「僕の中では今回が最後。だから勝ちます」退路を断って挑んだ2023年の陸王U-30。多くの選手が苦戦を強いられた灼熱の霞ヶ浦で、堂々の5尾3920gを捕獲し、宣言通りに優勝をかっさらった植盛幹太選手。副賞としての実釣記事(ルアマガプライム連動)で、その釣力とスタイルを広くアピールする。
●文:ルアマガプラス編集部
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いつも通りその時の魚の状況に合わせて釣っていくだけですね
ホームの岡山で、目指せトリックメイク
「どんな釣りをしたいかですか?うーん、迷いますね。正直それが実現できるほどイージーゲームではないと思うんで」
自ら選んだ地元岡山県の河川(笹ケ瀬川、倉敷川)での取材だが、前日のプラではノーバイト・ノー感じだったという。
「ここ数年は勝つためにホーム以外で練習してきたので情報がないのと、岡山といっても以前ほどは簡単ではないので、やりたい釣りというよりは、いつも通りその時の魚の状況に合わせて釣っていくだけですね」
ファーストスポットは6年前のルアマガモバイル『勝手に特命釣行プラス』の取材で開始早々49cmをキャッチした笹ケ瀬川の水門へ。
しかし、当時と同じくダッジを泳がせるが反応はなし。
厳しい状況を象徴するかのように、その後も笹ケ瀬川を回るがバイトはなく、2号線の渋滞前に倉敷川に移動することに。
「好きな釣りとか得意な釣りも特に意識しないようにしています。そういうのがあると勝てないって思うので。あ、でもトップは好きかも(笑)」
植盛さんの発言で印象的な〝勝つ〟という言葉はもちろん、『陸王』を意味している。
「高校を卒業してレイド(ジャパン)のプロスタッフになって、どうなりたいかとか、できることとか色々考えたり迷ったりしてたんですけど、U-30に勝って、やるべきことがクリアになったんですよね」
陸王で勝つこと。それは目標ではなく、なすべきこと。そのために日々を過ごしている。
「だから今回は絶対に釣らないとダメなんです、けど(笑)」
厳しいが植盛さんに焦りはない。移動した倉敷川で昼まで釣り、午後は笹ケ瀬川へ。夕マズメは再び倉敷川に戻って巻きで勝負した結果、ナマズ1尾とその直前のバイトが1回のみでタイムアップとなったが、小走りになることもネガティブな発言もなく、ただただ淡々と竿を振り、ルアーを操っていた。
「何も感触がないまま1日が終わりました。状況的になんとなくこうかな?というのはあったんですが、それに対応ができなかったのがすべてですね」
勝ちに絶対はないのと同じく、釣りに絶対はない。だからこそその事実をどう繋げていくか。
「スケボーはトリックが決まっても楽しいのはその一瞬だけなんですよね。でも釣りって考えてプランを立てて準備してっていうその時間も楽しい。だから今日釣れなかったことが良いってことは全然ないんですけど、楽しんで明日の事を考えます」
人生の分岐点。スケボーかバス釣りか
最初バス釣りをやったのは、小学生の時のミニバスの先輩の影響でしたね。仲間のミニバス連中は全員バス釣ってました。
それで、お父さんが僕に影響されてバス釣りにハマり、まとめ買いしてきたビデオの中に金森さんの『岸道』があったんです。それが衝撃で、小中はずっとバス釣りをやってました。
そこから高校に入るってなって受験後に時間ができたんですけど、冬だったこともあってスケボーをやってみたんです。そしたらめっちゃハマって、パーク(舗装された専用施設)でバイトしたり業界にも関わったりして、こっち(スケボー)の世界で働くのもありかなって。それで高3の時は就職活動もせず、とにかくうまくなろうと。性格的にひとりだと伸びないので、大阪か東京に行って揉まれてみようかって思ってた時にお父さんの知り合いでもあるレイドのある方から誘われたんです。
言うまでもなくあのレイドだし、金森さんはずっと憧れで、スケボーしながらもDVDが出たら必ず見てたんで、ここはお世話になってみようかなと。正直、ヘンな話、スケボーのほうが業界のこともある程度は分かってたし、プロ資格を取ってスポンサードを受けて試合に出てって、将来の見通しも見えてたんですけど、なんででしょう? バス釣りの業界のことはほぼ分からず。でもその人の話がうまくて(笑)、そして一方で、金森さんっていうすごい背中を見せてくれる人がいる。ま、人生ベットしたくなったんですかね(笑)
勝った瞬間に、オレのいままでってこれに掛けてきたんだって
陸王に勝つこと。プロとして生きること
それからいままでやってきて、自分が目指すバスプロの理想はトーナメンターではない、となると自分を上げていくためには陸王に勝ちたいなと思うようになりました。ただU-30に勝つまでは、別のやり方もあるかなとか考えてた部分もあったんですけど、勝った瞬間に、オレのいままでってこれに掛けてきたんだって、これしかないって初めて思いました。というのも、いままで自分の力で掴み取った物ってなかったんです。
普通は頑張って努力してメーカーに売り込むのがやり方ですけど、僕はある意味別のルートだったんで。もちろんバス釣りは好きですけど、スケボーもあった。スタートの時点で熱量が違ったんですよね。それが初めて勝ちたいと思って、U-30で自分の技量や熱量が結果になった。いままで自分がどれだけ応援とか期待されてたとか分かったし、その気持ちを返せたことが嬉しかったんです。それで、あぁこれで生きていきたいなって。
この前陸王モバイルでゆいぴー(青木唯)と対戦して、その後一緒に飯食ったんですけど、そこでゆいぴーに、なんでそんなに河口湖で勝てるの? って聞いたんですよ。そしたら、「生活が懸かってるって、思いが違うんじゃないですか」と。それが言えるってプロですよね。後ろに下がれない状態を作ってそこで勝負する。単純にすごいし強いよなって。これが2年前なら『へ~』で終わってると思うんですけど(笑)、僕もいまは別に仕事をしてるんでその立ち位置までいけてない。でもそうなった時にトーナメントのような分かりやすい目的がないなって。だからこそ陸王で勝つことがモチベーションになりました。
スケボーとバス釣りのカルチャー
スケボーって個人競技で、水泳とか陸上みたいなチームでの種目がないのはバス釣りと同じなんですけど、パークにいる人は全員仲間みたいな感覚なんです。トリック(技)を決められる人が絶対的にうまい。でもだからその人が偉いってことはなくて、できなかった人ができるようになったらみんなで喜ぶし、年齢とか先輩後輩とか関係なく教え合ったりして、同じスケボーをやってるってことで、自然とお互いをリスペクトするカルチャーなんです。その意味では垣根がない。そんなノリでずっとやってて、バス釣りの世界に入ってみたら、なにコイツ?みたいな目で見られたりしたこともありました(苦笑)。
陸王は基本タイマン勝負なので、勝っても負けてもリスペクトしかない。トーナメントもそうだと思うんですけど、普通の釣り人って勝ち負けがないから、50アップを釣っても、その釣り方じゃ認めないとか場所が良いだけだとか、なんか嫉妬とかすごいなって。まぁでも、だから面白いし負けられないっていうモチベーションで続けられるのも分かるし、否定はしません。
ただ僕は、スケボーのみんなで上がっていくカルチャーが好きなので、その気持ちは忘れないでバス釣りも続けていきたいなとは思ってますね。
2日目朝イチ、一発メイク!!
50アップを獲るためにため池へ
「ひと晩考慮した結果、陸王の舞台にはならないので最近ガッツリやってはなかったんですが、川よりもお題は達成できそうかなと。なので岡山では誰もが知っているメジャー場、50アップが絶対にいる池にいきます」
言葉通り、訪れた減水中の大規模池では、開始前から数人の先行者がロッドを振っていた。
「ここは水が良いのでさっと流しちゃいます」
水温が下がりバスが広域に散り出すタイミングだからこそ、あえて水の悪い場所でパワー系のルアーにてでかバスを引っ張る作戦。もちろん劣悪な水ではなく、強い個体なら気にしない程度の悪さというのがキーだ。
「ん? バイトか!?」
そうつぶやいたのは、開始から1時間後のこと。
「あ、これはデカいな」
あくまで冷静に、気付き、いなし、バスの姿を確認してからもネットを取りに移動する落ち着いたテンションのまま、お題の1/2を達成する52cmをレベルバイブビッグで捕獲した。
やり続ければ追加もできそうな雰囲気はあったが、お題達成のため、ワームに適したフィールドに移動。50アップを超える見えバスには遭遇できたがトリッキーな動きに惑わされ、そのまま2日目もタイムアップとなった。
「結果お題はクリアできませんでしたが、秋のハードルアーのポテンシャルは見せられたかなと思います。この記事を読んでくれた皆さんに少しでも刺激をお届けできれば嬉しいです。では次は陸王本戦で会いましょう!」
HIT LURE
レベルバイブ B.I.G.(レイドジャパン)
TACKLE
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