[ドバババババーンッ!出た〜!]世界最大級の淡水魚!南米ジャングルの奥地で出会った奇跡の瞬間がヤバすぎる!

世界を旅する釣り人であり、釣り具メーカーのツララ(エクストリーム)のフィールドスタッフもつとめる前野慎太郎さんが、世界各地での釣行で遭遇したエピソードをレポート。今回は、ガイアナ共和国への釣行がテーマだ。

●写真/文:前野慎太郎(エクストリーム)

2024 シーバス特集

5年越しの悲願。ピラルク物語を完結させる旅

ルアマガ+をご覧になっている皆様こんにちは。前野慎太郎です。 今回ご紹介するのはガイアナ共和国を旅したときのできごと。憧れの魚をあと一歩のところで取り逃がしたことから始まった私のピラルク物語を完結させるために、5年越しのガイアナ共和国へ挑んできました。

ガイアナ共和国とは? 釣り場として好条件が揃うフィールド

ガイアナ共和国は南米大陸北部にある国で、ブラジル・スリナム・ベネズエラと国境を接しています。南米唯一の英語圏ともあってコミュニケーションがとりやすく、また国土の多くが熱帯雨林で覆われており、自然豊かな国家です。ガイアナを縦断するように流れる大河エセキボ川には多様な生態系が育まれており、釣り場としても世界有数の好条件が整ったエリアです。

ブラジル北部の町ボアビスタ。この町からレセムに向かう。

私は5年前、ベネズエラやブラジルでの釣り旅を終えた後に、ガイアナに赴きました。釣り人ならだれもが耳にしたことがあるだろう有隣最大の淡水魚「ピラルク」が、エセキボ川に生息しているとの情報を手に入れたからです。残りの旅程を考えると釣りはできても2〜3日程度でしたが、丁度ブラジルのマナウスに滞在していた私は長距離バスを乗り継いで、国境の町レセム向かうのでした。

ピラルクとの対峙。そして惜敗

ブラジルとの国境付近に位置するレセムに降り立ってからは、目的の村に行くための手段を探しますが、村が田舎過ぎるのか、公共交通機関がありません。そこで、値段は割高になりますが、現地のタクシーを雇って向かうことにしました。ちなみに料金は往復およそ4万円。もしバスがあれば3千円程度の距離なので痛い出費ですが、残り日数を考えると迷っている暇はないので、時間をお金で買うという選択になりました。

村に到着してからはすぐに地元の漁師と交渉しましたが、ピラルクのいるエリアに行くのであれば、釣りは1日しかできないことが発覚します。しかし、ここまで来たのだから! と私は迷うことなく、たった1日のチャンスに賭けることにしました。

ピラルクの潜むエリアまでは、時にボートを持ち上げて移動します。

早朝、現地の漁師とともに出発し、ピラルクが潜むラーゴ(湖)を目指します。到着したラーゴにはオオオニハスがみっしりと生え広がり、雰囲気も抜群です。まずはエサとなるタライーラやアロワナを釣りますが、その過程で爆釣だったのがキクラ・オセラリスというピーコックバス。

キクラ・オセラリス。

いつも通りのルアーフィッシングを楽しみつつ、ピラルクを狙います。 釣り方はエサ釣り。大雨の中ペットボトルをウキにして待っていると、勢いよくペットボトルが沈みました。本来ではここで慌てずエサを喰い込むまで待ちますが、待望のアタリとたった1日しかないチャンスに功を焦ったのか、痛恨の早アワセをしてしまいました。一瞬ガクンと釣り竿に重みが乗りましたが、無情にもフックは口から外れ、そのままタイムアップとなったのです。

痛恨のミス。あまりの悔しさに、随分とうなだれていた。

当然リベンジを誓い、1年後には南米大陸に戻りましたが、くしくもその年にコロナウィルスが大流行。ガイアナ入国前に訪れたベネズエラで軍隊に軟禁され、進退窮まった挙句、日本に帰国せざるを得ない状況に追い込まれ、釣行を断念。

そこからコロナが落ち着くまでの約2年間、嫌でも夢に出てくるピラルクを幾度も幾度もバラし続け、そのたびに指をくわえながら堪えることしかできなかった日々に、ようやくピリオドを打つチャンスが巡ってきたのです。2023年末、私は南米大陸に戻りました。

席ごと荷物を捨てられる!? いきなりの洗礼に開いた口が塞がらない…

5年前と全く同じ道のりで、まずはガイアナ南西部の街、レセムまで向かいます。唯一、前回訪問時と大きく変わったことといえば、物価の上昇でしょうか。円安も相まって、物価の相場は1.5倍ほどになっていました。貧乏旅人としては苦しい限りですが、こればかりは言っても詮無いこと。

レセムの街並み。赤土の大地にはいつも砂煙が舞っている。

ともかくピラルク再戦のスタートが切れたことに安堵します。釣り場は前回と同じエリアも考えましたが、やはり公共交通機関はありません。今回は他に気になった地域もあったので、バスで行くことができる地域にしました。

レセムで利用した宿。エアコン無し、水シャワーで1泊3千円ほど。扇風機にはカバーが無く危ない。 [写真タップで拡大]

夜になると、ぽつぽつ店がオープンする。 [写真タップで拡大]

目的地が決まったところでバス探しを開始します。レセムには大まかな行き先ごとにバス会社がありますが、すんなりと行きたいエリアを通るバスを発見することができました。料金は6000ガイアナドル(≒4500円)と聞いていましたが、いざバスに乗ってお金を支払おうとすると、15000ガイアナドル(≒11000円)だと吹っ掛けられます。ちなみに私は途中で下車するのですが、終点まで行っても正規の値段は8000ガイアナドル(≒6000円)なので、明らかにボッタクリです。「なんで俺だけ高いんだよ!クソヤロー!」と猛抗議すること30分。いきなり逆ギレした運転手が、僕の座席をシートごと取っ払って出発してしまいました。もう開いた口が塞がりません。

捨てられたシートと僕の荷物。

シートと共に無下に投げ捨てられた荷物のそばで30分ほど呆然としていると、椅子を回収するためにバスが戻ってきました。ドライバーは私がまだそこにいるとは思っていなかったのか、面食らった顔をしていました。お互い喧嘩熱は冷めており、私も次の日なら正規料金になるという確証がなかったため、10000ガイアナドル(≒7500円)で手をうって目的地へ急ぐことにしました。

バスは夜中に出発しましたが、4〜5時間走ったところで停車しました。なんでも夜間は川を渡るための渡船が停止しているので、朝までパーキングエリアのような場所で待つのだそうです。各々ハンモックを設置して睡眠体制に入りますが、私は何も聞かされていなかったので、ハンモックはバックパックの中にありました。運転手にハンモックを取り出したい旨を伝えますが「お前のバッグは奥にあるから無理!」の1点張り。レンタルもありましたが1000円ほどしたので節約し、結局私は地べたでろくに眠れず夜を明かします。

ガイアナのサービスエリア。

細々とした不満も含めると相当なストレスでしたが、何とか次の日の朝、目的の村までたどり着くことができました。到着するや否や、すぐに漁師を探します。この村には宿らしき宿は無く、川辺でBARを営むご家族の納屋の一角を借りて、ハンモックを取り付けます。ハンモックを使うたびに思いますが、支柱が2本あればどこでも安全に寝られるスペースを確保できるというのは本当に便利です。決して寝心地がいいとは思いませんが、宿が無いような地域では現地の方のスペースや森の中で野営などもよくあることなので、ハンモックはまさに必需品です。

インコに言葉を教える村人。 [写真タップで拡大]

間借りした納屋。 [写真タップで拡大]

訪れた場所はお魚天国

ついに釣り開始です。まずは夕食確保も踏まえてピーコックバスを狙います。ここに潜むピーコックバスはキクラ・オセラリスと、近年新たに記載されたキクラ・カタラクタエ。釣りを始めるとすぐさまオセラリスの反応があり、5年前の記憶とともに懐かしさが蘇ります。

移動風景。

しかし新たに記載されたカタラクタエはなかなか姿を現しません。ピーコックバスは生息地域が同じでも、種によってエリアが異なる場合が多々あります。そこで、止水のオセラリスとは違い、カタラクタエは流水域に潜んでいるのでは? と、仮定して上流に上るとこれが大正解。夕方になるとトップウォーターに一投で何度も喰い付いてくる有様で、幸先のいいスタートを切ることができました。

キクラ・オセラリス。 [写真タップで拡大]

キクラ・カタラクタエ。 [写真タップで拡大]

ピーコックバスの他にもエセキボ川はかなり魚種が豊富で、ペーシュ・カショーロやピラニア、各種ナマズなど色々な種類の魚が飽きることなく釣り竿を曲げてくれます。特にペーシュ・カショーロに関しては他の地域よりも筋肉量が多いのか、同じサイズでも一回り大きく見え、引きも相当な力強さで楽しませてくれました。下あごから飛び出した2本の牙はまさにアマゾンを象徴するような外見で、本当に見ていて恰好いいです。

ペーシュ・カショーロ。

ジャウー。 [写真タップで拡大]

レッドテールキャット [写真タップで拡大]

今回釣ることができなかった魚もいるのですが、それは次回に取っておくとして、やはり本命はピラルク。5年の時を経て、ついに再挑戦の時がやってきました。

ついに目標達成!? それとも…

漁師のフェルナンド曰く、ピラルクのエリアは止水が適しているそうで、乾季で減水した折に出来上がったラーゴ(湖)に多く生息しているとのこと。ラーゴは陸地に囲まれているので歩いて行く必要があるのですが、この道中がまさに地獄でした。

何が潜むかわからないジャングルを、半ズボンとサンダルで歩き続けます。灼熱かと思いきや、バケツをひっくり返したようなスコール。毒アリに刺されて飛び跳ねたり、大量の蚊に襲われることもしばしば。心身ともにボロボロになりながらも、ようやくラーゴに辿り着きました。

ピラルクは肺呼吸をする魚なので、一定時間たつと水面に呼吸をしに上がってきます。その際にかなり大きな音と波紋が出るので、目視で生息しているのかを確認することができます。ラーゴに来るまではそんなに簡単に見つかるのか?と疑っていましたが、水面を見るといたるところでピラルクが呼吸をしていました。しかし、そう簡単には釣れません。 エサを投入してもピラニアに喰い漁られたり、しばらく反応がない時間が続きましたが、その沈黙は静かに破られました。PEラインがピクピクッと動いたかと思うと、ゆっくり進み始めます。一瞬ピラニアか?と思いましたが、ピラニアだとエサを喰いちぎるので、激しくアタリが出ます。これは間違いなくピラルク! 前回と同じ轍を踏まないよう、しっかりと喰い込ませてから思い切りフッキング!

「ドバババババーンッ!」

今まで感じたことのない重量と共に、巨大な赤い龍が天へ上ります。すぐに我に返りましたが、全く制御できません。かなり大型のピラルクがヒットしたようで、時間をかけてランディングへ持ち込みます。ピラルクまであと2m!

しかし、互いにヘトヘトの中、最後の最後に勝ったのはピラルクでした…。

一瞬のスキを突かれて、目の前の冠水木に巻かれ、フックアウトしたのです。ここまでくる間に体力の大半を使い、水は無くなりラーゴの水をすすって飲んでいました。ようやく掴んだ待望のチャンスに残りの体力をフルベットしましたが、そのチャンスが無に帰した瞬間、私は一切動けなくなってしまいました。

悔しさのあまり、人生で初めて魚釣りで目に涙が浮かんできたことを思い出します。「泣くなッ! 負けるなッ!」と心を鼓舞しますが、理性の器を感情が超えようとしていました。そんな私の背中を「バンッ!」と、かなり強い力で叩いたのはフェルナンドです。「まだ時間はある。行くぞ!」そう言い放ち、私を放ってすたすたとジャングルを進みます。「も、もう俺歩けないんですけど…」なんて思いつつも、消えかけていた灯は再び燃えはじめ、泣く暇もなく後を追いかけました。

ついに、夢、叶う

日が傾きかけてきたころ、3度目のチャンスが訪れました。望んではいませんでしたが、過去2回の失敗で不思議と肝は座っています。しっかり喰い込んだのを確認してフッキングすると、ひと回り小ぶりな重量感が釣り竿に掛かりました。「こいつは制御できる!」と判断した私は、ドラグをフルロックしてガチンコ勝負に打って出ます。辺り一面冠水木に囲まれたラーゴ。木に巻かれる前に勝負を決めるために、無我夢中でリールを巻きました。最後はフェルナンドが抱えてランディング。ひと回り小ぶりになりましたが、まぎれもなくピラルクです。

ピラルク。 [写真タップで拡大]

赤い鱗が美しい。 [写真タップで拡大]

釣りという部分だけで見ると、間違いなく人生で一番苦労した魚。5年前に図らずも自分で作った因縁に、自分の旅で終止符を打てた事。この瞬間は高揚とも安堵とも違う、かけがえのない瞬間でした。

釣り旅というものは楽しいばかりではありません。当然ですが、他のことに情熱を燃やしている方と同じように、辛いことや、やりたいことを犠牲にしなければならないこともありますし、そうしたからと言って必ず叶うものでもないのです。

しかし、だからこそ挑戦することに価値があり、達成することは自信へと繋がっていくのだなと。今回は改めて、そのようなことを考える良い機会になりました。私にはまだまだ叶えるべき目標がてんこ盛りです。この経験を糧に、また一つずつ挑戦していこうと思っておりますので、応援よろしくお願いいたします。

といったところで今回の釣行記を締めようと思います。また次回、お楽しみに!

アングラープロフィール

前野 慎太郎(まえの・しんたろう)

20カ国超!海外遠征を繰り返し「自分だけしか見たことのない景色や魚」を求め、秘境を探しさすらう。地元広島河川のシーバスを始め、国内でもあらゆる釣りにチャレンジ。TULALAフィールドスタッフにして、Routesシリーズ開発担当。XBRAIDサークルメンバー


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