「伝統釣法で狙う磯の王者イシダイ」と聞いて「ピン」とくる人は決して多くは無いでしょう。今回私が紹介させて頂くのは、瀬戸内は広島に伝わる伝統釣法『かぶせ釣り』を、イシダイ釣りへと応用した【かぶせイシダイ】です。
●文:まっくす(アングラーズマイスター)
まっくす
豊かな自然に囲まれた陸の孤島、島根県は浜田市の海に40年通い続けるサラリーマン釣り師。竿を持たず海を眺める散歩好きで、そこから新しい可能性を生み出す。宇崎日新のかぶせ釣り専用ロッド『鬼彩』リリースを手掛けたひとり。
意外にも、身近な堤防や磯場にも大型のイシダイは潜んでいる
イシダイ釣りのイメージといえば釣り場として男女群島や五島列島いわゆる憧れの離島であり、専用の剛竿・大型の両軸受けリールにワイヤー仕掛け。加えてエサにはサザエやウニと、一般の魚釣りとは掛け離れた世界観を持つ釣種です。
そしてそれは長い釣りの歴史の中、磯の王者と渡り合う事に於いて他釣法の追随を許す事はありませんでした。大型のイシダイはその食性が偏食であるが故、他の釣りで姿を現すことが無かったからです。
また、沖の荒磯や離島という釣人の強いイメージが先行し釣り場を夢の舞台に限定させていたのかもしれません。しかし実のところイシダイは意外な程身近な防波堤にも生息しており、時には思いもよらない小さな漁港内にも姿を現します。
防波堤の壁にはフジツボや牡蠣等イシダイが日頃から食す大好物の貝類が沢山付着しており、格好の住処となっているのです。今までの防波堤の釣りでは、これらの貝類がエサとして使われることが少なく、大型のイシダイが存在する十分な確証が得られていませんでした。
時折、波止で行われるクロダイ狙いのヘチ釣りではヒットするもののアングラー達のタックルを粉砕していく『得体の知れない波止のヌシ』的な謎の存在だったのかもしれません。この防波堤に住まうイシダイの存在に気付いていた私はコレをどう攻略するのかを研究し、辿り着いたのがハリと糸だけを用いて牡蠣を餌に使用する【かぶせ釣り】だったのです。
ただ、発祥のかぶせ釣りは本来筏から手釣りでクロダイやアイナメ・カワハギ等を釣る為の釣法であり、とても大型のイシダイに対抗できる術ではありませんでした。
そこで対イシダイ釣りへと昇華させるべくスピニングタックルにルアーフィッシングで使われる強度の高いラインシステムを採用し、既存のイシダイ釣りで使用されるワイヤーの代わりにはハリの地本へジギングで使用するアシストラインやケプラで補強を施し、エサにはイガイを使用する【かぶせ石鯛】が出来上がりました。昨今のタックル進化がこの釣りを可能にしてくれたのです。
実践当初はもちろん釣り業界に専用のアイテムは何一つ存在しておらず、ロッドは筏竿や海上釣り堀用を流用していました。
釣果実績を重ねていき地区の釣り情報誌やローカル釣り番組にも取り上げて頂くようになり、今では極一部の釣具メーカーさんとなりますが、興味を持って頂き専用ロッドもリリースされ、その売れ行きは製造が間に合わず小売店の店頭に並ぶ事が稀な程となっております。
『かぶせ石鯛』は今までのイシダイ釣りには無い手軽さがあり、足場の良い堤防から女性や子供達にも挑戦して貰う事ができます。タックルに関しても元々専用アイテムが無かったのですから特別な物を必要としません。
そして、昔は離島に出向いていたものの体力的・経済的に諦めてしまった夢追いしアングラー達へふたたび憧れのイシダイへチャレンジできるチャンスが作れたものと思っています。しかしながらこの釣法は未だ知名度が低く専用タックルも充実していない発展途上と言えるでしょう。
しかしながらこの釣法は未だ知名度が低く専用タックルも充実していない発展途上と言えるでしょう。私が通う浜田の海は有名釣り場でもイシダイの名所でもありません。
この『かぶせ石鯛』全国各地の防波堤にはもっと大きな可能性があることでしょう。今後数回にわたり具体的な釣り方やタックルの詳細、選定するポイント等掘り下げた内容を紹介していければと思っております。
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