新素材の開発。エリアゲームの進化。さらにはトラウトの習性の変化。エキスパートアングラーになるほど、さまざまな状況の変化に柔軟に対応するため【自らのライン戦術】も随時変化(進化)する。さらには、アングラーのスタイルによっても大きく異なる【ライン戦術】。アングラーとトラウトを繋ぐ最前線の道具にして、最重要な道具である【ライン】。そんなラインの考え方を、エリアゲームの最前線を突き進む7人のエキスパートに訊いた!
●文&写真:立川宏
ナイロンライン×松本幸雄
スーパートラウトエリア VA-GS[ナイロン]
■0.4号/2lb・オーバー/(実測値)2.38lb
■0.5号/2.5lb・オーバー/(実測値)2.91lb
■0.6号/3lb・オーバー/(実測値)3.48lb
水馴染みがいいナイロンライン
多くのエキスパートアングラーの要望に応えるカタチで、バリバス社が技術の粋を結集して開発した【スーパートラウトエリアVA-GS[ナイロン](以下VA-GS)】。従来のナイロンラインとの違いは【親水性】の高さ。つまり【水馴染みがいい】ナイロンライン。
水に馴染むということは、単純にラインが水中に入りやすい。「そのため従来のナイロンラインでは難しかった、エステル軌道に近い軌道を、ナイロンで引くことができます」と松本幸雄さん。
VA-GSはエステルに近い軌道をリトリーブできるが、ナイロンなのでエステルよりも伸縮性に富んでいる。さらにフロロカーボンほど比重が高くないため、軽いルアーを使用しても、ラインに引っ張られてしまうリスクが低い。
松本「ナイロンラインで水を噛ませた状態で、中層から下の深いレンジを狙いたい。自分はそのためにリクエストしたラインです」
VA-GSを使用するとき、松本さんはフォーナインマイスターホワイトウルフ62MLS、もしくは62LS(プロト)と組み合わせることが多い。
VA-GSはナイロンだが、軌道はエステルに近い。そのため水中でのラインの弛みは従来のナイロンよりも少ない。操作系ロッドと組み合わせることによって、小技を入れることができるし、掛けにいくことも可能。
松本「ナイロンなので、ある程度の高速にも対応できる上に、小さいアタリも取れる。しかも、同じルアーを使う場合、エステルよりもスローに巻くことができます。VA-GSの登場で、あきらかに釣りの幅が広がりました」
ナイロンライン×伊藤雄大
スーパートラウト エリアSVG[ナイロン]
■0.35号/2lb
■0.4号/2.5lb
■0.5号/3lb
■0.6号/3.5lb
■0.7号/4lb
ナイロンらしさを最大限に活用した戦略
卓越した理論とテクニックで、結果を残し続けている伊藤雄大さん。
そんな雄大さんの現在のメインラインはエステル。エステルラインを軸に据えて戦略を組み上げている雄大さんだが、【スーパートラウトエリアSVG[ナイロン](以下、SVGナイロン)】は、伊藤雄大戦略の中において、現在でも大切な一角を担っている。
伊藤「SVGナイロンは、ナイロンらしい特徴を磨き上げた高品質ラインです。浮力、伸縮性など、ナイロン本来の特徴を高次元で体感できます。だからこそ使い所があります」
雄大さんが主にSVGナイロンを使うシチュエーションは、フルサイズのクランンベイトを比較的高速域で巻くタイミング。
伊藤「いわゆるラインが張り詰めやすいシチュエーションです。ラインが張り詰めた状態においても、どこかに遊び(逃げ)を持たせるために使用するのがSVGナイロンです。SVGナイロンは浮力があるため、リトリーブ中でも水面に浮いている部分があります。テンションを掛けて巻いても、他のラインほどはルアーとラインが一直線になりにくいです。その自然な弛みが【逃げ=遊び】になり、適度なクッション性を維持してくれます。結果的に勢いがいいバイトが出たときにも、弾きにくく、ノセやすいです」
雄大さんがSVGナイロンで巻くことが多いクランクベイトは、パニクラ、クラピー、シケイダー、グラスホッパー、フラットクラピーMR。
伊藤「どのルアーも放流の残党狩りで使えるルアーです。そのため速く巻くことが多いルアーたちです。あくまでも自分流の使い方ですけど」
フロロカーボン×福田和範
スーパートラウト[VSPフロロカーボン]
■0.3号/1.5lb
■0.4号/2lb
■0.5号/2.5lb
絶妙なタイミングで入るわずかな【伸び率】
スプーンの釣りが大好きで、得意としている福田和範さん。
自らのこだわりにおいて、全戦略の大半をスプーンで戦うことを選択することが多い。そんな福田さんのメインラインは、一貫してフロロカーボンだ。
「スプーンをイメージ通りのレンジに通しやすいのが、フロロです」と福田さんは言う。
トラウトがルアーを見慣れてきて、いわゆる【シブイ】と表現される状況になったときに、プラグを選択するアングラーが増える中、福田さんは軽量スプーンをコントロールして、状況を打開するスタイルを好むことで知られている。
福田「1g以下の軽量スプーンを中層から下のレンジで引くには、やはり比重があるフロロが扱いやすいです」
福田さんのスプーンのスタイルは、1投中にロッド角度を自在に変えながら、スピードも無段階に調整する、いわゆる【福田巻き】。そんな複雑な演出中でも、イメージ通りのレンジを引くことができるのがフロロだという。
福田「多くあるフロロの中で、自分がVSPを選ぶ理由は、圧倒的な強度です。0.3号でも十分にどこでも戦えます」
福田さんのメインラインはVSPフロロ0.3号。放流やクランキングのときに0.4号を使用している。
福田「伸びのタイミングも大切です。VSPは伸びにくいフロロですが、それでもエステルやPEよりは伸びます。その伸びてくれるタイミングが絶妙です。アワセてからフッキングに至るときの、ココゾ! というタイミングで絶妙にわずかに一瞬だけ伸びてくれます。このバランス感覚は、他のフロロでは絶対に体感不可能です」
エステルライン×キャンタ
スーパートラウト[スーパーエステル]
■0.25号/1.3lb
■0.3号/1.4lb
■0.4号/2.1lb
■0.5号/2.3lb
変化したトラウトに必須なライン!
わずかな違いを確実な釣果の違いへと繋げる【緻密にして繊細】、その上で王道を貫いている【釣りスタイル】で知られているキャンタ。そんなキャンタの現在の釣りは、ほぼエステルラインで成立している。しかもキャンタが信頼を寄せているエステルラインは【スーパートラウト[スーパーエステル]】に限定されている。
キャンタ「自分がエステルラインに求める絶対的な要素は【感度】です。しなやかさも確かに大切ですが、しなやかさを求めると、必然的に多少なりとも感度が犠牲になります。スーパーエステルの感度は、自分の感覚では、現代のエステルの頂点だと確信しています。しかも高い感度の割には、スーパースエテルはしなやかで、扱いやすいです」
キャンタがここまで感度を追求するのには理由がある。
キャンタ「今のトラウトは反転しない魚が多いです。必然的にアングラーがフックを残しに行く必要があります。アングラー側から仕掛けて、掛けに行くタイプの釣りです。そのためには、ラインの感度と硬さは非常に大切。ラインが硬いと弾く、という問題があるかと思いますが、自分は、そこは、ロッドで調整しています。今の変化したトラウトを相手にする場合、スーパーエステルでないとできないことが結構あります。操作系の釣りにおいて、スーパーエステルを超えるラインは存在しないと、確信しています」
エステルライン×佐野亘彬
スーパートラウトエリア ES2エステル
■0.25号/1.42lb
■0.3号/1.75lb
■0.4号/2.3lb
放流ステージと大型クランキング
現代のエリアトラウトは、かつてのようにしっかりと反転して、グイッ~と持って行く、トラウトが減少している。そのため、以前は放流ステージでナイロンを使用するエキスパートが多かったが、現代は事情が少し変わってきているという。
佐野「自分の場合、今は、放流ステージの6割がスーパートラウトエリアES2エステル(以下、エスツー)です。そして残りの4割がナイロンです」
エスツーはエステルラインにしては、しなやかで扱いやすく、通常のエステルと比較すると多少伸びるように開発された特殊なライン。
佐野「放流ステージにおいて、ナイロンが良いか? エスツーが良いか? は釣り場によって変わるので、両方試しています」
一般的にトラウトのサイズが大きい場合は、重みが乗るのでナイロンの方が安心できる。一方、小型が多い場合は、エスツーの方が掛かりやすい。佐野亘彬さん(通称/ノブさん)の場合、放流ステージで使用するラインは、エスツーの場合が0.4号。ナイロンの場合は3lbがメイン。
エスツーで放流を獲る場合、ノブさんはナイロンリーダー(スーパーティペット マスタースペックⅡ 3.3lb)と組み合わせている。ロッドはフォーナンイマイスターイエローウルフ62ML。
佐野「ナイロンリーダーの伸びと、エスツーを組み合わせると、センシティブ化した、現代のトラウトの放流にちょうどいい感覚になります」
ちなみにノブさんは、全く同じセッティングで、クラピーやパニクラなどのフルサイズクランクベイトの釣りもこなしている。
PEライン×早乙女智啓
スーパートラウトエリア インフィニティPE X8
■0.2号/5.6lb
■0.3号/7.5lb
エリア最強の強度を誇るPEライン
早乙女智啓さん(通称/早ちゃん)が、数多あるPEラインの中で、スーパートラウトエリア インフィニティPE X8(以下、インフィニティ)を愛用している一番の理由は【強度】にある。
早乙女「インフィニティは強くて、しなやかなPEラインです。強いので安心して細い番手のラインを使用できます」
ちなみに早ちゃんがインフィニティを使用するときには、0.2号しか使わない。
早乙女「0.2号で十分です。エリアゲームでインフィニティの0.2号が切られることはまずありません。今まで0.2号で不安を感じたことは一度もありません。0.2号なので細くて飛距離も圧倒的。インフィニティが飛ぶ理由は、細い番手を使える以外にも、しなやかさも深く関係しています」
リーダーはフロロ0.8号を愛用。かつてはリーダーを0.6号にしていたが、リーダーを細くする意味はないという。
早乙女「そもそもリーダーを細くしないと食わないような釣りは、インフィニティでは行いません」
早ちゃんがインフィニティで行う釣りは【ボトム】【トップウォーター】【ダート系イロモノミノーイング】。いずれも、ルアーパワーを駆使した操作系ゲーム。そもそもリーダーを細くする必要がない。
早乙女「リーダーの長さは、ヒトヒロ半くらいです。キャストのときにリーダーの結び目がスプールに入らないように気を付けています。結び目がスプールに入ってしまうと、無用なトラブルの要因になってしまいますから」
ちなみに、このときのロッドはフォーナインマイスターグレイウルフ63ML-eを組み合わせることが多い。
ショックリーダー×矢島俊介
スーパートラウト エリアショックリーダー VSPフロロカーボン
細くても強いVSPリーダー!
エリアゲームに没入して、短期間で頭角を現した矢島俊介さん(通称・ヤジーさん)のリーダー理論はシステマティックで、繊細を極めている。
ヤジーさん流のすべての【リーダー理論】を紹介することは不可能なので、ここでは基本のみを紹介。
ヤジーさんが愛用しているリーダーは『スーパートラウトエリアショックリーダーVSPフロロカーボン(以下、VSPリーダー)』 細いリーダー派のヤジーさんにとって、リーダーの強度は死活問題。強度を追求した結果、VSPリーダーに辿り着いた。そんなヤジーさんが組むリーダーシステムの大半が0.6号と0.5号。
矢島「0.8号のリーダーを使用することも希にありますが、全体の0.5パーセントくらいです。具体的には真冬の東山湖にボトム専用タックルを持ち込むときです。このときのメインラインはPE0.2号。PEラインの場合の、自分のメインリーダーは0.6号です。VSPリーダーは強いので、0.6号が切れることはほぼありません。それくらい信頼がおけるリーダーです。PEセッティングの場合、自分はリーダーの長さを約2ヒロ取っています。リーダー部分を沈めてボトムにルアーをベッタリと這わせて使いたいからです」
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