形状、アクション……どこまでも独創的なソフトベイトの正解。あまたに存在するワームには、そのすべてにストーリーがあると言ってもいい。開発者だけが知る事実、使って初めてわかった釣獲能力や発明的なメソッド。今こそ誰も知らなかった名作ワームに隠された裏話を明らかにする。
●文:ルアマガプラス編集部
この記事はルアマガ10月号から抜粋しています。
Profile
Issei 一誠
まだ世の中にないワームを作りたかった!
「僕の場合、最初にあったのが常吉ワームがあるんやね。ワームというのは単一素材で、水に入ったときに変形することで個々の存在感が決まる。その感覚に基づいて作った常吉ワームは“こうなるんじゃないかな?”と思って形にしたのですが、その予想通りにアクションしました。
そして想像を遥かに超える爆発的釣果をもたらしたわけです。 それは軽く僕の腕をカバーするほど釣れました。
だからこそ今僕はここにいるんです(笑)。
ワームだけでなく、ルアーに対する考え方は、カタチによって水がどう動くかを考えます。例えばうちわであおいだら、下敷きであおぐより効率よく風が当たるじゃないですか? ルアー作りもそうやって考えるんです」
スパテラ
- 長さ:7.8、10in
- 推奨フック:1/0(7.8in)、4/0(10in)
- カラー:12色(7.8in)、10色(10in)
根底にあった常吉ワームからの回答
「常吉ワームが最初にあって、それを進化させて行ったのがスパテラ。テールの形状が違う、一番太いところのバランスが違う、テールの付け根部分のバランスが違う…こういう部分はあらかじめ決めて作るんじゃなく、使ってみながら太さを変えてみたり大きさを変えてみたりしながらちょうどいいところになったら止めるんです」
村上さんのモノ作りはいつも芯に迫る方法。こんなものを作りたい! と考えたならまずは“こうなんじゃないか?”という疑問をカタチにして、狙い通りかを確かめる。もし理想通りでなければ修正&確認テスト。その繰り返しでブラッシュアップを重ねることで、最終的な完成系へと至る。村上さんがよく口にする“それをやったらこうなることは初めからわかっている”という言葉は、そんな村上さんが常に頭の中で様々なことを考えていることの証でもある。
ダニー
- 長さ:2.8in
- 推奨フック:#2〜1
- カラー:12色
制作工程にもこだわった多パーツワーム
「このワームについては実際にこんな生物は存在しないんですけれど、まるで実在するかのように作り上げたワームです。ザ.リコーから始まって、ハンハントレーラー、ボケワーム、ザリッタ、ビビビバグ、etc..と色んな多脚ワームを作ってきたわけですが、このルアーに関しては平面の金型で作ろうと思っていたので、平面金型で作った様に見えないような造形ルアーです」
実際のルアー開発では単純にルアーをデザインすればいいだけではない。それを狙った通りにカタチに変えるには、それがどのように製造されるのか? を知っていなくては不可能だ。その点において村上さんの豊富な経験値は並のルアー開発者とは比較にならないものがあるはず。もちろん、実現が困難なルアー開発にも携わってきているから、最終的な製品になった時のクオリティも大幅に変わってくるのだ。
キャラメルシャッド
- 長さ:3.5、4、5in
- 推奨フック:#1〜2/0(3,5in)、1/0〜4/0(4in)、6/0(5in)
- カラー:11色(3.5in)、10色(4in)、9色(5in)
小さいながらもパワーがあるテールを備えたシャッドテール
「このワームはシャッドテールの中でもテールが小さく見えるでしょう? でもこの大きさで引き抵抗は大きいんですよ。水の密度が空気の800倍とするなら、水中で動くことと空気中で動くことは同じにはならない。遠くまで投げて動かしてアクションするように作ったのが僕のシャッドテール。
結局何がしたかったかというと、よく飛ぶんでテールもよく動く。でもテールを細くするとアクションがボディに戻ってこない。でもアクションが伝わるようにすれば、ボディも揺れるでしょう? シャッドテールはロールの動きをすることが多いけれど、僕はクランクベイトにしたかった。
つまり横の動きが出るアクションですね。使ってもらえばわかると思うけれど、ジグヘッドにセットしてもそのジグヘッドごと揺れるくらいのパワーがあるシャッドテールになってるんです」
沈み蟲
- 長さ:1.8、2.2、2.6、3.2in
- 推奨ネイルシンカー:1/16oz(1.8in)、1/32oz(2.2、2.6in)、3/64oz(3.2in)
- 推奨フック:#2(1.8in)、#1〜1/0(2.2in)、2/0〜4/0(2.6in)、6/0(3.2in)
- カラー:14色(1.8in)、12色(2.2in)、13色(2.6in)、11色(3.2in)
塩入りマテリアルにおける村上理論
「このルアーは最初は中国の釣り堀用に開発し、イージースティックと呼んでいたんです。誰でもイージーに釣れるワームという意味ですね。 それを海の根魚を釣るために逆輸入し、根魚蟲として販売したのが最初でした。
それをバスに使う人が増えて…マテリアルを高比重にしたのが沈み蟲です。 高比重ワームに含まれる塩が水中で溶け出すのですが、たとえばワームがバスの右にあったとしたら、バスは右のほうが塩分濃度が高いと感じるわけです。
たとえばラトルの音なら、バスがそれを感知すると思いますが、そういうバスへの存在感の示し方が塩にもあるんです! それが口を使うきっかけとなるというのが私の塩入りワームに対する考え方です」
当たり前に存在するソルトインマテリアル。比重を増やしたいからといった安易な発想ではなく、塩がどのような影響をバスに及ぼしているのか? そんなことまで考えるのが村上さん。そして“釣れるという結果”がその考えの正しさを証明している。
村上理論が新しい発想のワームを生む
「頭の部分に加えてピラピラした部分を2つ繋げて魚が2匹くっついたようなルアーがサカナサカナ。でも実はサカナサカナという文字をデザインしたTシャツが作りたかったからあの名前にした(笑) サカナサカナという文字は水平の線と縦の線だけで構成されているでしょう? だからデザインに落とし込んだら面白いと思ったんですよ(笑)」
まさに村上さんならではの自由なモノの考え方が製品になったと言えるだろう。
この記事はルアマガ10月号から抜粋しています。
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