【B級ルアーにさせないために】スピナベにチャターブレードを取り付けてみた→アメリカでも大人気のルアーが誕生!大切なのは「伝え続けること」。

Zマンの「チャターベイト」が全米を席巻する以前から、ルアーデザイナーたちは知恵を絞り、工夫を凝らしながら多彩な「ブレードルアー」をフィールドに送り出してきた。当たりハズレも激しいけれど、10年後のスタンダードになりそうなアイデアが光るアイテムも登場している。もちろんそれは日本でも同様。個性派ブレード系ルアーを手掛けた日本のビルダーたちを紹介していこう。

●文:ルアマガプラス編集部

2024 新製品情報

この記事の詳細はルアーマガジン2023年11月号をチェック!

語り手

行友 光(ゆきとも・ひかる)
岡山でハンドメイドルアーメーカー『六度九分』を立ち上げ、リップレスのフラットサイド「マーマー」シリーズなどで注目を浴びる。2019年に『パスパズル』からリリースした「グラスピース」が米国でも話題に。

「作ったあと、伝え続けることが大事です」

スタンレーのミニシャフトという古いスピナーベイトを分解して、思いつきでチャターのブレードを取り付けてみた。それを湖に持って行って投げたらちゃんと泳いでくれて、しかもバスが食ってきた。それが「グラスピース」のいちばん最初の形でした。トレーラーのワームどころか、スカートさえついていなかったんですけどね。

完成したグラスピースを見ると、ブレーデッドジグの変種をねらって作ったように思われるかもしれませんが、まったくその意図はなかったんです。僕のルアー作りはいつもそうなんですが、まず先に「構造」のアイデアありきでスタートします。

今は琵琶湖のそばに住んでいるので、新しい「構造」を考えたら、すぐに出かけてテストをして可能性があるかどうか試します。これは行けそうだな、となったら、そこからテストを繰り返して完成度を高めていくやり方です。

岡山でハンドメイドルアーを始め、現在は琵琶湖のほとりに移住。フィールドでの答え合わせを繰り返す日々のなかで、競技志向とは異なる視点から新しいプロダクトを作り出している。

もともとバルサウッドからルアー作りをスタートしたこともあって、ワイヤーベイトの釣りに精通しているわけでもない。そのあたりはルアーを作りながら、同時に学んでいきました。そのときどきで作っているものによって、自分の釣りのスタイルもガラッと変わってしまうタイプです。

グラスピースを作るなかでもっとも影響を受けたことは、まず「スピード」ですね。場所の見切りなどが圧倒的に早くなりました。とにかくこのルアーで釣れるエリアを探していかないと話にならないので、どんどん移動を繰り返して釣っていくスタイルになっていきました。

琵琶湖の場合、基本的には2m以内のシャローの釣りですね。いちばん楽しいと思うのは晩秋の10~12月ごろ。シャローに留まっている個体数はけっして多くない時期ですが、ウイードとベイトフィッシュさえいればチャンスはあります。そして、寒くなればなるほど食ったらデカい。

標準的なブレーデッドジグやスピナーベイトと比較して、グラスピースを使う最大のメリットは、ウイード(≒GRASS)に強いことです。特に、エビモやフサモといった縦方向に伸びるタイプのウイードですね。

エッジをねらうならまだしも、密度の濃いウイードのど真ん中のなかをハードルアーで釣っていくのは難しい。そこを気持ちよく通せる、というのがいちばんの強みです。これも最初からねらっていたわけではなく、試作を繰り返すなかで気づいた長所でした。

異なるジャンルを掛け合わせたり、合体マシン的なアイデアで生まれるルアーというのは過去にもいろいろありました。ただ、結果的には残念なことになりがちというか、B級ルアー扱いされることが多い気がします。

それは単に性能の問題だけじゃないのでは?と僕は思うんです。作っている側にも「これは変わり種だから」という意識があるせいか、発表したあと、お客さんの反応が悪かったときに「やっぱり受け入れられなかったか」と諦めてしまう。そしてまた次の新製品が出て、古いものはどんどん消えていって…そういうことがすごく起きている。

そのルアーが理解されにくいものであったのなら、作ったあとに伝え続けることがとても大事。幸か不幸か、僕は多作なルアーデザイナーではないので、六度九分のころからひとつのものをどんどん深掘りしていくタイプでした。グラスピースの開発は、それがうまくハマってくれたケースです。

ひょんなことから木村建太さんの手に渡って、アメリカの試合で使ってくれたことから、今では向こうの選手たちのあいだでも認知度が広まっているそうです。

とはいえ、バスプロが作っているルアーとは違って、われわれのルアーには「競技」というシバリがないし、それが強みでもある。これからも「構造」ありきでルアーを作り続けていきたいと思ってます。

ラインナップ

グラスピース3/8oz(バスパズル)

重さ:3/8oz
カラー:4色

グラスピース1/2oz(バスパズル)

重さ:1/2oz
カラー:4色

グラスピースミニブレード1/2oz(バスパズル)

重さ:1/2oz
カラー:7色

グラスピース3/4oz(バスパズル)

重さ:3/8oz
カラー:4色

行友「ヘッドとブレードの接続部分、そしてスナップの2ヵ所が引っかかりの要因になるのが一般的なブレーデッドジグでした。グラスピースの場合、当たったウイードがラインアイから下側のアーム、そしてヘッドの腹側に流れていく構造なのでスタックしづらいんです」

厚さ0.2ミリの極薄ブレードを採用。1/2ozにはスピードアップさせやすい「ミニブレード」モデルがラインナップされている

トレーラー

「スピナーベイトとチャターベイトの交雑種」という表現からもわかるとおり、本来はワームをセットしなくても充分に魚の反応が得られるルアー。トレーラーを付けることで飛距離やボリュームアップ、レンジコントロールといった効果が加わる。行友「ボリュームがありすぎるものを付けるとブレードの動きを妨げやすいので、サカマタシャッド5inを推してます」

ノットキャップ(バスパズル)

ウイード攻略が得意なルアーとはいえ、浮遊する切れ端などがまとわりつくとアクションが阻害されがち。特にこれからの時期は弱ったウイードが切れやすくなるので「ノットキャップ(バスパズル)」をセットすると低減できる。

タックル

●ロッド:7ft・MHクラス
●リール:ギア比7:1前後のハイギア(ハイシーズン)、ギア比6:1前後のノーマル~ローギア(低水温期)
●ライン:フロロカーボン16lb


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