九州を中心に活躍する、ランカーシーバス量産アングラー岡本隆治さんが、フィールドのリアルな状況をレポート! 現場へ足繁く通った上で得た知見やシーズナルパターンを詳しく解説! 連載がスタートしてほぼ2年「そろそろネタ切れ」!? いやいや、そんなことは当然ないワケで…今回のテーマは、シーバスゲームの重要なドリフト!
●写真/文:岡本隆治(DAIWA)
シーバス釣りの基本中の基本「ドリフト」を考察
ルアマガ+読者の皆様世話になっております。ダイワ営業の岡本です。おかげさまで極鱸道も、ほぼ2年。何を書こうかしら…。色々な釣りについて記事を書かせて頂きました。
が、そろそろネタ切れです(笑)。
もちろん、まだ記事を書いていないパターンは沢山あり、薄い知識でそれっぽく書くことはできますが、そんな表面的な記事は「極」鱸道としてアウトかなと…。と、いうことで、今回はシーズン性無視! シーバス釣りの基本的な部分でもある「ドリフト」について、自分の考えを書きました!
狙ったドリフトでバイトが入る時の気持ちよさは格別!
私はこれまで色んな人と釣りをしたり、釣りについて話したりしてきましたが、このドリフトに関しては、誰もが違う解釈・テクニックを持っていて、本当に十人十色! 誰のドリフトが正しく、こういったドリフトはダメだ…なんてことは全く無く、全てが正解であると思います。そんな中で、私の「ドリフト」の一部をお伝えできればと思います。
みなさんはシーバスのドリフトという単語をどう解釈しておられますか? アップに投げてリールを巻いたらアップドリフト。ダウンに投げてリールを巻けばダウンドリフト、シーバス業界では、流水に乗せてルアーを流すことを総じて「ドリフト」と呼んでいるようです。
私はドリフトという単語を「流れがある状況下で、ラインを使ったルアー・トレースコースのコントロール」と考えて釣りをしています。
で、ドリフトってどうやるの?
という事で、今回の極鱸道は「私のドリフト」。正直、かなりハードルが高く、上手い人に見られるかもしれないと思うと、書くのが怖い内容です笑 しかし、この連載は自分の釣りの中身を出し惜しみせずお伝えすると決めていたので、怖いながらも書いちゃいます! と、言うことで、ドリフトについて以下の項目で話をすすめます。
【ドリフト解説項目】
- ①ルアーにかける水圧
- ②ダウンドリフトとアップドリフト
- ③ラインコントロール
- ④応用編
では、恐る恐る進めます!
1.ルアーにかける水圧
流れの中でシーバスを釣ることにおいて、非常に重要な部分です。シーバスルアーの大半は、流れの中で使うこと・巻いて使うことを前提に作られており、それぞれのルアーには、適した巻きスピード=水圧があります。
※水圧という言葉は、水深に対して重力分の圧と、運動する水(水流)に対する圧に分かれますが、ここでは、後者になります。
止水でリールを巻かないと、ルアーは動くことは無く、ただのプラスチックの塊となっています。リールを巻きだすと、糸に引っ張られ、前方から水流=水圧を受け、ルアーは動き出します。世にあるルアーにはそれぞれに、最も「釣れるスピード範囲」があり、そのスピードで巻き続けることが出来れば、シーバスが釣れる確率が上がるということに繋がります。
さて、止水では巻きスピードだけで調節できる部分ですが、河川や潮流が効いた海では、そうはいきません。まっすぐ巻いているつもりでも、ルアーは徐々に下流に流され、巻きスピードに水流が加わり、どんどんルアーに掛かる水圧が増えていきます。また、ラインも水圧を受けるため、その分の負荷もルアーに伝わります。
つまり、ただ、同じスピードで巻いているだけだと、いつの間にか「釣れるスピード範囲」から外れるということです。
流れの中でも釣れるスピードを維持
そこで、流れの中でも「釣れるスピード範囲」を感覚で維持することが、非常に大事になってきます。ルアーやラインに水圧が掛かると、リールにその圧が伝わり、ハンドルに掛かる抵抗感=「巻き重り」が生じます。その巻き重りを適度な範囲に維持することが流れの中で「釣れるスピード範囲」を維持することに繋がります。
方法としては、まず止水でルアーが適度なアクションになるスピード(ルアーによって異なりますが、ミノーであれば、最も艶めかしく泳ぐスピード、もしくは、動くか動かないかのギリギリスピードで揺らぎがより出るスピードなど)をしっかり身につけます。そして、そのスピード時にハンドルに伝わる重みを手で覚えましょう。その重みを流れの中でも維持できれば、流れが有っても、基本的には大きく外すことはありません。
特にオープンで釣りをする際は、その意識を常に持つことで釣果が上がりやすいと思います。以上、最初の水圧についてのお話でした。それでは、水圧の話を踏まえて、二つの超定番のドリフトについて考えていきましょう!
2.ダウンドリフトとアップドリフト
ダウンドリフト
ダウンドリフトは、自分から流れに対して横~下流に投げてルアーを巻いてくる釣りになります。ルアーは流れに乗せられて、どんどん下流に流されていきます。リールを巻かなくても、ルアーは水圧を受けるため、ルアーは泳ぎ出します。
そのため、巻き重りを適度に押さえ、通常よりゆっくりの巻きスピードで巻く意識が必要です。それ以外にも、速いスピードでも動きすぎず、釣れるアクションをするルアーを選択する必要があります。
【ダウンドリフト オススメルアー】
ダウンでオススメなのがバーティスRシリーズ。速度が上がっても、動きが破綻せず、しっかり泳ぎ切る。ダウンで食わせるとテールバイトが多い。
アップドリフト
アップドリフトとは、自分の立ち位置より上流に向かってルアーを投げて、ルアーを巻いてくる釣りの事を言います。
上流に投げるということは、ルアーは自分に向かって流れてきますので、よりリールを早く巻かないと、基本的にはルアーが動き出さない状況になります。ダウンドリフトとは対照的に、近寄ってくるルアーが動き出す速さで巻くことと、レスポンスが良く、少しの水圧で動き出すルアーを選ぶことが重要です。
また、当たり前ですが、アップドリフトはルアーを巻いていると、そのうち下流までルアーが流れ、ダウンドリフトに切り替わるので、そういった変化をしっかりと感じることが大切です。
ターンについて
このアップドリフトからダウンドリフトに切り替わる瞬間が、いわゆる「ターン」と呼ばれるアクションで、ルアーの動きや姿勢・頭の向き・軌道、更にはレンジが大きく変わり、追尾していたシーバスや、待ち構えるシーバスをリアクションに持ち込む大きなチャンスとなります。ドリフトする中で、このターンの瞬間をどこに持っていくか?というコントロールが重要になってきたりします。
さて、ここまでは、ある程度シーバス釣りをしている人なら、各メディアでよく見たり聞いたりする内容ですよね。では、ここからは非常に個人的な想像や感覚が混じりますが、「私のドリフト」を深掘りしていこうかと考えます。
3.ラインコントロール
私のドリフトは、基本的に流れ・風・障害物などを使ったラインの形のコントロールです。では、アップドリフトや、ダウンドリフトの先のドリフトの説明をしようと思っています。
●ラインが受ける水圧と、リールの巻きスピードの足し算引き算
先述したように、ラインが受ける水圧でもルアーは動き出します。そのため、ラインが受ける水圧を考慮し、感覚でリールの巻きスピードを引き算しなくではいけません。ラインのどれだけの長さが、どれだけの流速に当たっているか、という部分も加味して巻きスピードを決めます。
●どれだけラインと水を接触させるか
PEラインは比重が軽いため水圧を受け、みるみる流されていきます。そこで、ドリフトコースを決める上で、どれだけ水にラインを接触させるかが一つのキモとなります。水とラインの接触は、ロッドの立てる角度である程度コントロールできます。同じ場所にキャストをしても、ロッドを下げているのと立てているのではラインの形は大きく変わり、ルアーのトレースコースも変わってきます。
●”ラインを水に引っ掛ける”
ラインを水に引っ掛ける… 少し難しいですが、この感覚を持つとドリフトの自由度はかなり上がると思います。ルアーをターンさせる場所の精度を出すことや、遠距離の下流側でアップドリフトに近い流し方をしたい時などに非常に役立ちます。
U字にラインを出す釣りの時、私はキャスト範囲の中で、「どこの水にラインを引っ掛けるか」ということを考えながら釣りをしています。手前のラインを水に浸すか、持ち上げるかで、「引っ掛ける水」の距離を変えることが出来るので、ドリフトコースにバリエーションが出ます。
●立ち位置
これは基本中の基本ですが、同じ足場からラインをコントロールすることには限界があります。ドリフトコースにバリエーションを付けるのに、最も簡単で、最も効果的なのが立ち位置を変えることです。
4.応用編
さて、応用編です。いくつか、ドリフトの例を出しましょう。
応用その1「ライン先行=ルアーが頭から流れていくドリフト」
こちらは先述したアップドリフトと、「ラインを水に引っ掛ける」ドリフトが基本になります。基本的には、落鮎・イナッコなどのパターンの時に効果が出やすい釣りです。
まず、狙いのピンが自分より上流にある場合ですが、
1.狙いの場所より、アップ寄りにルアーをキャスト
2.そのままラインスラックを出したまま、ゆっくりと糸を回収
これはシンプルなアップドリフトですね。
次は、狙いのピンが自分よりも下流にある場合。
1.アップ目にルアーをキャスト
2.そのままラインスラックを作り、ラインでU字を描く
3.狙いのピンにルアーを通すため、最も効果的な場所の水を引っ掛けるために、ラインスラックを弾いてコントロールする
この際、ラインスラックの形でルアーの頭の向きが少しずつ変わります。その頭の向きを意識して色んな角度から攻めて見ましょう。また、ラインを引っ掛けているということは、こちらが感じているよりも早いスピードでルアーは下流へ向かっていきます。そのため、引っ掛けている水の範囲が広いほど、巻きスピードは抑えめにしています。
応用その2「ルアー先行=ルアーのテールを魚に見せるドリフト」
こちらは、一般的なダウンドリフトにあたりますが、よりスレている魚に対してラインを見せないというメリットがあります。パターンとしては、サヨリ・エビなどの繊細なベイトを捕食している際、効果を発揮しやすいです。
1.狙いのピンに対し、上流に立つ
2.ピンから、数m~10m程度沖にルアーを打つ
3.出来る限りロッドを立て、ラインを水に付けないようラインを巻き、狙いのピンにルアーを流していく
大型の魚を狙うならば、アップドリフトという話を良く聞きますが、案外そんなことも無く、特にクリアウォーターやスレている魚はダウンのドリフトの方が食うケースが多いと思っています。
また、コツとしては、狙いのピンに対してルアーを沖に打ちすぎないことです。何故なら、着水点からピンが離れるとその分ラインが水を掴み、ライン先行寄りになってしまうからです。
応用その3「橋脚を利用したドリフトコース」
これはバスでいうチョウチン釣りに近い釣りなのですが、少々リスキーな釣りになります。この釣りをする際は、橋脚の表面の質がツルツルであること、ラインを魚の大きさに対して余分に強くすることが必要です。
橋脚の裏側に身を隠している魚を狙う際、有効な方法となります。
1.キャストが届く範囲で出来る限り上流に立つ
2.狙いの橋脚から、数メートル沖にルアーをキャストする
3.ルアーを流し込み、橋脚にラインを接触した状態でルアーをターンさせる
この釣りのキモは、出来る限りラインに負荷をかけないように角度をつける事。また、手前の流れにラインを持っていかれないようロッドを上げる事。もう一つは、着水点をどれだけ橋脚から離すかでドリフトコースの奥行が決まることです。
バス釣りでは、木やブッシュにルアーを突っ込むカバーフィッシングがありますが、こういったストラクチャーを用いた釣りは、シーバスにおいても通常ではルアーを通せない魚を狙えるメリットがあります。そのためにはもちろんそれ相応のタックル組みが必要になります。生半可なラインではルアーのロスト率が上がりますし、ラインブレイクが増えてしまいます。
私は、リバーシーバス相手でもPE 2号以上、リーダー40ポンドでこの釣りをしています。また、前述した通り、橋脚の質の判断や魚の強さを考慮して、無理はしません。とくに魚が強い有明海では絶対にしません(笑)。
この釣りは、通常の釣りで魚が出せない時の最終手段と考えて頂ければと思います。
応用その4「バイブや高比重シンペンを使用したボトムドリフト」
コチラは、パターンなどは関係なく、食わない魚を食わせる特効薬になる釣りです。ミニエントなどのトラブルが少ないバイブレーションやレイジーファシャッドなど、ヘッド側にウェイトが集中した前傾姿勢のシンペンが使いやすいです。
1.狙いのピンよりも上流にキャストする。その際、水深が深ければ深いほど、上流に打ち込む
2.ラインを適度に送り込みボトムを取る。その際、高比重のルアーに対して、軽いPEラインは先に流れているためライン先行の状態になる
3.そのままボトムをスローリトリーブorリフト&フォールを行い、狙いのピンに向けルアーを進めていく
4.アングラー側がアクションを付け、ラインを回収する事で、徐々にライン先行からルアー先行に切り替わる
5.その瞬間がターンとなるので、そのターンを狙いのピンに持っていくよう調整する
これはラインが太ければ太いほど、ラインが流れを掴むため難しくなります。そのため糸は細くしたくなるのですがボトムで食わせる分、根ズレのリスクを伴いますので注意が必要です。
タックルはどうすればいいの?
さて、こういったドリフトを行う上で、タックルも重要になってきます。
ロッド
個人的には、ドリフトを容易く行うために求めるロッドの条件は以下の通り。
【ドリフトの釣りで使いやすいロッドの条件】
- ラインスラックをコントロールしやすい優しいティップ
- ラインをコントロールするのに十分なレングス
- ラインスラックが出た状態でもフッキングを決めれるレスポンスの良いバット
という事で、いつもながらオススメしているモアザンブランジーノEXの97ML/Mと、98M/MHがベストだと思っています。
リール
とにかくラインスラックが出る釣りで、ライントラブルが発生しやすいです。ですのでトラブルレスなリールをオススメします。私は22イグジストLT4000-XHを愛用しています。年間を通してライン交換も1度か2度で、ほとんどライントラブルを起こしていません。
ライン
ラインスラックを出すという事は、フッキング後にラインスラックを回収する間、魚に一時的に主導権を与えてしまう可能性があります。そこで、耐摩耗性が圧倒的に高い12ブレイドのPEラインがオススメです。どうしてもファーストダッシュを食らう場合は、糸に頼るしかありません。
また、ラインスラックを出して、「水に引っ掛けたい」場合は水の抵抗を受けやすい太い糸を。逆に、ラインスラックを出したくない場合は、水キレの良い細い糸を選ぶと、よりドリフトがしやすくなります。
習得すれば、さらに魚が釣れるドリフト!
以上、いくつか「私のドリフト」を書かせて頂きました。
正直、私の中でも、これはほんの一部です。他にも状況に応じてあの手この手でルアーのトレースコースやアクションを作っていくのですが、文章にするのが難しい釣りも多く、簡単な物だけにさせて頂きました。きっとそういった感覚で行っているドリフトを文章に出来るだけ理解度を深める事が出来れば、もっと釣りのレベルも上がるんだろうなと思っていますが、まだまだです。
最初に書いた通り、ドリフトは十人十色。全てのアングラーに独自のドリフト理論があると思いますし、私のドリフトの考えも、まだまだ発展途上で間違いがあるかもしれません。そのため、「こんな考えの人もいるんだ」程度に思っていただいて、それぞれのドリフトの参考にしていただければと思います。
では、ベストシーズンも終盤!最高の魚でシーズンを締めくくれるように、楽しんでいただければと思います!
今回も長い文章を読んでいただき、ありがとうございました!
アングラープロフィール
岡本 隆治(おかもと・りゅうじ)
三度の飯よりシーバス釣りが好きな、DAIWA営業マンきってのシーバスジャンキー。これまで転勤先である、大阪湾、北陸、東京湾などで釣りを楽しんできたが、現在のメインフィールドは九州。2020年にはMAX98cm、2021年にはMAX99.9cm、2023年には3本のメーターオーバーをキャッチした実績を持ち、ビッグベイト「モンスタースライダー」の開発にも携わる。
※本記事は”ルアーマガジンソルト”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。