世界を旅する釣り人であり、釣り具メーカーのツララ(エクストリーム)のフィールドスタッフもつとめる前野慎太郎さんが、世界各地での釣行で遭遇したエピソードをレポート。今回は、世界を釣り歩くきっかけとなったタイ王国で猛魚を狙ったところ…?
●写真/文:前野慎太郎(エクストリーム)
世界各地で釣り歩く前野慎太郎さん。その源流となったタイ王国
ルアマガ+をご覧になっている皆さま、こんにちは。前野慎太郎です。今回ご紹介するのは、日本からほど近い東南アジアのタイを旅した時の出来事。かつてバックパッカーの聖地と呼ばれ、有名な観光地や美味しい食事などで旅行者に人気のあるタイですが、実は魚釣りも盛んで、気軽に遊べる釣り堀や、タイ奥深くのネイティブフィールドでのワイルドな釣りを楽しむこともできます。
今回はそんなタイの釣り事情をご紹介致します。少々昔話になりますが、私が今もこうして世界を釣り歩いているのはこの時の経験があったからこそ。私が海外釣行の魅力にとりつかれるきっかけとなった旅ということも含めて読んでいただけると嬉しいです。
タイ王国ってどんな国?
タイ王国(通称タイ)は東南アジアに属する立憲君主制国家です。首都バンコクにあるスワンナプーム空港からは、国内外の様々な場所へ行くことができるアジアのハブ空港としての役割も果たしています。
アユタヤやカオサンロードをはじめとした観光地や、プーケットにパタヤなど、バンコクにも引けを取らない賑やかな町はいつの時代も旅人を魅了し、その治安の良さと旅のしやすさは、いつしか多くのバックパッカーの登竜門となりました。
そんなタイには一体どのような魚が潜んでいるのでしょうか。
初めての海外は驚きの連続
スワンナプーム国際空港へと降り立った私は、荷物を受け取り空港の外を目指します。自動ドアを抜けると、湿度の高いジトッとした生暖かい空気が全身を包み込みました。耳から聞こえる音の発生源が人間の言葉だということは理解できますが、内容は一つも理解できません。
母国語である日本語と、中学校で初めて習ったつたない英語以外の言語を知らなかった私は、その時初めて自分が異国の地に降り立ったことを実感します。とはいえ、いつまでもここでじっとしているわけにはいきません。まずはバンコクの中心街に出てみることにしました。
いたるところに野良犬が… 人間の弱さを思い知る
空国からバンコクの中心地が近付くにつれて、綺麗で大きなビルが姿を現します。道路の上にはモノレールが走り、格安でバンコクの主要部を行き来することができました。東南アジア随一の都市バンコクは、私が想像するよりはるかに都会でしたが、もっと驚いたのは、その大都会のいたるところに野良犬がいることでした。
昼間は大人しかったのでそこまで危険とは思いませんでしたが、夜になると本気で威嚇されたり、酷いときは追いかけられることも。日本ではまず経験できない恐怖体験に、野生の怖さと人間の弱さを思い知ることになりました。
いざタイの奥地、カオレムダムへ!
バンコクから車で3時間ほど走ると、映画「戦場に架かる橋」で有名なカンチャナブリー県があります。そこからさらに西へ数時間走ると、ミャンマーとの国境の町サンクラブリーという町があり、そこがカオレムダムから最寄りの町となります。
この町はカオレムダム建設時に故郷を失うモン族をはじめとした人たちのために作られたらしいのですが、湖の上に水上小屋を建てて生活している人たちもいます。私はこの湖の上で暮らしている方々の家に泊まらせてもらい、釣り三昧の日々を送ることにしました。
狙うは東南アジアの猛魚 ジャイアントスネークヘッド!
水上小屋からはブッコミ釣りや小物釣りが楽しめますが、それらは夜でもできるので、明るい時間帯はボートに乗って、東南アジアが誇る猛魚「ジャイアントスネークヘッド」を狙うことにしました。ジャイアントスネークヘッドは東南アジアではトーマンという名称で有名ですが、タイではもっぱら「チャドー」と呼ばれており、日本にいるカムルチーや他地域の雷魚と同じく、エラ呼吸に加えて空気呼吸をする珍しい魚です。
主な釣り方はプロペラのついたトップウォーターを早巻きして誘う釣りと、空気呼吸の際、水面に出る波紋に直接ルアーを投げ込む呼吸打ちといった釣り方がありますが、今回はプロペラルアーをメイン使用して、呼吸が多いエリアではクランクベイトやミノーで狙うことにしました。
草刈り機のように長い柄のついたエンジンを搭載した木造の小船で湖上を進みます。「パカパカ」と音はうるさいですが、非常に燃費が良く、今後も世界中のいたるところで「パカパカエンジン」を見ることになりますが、この時の私は本気で草刈り機を改造してエンジンとして使用していると思っており、いつ壊れるのか気が気でなかったことを覚えています。
日本では経験したことのない大雨に遭遇した時は、ずぶ濡れな自分よりもエンジンの心配をしていたほどです。