「釣りのためにケニアに行った日本人が?」「意外なことで現地の有名人に…」最後に手にした巨大魚に感動…。[トゥルカナ湖・ナイルパーチ釣行記]

2024 シーバス特集

トゥルカナ湖で、日本の友人と遭遇

次の日ようやく目的地に着いた私たちですが、再び湖が荒れて、とてもじゃないが釣りに出られる状況ではありませんでした。祈る思いで湖を眺めていると、荒れ狂う湖から一隻の木船が私たちのほうへ向かってきます。近づく木船に目をやると、見慣れたシルエットが現われました。実は私と同時期にトゥルカナ湖へ行くという日本の友人がおり、互いの旅を邪魔したくないという思いから広大なトゥルカナ湖のどこに行くかは伝えていないものの、偶然にもポイントが丸被りしていたのです。所詮釣り人の考えることは一緒か…と面白おかしくなりつつも、久々の再開を喜びました。

奥地で食べていたケニア名物ウガリ。トウモロコシ粉を水で練って蒸かしたもの。

しかし、待てど暮らせどトゥルカナ湖の天気は回復せず、釣りができない日々が続きます。数日が経過したのち、私たちはエリアを大きく変える決断をしました。予算はギリギリ。体力も随分と無駄使いしましたが、ここにいても風が止む気配はありません。現状を打破するには自ら動くしかなかったのです。

帰りの道中。木の枝で作ったテントを拝借。風が弱まり、よく寝れた。

ひとまずパーミットを再取得する必要があるので、大荒れのトゥルカナ湖を引き返し、プロボックスで拠点の町に戻ります。そこで数日間ゆっくり休んで態勢を立て直し、三度目のトゥルカナ湖に挑みます。

ナイルの賜物 ナイルパーチ

エリアの変更が功を奏したのか、嘘のように風は止み、すんなりと目的地に到着しました。寝床は地面にゴザを引いただけで、雨風をしのぐものもありません。

ここが寝床。

一通りの準備が済むまでは小型魚用の釣り竿で遊んでみましたが、ティラピアが面白いように釣れてくれます。これまで湖を目前にしながらも全く釣りができなかったこともあってか、気付けば半身を湖に付けて、夢中で釣っていました。

ネイティブのナイルテラピア。

しかし本命はナイルパーチです。荷物を下ろし、釣りの準備ができた時点ですぐさま船に飛び乗り、釣りを開始します。広大な湖かつ情報が無い状態で魚を探す場合、一投一投キャスティングしていては埒があきません。このような場合に有効な釣り方としてトローリングかあります。

トローリング中。

トローリングはルアーを水中に落とし、船の進む力で引っ張り続けて魚を誘う方法ですが、ただまっすぐ引くだけでなく、カーブする時の糸の角度や頻繁に変わる水深に合わせたルアー選択とロッド角度、何より日本のものとは比べ物にならないほど粗末なエンジンを駆使してベストな速度を見つけ、その速度を保つための漁師とのコミュニケーションなど、実際にやってみると想像よりも難しく、そしておもしろい釣りなのです。

トローリング中、ついに…その瞬間が!

日中は全くアタリが無く、本当にこれで正しいのだろうか?と疑心暗鬼になりそうな夕刻、突如私の釣り竿に強烈な衝撃が走り、引きこまれました。強烈すぎるパワーは否が応にもその先にいる相手がナイルパーチだと確信させてくれます。同時に私の両足は極度の興奮でガタガタと震えだしました。

強烈な引きに耐える。

この原稿を書きながらふと思ったのですが、もしかしたら私は他では得たことのない興奮を求めて世界中を周っているのかもしれません。未だ釣ったことのない魚、限られたチャンスをものにしないといけない緊張。人間と対等か、それ以上の力で相対する魚のパワー。その全てが、私を極度の興奮状態に陥れてくれるのです。そして、ついに私の手の中におさまったナイルパーチ!

取り込み道具を基地に忘れ、最後はエラに手を入れてキャッチ。 [写真タップで拡大]

心の底からの雄叫びをあげる。 [写真タップで拡大]

下記の写真を見てもらえたらわかりますが、何とも情けない表情をしています。泣きたいのか、笑いたいのか、疲れたのか、それとも安心したのか。

限られた日数の中で何度も挑戦と失敗を繰り返し、その度に感じたすべての感情と、その苦労が報われた瞬間がこの写真に表れているのかもしれません。

毎度のごとく苦労しますが、釣りはやっぱり最高だ。

釣りはやっぱり最高!

アングラープロフィール

前野 慎太郎(まえの・しんたろう)

20カ国超!海外遠征を繰り返し「自分だけしか見たことのない景色や魚」を求め、秘境を探しさすらう。地元広島河川のシーバスを始め、国内でもあらゆる釣りにチャレンジ。TULALAフィールドスタッフにして、Routesシリーズ開発担当。XBRAIDサークルメンバー


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