世界を旅する釣り人であり、釣り具メーカーのツララ(エクストリーム)のフィールドスタッフもつとめる前野慎太郎さんが、世界各地での釣行で遭遇したエピソードをレポート。今回はなんと、ケニアへの釣行がテーマだ。果たして、どのような展開がまっているのか…!?
●写真/文:前野慎太郎(エクストリーム)
ナイルパーチを狙いに、アフリカ大陸へ!
ルアマガ+をご覧になっている皆さま、こんにちは。前野慎太郎です。今回は、アフリカのケニア共和国を旅したときの出来事をお伝えします。
アフリカ有数の大都市であるナイロビから、エチオピア方面に北上したところにある、琵琶湖の10倍もの面積を誇るトゥルカナ湖で、四苦八苦しながらナイルパーチを追った旅がテーマです。
そもそもケニア共和国って、どんな国なの?
ケニア共和国(以下、ケニア)は東アフリカにある国家で、首都のナイロビはアフリカ有数の大都市です。公用語はスワヒリ語ですが、国民の多くが英語を話します。ケニア南部に広がる広大なサバンナやそこに住むマサイ族、ケニア西部、ウガンダ、タンザニアの三か国に及ぶ、アフリカ最大の湖であるヴィクトリア湖などが有名です。
ですが、私が今回の目的地に選んだのはケニア東部、エチオピアに接するトゥルカナ湖。周辺には特筆できる観光地も無く、旅人の中でもマイナーな地域ですが、ここにはアフリカを代表するナイルパーチという魚が生息しています。コロナ過で2年ほど海外に出ていなかった私は、旅の再開をアフリカ大陸で飾ろうと意気込み、飛行機に乗り込みました。
安全? 危険? 先進国にも引けを取らない発展を遂げた、大都市ナイロビの治安
飛行機を降りた私はナイロビの中心街へ向かいましたが、そこには驚きの光景が広がっていました。地面は綺麗なアスファルト。見上げるほどの高層ビルは全面ガラス張りのものもあり、道路の両端には均等幅に街路樹が植えられています。ケニアといえばマサイ族やサバンナのイメージが先行していた私ですが、さすがは一国の首都。さらにはアフリカ随一の都市だけあって、私のケニアのイメージは入国後数時間で一変したのでした。
とは言え、ナイロビ全体がそのような発展したオフィス街ではありません。安宿を求めてしばらく歩き続けると、いつしか整然とした風景は失われていき、代わりに活気の溢れる雑然とした街並みが広がります。そんな風景にどこか懐かしさを覚えつつ、1泊800円ほどの安宿へ入りました。
目的地へのバスチケットを探しつつ、街を散策
重たいバックパックを置いて身軽になった私は、さっそく目的地であるトゥルカナ湖へ向かうためのバスチケットを探すために街を散策します。ですが簡単には見つからず、ひたすら歩き回って聞き込みをし、何とか目的地までのバスチケットを購入しました。
ちなみに、旅人界隈では治安がすこぶる悪いことで知られるナイロビですが、私がバスチケットを求めて街を歩いた感想は、特筆するほど治安が悪いという印象はありませんでした。もちろん、私たちが住む日本とは安全の前提条件がそもそも違いますが、ナイロビのダウンタウンでは、通りに露店がずらっとひしめき合います。
ナイロビ市内の露店は朝から開店し、夜は22時くらいまで営業しています。しかも、日曜を除いて毎日開催しているので、目立った犯罪などは人目が多すぎて逆に難しそうでした。その半面、スリには気を付ける必要がありますが、これに関しては対策次第で未然に防げるので問題ありません。
夜は雰囲気が一変、発砲事件も発生…。
そんなナイロビですが、22時以降は極端に人が減り、どんよりとした怪しい空気が街を包みます。ホテルやレストランも軒並み鉄格子を閉めて外から入れないようにするので、やはり危ないのでしょう。
実際私が滞在するホテルの真下で警官が発砲する事件が起こりましたし、基本的に夜間にふらふらと外出しても危険でない国のほうが圧倒的に少数ですそう思うと、私たちが住む日本がどれほど安全な国なのか、思い知らされますね。
目的地のトゥルカナ湖畔の町へ、いざ出発!
いよいよ、目的地でもあるトゥルカナ湖畔へ移動です。バス乗り場へ到着すると、すでに多くの乗客が待っていましたが、なぜかほとんどに人が分厚いダウンやジャケットを持っています。ナイロビの日中は、連日30℃を超える暑さです。「こんなに暑いのに、どうしてだろう?」ちょっと疑問に思いはしたものの、深く考えることをしませんでした。この楽天的な認識の甘さにより、十数時間後にひどい目に合うとは、この時点では思いもしませんでした…。
バスは定刻より3時間ほど遅れて出発しました。人口密集地域であるナイロビを抜けると、人工物は視界から消え、乾燥した草原が広がります。数時間に一度、それなりの規模の町で乗降する以外は暇な時間が続きますが、少しづつ風景がアップダウンの激しい山間部へ変わっていき、日が傾くにつれてだんだんと肌寒くなってきました。
日中と夜との寒暖差に閉口。ガタガタ震えつつ夜を明かす
その都度、薄いパーカーを羽織ったり、靴下を履いて暖を取るのですが、完全に日が沈んだころには窓ガラスが結露し、他の乗客は持参していたジャケットを羽織っています。ですが私は厚手のジャケットは所持していないため、持っている薄手の服を一枚、また一枚と重ね着するしかありません、靴下2枚、下半身3枚、上半身5枚を無理やり着込み、それでもガタガタ震えながら夜を明かしたのでした。
再び太陽が顔を出す頃、山間地帯を抜けたからか、はたまた偉大なる太陽の力なのか、気温は徐々に上がり始めます。私は着込んだ服を一枚づつ脱いで元のTシャツと短パン姿に戻ったころ、辺り一面が荒野に代わっていることに気付きます。しばらく走ると、ついに今回の拠点となるトゥルカナ湖畔の町に到着しました。