「結局どれが良い?」「ひとつ選ぶなら…」シマノ新作ベイトリール3台を価格帯ごとにインプレ。

同一メーカー、同一用途のタックルを、「3つの異なる価格帯から選び、その差がどれほどなのかを克明に伝えるのが3G(スリーグレード)インプレッションだ。今回、用途の差は多少あるが、誰もが興味津々となっているシマノの新作ベイトリール3台を、徹底的にインプレする!

●文:ルアマガプラス編集部

2024 シーバス特集

profile

3‌Gテスター テッペイ
バス歴45年、釣りライター歴28年という経験を活かし、2008年から3Gインプレッションを担当。プロアングラーを自称する割にはメーカー契約ゼロ。しかし、それを逆手にとった忖度なしのインプレには定評がある。

SHIMANO ベイトリール

今回、ニューSLXがベースグレード、カルカッタコンクエスト・シャローエディションとメタニウムDCがトップグレードという変則の3Gインプレとなる。価格だけではなく、用途にも違いがありそうなので、とことん使ってそれぞれの役目を見極めたいと思う。
SHIMANO:https://fish.shimano.com/ja-JP

カルカッタコンクエスト シャローエディション 30HG

トップグレード
6万5,560円(税込)

メタニウムDC70XG

トップグレード
6万8,200円(税込)

SLX70HG

ベースグレード
2万3,100円(税込)

インプレ会場

亀山湖(千葉県)
今回、インプレを行った場所は、関東バスフィッシングの総本山・千葉県の亀山湖。数多くのレンタルボート屋さんがあるが、随所で岸釣りも可能。ただしこの日は冷たい雨も降りだして、非常にタフな状況。インプレ中にアタリは1度もなかったらしい。

インプレ用ロッド

●SLX70HGはエクスプライド169H(シマノ)に装着。ラインはフロロ12lb。
●カルコンシャローエディション30HGはポイズングロリアス1610ML-BFS(シマノ)に装着。ラインはナイロン8lb。
●メタニウムDC70XGはエクスプライド163MH+(シマノ)に装着。ラインはフロロ12lb。

CHECK LIST 1

価格破壊神SLX MGLがさらなる進化!価格据え置きでMGLスプールⅢを搭載!

ベースグレード

SLX70HG 2万3,100円(税込)

SPEC
●ギア比:7.2
●最大ドラグ力:5.5kg
●自重:195g
●最大巻上長:72cm
●糸巻量:12lb100m(ナイロン)
●ボール/ローラーベアリング数:4/1
●価格:2万3,100円(税込)

軽量級ルアーを更に遠くへ、安全に、静かに飛ばせるようになった!

先代より幅が2mmナロー化されたMGLスプールⅢを搭載。より低慣性化されたことにより、軽~中量級ルアーのキャスタビリティとブレーキレスポンスが向上。加えて「サイレントチューン」を搭載し、わずかな回転ノイズをも軽減。価格帯をキープしたまま、ワンランク上のリールへとステップアップを果たした。

POINT.1 外観デザイン

デザイン的には先代とほぼ変わらず。SLXとしての個性を主張!

パッと見は前作のSLX MGLとそれほど変わっていない印象。ガンメタのボディにメタリックブルー。そしてSVSのキャップ部分に大きく印字されたSLXのロゴ。シマノの他のベイトリールとは一線を画するデザインが踏襲されている。個人的に好きなデザイン。

POINT.2 回転・巻き心地

剛性感と握りやすさで、巻き心地をアップ! 頂点との差はゼロではないが、不満はゼロ。

今回の3モデル中、恐らくボディ幅が一番広いと思えるけれど、非常にパーミングしやすい。そして剛性感も強いので、ハンドルを巻くときに左右にロールするようなこともない。もちろんハイエンドと比べれば差があるだろうが、全く不満の無い滑らかな巻き心地だ。

これがMGLスプールⅢ。左右のふちが太い分、内側の幅が狭くなっている。前作の糸巻量をそのままにナロー化されているので、そのぶん深溝となっているわけだ。これが低慣性化につながるのだ。

POINT.3 キャストフィール

ピッチング

意外なほど、ピッチングしやすかった。軽く振り込むだけで、3/8ozのジグが低い弾道でスーッと飛び、ピンポイントに静かに落とすことができた。これがナロー化されたMGLスプールⅢの効果なのか? もっと軽いリグでも問題なくピッチングできそうだ。

遠投

スプール回転がすごくいいので、遠投能力も高い。写真を見てもかなり沖でルアーが着水しているのが分かる。ただし、ブレーキはやや強めに設定したほうがいい。一度ベストな設定を出せば、トラブルレスなキャストができる。「最後の伸び」はそれほど感じない。

POINT.4 ブレーキ

メカニカルは若干緩めでもいい SVSは内部も外部も強め設定を推奨

ブレーキはやや強めの設定から始めたほうがいい。まず内部のSVSは4個中3個オン。メカニカルは若干緩めでいい。そして外部ダイヤルは5くらい(MAXは6)が3/8ozに適した設定。外部ダイヤルはやや硬いけれども、このくらいのほうが勝手に緩んだりしなさそうだ。

POINT.5 ドラグ

予期せぬ大物にも、きっと勝てるドラグ性能

水没していたでかめの枝を釣り上げてしまった際にテスト。まずこのスタードラグは、ハンドルを巻きながらでも調節しやすい。ドラグが効いてる時のクリック音は出ないが、滑りはよい。バス相手には、十分すぎる能力がある。超のつく大物が来ても戦えるだろう。

POINT.6 ルアー別使用感

軽~中量級のルアーはもちろん、ビッグベイトまで快適に使えた

スピナーベイトはビーブル3/8ozとBカスタム5/8ozでテスト。どちらもよく飛んで、巻いてる時のボトムタッチなどもわかりやすかった。巻き感度よし。3/8ozのラバージグではジグストもやって、好印象。カバースキャットはめちゃ飛び。ジョイクロも普通に投げられたが、ラインはもうちょっと太めにしたい。T.D.ハイパークランクもよく飛んだし、巻き心地もよかった。

POINT.7 価格と総合的評価

抜群のコストパフォーマンス! SLXで揃えるのも悪くないな

キャスタビリティーも悪くないし、巻き心地は不満なし。かなり満足度の高いリールだと思う。ブレーキを緩めすぎると、トラブルにつながるので、そこは甘く見ずにしっかり調節したい。個人的にはジグストのやりやすさが印象に残った。持った感じが軽いのだ。価格は非常にお買い得だと思う。SLXはDCもBFSもあるので、すべてSLXで揃えると、それはそれでかっこいいかもしれない。

若手のプロアングラーは、実際にSLXで揃えている人もいるみたいだよ。

CHECK LIST 2

漆黒のカルカッタコンクエスト登場!このリールはベイトフェネスにあらず。

トップグレード

カルカッタコンクエスト シャローエディション100HG 6万5,560円(税込)

SPEC
●ギア比:7.4
●最大ドラグ力:4.0kg
●自重:220g
●最大巻上長:77cm
●糸巻量:8lb100m(ナイロン)
●ボール/ローラーベアリング数:13/1
●価格:6万5,560円(税込)

「巻き」と「投げ」を衝撃的にレベルアップ

「巻き」の釣りで確固たる地位を築いてきたカルカッタコンクエストの長所を、格段に向上させた衝撃作。「インフィニティドライブ」をバス用ベイトリールで初搭載。回転抵抗が劇的に軽減されて、巻き上げ感度、パワー、巻き心地が大幅にアップ。さらにMGLスプールⅢ採用で、これまで以上に伸びのある低弾道キャストを実現。軽~中量級の標準的なルアーにフィット。

POINT.1 外観デザイン

ただの黒ではないカラーリングに、図らずも心を奪われてしまった!

POINT.2 回転・巻き心地

スペック的にも回転性能は頂点レベル。実際にリーリングすると、驚愕の領域に。

14個のベアリング、マイクロモジュール、インフィニティ―ドライブ。スペック的には極上の回転が約束されている。いざ使ってみると、やっぱり極上。シャッドを引いたとき、ハンドル回転があまりにも軽く、クラッチでも外れたのかと不安になった。

POINT.3 キャストフィール

ピッチング

特に突出してピッチング向きだとは思わなかったけれど、軽い気持ちでピッチングして、普通に低弾道で飛ばせた。スプール回転がいいので、最後に伸びるような感覚もあった。ハイギヤなので、手返し重視のピッチング展開になっても、十分対応できるだろう。

遠投

自重は3機種中最も重いが、最初の一振りで「軽い」と感じた。最も投げやすかった阿修羅の時は、糸が切れて飛んで行ってしまったのかと錯覚するほどの飛距離とフィーリング。手首のスナップだけでも十分飛ぶので、まるで自分がうまくなったように思えてしまう。

POINT.4 ブレーキ

SVSは2個オン&臨機応変にダイヤル調節

結論から言うと、SVSをやや強めにして、後はメカニカルを緩めの設定にすると、どの軽量級ルアーもよく飛ぶし、ほとんどバックラッシュしない。具体的には内部のSVSは3つオンで、外部ダイヤルで微調整。アキュラシー重視ならSVSすべてオンでもいい。

POINT.5 ドラグ

完璧な設定にしておけば、突然のパワーファイトにも屈しない

非常にピッチが細かく、繊細な設定が可能。滑り出しもよく、ラインが出ていくときはクリック音が出て、状況を伝えてくれる。シャッドの速巻き中にビッグバスがくることは十分に考えられる。その時ドラグのレスポンスが悪いと困るが、その心配はなさそうだ。

POINT.6 ルアー別使用感

5~14gという推奨ウエイトに収まるセレクトで、どれもが納得の使用感!

ドライブシャッドのノーシンカーは低弾道のピッチングを披露。阿修羅はまるでこのタックル専用に作られたルアーのように使えて、トゥイッチもしやすかった。6gのK-0ポッパー、5.5gのソウルシャッドは、共にスピニングタックルのように飛ばせた。ソウルシャッドの早引き時は、このリールがハイギヤである意味を理解。テラーもイヴォーク2.0も手首のスナップだけで飛ばせた。

POINT.7 価格と総合的評価

「値段は関係ない、このリールが欲しい」そう思わせるほどの価値を感じてしまった。

まず、テスト用のベイトフィネスロッドとの相性が抜群によかった。非常に軽く、一振りしただけで感動。まさしく自分の手の延長になった気分。価格は決して安くはないが、それに見合う価値はある。デカバス狙いというよりは、ゴールデンタイムにバスと戯れるための相棒にしたい。巻き物用なのになぜハイギアなのか疑問に思ったが、むしろ速巻きできるなど守備範囲が広くなると理解した。

まるで魔法の杖を振っているかのようにキャストできたよ。ロッドとの相性も良かったな。

CHECK LIST 3

最新のDCで、常識破りの遠投を実現!もちろん、トラブルレス。

トップグレード

メタニウムDC 70XG 6万8,200円(税込)

SPEC
●ギア比:8.1
●最大ドラグ力:5.0kg
●自重:180g
●最大巻上長:86cm
●糸巻量:12lb100m(ナイロン)
●ボール/ローラーベアリング数:10/1
●価格:6万8,200円(税込)

最新のDCと、コアソリッドボディ。アンタレスの地位を脅かす存在に成長!

23アンタレスDCMDと同等とされる最新のDCブレーキ「i-DC5」を搭載。しかも、これまでサイドプレート内部に設置されていたモードダイアルを外部に露出。これにより、最適な設定をスピーディに出せるようになった。またDC搭載リールとしては初となるコアソリッドボディを採用。強靭化と軽量化を同時に果たしている。

POINT.1 外観デザイン

黒とシルバーでまとめたコンパクトなデザイン。

DC内蔵のリールは、ごついというイメージがあるけれど、このリールは、むしろコンパクトに感じる。カラーリングはブラックが基調でハンドルの付け根とメカニカルブレーキの土台部分がクロームカラーのパーツでまとめてあり、それが外観の特徴となっている。

POINT.2 回転・巻き心地

高速ギアのXGモデルだが、滑らかさに曇りなし。遠投可能なDCだけにXGのほうがメリット多し。

違和感ゼロの巻き心地。XGの高速ギアを速巻きしてもブレなどは微塵も感じない。超遠投できるので、XGじゃないと回収も大変だし、巻きアワセにも貢献すると思う。コアソリッドボディの剛性感は素晴らしいが、でもSLXと比べて大差だとは感じなかった。

POINT.3 キャストフィール

ピッチング

3/8ozのラバージグでピッチング。かつてDCはピッチングが弱点だった時代もあったが、現在はそんなことなく、バックラッシュせずに上手にピッチングできる。いろいろ試してみたが、フロロの12lbなのに、PEモードがピッチングに向いていた。

遠投

他の2台とは別世界の遠投能力。長崎キャンプ場からカバースキャットのノーシンカーを投げて、対岸の崩落を狙った。岸際には届かなかったが、オーバーハングにはぶら下がった。地図アプリで計測すると65m以上飛んでいた。これ、普通は狙わない距離だ。

POINT.4 ブレーキ

先入観なしに3つのモードを試してみたら、意外な結果に。信じるか信じないかはあなた次第?

モードダイアルもブレーキダイアルも、サイドプレートの外部にあるので、気軽にモードを変えられる。これは画期的! いろいろ試した結果、フロロラインでも、ナイロンモードのほうが距離が出る。ピッチングはPEモードが良かった。トラブルレスを重視するならフロロモード。でも、どのモードでもほぼトラブルなし。
サイドプレートの内周がモードダイアルで、NとFとPの3モードある。外周がブレーキダイアルで5段階。合計15のシフトがある。

POINT.5 ドラグ

静かに、そして確実に出るドラグは、音もなく相手の体力を奪うはず

スペックではドラグ力5kgとなっているが、それより強い印象。滑り出しは軽やかで、エキサイティングサウンド(クリック音)は出ない。レベルワインダーが逆メガホン構造なので、角度のきつい位置からラインが出ても無駄な摩擦力は軽減されそうだ。
レベルワインダーの内側が幅広くなっている。これはPEラインのトラブルを軽減する効果があるが、ドラグによる摩擦も減りそうだ。

POINT.6 ルアー別使用感

強く振っても、軽く振ってもよく飛んでくれる。それがDCの強みだし、バーサタイル性も高い

カバースキャットは、遠投の限界に挑戦。対岸到達まであと1歩だった。5/8ozのBカスタムもよく飛んだ。ドライブビーバーは、テキサスリグとラバージグにセット。主にピッチングに使ったが、飛距離に問題なし。T.D.ハイパークランクTiとヴォルビートは巻き能力をテスト。クリアな巻き感だった。タイニークラッシュは12lbラインでは強振できなかったが、軽く振ってもよく飛んだ。

POINT.7 価格と総合的評価

遠投能力とトラブルレスという2つの絶対的価値にこの価格は決して高くない

今現在、購入する余裕はないけれど、今市場にあるDCの中でひとつ選ぶなら、メタニウムDCにする。

遠くのバスを狙うため、釣り人とルアーとの関連性を悟られないため、そして長い距離を追わせるためにも「遠投能力」は不可欠だ。今回、改めてDCの圧倒的な遠投能力を体感した。年々DCのクオリティーも上がっていて、たとえ不運な偶然でバックラッシュしても軽傷で済む。恐らくDCに関しては最新のメタニウムDCが一番優れているのでは? そう考えると、この価格はむしろ安いかも。

矢印の白い点が着水の水しぶき。ほぼ対岸に届いている。
これ以上は木の枝に引っかかるのでやめておいた。


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