処理費が約8000万円だった「淀川のクジラ」、今は名古屋に…世間の関心を集めた淀ちゃんの現在。

「淀ちゃん」と呼ばれ世間の関心を集めた、淀川の河口に迷い込んだクジラの処理費について新たに話題になっているので記憶に新しい人も多いはずだ。死体は紀伊水道沖に沈められたが、実は処理されるまえに淀ちゃんから採取された歯や胃の内容物が展示されている。これを機会に海ついて関心をもってみてはいかがだろうか。

●文:ルアマガプラス編集部

2024 イカメタル特集

海―生命のみなもと―

海は、水惑星地球の象徴であり、地球上のあらゆる生命のみなもとです。海は、地球表層の物質とエネルギーの循環を駆動し、そこに成り立つ生態系を育んできました。また、私たち人類は、海のめぐみを享受すると同時に、海の厳しさを乗り越えることで繁栄してきました。そして現代では、人間活動に伴う環境への影響が、海でも様々な変化として顕在化しています。

私たちの身近にある「海」の誕生から現在を多様な生物の紹介とともに解き明かし、さらには海との未来を考えていく特別展を開催します。海で生まれ、進化し、海のめぐみとともに生きてきた生物の姿を知ることで、私たちが今後どのように海と関わっていけばいいのか、そのヒントも見つかるかもしれません。

海展・4つのポイント

*どうして地球には水があるの? 海の誕生と生命の起源に迫る。

*日本の海は世界の海の縮図?! 多様な生物を育む日本の海を解き明かす!

*旧石器時代から海洋開発の最前線まで―― 人類は、いかにして海からめぐみを得てきたのか。

*人類が海に与えている影響とは? 海の今と向き合い、海の未来を考える。

第1章 海と生命のはじまり

そもそも、地球になぜ海が存在するのかを理解するためには、地球における水の起源を解明しなくてはなりません。地球の水の起源物質は、小惑星「リュウグウ」から得られた試料の分析から多くの新知見が得られつつあります。

本章では、始原的隕石から太陽系惑星に至る水の起源、地球史における海の誕生と進化、そこで育まれた現在の私たちにつながる初期生命の生態系について最新の研究成果と標本を使って紹介します。

生命起源の場、約40億年前の深海熱水活動域をジオラマで再現!(東京展の様子)

第2章 海と生き物のつながり

そもそも、地球になぜ海が存在するのかを理解するためには、地球における水の起源を解明しなくてはなりません。地球の水の起源物質は、小惑星「リュウグウ」から得られた試料の分析から多くの新知見が得られつつあります。

本章では、始原的隕石から太陽系惑星に至る水の起源、地球史における海の誕生と進化、そこで育まれた現在の私たちにつながる初期生命の生態系について最新の研究成果と標本を使って紹介します。

日本列島周辺の海は、現在の地球の海を特徴づける要素が、ほぼ全て揃っていると言われています。プレートの沈み込みに伴う海溝沿いの超深海から非常に活動的な火山列島などの沿岸域まで、多様な地形で構成されているためです。そして、そこを流れる世界最大規模の海流である黒潮は、単に海水の移動にとどまらず、エネルギーを輸送し、日本周辺の気候に影響を与え、陸上を含めた多様な生物を育んでいます。

本章では、日本列島周辺の海底を形作るプレート運動や火山活動などの活動的な地学現象、黒潮を含む海流が生み出す大規模な海洋循環を解説し、それらが生物の分布や多様性にどれほど影響し、大きな広がりが生まれているのかを紹介します。

高さ約4.7m!ナガスクジラの上半身標本が会場に出現。クジラの“潜る・浮かぶ”の垂直運動「ホエールポンプ」が海にもたらす効果とは?(東京展の様子)

TOPIC “迷いクジラ”の歯からわかること

2023年1月、大阪湾の淀川河口付近にマッコウクジラ(オス、体長1469cm)が迷い込み、死亡後、海に沈められた一連の出来事は世間の大きな関心を集めました。国立科学博物館を含む調査チームは学術調査を実施し、このマッコウクジラから歯や胃内容物、寄生虫などの標本や研究資料を採取しました。本展では、この個体の歯と胃内容物を展示します。歯を含む標本や研究資料から得られた研究成果により彼らの「今」を紹介します。

調査のため船に下ろされたマッコウクジラ(写真:国立科学博物館)

第3章 海からのめぐみ

人類史における海とヒトの関わりは食料や貝殻を装飾品などとして利用することから始まりました。やがて外洋航海技術を発展させると、海を渡って新たな大陸や島嶼への移住を実現させました。特に島嶼では、多様かつ豊富な海産資源を利用する文化が生み出され、ヒトは海とより深く関わるようになりました。

現代では、海からのめぐみはさらに大きなものになっています。海運物流なしにはもはや人類の生活は成り立たちません。さらに人類は、北極海の活用や深海にある鉱物資源の回収まで見据えています。本章では、水産資源の利用にとどまらない様々な「海からのめぐみ」について人類史を通じて紹介します。

海氷下ドローンCOMAI

第4章 海との共存、そして未来へ

人類は、これまで海から様々なめぐみを享受してきました。一方、近年では、人間活動に伴う環境変化が、海でもあらゆる形で顕在化しています。水産資源の枯渇、海洋酸性化、貧酸素化、そして海洋プラスチック汚染…。海で進行するこれらの変化を紹介するとともに、科学技術や我々一人一人の行動変容で、持続可能な形で海を活用していく取り組みについて紹介します。海のめぐみとともに生きてきた人類が、今後どのように海と関わっていけばいいのかを考えるきっかけとなることを期待します。

クジラの胃から発見された海洋プラスチック(写真:国立科学博物館)

開催概要

  • 会期:2024年3月16日(土)~6月9日(日)
  • 休館日:毎週月曜日、4月19日(金)、30日(火)、5月7日(火)、17日(金)※ただし、4月29日(月)、5月6日(月)は開館
  • 開館時間:9:30~17:00(最終入場は16:30まで)
  • 会場:名古屋市科学館 理工館地下2階イベントホール

※本記事は”ルアマガプラス”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。