグロも視野に入れて、オフショアベイトキャスティングゲームを開拓
キハダマグロのキャスティングゲームでベイトタックルを使う魅力やメリットはわかりましたが、そもそも適したタックルが少ないのが現状です。
高木「なので作ったのが、今回使ったロッドのブリストハイドロ8.5XXH(フィッシュマン)です。昨年(2022年)末に137cmのアカメを釣ったのもこのロッドです」
オフショアのキャスティング専用ロッドではない?
高木「ビッグベイトやジャイアントベイトで大型シーバスやアカメを狙う釣りにも最適です。きれいに曲がるから重量のあるルアーがバックラッシュしないで投げやすい。ティップは適度に張りがあって振り抜いた後にブレないから、投げたルアーの初速を落とさず、飛行姿勢を崩さずに飛ばせます」
オフショアのキャスティングにも通ずる特性ですね!
高木「ルアーを操作するときはベリーが硬すぎないので、ポッパーもビッグベイトもエラーアクションを防げます。100gくらいのダイビングペンシルも心地良く使えます。タックルに関して課題があるとすれば…」
タックルセッティングは、まだ完璧ではない?
高木「リールです。PE5号が300m巻けてキャスティングに対応したベイトリールが少ない。あとハイドロ8.5XXHも大型魚を狙うオフショアキャスティングロッドとしてはライトな部類。今、専用ロッドを開発中で、ゆくゆくは国内最大クラスのターゲット、クロマグロにベイトキャスティングで挑戦したいと思っています」
ビッグベイトゲームからオフショアまで楽しめる!ブリストハイドロ8.5XXH(テスト最終段階)
ブリストハイドロ8.5XXHの開発の中心人物が高木さんだ。
高木「8.5XXHでシーバスのジャイアントベイトゲームを楽しんで、同じロッドでオフショアのキャスティングにも挑戦してほしいという思いで作りました」
自身のフィッシングスタイルを反映したロッドを開発し、ショアとオフショアでジャイキリを実現。上の写真は2022年末に8.5XXHで獲った137cm、推定40kgのアカメだ。
高木「8.5XXHは巨大魚だけではなく、青物のキャスティングにも使えます。ブリなどライトめのターゲットならB.C.4の8.0MHやブリストコモド6.10XHもおすすめです」
【カツオ・シイラ】沖の新定番!オフショアキャスティング入門【ベイト】
ルアーマガジンソルト2023年8月号に記事掲載!
2023年6月21日に発売した、ルアーマガジンソルト2023年8月号には、今回の記事が掲載されている。続きが気になった方は、是非とも本誌でチェックしてみてほしい。
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