「もうクタクタ、膝はプルプル」それでもこの釣りはやめられない! 雄大な自然に挑む釣りジャーニー【テンリュウ舟木雄一の南アルプス源流チャレンジ2024】

あらゆる釣りに精通するテンリュウの舟木雄一さん、彼のライフワークとも言えるのが渓流釣りだ。今回は南アルプスの源流に挑んだ釣行記をお届け。人里離れた源流でしか味わえない独特の世界観がここにはある。

●写真/文:舟木雄一

舟木雄一(ふなき・ゆういち)

テンリュウ釣具事業部に所属し、さまざまなジャンルの製品開発に深く携わる。幼少期からトラウト、バスに加えてソルトの釣りを経験してきたマルチアングラー。トラウトに関してのメインフィールドは天竜川や木曽川水系だが、遠征釣行も積極的に行っている。

2024 シーバス特集

釣り人以外にも南アルプスを目指す者は多い

今回の行先は南アルプスの向こう側。僕らが住む長野県側から、山梨県側の野呂川へ釣りに行こうという考えだ。プロカメラマンのM氏をお誘いして同行してもらった。この方は、冬の北アルプスを登り詰めスキーなどの撮影を行う猛者だ。目的地は、かなりの山奥となり携帯電話の電波も届かない。何かトラブルがあった場合を考えると、最低でも2人での行動が最善と言えるだろう。2019年の台風19号の影響で、大規模な崩落の為に道路が寸断され、一時は立ち入り不可となっていたが、今のところ長野県側のルートが復旧している。以前にスタッフMと訪れのは、この台風が来る少し前の6月だった。その時のブログはこちら。『南アルプス源流チャレンジ (2019年6月28日)』。


夜も明けきらない早朝に、バスが発着する駐車場に集合する。すでに駐車場は100台以上が停まっていた。9割以上は登山が目的の方で、前日から入山してしいる方が大半だろう。券売機でチケットを買って、30人程が乗れるバスで峠まで連れていってくれる。この日は先行で30名ほどが列んでおり、自分たちの後ろには100名ほどが列んでいた。運良く第一便のバスに乗車できて、5時30分に出発。南アルプスの雄大な景色を堪能していると、運転手が気を利かせて景勝地となる場所をスピードを落としながら説明してくれる。

およそ40分後に分水嶺となる北沢峠に到着。


この日の前日まで、T.J.A.Rと呼ばれるアルプスを縦断する鉄人レースが行われていた。南アルプスもレースの舞台であり、その険しさはバスに乗っていただけでも充分味わえる。

途中に見えるイワナの魚影はパス、雄大な自然を突き進む

ここから徒歩で林道を歩き、野呂川の本流を目指す。降りたバス停では標高が1900mほどで、盛夏であっても朝は涼しい。以前、6月末に来たときは寒いくらいだった記憶がある。

林道は整備されていて、とても歩きやすい。

高山の景色を楽しみながら、1時間ほどで入渓点に到着した。

ここのところ雨が少なく川は渇水している様だが、さて…魚の活性はいかがなものか? 以前に来たときよりも、だいぶ荒れたようで、ところどころで崩落が目立つ。車が通っていた橋も、今は通れないようにロープで塞がれていた。ガレ場を慎重に下り、谷の底まで下りていくと堰堤の淵にイワナが浮いているのが見える。

長時間の徒歩による釣行で活躍するパックロッド

サイズだと尺を若干切るほどだろうか。支流を川沿いに下っていくと、何尾ものイワナの影か走った。連休中にアングラーは入っているはずだが、それでも魚は残っているようだ。ロッドを振りたい気持ちを抑え込み、30分ほど川を下ると本流との合流点に到着した。

荷を解きタックルを用意する。

長時間の徒歩での移動から、渡渉や高巻きを考えるとパックロッドの存在は大きい。レイズ インテグラルや、フェイテス パッカー風来房などはバックパッカーにはオススメのシリーズだ。

【レイズ インテグラル】

【フェイテス パッカー】

【風来房】

ルアー・フライで川を釣り上がっていく

水温は14℃ほど。雨不足のため些か水勢が弱く、魚を見つけやすいが騙し難い。私はルアータックル。M氏はフライタックルを選んで、川を上りながら探ってみる。

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ルアーでは一瞬反応するが、50cmほどの距離を置いて追ったら元の位置に戻っていく。魚をしっかりと目視できる分、魚からもルアーが良く見えるからか積極的に追うことはない。

M氏は先行してフライを試しており、カディスを結んだフライタックルだと反応がよろしい様でポツポツとヒットさせていた。

ところどころにアングラーと思える足跡を散見するが、前日に入ったのだろうか。

魚たちは、連休中に少々いじめられているのかもしれない。

毛鉤が良いかもと欲を出してテンカラに持ち替えて探ると、すぐに食い付いてきたが生憎のバラシ。

どうやら自分の中のリズムが悪い。魚とのバイオリズムがズレているのだろうか? そんな時は自信のある釣り(タックル)に戻して、釣れるまで(リズム感が整うまで)続けるほうが良い。

再びルアータックルに戻し、探り方をダウンストリームに変えて探ると魚の反応が変わってきた。

活性が低く追いきれない魚には、こちらから歩み寄っていくのも手だった。流れに任せながらルアーを送り込み、トウィッチとステイを織り交ぜていると、ポツポツと小型ながらもイワナがヒットしてくる。

この水量では、何年か前に見つけた個体の様な大物に出会うには厳しそうだ。

こんな時はサイズにこだわらず、楽しさを優先していきたい。なんて言ったって、ここは秘境とも言えるフィールド。少しくらいスレているからと言っても、魚の絶対数は普段通う河川とは比にならない。もちろん川の厳格なルールがあってこそで、支流域はキャッチ&リリースと決められている。獲って食べるなとは言わないが、節度をもって自然に感謝しながら遊ぶのが大人の釣りだと思う。

リズム良く釣りができるようになると、次第にコンスタントにヒットさせられるようになってきた。

投入点から少しカウントダウンして、魚の潜む泳層に送り込んだら、ラインを張ってミノーのリップに抵抗を掛けて動きを安定させる。ダウンストリームでルアーを見せて、U字を描きながら優しいトウィッチが効いた。小型ながらイワナが遊んでくれる。

後ろ髪引かれながらもそろそろ引き返しポイントに

しかし、上流に釣り上がれるのも、そろそろ限界のようだ。帰りのバスは16時が最終となる。それまでにバス停に戻ることを考えると、入渓したポイントに向けて引き返さなければならない。なかなか後ろ髪を引かれる気持ちだが、まだ帰りの支流を楽しみに引き返すことにした。

帰りに向けて引き返す。

戻りながら途中で食事休憩を挟み、1時間ほどで入渓きた支流まで戻ってきた。水量は本流に比べて少なく、水温は13.5℃としだけ低い。さて…いかがなものか? 大きな堰堤を越え、フラットな浅瀬でミノーを踊らせていると良型が喰い付いてきた。

パッと見た感じでは魚は見つけられないのだけど、人の影響が少ないエリアは驚くほど浅瀬にいるものだ。

M氏も良型をヒットさせてご満悦な感が伺える。本流よりも、コチラの支流の方が活性が高く、イワナ本来の獰猛さも見えて楽しい。上流に向かうと、より魚の反応が良くなってきて、複数尾がルアーを取り合ってチェイスしてくる。水深は15〜20cm程しか無く、ところによっては魚体の半分は水面から出ても追いかけて来る始末だ。サイズこそ大きくは無いが、アグレッシブなバイトを見れるのはルアーアングラーとして一番熱くなる瞬間だろう。掛かりが浅いと簡単にフックから外れてしまうのだが、もう充分に楽しめているので落胆することも無く、次の魚がチェイスするのが楽しくて仕方がない。

今回も実りのある釣行だった。栄養補給は柿の種がおすすめ!

最後の堰堤と決めた場所まで上り、納得のいくまでキャストをしたら納竿とした。前回の潜水艦サイズこそ拝めなかったが、最終的には尻上がりの展開で満足できるゲームを楽しめた。あとは帰りのバスに間に合うように、頑張って帰りの登り坂を歩くのみだ。山登りの用語でシャリバテという言葉があるが、適度にカロリーを摂取しないと足が上がらなくなってくる。前述のアルプスレース(T.J.A.R)の選手がSNSで紹介していたのは、スナック菓子の『柿の種』が良いとの事だった。軽くて携行しやすくジップロックに入れておけば、サッと食べやすいのでオススメだ。
行きは下り坂だったので1時間ほどで着いたが、帰りは登り坂なので1時間半ほどでバス停に到着できた。登山客がたくさん集まっており、おそらく南アルプスを楽しんで来たのだろう、皆が晴れやかな顔でバスを待っていた。私達はクタクタで、膝のあたりがプルプルと震えているw 普段からの渓歩きで足腰には自信があったが、長距離の歩行は久しぶりに疲れた。でも、楽しい釣行だったので、気持ちの良い疲れだった。また来年も行けるだろうか? それまで、体力作りは必要不可欠だ。

使用タックル紹介

【ルアー用その1】 

【ルアー用その2】 

  • ロッド: レイズ インテグラル RZI484B-UL
  • リール:カルカッタコンクエストBFS HG
  • ライン: PE0.5 (4lb )
  • リーダー:ナイロン1.5号 
  • ルアー:Yuiro5cm、神楽5cm、Arbor5cm

【テンカラ用】 

【フライ用】 


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