夏のカスミで『巻き』で3連チャンだと!?陸王U−30で魅せたロコのテクを考察!

8月19日に行われたルアマガイベント『陸王U30』。30歳以下の若手アングラーがエントリーして陸っぱり勝負していく本大会。見事優勝したのは植森幹太選手だった。今回は、惜しくも準優勝となった地元ロコ・小阪翔太選手の担当になった記者が、躍進のきっかけになった彼の『巻き』の釣りに注目してご紹介。その釣りの正体はフットボールジグのスコーンリグだった。

●文:ルアマガプラス編集部(深谷真)

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灼熱の霞ヶ浦。ウエイトを競う本大会でジャンプアップさせた『巻き』の釣り

全国津々浦々からアングラーが集まることになった陸王U30。試合の舞台となったのは今年も前年度と同じ茨城県の霞ヶ浦。言わずと知れた関東最大のバスフィールドだ。

本記事で紹介するのは陸王U30で2023年大会で準優勝となった小阪翔太選手のテクニックだ。小阪選手はJB霞ヶ浦などにも参戦する地元ロコ選手。

今回の小阪選手は、持っているロコというアドバンテージをしっかりと活かして準優勝を勝ち取ったともいえる。だが、長年こういった試合の取材をしている記者だが、正直なところ地元アドバンテージを活かし切る選手というのは稀で、逆に仇になることが多い局面を見ているだけに、この『活かし切る』というのもテクニックだと感じている。

事実、2022年の大会優勝者も霞ヶ浦がホームではない仙石快選手だ。

早速だが本題に入ろう。本戦エリアに含まれる北利根川のとある水門に小阪選手が入ったのは14時ごろ(試合は6:00から16:00)。その時点ではキッカーサイズが入っているとはいえ、釣ったバスは2尾という小阪選手。記者は他の選手の情報を掴んでいたので、多くの参加選手がこの時点で苦戦しているのは知っていた(選手は状況がわからない)。

ただ、この時点の2尾では優勝には届かない。これは状況を把握していない小阪選手も感じていた認識。

午後に入れば、太陽の角度などの要因で、5尾のリミットを揃えられると確信していたポイントに向かうと別の選手がいたことから、前述した北利根川のとある水門に入った小阪選手。

小阪「フットボールジグの巻きで魚を狙えるポイントなんです。少し沖に石などのストラクチャーが入っているラインがありまして、そこを狙っていきます」

小阪選手は護岸から沖のゴロタエリアに魚がいることを掴んでいた。

そう言ってセッティングしたのが現在廃盤となったキャリラバTG 7g(ティムコ)と定番中の定番、ゲーリーの4インチグラブ(ゲーリーインターナショナル)。しかもスカート黒、グラブ黒のコーディネイトの黒ずくめ。これが効くのだという。

記者的な勝手な考察になるが、グラブといえばカーリテイル。カーリテイルは視覚的アピール力は高いが、波動的にはかなりナチュラル。全身ブラックのコーデとなると、マッディ系の北利根川でもしっかり水中でシルエットが映える。つまり『目立ちナチュラル系セッティング』

北利根水系は連日アングラーに攻められ続けるエリアだから、この『目立ちナチュラル系セッティング』って効きそうだな…と、記者も期待…。

そして結果はすぐに返ってきた!

小阪選手は狙っている水門の沖に確認しているという『水中の変化』をトレースするためにそのキャリラバTG7g+4inグラブというセッティングのルアーをキャスト。ロッドをやや高く掲げ、スローリトリーブ。後で聞いた解説によると、巻きは巻きだが、ボトムをトレースすることを意識して、石積みにフットボールジグをコンタクトさせつつリトリーブしたのだという。

ティップはやや上げめで、キャリラバ7g+4inグラブを巻きボトムトレース。時折、ボトムにコンタクト。

すると数投目で、1kgは少し割るが40cmのバスをキャッチ。そして立て続けに2尾目、3尾目をそこで抜きあげ午前中の2尾とあわせ、大会の規定となる5尾をリミットメイク。あれよあれよの10分ほどの連チャン劇だったと記憶している。

ただ、2尾目、3尾目とサイズが落ちてきたのを見て、ポイントに入っている個体数はさほど多いわけではないのはないかと現場では感じてしまった。

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なかなか強いパターンだったために、さらに釣果を重ねるかと思ったところで、ヒットルアーとなったキャリラバの在庫が切れ(ルアーはロストをほとんどしていないが、フックが曲がって使用不能に)、そしてこともあろうに4インチグラムのストックがなくなるという事態に。

そこで、予備でストックしていたジャッカルのナカタジグにチェンジし、さらに追加を狙うが反応が返ってこない。

ちょっとした仕様の違いでの反応ロスなのか、単純に魚が抜けたゆえの反応ロスなのかはわからない。だが、これがバス釣りの面白いところで、ちょっとした浮き姿勢や、ボトムへのコンタクトの仕方の違いからパターンからはずれ、反応が鈍るということは多々ある。似てるようで非なるだ。少し状況が変わるだけで、逆にこのナカタジグが効くなんて事態にもなり得るから、この釣りは面白いのだ。

本パターンでは反応が得られなかったが、同ジグでないとハマらないなんて状況もあるはずだ。

ここで小阪選手は攻めきれていない水中のストラクチャーを攻略するためにフリーリグに切り替える。フットボールの巻きで攻めると根掛かりが頻発するポイントだからという。

選んでいたのはドライブビーバー(O.S.P)。機能的には4インチグラブと真逆で、波動が強いタイプのルアー。小阪選手としては、『弱い』から『強い』に変えることでのメリハリを演出する意図があったのではないかと思ったが、コレは不発。

試合時間残すところ30分というタイミングで、結局、この水門を離れ、元々入る予定だったポイントに移動を決意した小阪選手。このまま粘っても新しい魚は入ってこないという判断だったのだろう。幸い移動したポイントで入れ替えとなる魚を時間ギリギリでゲットすることになった。

やりきった小阪選手。

前年度の同大会では地元アングラーとして注目されていたのにもかかわらずノーフィッシュで大会を終え、悔しい思いをしたという。

小阪「優勝かそれ以外か。なので、優勝しなきゃ意味がないです。コレに勝てば人生が変わるくらいの大舞台、絶対に勝ちたい!」

試合前にこう語っていた。

今回、準優勝という結果を残し、去年の雪辱を果たしたといえ、本人の望んだ『優勝』ではなかった。だから、準優勝の結果を知った時、相当に悔しい思いをしただろう。だが、確実に去年よりアングラーとして成長した姿が見れたのは間違いない。

残酷なまでに結果が全て。こういった大会で実力を晒すことになっても、臆することなず試合に望んでくれる全ての参加者に感謝。こういう気概を持った若きアングラーが数多くいるからこそ、バスフィッシングは最高に楽しい釣りなのだと思う。


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