「いなせだね 夏を連れてきた女〜」とはラッツ&スターの名曲『め組のひと』の歌詞だ。そんな良い曲を聞くたびに「いなせって何だ?」と思ったことがある方も多いのではないだろうか。「いなせ」や「とどのつまり」という慣用表現は、とある出世魚が語源となっている。しかも、かなり身近な存在の魚は、釣り人なら大抵は見たことがあるはず。はたしてその出世魚とは…?
●文:ルアマガプラス編集部
「オボコ→スバシリ→イナ→ボラ→トド」大きさで呼び名が変わる出世魚
一般的にボラと呼ばれる魚は、成長段階によって呼び名が変わる。細かな呼び名は地方によって違いがあるようだが、関東ではボラの稚魚をオボコと呼び、成長に合わせてスバシリ、イナ、ボラとなり、最終的に50cm以上の大きさになるとトドと呼ぶようになる。
釣りをする人にとっては非常に馴染み深い魚で、港湾部や河川の下流部、汽水域などで群れとなって泳ぐ姿を見かけることが多い。また、突如水面からピョーンと飛び出す姿を見ることができ、そのユーモラスな姿に思わず癒やされる。
「いなせ」は漢字で書くと「鯔背」
粋で通な人に対して「いなせだね」と言うことがある。この「いなせ」という言葉は、漢字で書くと「鯔背」となる。これは、ボラの背が、粋な江戸の町人の髷(まげ)とボラ(イナ)の背がよく似ていたことから鯔背と呼ばれ、転じて気風のいい粋な人を「いなせ」と呼ぶようになったと言う。
また、もうこれ以上はないということの意味で使われる「とどのつまり」は、出世魚のボラの最終的な呼び名のトドに由来している。
ボラは、水辺に行くと姿を見ることが機会が多く、個体も多い。身近な魚であることから、文化に影響を与えやすい存在だったのかもしれない。
シーバス(スズキ)フィッシングにおいて、主食としてイナッコを追いかけ回す時期もあるため「イナッコパターン」と呼ばれることもある。釣りの戦略を立てる上でこのイナッコの動向を逐一チェックするため「親の顔よりみたイナッコ」と表現する釣り人もいるほどだ。
水辺に行く機会があれば、ぜひ水面を観察してみてほしい。群れで泳ぐの姿を見つけられるはずだ。
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