かつては釣り糸の主流だった「ナイロンライン」。現在はソルトならPE、バス釣りではフロロがそれぞれメインで使われており、あまり目立っているとは言えないだろう。だがしかし、そんなナイロンラインには強力なメリットもある。ご存知村田基さんに解説をお願いしよう。
●文:ルアマガプラス編集部
GT-Rウルトラ[サンヨーナイロン]
ナイロンラインを主力として使用しているアングラーは、近年ではおそらく少数派ではないだろうか。もしかすると、バス釣りを始めてこの方、フロロカーボンラインしか使ったことがないというアングラーもいるかもしれない。村田基さんは、この現状に警笛を鳴らすとともに、ナイロン、フロロカーボン、PE、それぞれの特性を実際に使って理解し、「使い分ける」ことが大切だと語る。事実、ナイロンラインのメリットに気づき、効果的に取り入れているトッププロも少なくないのだ。
フロロよりもナイロンのほうが強いという事実
「まず、ラインに関する基本的な事実をお話ししましょう。それは『同じ太さだったらフロロよりもナイロンのほうが強い』ということ。ナイロン16ポンドが100メートル巻けるベイトキャスティングリールがあるとしましょう。それにフロロ16ポンドを巻くとどうなるか。90メートルくらいしか巻けない。フロロのほうが弱いから太くしているんですね。シマノもDAIWAもリールのスペック表には必ず『ナイロン』での糸巻量が表記されているはずです」
さらに、同じサンヨーナイロンのラインナップの中でもGT-Rは特別な存在だと言う。
「ナイロンはフロロよりも耐摩耗性、要するに擦れに弱いという意見があります。一般的にはその通りなのですが、GT-Rウルトラは違う。同じサンヨーのナイロンでも特殊原糸を使用している、GT-Rウルトラはフロロよりも耐摩耗性が高いんです」。
そう言って村田さんは、一般的なナイロンラインと、GT-Rウルトラを用意し、それぞれをガイドに通して激しく擦り始めた。
「ほら、一般的なナイロンラインはすぐに切れますが、、GT―Rウルトラは切れない。製造時特殊な物質を溶かし込み、ナイロン分子の外側に特殊原糸が形成されることで、耐摩耗性を高めているんです」。
オカッパリこそナイロンラインを使ってほしい理由
①フロロよりナイロンの方が飛距離が出る
「まず、フロロのほうがナイロンよりも重いので、スプールが重くなります。近年、コンマ何グラムレベルでどれだけスプールが軽量化されても、フロロとナイロンでは最大1グラム以上の差が出ます。ボートアングラーがちょい投げするのなら関係ない。だけどオカッパリアングラーで飛距離を出したいならナイロンです」。
②ナイロンのほうがフッキングパワーが伝わる
「次にアタリとフッキングについて。遠投できて遠くのアタリも取れるのはPEライン。ただし注意したいのは、PEは糸がたるんでいると全くアタリが伝わらないから、ラインスラックを出す釣りには不向きです。フロロは重いので沈みやすく、たるみがたくさん出る。水中のたるみが大きいフロロと小さいナイロン。フッキングしたときに合わせシロが少なくて済むのは当然ナイロンです。沈んだラインを持ち上げて魚の口にフックを刺すのにどれだけの力が必要かってことです。これも遠投をするオカッパリでは顕著に差が現れます」。
適材適所。ナイロンという引き出しを増やしてみよう
「僕はフロロがダメだよと言いたいわけじゃないんです。伝えたいのは、それぞれの特性を理解した
使い分けが大切だということ。僕はバスでフロロを使うことはほぼゼロだけど、海釣りのエダスには水を吸収せず絡みにくいフロロを使う。伸びに関してはフロロよりナイロンのほうが伸びる。これはひとつの特徴であり、メリットにもデメリットにもなりうる。シーバスをやる人でわかっている人はリーダーにナイロンを使う。伸びないPEのリーダーにフロロを使うともっとバレやすくなるから。北海道でイトウをやるときは、スピニングで12とか14ポンドを使う。だからしなやかでスプールに馴染むナイロン。飛距離を出したかったり深い場所をやったりするときはPE。適材適所です。これは話を聞くだけではなく実際に自分で試していかないと絶対にわからないこと。バス釣りでフロロしか使ったことがない人は、ぜひ、GT―Rウルトラを使ってみて、自分の釣りの引き出しを増やしてほしいです」。
これは余談だが、養殖場の網イケスの中でぐるぐると円を描いて泳ぎ続けるマグロは、台風で網が
破れても逃げずにイケスの中を泳ぎ続けるらしい。小さいときから網の中を回っているので外に出ら
れるという発想がないのだ。
よいたとえ話になったかはわからないが、ぜひ、GT―Rウルトラで新しい扉を開いてほしい。
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