【祝H-1GPX年間優勝!】大津清彰のルーツとターニングポイント【バス釣り上達のヒントがそこに】

先日行われた新利根川戦をもって、2023年のH-1グランプリ(ハードルアーオンリーのトーナメント)のレギュラー戦が終了。年間優勝を果たしたのは、ティムコスタッフにして現艇王、そして野良ネズミの生みの親として知られる大津清彰さんだった。実力はもちろん、先進的なルアーや画期的なテクニックを惜しみ隠さず公表することからも常に注目度の高いバスアングラーだが、そのルーツはあまり知られていない。幾度も迎えたターニングポイントともに紹介しよう。

●文:ルアマガプラス編集部

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Profile

大津清彰(おおつ・きよあき)
国立東京水産大学(現・海洋大学)卒の理論派アングラー。ティムコでは製品開発を担当し、トラファルガーなど、数々の名作を輩出。TBCでは通算3勝、2022年は艇王チャンプの座に就くなど、試合での実力も折り紙付きだ。

自ら“釣れる理由”を考える求道者のターニングポイント

濃密な経験を与えてくれた「釣り好き家系」

大津「僕は、物心つく前から釣りをやっていましたね。父親に仕掛けを投げてもらって、自分でズルズル引いて、でっかい魚掛けて、巻けなくて、そうやって釣ったカワハギの記憶が鮮明に残っていたりもします。それが3歳くらいですね。2歳の時からおじいちゃんと一緒に江戸川放水路でハゼ釣りしていたので。生まれてからこれまで釣りしかしてないんです。ハハハ! 」

2歳から釣りをしていたという大津さんは、祖父、父と3代続いた釣り好き一家。幼少時からリールを使った釣りが多かったという。

理由はともかくとにかく釣り続けた中学時代

そんな英才教育を受けた大津さんだが、バスフィッシングの腕が上達したターニングポイントは、実に4度もあったという。まずは、初バスを釣った中学時代。

大津「当時は自転車で津久井湖に行って、何も考えずに沖に向かっていろんなルアーをぶん投げていたんですよ。もちろん、釣れないじゃないですか。あるとき、途方に暮れていたら、たまたま爆釣しているお兄さんが、『コレやってみなよ』と言ってワームを渡してくれたんです。それがスライダーのクラッピーグラブだったんですね。そのお兄さんにスプリットショットを教わって、その日じゅうにバスが釣れたんですよ」

これが大津さんに初バスをもたらした、スライダー・クラッピーグラブのスプリットショットリグ。当時は他の釣り方を考えることなく、この釣りをしばらく続けていた。

これが大津さんにとっての最初のターニングポイント。使うワームはクラッピーグラブからドゥードゥルクローラーやゲーリーグラブへと変わっていったが、しばらくはスプリットショットだけをやり続けたという。

河口湖のトーナメントで優勝も! 東京水産大学(海洋大学)時代

その後、国立東京水産大学(現在の海洋大学)へと進学。釣り研究同好会に入った大津さんは、エサ釣りもやりつつ、よりバスフィッシングへと傾倒。様々なルアーを使いこなすようになっていったという。大学時代はバストーナメント全盛だったので、彼もJBやNBCの試合にエントリー。2000年には河口湖の試合で、ビッグバドを使って優勝するという快挙も成し遂げた。

大津「この試合中にビッグバドのブレードが飛んでっちゃったんです。それでも釣れたんですよ。このルアーの本質はブレードじゃないかも…と思いつつ使ってましたね」

その後もキャスティークのギザードシャッドを使い、河口湖戦で優勝。このルアーも当時はまだそれほど一般的ではなかったスイムベイトタイプ。ビッグバドにせよ、ギザードシャッドにせよ、その他大勢とはひと味違う釣りで結果を残すことができた。

上が河口湖の大会で優勝を飾った時のウイニングルアー「ギザードシャッド(キャスティークルアー)」下が同じくキャスティークの「ベイビーバス」で、これも愛用していた。

大津「人に勝つためには、人とは違うことをやらないとダメだなということに気が付きましたね。そう考え始めたのが、第2のターニングポイントです」

大学を卒業した大津さんは、一度大手の鮮魚店に就職したのちに、現在も勤務する(株)ティムコへと転職。やがて、利根川を拠点とするTBCのトーナメントに参戦するようになった。そして、20代の後半に差し掛かった頃、大きなターニングポイントが訪れた。

サイトフィッシングが魚の理解を深めさせた

大津「魚のことをもっと理解していかないと、このままでは勝てないな…と思い始めたんです。そうして本気でやり始めたのが、サイトフィッシングでした。バスがどんなルアーにどんな反応をするか? どんな魚が反応して、どんな魚が反応しないのか? 天気によってどう変わるのか? やっぱり魚を見て勉強するのが一番なんですよ。そのイメージを膨らませていけば、霞ケ浦や利根川などの魚が見えないフィールドにもフィードバックしていけるはずだと思いました。こうしてサイトフィッシングを鍛えていったら、やっぱり、魚が釣れるようになったし、TBCの成績も出るようになりましたね」

ただし、急激に実力がアップしたわけではなく、10年くらいかけてじわじわと上がってきたらしい。これが3回目のターニングポイントとなった。

ライブスコープが新たな扉をあける…!?

大津「そして、4回目のターニングポイントが来ました。これはみなさんそうだと思うんですけど、3Dソナーが登場したんですよ。アメリカでいうとFFS、フォワード・フェイシング・ソナー。いわゆるライブスコープです」

今やトーナメントシーンを席巻している、前方のバスの動きが見て取れる魚探だ。それを駆使した「ライブサイト」や「ライブシューティング」は、今やバスプロの必須テクになりつつある。

大津「以前、佐々一真さんとオールスタークラシックのプラで同船したことがあったんです。それはまだ、ライブスコープが出る前でしたけど。彼は既に3Dソナーを使用していたんです。『これは時代が変わるな』とわかって、すぐに買いましたね。その時はガーミンのPS22という以前のモデルでしたが、ライブスコープが世に出たら、すぐに買って、今に至るという感じです」

視覚に頼るサイトフィッシングには限界がある。バスが見えない時期には機能しないからだ。たとえ見える時期でもレンジが深くなると、やはり見えない。でも、ライブスコープは違う。

大津「サイトフィッシングって、直線的なんですよね。1次元的というか、ライブスコープは3次元的というより、むしろ2次元的だと思っています。魚に対して、ルアーを落としていくのか? 上方向に上げるのか? という上下の動きで、バスってこんなにも反応が違うのかと、ライブスコープで気付きました。例えば冬って上方向に行くものに反応いい。誰もそんなこと思いもよらなかったと思うんですけどね。それを知って、今年の冬も普通に相模湖で1日10本とか釣ってましたからね。ライブスコープなしじゃありえないです。魚の理解力が圧倒的に深まった感じですね。このターニングポイントは、現在進行形ですね」


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