プロはなぜ人よりブラックバスを釣るのか?ヒントはその思考方法にあった…!

先日行われたバスマスタークラシックにおいても素晴らしい成績を収めた伊藤巧さん。世界を又にかける日本人最強クラスのアングラーともなればさぞ特殊な考えを持っているのかと思いきや、実際は伊藤さんの人柄らしい、明朗で素直なものだった。バスやベイトを追いかけ、ルアーの強弱を意識したシンプルなルアーローテーションでバスへとたどり着く。伊藤さんが『パズル』と称するそのスタイルを読み解くべし!

●文:ルアマガプラス編集部

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【Profile】

伊藤巧(いとう・たくみ)

TBCでの活躍からはじまり、陸王・艇王を獲得。今ではバス釣りの本場・アメリカで行われるB.A.S.S.バスマスター エリートシリーズに参戦する、日本人最強クラスのトーナメンター。

その日の最初の「1尾目」を釣るために大切なこと

【その1】バスのサイズによる捕食傾向の違いに注意

伊藤「数を釣るとなったら、狙いとなるバスの性質をまずは知っておいたほうがいいですね。そもそも、でかバスとそうでない魚は、動きの傾向に違いが見られます。デカいやつは効率的に捕食を行いたいので、産卵期のベイトなどの栄養価の高い大きいエサを、1番いい場所で食べるんです。しかも1日中食べるのではなく、マズメ時などのタイミング限定で。それに対して普通の魚たちは、そんな贅沢ができません。小さくてもたくさんいるベイトを、常に捕食し続けることで、栄養を取り続けるしかないんです」

伊藤「霞ヶ浦水系にある牛堀という消波ブロックのあるポイントで、エビやゴリがっぱいいる消波ブロックの中を1日中狙うと、サイズは伸びないけど数は釣れると思います。一方、マズメ時に消波ブロックの外側をシャッドやミノーで通せば、ワカサギ食いのデカイ魚が釣れる可能性が出てくる。魚のサイズによる捕食傾向の違いが、釣果に影響を及ぼすんですよ」

でかバス:1番いい場所で栄養価の高い大きい餌を食べる→タイミングはマズメ時など限定的

普通のバス:小さくてどこにでもたくさんいるベイトを食べる→常に食べ続けている

でかバスは小さいルアーで釣れないのか?

伊藤「必ずしも大きなルアーじゃないと釣れないというわけでもありません。これは青木(大介)さんが言っていたのですが、でかバスが小さいルアーに対してとる反応は威嚇だったり、邪魔者をどかそうとする行動に起因するんじゃないか? ということでした。理由はどうあれ、自分も艇王で釣ったロクマルはスモラバで釣りましたから、小さいルアーででかい魚が釣れないということはありませんが、ちょっと難しい釣りになってくるのかなとは思いますね」

【その2】ベイトフィッシュを含む『生命感』が何よりも重要!?

伊藤「今日本でバスを釣るとなると、何よりも重要なのは『生命感』。8割? ほぼ10割近いですね。そのくらい釣りをする場所の生命感は重要です。中でもベイトフィッシュの存在はものすごく大切になってきます。バスは生きていくために食べないわけにはいきません。シーズナルパターンさえも、実質的にはベイトフィッシュの動きを追うことを意味していたりもするくらいです。なので、ベイトが目視できれば状況としてはすごく良いですね。近くにそれを狙っているバスがいるかもしれません」

バスと同じくゲームフィッシングのターゲットとして人気のヘラブナは植物プランクトンを好む。その生態をたどれば、バスの行動を予測することも可能なのだ。

伊藤「それからベイトフィッシュにならないような魚。例えばヘラブナの群れがいたりするのも悪くないです。ヘラブナは植物プランクトンを食べますから、そこには植物プランクトンを食べるほかの動物プランクトンやそれらを食べる小魚が集まってくる可能性も高い。逆に言えば、あらゆる生物の生命感がない場所は望み薄と言えると思います」。

  • ベイトが目視できる場所は有望
  • 生命感の無い場所は避ける

【その3】良い時間に『スロー』はダメ!

伊藤「1日の釣りの中で訪れる最初の良い時間である『朝マヅメ』は広く探れてバスを寄せてこられるルアーから始めるべきです。朝は時間が限られているわけですから、非効率的な釣りをやっている余裕は無いんです。別に釣れなくたってかまいません。それは例えば、『朝マヅメのローライト時にクランクベイトでは反応を得られなかった』という需要な情報になるからです」

釣れないときの思考方法

【ノーフィッシュ脱出法】釣れないときのローテーションはパズルのピース集め

伊藤「ルアーのローテーションは、『なにかの変化』に応じて行っていけるのがベストです。例えば、風が吹いたからスピナーベイトに、ピタリと止んだからトップウォーターに、日が高くなって濃いシェードができたからカバー撃ちに……という形ですね。それで釣れれば次のステップに進めますし、釣れなかったらそれぞれの変化とルアーの関係が『その日は釣れない組み合わせ』だという情報になります。こうして言わば『パズルのピース』を集めていって、バスにたどりつくことを目指すんです」

釣れたときにあと1本を釣る極意

釣れたバスに見る状況判断

伊藤「最近バス釣りが難しくなってきているので、1尾でも釣れたらそれはすごく重要な情報になります。例えばバスの色。黄色っぽくてブリブリしているのなら、回遊しているバスで、同じ釣りで連発するかもしれない。背中が日に焼けて黒っぽいバスであれば、あまり移動していない魚の可能性が高いです。釣れた場所やルアーをもとに色々と考えてみてください」

【例】カバーで釣れたバスが黒っぽくてゲッソリしている

  • カバーにずっといるのにエサを食べられていない
  • そのカバーの条件はバスにとってあまり良くない

釣れたルアーをベースに強弱でローテーションしてみる

伊藤「釣れたルアーをそのままやるのもいいのですが、自分がよくやるのは釣れたルアーよりも少し強いルアーにローテーションすること。魚がついてこられる範囲でルアーを強くすれば、より広範囲からより効率的にバスを引っ張れるかもしれない。つまり簡単に釣れるかもしれないんです。もちろん弱くしてみるローテーションもアリですが、限度はあります。目安としては、食べているであろうベイトフィッシュからかけ離れたアプローチになるのはやりすぎかなぁ……」

ワカサギ食いのバスに対して……


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