形状、アクション……どこまでも独創的なソフトベイトの正解。あまたに存在するワームには、そのすべてにストーリーがあると言ってもいい。開発者だけが知る事実、使って初めてわかった釣獲能力や発明的なメソッド。今こそ誰も知らなかった名作ワームに隠された裏話を明らかにする。
●文:ルアマガプラス編集部
この記事はルアマガ10月号から抜粋しています。
Profile
DEPS デプス
日本を代表するでかバスタックルメーカー
これほどまでに「でかバス」という言葉が真っ先に思い浮かぶメーカーは他にないだろう。97年に異端のスピナーベイト「Bカスタム」で産声を上げた琵琶湖発祥のルアーメーカーが、今日多くのアングラーの支持を受け、そのプロダクトが愛用されているのは、奥村さんの当初からブレないでかバスへの信念と、それが私たち誰もがもつでかバスへのロマンと合致しているからにほかならない。
でかバスへのロマンだけではない、実際に使って釣れる確かな釣獲能力の高さもデプスルアーが支持される大きな理由だ。
奥村さん自身が「特にワームは釣れないと意味ないんで」と言うように、デプスワームの破壊力は近年であればブルフラットやカバースキャットに代表されるように、数々のトレンドを自然発生的に生み出してきたし、多くのアングラーがデプスワームに助けられた経験をもっているのではないだろうか。
「ワームでもプラグでも、まだこの世にないものを作りたい。既存のものをより洗練させてブラッシュアップしてっていうよりは、まだ世にないもの。根底にはそういう思いがある」
キンクーエア
長さ:4.8、5.8、7.8、13in
カラー:8色
名前の由来はジャングルの○○○!?
「20代前半の一般アングラー時代に、もし自分がメーカーを立ち上げてルアーをプロデュースする時が来たらこんなワームが欲しいっていうのをイラストに描き留めてた。
ある日テレビで、どこかのジャングルで原住民が食糧にしている、どでかいヤスデが土の中から出てくる映像を見た。で、そのヤスデのことを原住民たちがキンクーと呼んでいる。これ、俺が思い描いているワームに似てるなと(笑)。それでキンクーという名前で発売した。
その後、中空になってる整形不良のワームがたまたま知り合いが買ったパッケージに入ってて、それがめちゃくちゃ釣れた。わざと中空にできないか業者に聞いたけど、できないと。挿し穴ならできるということで、2019年にキンクーエアとして生まれ変わったわけ」
サカマタシャッド
長さ:4、5、6、7、8in
カラー:33色
名作ソフトジャークベイトの原点は「シャチホコリグ」
「誕生の発端は一部の釣り人がやっていた『シャチホコリグ』。スティックベイトをわざとうわずりになるようにフックセットして、上方向のトリッキーなダートアクションを出すテクニックなんやけど、刺し方にすごくコツが必要だった。
ならばワームのボディにフィンをつけてみたらどうかと。これによって真っ直ぐフックセットしてもフィンのおかげでうわずるアクションが出せた。当初はノーシンカージャークベイトやキャロのトレーラーなんかを想定してたんやけど、テスト期間中はジグヘッドもやばそうだね、なんて話もしていた。
実際、発売後はミドストの具としてもド定番になったね。その後はネイルシンカーを入れてボトムジャークするようになって、ヘビーウエイトモデルも作った。それがカバースキャットに繋がっているとも言えるね」
カバースキャット
SPEC
長さ:2.5、3.5、4in
カラー:23色
琵琶湖のアングラーは誰も使わんやろうと思っていた
「八郎潟のうちのテスターから『リップラップ絡みのベジテーションで根がかりしないような高比重ノーシンカーが欲しい』っていうリクエストがあったのがはじまり。最終プロトはロケでもめちゃくちゃ釣れた。
ある時、クルクル回って糸がヨレるのが嫌で、トゥイッチしながら回収してたら、すごいテーブルターンをした。しかもその動きを中層でやっているとたくさんバスが湧いてきて。その時にヘビーカバーに特化したワームにするのはもったいないと思い、あえて固い素材にしなかった。
でも発売はしたけど大して売れず。その1年後くらいかな、琵琶湖の冨本(タケル)さんがそれまでサカマタのノーシンカーでボトムジャークしていたのを、試しにカバースキャットで同じことをしてみたら1投目からありえないバイトが連発して、お客さんにもボコボコに釣らせて。全く違う形でブレイクした稀有な存在やね」
ブルフラット
長さ:2、3、3.8、4.8、5.8in
カラー:28色
釣れる最大の理由は『テールの波動』
「釣れる1番の理由はテールの波動やろうなって思ってる。シルエットももちろんだけど。どのリグで使ってもよく釣れるんだけど、テスト段階ではブルフラットじゃなきゃダメ、っていうシチュエーションは正直、自分の中にはまだなかった。
ただ、直感的にこれは絶対やばいワームに仕上がったって思ってたんで、これといったプロモーションもしないまま発売になった。『今はプロモーションなしじゃ売れませんよ』って言われて、これはやってもうたなと(笑)。スタッフからも不評で。
で、発売と同時にブルフラットの威力が爆裂したのが、なんと夏の亀山ダムだった。50アップを1日で5、6本釣った人がいた。それを見聞きして琵琶湖の人たちも使い出した。だからブルフラットは関東からの『逆輸入』だったんだよね」
デスアダー
SPEC
長さ:3、4、5、6、8in
カラー:43色
当初のデプスはワームを作る気はなかった
「デプスの最初の製品はBカスタム。で、そのあとラバージグ、ロッドの順で作っていって…、はじめはワームを作る気はなかった。バスバブルも弾けて『ワームを作っても売れない』って周囲からは聞いていたし。
そんな時にワームを作っている業者からオファーをいただいた。その業者の方が『サンプルだけでもぜひ』って言うので、自分がいつか欲しいなと思っていたワームの形をイラストで描いて渡した。で、サンプルが来たら『全然ダメです!』って言って断ろうと思ってた(笑)。
でも、でき上がったものを見たら想像のはるか上を行ってて。受け取ったその足で1月の琵琶湖に行って、いきなり58cmと55cmが釣れた。あと、ノーシンカーをベイトタックルで扱えるから、おかっぱりアングラーにも支持されたよね」
この記事はルアマガ10月号から抜粋しています。
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