大物を求め、全国各地のフィールドへと挑む奥田学さんによるリアル実釣連載≪365DAYSフリースタイル≫。第4回目は近年再注目を浴びている三重県~奈良県に点在するリザーバー群へ釣行。季節は急激な暑さに襲われた夏の始まりで、タフさは不可避。奥田さんはどんなゲームを組み立てたのだろうか。
●文:近藤圭一
PROFILE
奥田 学(おくだ・まなぶ)
ストロングスタイルを主軸に、常に現場最大級のバスを仕留め続けるMr.バンタム。愛称は誰が呼んだか“ロボ奥田”。直立不動で精密機械の如く狙った獲物を確実に仕留めるのがその由来だ。シマノインストラクター。ビッグフィッシュルアーブランド『シグナル』主宰。
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厳しさ増す夏という季節 ゼロから始まる
そこは敢えて命名するなら『名阪国道リザーバー』だろうか。名古屋から大阪を繋ぐバイパスにして、高速料金不要の一般道。インターチェンジ各所から至近のダム湖は多く、名張市をベースとすれば各所へ1〜2時間ほどでの移動が可能。日本広しと言えど、ここほど数多くバスフィールドが密集しているエリアは数少ない。
「多くのフィールドは経験ありやけど、中には知らん場所も。まずは知っとる場所から行こうか」。
奥田さんの地元・岐阜から出発した奥田号は早朝に現場到着。青蓮寺ダムを始め、各所で「夏のセオリー」というバックウォーターを巡っていった。
「水が良くカレントが効いて良さそうな場所もあったけど、ドンヨリして可能性の低い場所もあった。これから雨が降る予報やから、どう変わるかわからんけどね」。
当釣行の初日は例の如く「まずは下見」。いつか訪れるチャンスのために、今はフィールドを肌で感じてデータを蓄積していく段階。これが奥田スタイルだ。
Boat&Tackleクルーズ(三重県伊賀市)
高山ダム初釣行をサポートしていただいたのは、伊賀市プロショップの雄『クルーズ』の店長・関口順さんと、同店常連の凄腕ローカル・萩野政則さん。名阪国道・友生ICを降りてスグ、アングラーの頼りになる名ショップだ。
2日目。灼熱下を制するキーはボトムコンタクト
奥田さんは取材班の誰よりも早く起き、タックル準備に余念がない。現場に到着するや、過酷なルートを軽々と走破してバスが遡上できるであろう最上流で取材班を待つ奥田さん。前職レスキューで鍛え上げた鋼のフィジカルは、今なお我々とは桁違いであることを実感した。
「いきなりバイト! 送り込みが足らんかったか…ヤラかした…」
まずはビッグベイト・アーマジョイントで表層を探るも反応はなく、マンバで「ボトコン」、つまりボトムをスローにシェイク巻きしてコンタクトさせる戦略にシフトするや即反応もミス。リグり直して再度挑むが、またしても…。そして、またしても…。なぜか、なぜなのか。
「明らかに対岸の反転流に魚は溜まっとる。ボトコンでの食わせ能力は確かやけど」
早朝ながら蒸し暑い。山間部とはいえ、夏は魔物。陽が昇るや否や夏の太陽が肌を突き刺し、吹き出る汗を拭いながらの攻防。幾度ものミスにメンタルも崩壊寸前か。否、奥田さんは異なる。
「苦節5バイト1フィッシュ(笑)。待っとれば、また魚は差してくる。どこのバックウォーターでも、まず反転流を探して魚がおるかどうかを探すことは重要やと思うわ」
朝からおよそ3時間で1本目も、その後はバイトが遠のく。奥田さん的には「珍しく粘っとるわ」とのことだが、ここで移動を決意。界隈に数少ない商店の軒先で水分と塩分、そして糖分を補給。休憩を挟んだ後は、次なるエリアへ。すると、即座に答えが導かれた。
50センチ寸止めの49センチを捕獲。バイタリティを復活させた奥田さんは、ここで、ついに本領を発揮したのだった。
仕留めたリグはマンバのネイルリグ。朝の1本と同様で、ここでもボトコンで一発必中。まさにこの日を読んだパターンの釣りだ。
「異なるのはステラのドラグを緩めにしていたこと。朝の場所は岩場で、食って走られたら危険だったけど、ここは比較的オープンだから少し緩めでじっくり闘える」
通称「陸王スピン」ことバンタム274M+で、マンバを遥か沖へと大遠投。着底後は深場のリグにシェイクの繊細なリズムを伝達。微かな変化にコンタクトした瞬間のイレギュラーな動きにバスを反応させるや、繊細なティップで食い込ませ強靭なバットで魚の上顎に太軸フックを完全に貫通させる。実に、実に見事な展開だ。しかし、ここで奥田さんの快進撃が終わるわけではなかった。
ヒットルアー
マンバ(シグナル)
●リグ:ネイルリグ
●フック:オフセットマスター ヘビーワイド♯5/0(バリバス)
●シンカー:ネイルシンカー2.5g
底知らずの奥田CPU瞬時の機転で一閃!
「風が下流側から吹いとる。減水し始めて流れがあるんやけど、その流れを止める強い風はマイナス要素。ここで粘って時合いを待つのもエエんやろうけど…」
奥田さんは敢えて移動を選んだ。そこは前日に下見していた「水が良くカレントが効いて良さそうな場所」だ。すると、着くなり大型の魚影を発見。身を屈め、マンバのボトコンでアプローチするも見切られ、即回収。次の一投で何と!
「ネイルシンカーを抜いて、水面直下をドッグウォークさせたら果敢にバイト! ボリュームのあるマンバの後ろに複雑な水流が起きると共にヒゲが微振動して、正体不明の未確認物体へとスイッチした瞬間に猛追してきた!」
実測51センチ! 一瞬の判断力、瞬時の切り替え。隙のない奥田さんの戦略が見事に奏功。毎度のことながら、その引き出しの奥深さには驚愕すら覚えたのだった。
2023NEW! アーマジョイントSFに続き『F』追加!音で誘うウェイクベイト
バンタムアーマジョイント190Fフラッシュブースト(シマノ)
この夏、満を持して発表された追加モデルが190F。SF同様にただ巻きからドッグウォークなど操作性は抜群で、ローテした際も違和感なし。「最大の差が音アリ。Btフォース同等のサウンドが魚を表層へ吸い上げてくれる」。レンジと音の差で使い方の幅が広がる。
ここでしか観れない「奥田学の夏休み」釣行!?
「気付いてはおったけど、この減水…。晴天無風な上に、これはかなりキツい状況やね」
朝イチ、まだ極限まで減水する前に1本を仕留めたものの、以降は沈黙が続く。折しも潮汐は満月の大潮。「夜のうちにエサを食っとるから、日中はキツいのかもしれんね」とも語る。朝イチの1本はおそらく夜の名残りという意味なのだろう。
「こんだけ水が減って、しかも流れが止まったら、魚の行動もリセットされるのは間違いない。増水ならエエ方向に状況は働くんやけどね…。ま、魚がいるのかどうか確認してみようか」
そう言って繰り出したのは、5インチクラスのストレートワーム。奥田さんが普段よく使うマグナムサイズではない。意外だった。
「オレらしくない?(笑)」
減水により水面に顔を見せた縦ストラクチャーの脇、目視できない水中のボトム、明らかに小型の魚が追うボイルなど、手当たり次第に狙うと即答えが出る。獲るたびに奥田さんに笑みがこぼれる。
奥田学の数釣り!9連発ラッシュ!!
「やっぱ釣れないより、釣れるって楽しいよね。大小問わなければ魚は確実にいる。どれもキレイな魚たち。こういうフィールドって本当に貴重だよね」
釣りに釣ったり合計10本。童心に戻って楽しんだ有意義な1日。そして豪雨予報を前に当釣行は終幕へ。次回ははたしてどこへ向かうのか、お楽しみに。
マンバ&マンバスリム他用
●ロッド:バンタム274M+(シマノ)
●リール:ステラC3000XG(シマノ)+夢屋ハンドルノブEVAパワーラウンド型(シマノ)
●ライン:ピットブルG5 1号(シマノ)+ビッグトラウトショックリーダーVSPフロロ16ポンド(バリバス)
アーマジョイント他用
●ロッド:バンタム1711MH+-SB/2(シマノ)
●リール:バンタムXG RIGHT(シマノ)+夢屋ウルトラストロングハンドル48ミリ(シマノ)
●ライン:アブソルートBBM25ポンド(バリバス)
ネコリグ用
●ロッド:バンタム264L/M(シマノ)
●リール:ヴァンキッシュC2500SXG(シマノ)
●ライン+リーダー:ピットブルG50.6号(シマノ)+ビッグトラウトショックリーダーVSPフロロ8ポンド(バリバス)
マンバ5グラムフリーリグ&ノーシンカー用
●ロッド:バンタム173MH-SB(シマノ)
●リール:バンタムXG RIGHT(シマノ)+夢屋ウルトラストロングハンドル48ミリ(シマノ)
●ライン:アブソルートAAA20ポンド(バリバス)
奥田学さんの記事はこちら!
当釣行での奥田さんの勇姿はムービーでも鑑賞できます!
奥田さんの当釣行『フリースタイル365days』第4回の模様は、今後のルアマガプライム及びルアマガYouTubeチャンネルで公開予定!
※本記事は”ルアーマガジン”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。