同じオカッパリでも、フィールド環境によって狙うべき場所やルアーセレクトは大きく変わる。
川村さんは初めて訪れる「沼」をどのように攻略するのか?
●文:ルアマガプラス編集部
profile
オカッパリを前提とした「沼」の選び方
4月上旬、本来ならサクラが満開になってもおかしくないタイミングで川村光大郎さんとやってきたのは、群馬県館林市。ここ数年、この地にある「沼系」のフィールドが盛り上がりを見せている。
なかでも知名度と人気ともに高いのは、多々良沼・近藤沼・城沼の3箇所だ。川村さんが初めてこの地を訪れたのは約1年半前で、オカッパリ&レンタルボートで多々良沼に挑戦してグッドサイズを4尾キャッチした。
「驚いたのは魚のコンディションですね。時期は9月だったんですけど、サイズを問わず丸々と太ったプリスポーンのような体型ばかり。いろんな種類のエサが豊富なんだと思います」
多々良沼は右にあげた3つの沼のなかでもっとも規模が大きく、アシやガマなどのベジテーションが繁茂してロケーションも最高。しかし、今回の取材ではあえて選択肢から外した。
「オカッパリだと狙えるエリアが限られてしまうんですよね。バスが流入河川にどんどん差してくる時期ならいいですが、まだ微妙な季節なので」
取材日の朝の気温はおよそ7℃、さらには冷たい風も吹いていた。冬と春を行ったり来たりするビミョーな季節に、川村さんはどんなアプローチを考えているのだろうか。
沼におけるポイント選びの3大要素
多々良沼を除く2箇所のうち、最初にエントリーしたのが近藤沼だ。一日の前後半でエリアを変えるプラン。城沼を午後に取っておいたのには明確な理由があるのだが、それはのちほど解説してもらおう。
まずは3つに分かれた近藤沼の中央・北岸側に入り、ブッシュが沖側に倒れ込んでいるストレッチから開始。ギャップジグ5g+ブルスホッグ3inのコンビで静かに撃っていく。
「時期的にはシャローにいてもおかしくないタイミングです。ただ、今日は少し冷え込んでいるし、ヘラブナが岸際でハタきはじめているのを考慮すると、だらだら浅いところは望み薄かな、と。カバーが沖に張り出しているところなら、バンクと一段下の両方を探っていけます」
一般的に“沼”系のフィールドはリザーバーなどに比べて浅く、地形変化や流れも乏しいことが多い。そのため、狙うべきスポットの判断基準を持っておくことが大事だ。
なかでも「張り出し」「インレット&アウトレット(流入&吐き出し)」「角」の3つが重要だと川村さんは言う。
「先ほど説明したカバーも含め、アシやゴロタなどの岬、ヘラ台や桟橋といった『張り出し』は要チェックですね。バンクと沖を繋ぐバスの移動経路にもなるし、どこで反応があるかによっても状況を把握しやすくなります。『インレット&アウトレット』は、それぞれの沼にもよりますが貴重なカレントが発生する場所なので、間違いなく魚を惹きつける要素になる。さらに、流れや地形の変化に繋がりやすい『角』も見逃せない要素です」
わずか5cmの隙間から!?
カバーを撃ったあと、川村さんは同じ北岸側にある桟橋へと移動した。
近藤沼は大小3つのブロックから成っているのだが、そのうち2箇所には大型の釣り用桟橋が設けられている。前日にざっくり下見したなかで「ここは確実にバスを集めているはず」と目をつけていたのが、この場所だった。
「この内側はカバーの点在する浅いバンクで、間違いなくスポーニングエリアになるような場所ですよね。ということは、その一歩手前にある桟橋は、プリスポーンのメスが浮く絶好のストラクチャーになる。どの方向から風が吹いてもブロックできるし、シェードになるし、ヘラブナ釣りのおじさんたちがエサを打てば小魚も自然と集まってくる。おそらく1年中バスをストックしている場所だと思います」
桟橋には朝から数名のアングラーが集まっていた。魚影は濃い反面、プレッシャーも高い。
つまり「いても食わない」系の個体が多いと判断した川村さんは、ここからコスモ2.5g+M.P.S 2.4inにローテーション。桟橋の支柱を表層からボトムまで、マイクロピッチシェイクで釣っていくことにした。
ここまでは並のアングラーでも考えそうなことだが、川村さんはさらに一歩進んだアプローチを実践。
支柱を囲む枠の内側、わずか数cm程度のすきまにスモラバを落としていったのだ。でかいバスが食ったら抜き上げることは不可能だが…?
「大丈夫です、外側から手を突っ込めば獲れるので(笑)。枠の外側にルアーを落とすと、支柱から15cmぐらい離れてしまう。柱にくっつけて誘わないと食わないバスもいると思うんですよ」
そのおよそ1時間後。シェイクしながらレンジを下げていくと、水深およそ1.5mに到達したスモラバを、ヌッと抑え込むようなバイトが伝わってきた! 思いのほかバスが暴れてヒヤヒヤさせられる一幕もあったが、想定どおりのハンドランディングで無事にキャッチ! 川村さんにとっての近藤沼初バスは、40cmオーバーのナイスフィッシュだった。
未知の城沼を探索
近藤沼の全域をチェックし終えたのが10時ごろ。このまま粘っても数が伸びる可能性はあったが、事前のプランどおりもうひとつのエリア、城沼へ向かうことにした。こちらも川村さんにとっては初場所だ。
規模も小さく、関西や中部地方の溜め池のような雰囲気だった近藤沼に比べ、城沼はより「沼っぽい」シチュエーション。アシやガマがほぼ全域に生い茂り、場所によってはハスの茎が百m近く沖まで続いていた。
「時期によってはああいうハスのまわりが有望になることもあります。ただ、今のタイミングだと少し浅すぎるだろうし、キャストが届かない範囲が多い。時間も限られているから、明確に絞り込めるスポットを釣っていきます」
ここでも、ポイント選びの考え方は前段で紹介した「3大要素」がベースになる。
最初に入ったのは北岸側にある加法師川の河口部分。流れが出やすいのはもちろん、周囲に地形変化があるのでは? と見込んでの選択だった。
「やっぱり川に近いほうのボトムが掘れてますね。メインレイクに向かうにつれ徐々に浅くなる。ハスの生えていない西側はちょっと深いから、こっち側は丁寧にやる価値があるかも」
ブレーバー2のネコリグでバンク沿いを撃ちながら、リグが着底するまでの時間によって水深をチェックする川村さん。こういう細やかな作業が、エリアやスポットの絞り込みにも役立つのだ。
「食った! …あれ、巻かれてる!?」
河口にある橋の真下あたりでネコリグにバイト、しかしフッキングと同時に障害物にロックしてしまった。一度は諦めてティップを突っ込んでみると、再び生命反応が!
「こいつだったか〜(笑)。やっぱりいい場所には魚が陣取ってますね」
クランクで3連発!? 沼のスイートスポットに到達
三寒四温を繰り返す早春の時期は、水辺がしっかりと太陽光に温められてからシャローでバイトが出始める傾向がある。「近藤沼は前半、午後から城沼」と川村さんが判断した理由は、そこにあった。
「下見をしたなかで、いちばん有望そうな場所が城沼にあったんです。午後になってからそこに入りたかった」
川村さんが有力視していたのは、城沼の隣にある「古城沼」というエリアだった。なかでも、土のバンクから大小のウッドカバーが水中に倒れ込んでいるストレッチに目をつけていた。城沼に比べるとマッディで、巻きものでも食わせられそうな水質だ。
ギャップジグにセットしていたブルスホッグを3in→ダディに変更して、ジグストを混じえながらカバーを撃っていく。グリパンチャートに色を変えたブレーバー2もローテーションしながら丁寧に刻んでいく。いつ食ってきてもおかしくない雰囲気だったが…。
「景色は最高なんですけど、生命感がない。近藤沼の桟橋周りや、ナマズの釣れた河口には小さなベイトフィッシュがキラキラしていたんですよね。バスアングラーの姿がないのは、そういうことなのかも」
このあと、メインの城沼に移動して、下見でもチェックしていなかったエリアへ。すでに2名のロコアングラーの姿があり、そのうちのひとりに釣果を尋ねたところ「クランクで3本キャッチしました」という驚きのコメントが返ってきた。
場所は城沼から水が流れ出すアウトレット周辺。川村さんが繰り返し語っていた「沼の3大要素」に、ぴったり当てはまる条件が揃っていた。
「たしかにここは別格ですね〜。ゆるやかにカレントがあって水質もよく、橋の下は終日シェードになる。その下には岩がゴロゴロしたハードボトムがあるし、エビも跳ねていた。連発するのも納得です」
残念ながら2尾めを追加することはできなかったけれど、初挑戦としては上々の出来。ハイシーズンにも再訪したくなる魅力たっぷりの「沼チャレンジ」だった。