2023年6月上旬、奥村和正は舞鶴沖でマグロを追っていた。バス釣り界では押しも押されもせぬレジェンドのひとりだが、オフショアの世界ではまだ初心者…と自認する奥村。しかし、見る側としては、ボクシングのチャンピオンが相撲の横綱に挑むような異種格闘技的ワクワク感がある。果たして…。
●文:望月俊典
奥村和正(おくむら・かずまさ)
琵琶湖を原体験に、ビッグバスのみを想定したルアーやタックルをプロデュースし続ける「デプス」総裁。しかしその実力派日本全国に留まらず本場アメリカのフリークも絶賛。以前より怪魚を含めたビッグフィッシュへの経験を深めつつ、オフショアゲームへも全力で取り組んでいる。
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過去に釣ったマグロは50kgクラス…日本海の大台マグロに挑戦!
奥村「マグロは1年前に新潟で50㎏くらいのは釣ったことがあるけど、自分の船で釣りをするのは今回が初めて。釣れてる情報はあったけど…」
京都府舞鶴市からのアプローチとなったが、マグロに詳しいガイドや船長はいない。海図を読み、ナブラ探しから全て自分でやりきるスタイルでの挑戦だ。
しかし、いざ舞鶴を出航し、はるか沖へと出てみても…ウワサに聞いていたようなナブラはなかった。ベイトフィッシュが映る場所でマグロが中層を泳いでいることを期待してペンシルベイトやポッパーで水面まで誘い出しをかけるが、何も起こることなく時間は過ぎていった。
奥村「どうやら前日に巻き網漁が入ったらしく、ナブラがまったくといっていいほど起こらなかった。昼過ぎくらいからようやくナブラがちらほら出てきたが、船の音で沈むような状態」
潮を被りながら夕方まで投げ切ったが、あきらめて帰り始めたところで、ナブラに遭遇。あきらめたのを忘れてペンシルをフルキャストすると…ドカン!と水面が割れた。巻きアワセを決めると一気にロッドが絞り込まれる…が、しかし、30秒足らずでバレてしまった。
奥村「チャンス到来やったんやけどね。なぜかフックアウトしてしまった。掛けたのにな」
一瞬のチャンスをモノにできず終了…翌日に全てを賭ける!
2日目、舞鶴のはるか沖合に出ると、この日は一転して朝からナブラが立っていた。
奥村「でも、簡単には釣らせてくれなかったね。ナブラにワンキャストした時点でもう届かないところまで移動してしまう。どの角度からアプローチするかが重要になってくるんだけど、そこはまだノウハウがないので試行錯誤しながらやっていた」
同行者が誘い出しで一発バイトさせたものの、なかなか食わせることができない時間が続く。他の船も嗅ぎつけて集まり、ナブラに突っ込んだりして…争奪戦の様相を呈してきたという。
【使用ルアー】HUGEペンシルナブラ撃ち(デプス)
ノーマルのHUGEペンシルに20g加重したナブラ撃ちスペシャル。とにかく瞬間的な遠投が求められるビッグゲームに特化した性能になっている。”バリアブルバランサーウェイト”がアクション時だけでなくポーズ時にもラトル音を発生させ、ディープを泳ぐターゲットにまでアピールする。
- 全長:225㎜
- 重量:4.6ozクラス
奥村「ちょっと他の船から離れようと思って、全然違う群れを探しに行った。でも、そろそろ帰らないとまずいね、っていう時間に偶然見つけたナブラがいい感じの距離でアプローチできた」
すると、HUGEペンシルナブラ撃ちが水面で突然爆発した。マグロのバイトだ! すかさずフッキング…というかものすごいスピードで相手が疾走していく。
奥村「正直、フッキングなんてせんでいいよね。目一杯締めているのに、俺のフッキングより強い力でドラグを出していった。未体験ゾーンですよ」
喰ったのはクロマグロ!しかも確実にデカい…!!
手前に向かって泳がせてしまうとラインテンションが抜けてしまうので、ロッドはあおらずに巻き続ける。しかし、5分くらい経った頃にはロッドも立てられない、止めることもできない本気の走りが始まってしまい…。相手はとんでもなくデカいのだ。
奥村「300m巻いたPEライン12号が全部なくなるんちゃうか…って思った。これはひとりでは無理やろ、って。原付バイクより絶対強い」
暴力的な引きで海に引きずり込まれる恐怖を感じ、締め込んだドラグを一瞬緩めたりもしたが、ラインを全部出されてしまいそうで、また締め込んだ。最初は船縁に立ってマグロの走りに耐えていたが、デッキに座り込むようにして体重を掛けて走りを止めたりもした。
奥村「あれ、ドラグを緩めてもただ時間だけが過ぎるだけ。マグロって自由に泳げているうちは一生疲れないから。逆に止まったら死ぬタイプの魚やからね。いかに早く酸欠状態に持っていくかなので、ラインは出さないでファイトした方がいい。それは今回学んだことなんやけどね」
1時間以上ファイトしただろうか、体力の消耗は限界を超え、身体を鍛え上げた奥村でさえもうロッドを立てる力すら残されていなかった。あと30m、10m…最後は気力を振り絞り、マグロを水面まで浮かせた。同行者がここでモリを打つ。成功した!…と思ったが、なぜかそれが抜けてしまう。もう一度水面まで浮かせて…。
奥村「やっと終わったと思ったのにもう一回…っていうのが辛かった。筋トレで10回って言われて10回やったら、直後に『あと3回』って言われた感じ」
船べりに寄せて…からが2度目の地獄だった!
そこから今度はボートに引き上げるのだが、ここからがまた死闘だった。
奥村「普段、スクワットとかデッドリフトで120〜130㎏は10発くらいは上げてたんで、マグロの100㎏オーバーくらいふたりで上がるやろ、って思ってた。でも一切上がらない。結局、いろいろ試して揚げるのに1時間かかったな」
ついにデッキに横たわったクロマグロ。重さはなんと130㎏もあった。究極のソルトターゲットを、さすがというか、いともまああっさりと釣ってしまったものだ…。
奥村「バス釣りだとロクマルを釣ったときとかって手が震えるやん。今回はわりと始めてすぐに釣れてしまったのでそれはなかったけども、100㎏オーバーのマグロは釣り人生で大きな意味がある。自分のなかに大きな勲章として刻み込まれるわけやん。それはデカい」
極度の疲労困憊になってまでキャッチした130㎏のマグロ。もう釣りたくない…とまではならないのだろうか?
奥村「さすがに130㎏釣ったから次は150㎏とは思えなかったな(笑)。マグロを追い求めている人って目標は200とか300㎏っていうけど、それは…。ただ、冬に近づいて脂が乗った頃はそんなに走れないみたいだから、その時期であれば200〜300㎏も射程圏内に入ってくるかもね」
筆者などはマグロ釣りの動画を観ているだけですっかり疲れ果ててしまったが…オフショアビッグゲームのもたらす究極の絶頂感は何物にも変え難いのかもしれない。
【使用ロッド】HUGE CUSTOM ツナ-733XXX(デプス)
100㎏以上の大型マグロ用に開発されたロッド。PE12号でも飛距離が出せて、ファイトの取り回しがよく、身体の負担が少ないという条件で、7ft3inという長さとテーパーを設定。グリップを含めて3ピースに分割できるのも特徴だ。
- 全長:7ft3in(3ピース)
- アクション:XXXヘビー、レギュラー
- 適合ライン:PE10~12号
- 適合ルアー:MAX250g
- 仕舞寸法:798㎜
- 自重:370g
死闘の様子はYouTubeで!
【本記事はルアーマガジンソルト最新号でさらに詳しく掲載!】
『ルアーマガジンソルト2024年2月号』(12/21発売)では、今回の記事の全文を掲載。特集はエギング、エキスパートのテクニックや最新タックル情報など満載!
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