わずか1g…試作ルアーが完成する瞬間!【ソルティガ ジャイブチョッパー】

「カズさん」の愛称でオフショア猛者やスロージギング愛好家からも親しまれる清水一成さん! その清水さんがゼロスタートで作り上げたメタルジグがリリースを控える。その最終テストは試作品にOK出すだけ…ではなかった! モノ作りの苦悩と喜びが交錯する船上ガチンコレポートをどうぞ。

●文:ルアマガプラス編集部

2024 シーバス特集

清水一成さんプロフィール

清水一成(しみず・かずなり)

親の代からの釣り具屋稼業で反抗期?としてルアーを追求。伊勢湾で培ったスキルを日本のみならず世界で磨きをかけるエキスパートだ。愛知県蒲郡市「ポイント釣具」を営みながら伊勢湾ジギング船「39」を駆る。DAIWAフィールドテスター。

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鹿児島県県南沖…期限直前のテスト釣行!

開聞岳を望む沖合でテストを開始

清水一成さんにとって初となる、ソルティガブランドでのメタルジグ製作。ソルティガでは、リールやロッドの成型にも関わってきた清水さん。あくまで釣り人目線で、今までもグリップひとつ、リールシートひとつに関して手削りで製品版を完成までこぎ着けてきた経緯がある。今回のジグたちは(2モデル同時開発!)、コンセプトから関わってきた生粋の清水プロジェクト。そのひとつが、今回最終テストを迎えた『ジャイブチョッパー』だ。

清水「ソルティガでも、FKジグやTGベイト、SLジグSD…と最前線で釣るための役者は揃っています。でも、深いところや2枚潮といった状況を攻めきりたいとき『もっとこうだったら…』という理想が出てきた。今のソルティガ1軍ジグはそのままに、2番手かもしれないが絶対にボックスに入れないといけないジグ…そんなアイテムを目指しました」

そのひとつが、ジャイブチョッパーだ。

清水「潮が悪かったり気持ちよく深場を引けないとき、『抜け感』良く、ラインスラックが出ずにジグをしっかり操れる…そんなジグを目指しました」
鹿児島県・開聞岳を目前に、そのジャイブチョッパー・最終テストが始まった。

最終テスト前半戦…直感で削った「1g」が合格を引き寄せた!

清水「上げで喰った」。ジャイブチョッパー150gに反応したワラサ。フロントフックがガッチリ掛かっていた。

まずジャイブチョッパーの全ウエイト・ラインナップに対して用意された試作品をチェック。最終チェックは、ざっくりと前半戦と後半戦に分かれているようだ。前半戦はというと…。

清水「まずは、150g、180g、200g、250gの最終プロトを軽い順でチェックしていきますね。これらは今までのテストで理想型が見えている。チェックしてみて、そのままでOKなのか、気になる点があったら容赦なく手を入れていかないといけない」

サカナを掛けつつ、ひとしきりテスト釣行を進めると清水さんはいきなりジグに紙ヤスリで削り始めた。

気になるポイントを目視し、脳内に描いた理想型へ近づけるため紙ヤスリを当てる。

清水「高速リトリーブで少しだけ回転してしまう…。紙ヤスリでエッジが立っている箇所を落としてみます」

ジグを落としてシャクってみる…すると、破顔一笑! 回転が抑えられただけでなく、シャクったときの「抜け感」も向上したようだ。ほかのプロト品にも同じ感覚で削ってみて、調子をみると同様の使用感が出た。合格だ!

清水「アタマの中で描いた図面に対して、同じように何度も削ることができて、結果として同じように動いてくれることが重要。…削ったのは、わずか1g程度」

残る180g、200g、250gといったモデルも、同様のチューニングで太鼓判を出せた清水さん。テスト前半戦は大成功で折り返した!

高難易度なテスト「後半戦」。3タイプのどれが正解だ!?

軽い番手も含めて、ジャイブチョッパーのプロト品は全て無塗装。どれにも重さとタイプが記されている。

ジャイブチョッパー・最終テスト後半戦は、300g、350g、400gの3モデルのチェック。それぞれのウエイトに、下記のA〜Cの3モデルの試作品が用意された。

  • Aタイプ…スタンダード
  • Bタイプ…長め(最長)
  • Cタイプ…やや長め

ジャイブチョッパーとしての「正解」シェイプを、長短で差をつけた3タイプ。単なる「等倍の形」のプロト品だけ試す…そんな甘い現場ではなかった。理想の使用感はスタンダードの想定から外れたものに宿るかもしれない…という考えから試作にバリエーションを持たせた。結論から言うと、それは間違っていなかった。

ちなみに、同時進行で進行しているソルティガ清水ジグのもうひとつは「スイムチョッパー」。スイミング主体のロングジグだ。一方今回のジャイブチョッパーは、オーソドックスなショートジグ。長め設定のジャイブチョッパープロトは趣旨が違ってきてしまうのでは…という考えが清水の脳裏をよぎった。

清水「ジャイブチョッパーに関しては、短く収めないと…という使命感はありますね。でも、今ちょっと潮が悪いんですがそこでどれが気持ちよく引けるかとか、深場に落としてしっかりどのタイプが『抜け感』良いかを最優先に考える。それは、使ってくれる釣り人にとって、身体負荷が低く、かつ釣れるモノにつながります」

3ウエイトに対して3タイプの試作品。それを清水は自分の感性と経験に基づいてテストし、前半戦と同じように気になった部分があると削り込んでいった。

理想型にたどり着く! 製品版にGOサイン

テスト中は、こんなダブルヒットも飛び出した! 清水「ジャイブチョッパーはオールマイティ。アカムツとか根魚、カンパチ、ブリといった青物、そしてマグロにも効くんです」

清水「どのウエイトも、最長となるBタイプが良かった。さらにワンポイントのエッジを削ったところ、かなり手応えがあって。僕だけじゃなく同行していたDAIWAソルティガ担当者たちも、その辺を実感してもらえたので完全に仕上がったかなと! アングラーの身体負荷を軽減し、サカナも口を使ってくれるジグになりました。みなさん是非、楽しみにしてくださいね!」

船を下りるや否や、DAIWA社から同行したスタッフ陣は合格品を工場へと送る手はずに追われた。ソルティガならではの精度で仕上がったジャイブチョッパー製品版は、2024年春、店頭に並ぶ。長期に渡る過酷なテストを経たこの逸品を、是非手に取ってみて確かめて欲しい。


※本記事は”ルアーマガジンソルト”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。