バス釣りスキル爆上がり!? 文句を言うのは努力をしない人!? 木村建太の考えるライブスコープ論

ライブ系ソナー(Forward Facing Sonar)によってトーナメントの成績やバス釣り人生そのものが大きく変容した3人のトップアスリートにインタビュー。テクノロジーは彼らに何をもたらしたのか?

●文:ルアマガプラス編集部

2024 シーバス特集

Profile

木村建太(きむら・けんた)
1982年京都府出身。B.A.S.S.エリートプロ。2022年にジェームズリバーにてオープン戦初優勝を果たし、2023年はバスマスタークラシックに初出場。エリート年間ランキング23位で次のクラシックへの2年連続出場を決めた。

Future or Past? 見えるのはバスだけではない、「未来」なのだ。

キムケンは過去のスタイルを捨てたのか?

フロッグやパンチング、マグナムクランクなど木村建太のストロングスタイルに魅了されてきたファンにとっては、ライブスコープを活用してエリートシリーズを戦い抜いている現状をこんなふうに感じるかもしれない。

『キムケンがライブスコープ? 変わっちゃったね』

だがそれは偏見に過ぎない。そのときどきのテクノロジーを最大限に使いこなしつつ、ロジカルに釣りの精度を上げていくこと。それがキムケンの根底にある考え方だ。

木村「目に見えるものを、ほかのアングラーがやっていないアプローチで撃っていく。そのアドバンテージが絶大だったからこそ、僕はシャローのストロングゲームに重きをおいてきました。沖にもバスはいるけれど、たとえば一投でブラッシュパイルの頂点を射抜く、みたいな精度のアプローチができなかった」

それを一変させたのがライブスコープの登場だった。バスやルアーを画面上に映すことが取り沙汰されがちだが、それだけが本質ではないとキムケンは言う。

「このエリアはベイトフィッシュがたくさんいるなぁ、どこまで行ってもエサだらけ…と思っていたけれど、ライブスコープを当ててみたら実は『同じ群れが自分のボートの影に依存して何kmもついてきただけ』と判明したりする。魚たちのリアルな生態を知るうえでも、なくてはならないツールです」

木村「シャローカバーを撃つような精度で、目に見えない前方の地形や障害物にルアーを入れられるようになった。アメリカではこの手の魚探を『フォワード・フェイシング・ソナー』(前方を向いている魚探)と呼びますが、この名前が表すとおり、ボートの前方、すなわち未来が見えるようになったことが非常に大きな意味を持ちます」

「バスを見るためのツール」という発想をリセットしないと、フォワードフェイシングソナーを使いこなすまでには至らない、とキムケンは考えている。これまで不可能だった「未来」を見ること、すなわちボートが進んでいく前方の情報を得られることが画期的だったのだ。

「教えてくれ」とリックは言った。

アングラーがじっと魚探画面を見つめるだけの映像はつまらない―。そんな意見も、キムケンは一笑に付した。

木村「そこはメディアの仕事ですよね、僕らのせいじゃない(笑)。今年のバスマスタークラシックのライブ中継では、ソナーの画面をリアルタイムで観客も見られるように工夫していて、むちゃくちゃ興味深い内容になっていました」

エリートシリーズでは最近、ベテランプロの一部から「フォワードフェイシングソナーを制限すべき」という意見が上がっているという。

木村「本来なら、経験豊富なオッサンたちのほうが最新魚探の恩恵を受けられるはずなんです。その努力をしてこなかった人が文句を言っているだけ。現にリック・クランは『ライブスコープを覚えたい』と公言しているし、僕たちにもガンガン質問してきますからね。あれこそが現役で戦っているリアルレジェンドの姿だと思う」

規模が狭くプレッシャーの掛かりやすい日本では、ライブスコープによってさらにバスが枯渇してしまうのではないか? そんな危惧についてもあえて聞いてみた。

木村「それぐらいでいなくなる魚なら、とっくに滅んでますよ。バスに与えるダメージという意味では、吊るしやサイトのほうが酷い。釣られすぎて病んでるガリガリの個体でも、無理やり口を使わせてしまう手法じゃないですか。ライブスコープの真価はそういうことではない。僕はいま、バス釣りが過去最高に楽しいです」

ルアーに対するバスのリアクションが手に取るようにわかることで、「どんなアプローチでどう仕掛けるべきか」という経験値がこれまで以上のスピードで蓄積されていく。「だから釣りのスキルが根本的に爆上がりします。バスが見えないほうが面白い、と思ったことは一度もないですね」


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