【コピーしただけのルアーで釣れてもなぁ…】敢えて直球ど真ん中の「ブルーギル」ルアーを出して大ヒットの裏話

ギル型ビッグベイトの元祖となると諸説あるだろう。ただ、日本におけるフルサイズのギル型ビッグベイトとなると、デプスの「ブルシューター」が火付け役といっていい。2011年の登場以来、琵琶湖を中心に衝撃的な釣果を叩き出し、その後のサイズ展開でその衝撃は全国へと広がった。ギルルアーを語る上で絶対に欠かすことのできないこの歴史的傑作の生い立ち、ファミリー、使用法まで、デザインした奥村和正氏本人に聞いてみた。

●文:ルアマガプラス編集部

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奥村和正(おくむら・かずまさ
日本を代表するデカバスハンター。ビッグバスにフォーカスしたブランド「デプス」代表。日本のビッグベイトブームの立役者の一人で、サイレントキラー、ブルシューターなどの名作ビッグベイトをデザインしてきた。

アメリカ的発想が生んだブルシューター

ブルシューター開発のきっかけを奥村さんに尋ねると、話は20世紀にまで遡った。

奥村「2000年か1999年頃から日本のビッグベイトの歴史が始まったと思うんですけど、最初にトラウトベイトを見た際はニジマスをコピーしただけで、ルアーっぽさが全然なかった。だから、正直『これで釣れてもなあ…』みたいに思ったんです。あの頃、ルアーはこうあるべき…みたいな固定概念があったんですね。でも自分でビッグベイトを使うようになったら、アメリカ人ってやっぱりすげえなと思ったんですよ。ニジマスを食ってるでかいバスがいるから、ニジマスそっくりのルアーを作るという発想って、直球じゃないですか。その発想は当時の日本人にはなかったですね」

そして数年が経ち、琵琶湖ではブルーギルが大量発生して、「ブルーギルパターン」という声を耳にするようになった。

奥村「でも、使うルアーはスピナーベイト、バズベイト、クランクベイト、バイブレーションだったんですよ(笑)。で、あのアメリカ人の直球的な発想に感銘を受けたことを思い出したんです。直球でど真ん中の、ブルーギルの形をしたルアーを作ろうと思ったんです」

それがほかでもない、ブルシューターだった。そしてもう一つ、奥村さんを突き動かした大きな事件が勃発した。

奥村「僕の記憶が正しければ、栗田君が世界記録のバスをブルーギルで釣ったあとでしたね。ブルシューターを作り出したのは」

そう、あの世界記録のバスが引き金になっていた。つまり、ブルシューターは奥村さん自身が世界記録を釣るために作ったルアーでもあるのだ。

奥村「試作品を初めて湖上で導入したときに、とんでもないことが起きました。バスがブルシューターの取り合いをし始めたんですよ。それどころか、ファイト中に針から外れてバレても、同じバスがまた食ってきたんです。完全にエサやと思ってましたね。そのとき、『絶対に栗田学には渡さないぞ』と決めました。ところが、湖上で彼に会ったときに見られてしまい『ください』って言われたので、しぶしぶあげました(笑)」

「売りたくない」と思わせるほどの存在

本当はブルシューターを売らずに、自分専用にしたかった奥村さんだったが、社員の説得に屈して(?)2011年にデプスウェブメンバーの会員限定アイテムとして販売。次に開発したブルシューターJr.もテスト段階でオリジナルを凌ぐ凄まじい釣れ方を見せたが、こちらも2013年のウェブメンバーオリジナル特典として入会者全員に進呈された。

奥村「金型代を自己負担するからJr.だけは絶対に売りたくない…一度はそう思ったんですけどね。でも、より釣れるルアーを開発して世の中に提供するっていうのが、うちの会社の理念ですから」

2013年にデプスウェブメンバーの会員数が飛躍的に伸びたというのも頷ける。

奥村「その後、あるDVDのロケ中に、ブルシューターのオリジナルがすごい釣果を出したんですよ。59cmをアタマに55アップが10本以上釣れた。そのDVDが発売されると、オリジナルモデルがバタバタと売れましたね。ただし、その翌年から、ほかの会社からもギル型ビッグベイトがリリースされるようになりましたが…」

デプスも2015年には一般販売用としてブルシューター160をリリース。これでウェブメンバー以外のアングラーも160なら入手することが可能になった。

奥村「やっぱり、一番使い勝手が良いのは160ですよね。中間的なサイズで、引っ張る力もあるし、キャスタビリティーも高い。扱いやすいサイズ感ですね」

ブルシューターJr.と160は、レンジキープするよりも、若干上ずる感じで泳ぐように設計されていて、比較的浅いレンジでの使用に向いている。一方、オリジナルサイズは水面下3~5mでレンジキープできる。単なる大きさ違いではなく、狙うレンジによって使い分けることも覚えておきたい。ブルシューターはバスを1匹釣ると開眼したように釣り方がわかるという。そのとき、「本当は売りたくなかった」という気持ちも、きっと理解できるに違いない。

ブルシューター(デプス)

全長19cmという、実際のブルーギルに置き換えてもかなり大型になるビッグベイト。3~5mという深めのレンジまで沈めてから、レンジキープしつつ泳がせることが可能。当然ビッグバスに強いが、40cm台のバスであっても果敢にアタックしてくる。

●おでこ
ブルシューターが誇るキレのいい左右へのスライドアクションは、体高のあるボディと、このでこっぱち気味のおでこが水を受けて、引き起こされる。

●腹びれ
この腹びれがキールの役目を果たし、ディープであっても浮き上がりを抑えてレンジキープ効果を発揮。ブルシューターは開発にそれほど手間がかからなかったが、この腹びれの角度を決めるのには時間がかかった。

●フェザーフック
スローに引いて、しっかりとバスに見させて食わせるために、フックの存在を隠すフェザーフックを採用。水流による揺らぎがバスにスイッチを入れることもある。初代ブルシューターJr.も同様にフェザーフックだった。

●サイズ感
世界記録のバスを釣るという目的もあったので、全長19cmという大きさに設定。6.4ozというウエイトは、発売当時に存在したバスタックルでは、投げられる限界の重さだった。

ブルシューター160(デプス)

ウェブメンバー限定販売ではなく、釣具店で販売された最初のブルシューター。オリジナルとJr.の中間的サイズ感で、非常に使いやすい。オリジナルに比べて、若干上向きの姿勢で泳ぐように設計されているので、ウィードなどを拾いにくい。ストップ&ゴーのストップ時に見せるグライドアクションが必殺技だ。

●ブルシューター160の内部構造

これはスローシンキングタイプの内部構造。非常に堅牢な作りで、海外の怪魚釣りにも対応。フローティングだと腹部のウエイトが減り、中央のラトルルームにステンレスのラトルボールが入る。

ただ巻きとストップ&ゴーを習得せよ

ブルシューターシリーズの基本的な演出法はただ巻きだ。その巻きスピードはケースバイケースなので各自で試していくしかない。そしてストップ&ゴーもマスターしたい。水面直下をグリグリと巻いてストップ…の繰り返しだが、ストップさせたときの余韻で動くグライドアクションがキモ。これを出すために、止めた際に糸ふけを出すことが鉄則。糸を張りっぱなしだとその動きが出せない。

ブルドーズ&タイニーブルドーズ(デプス)

ブルシューターの姉妹モデルとして、ほぼ平行してリリースしてきたリップ付きモデル。障害物がある場所でクランキングできる。

奥村「リップラップに当てたり、エビモの中を通したりとかできますね。でも、作ってすぐに投げて、着水して、浮かべて置いたらロクマルがドカーンみたいな感じでしたよ(笑)」

ブルシューターJr.(デプス)

2013年のデプスウェブメンバーに特典としてもれなく配られたモデル。特に琵琶湖のカナダモドームの上で泳がせると、ビッグバスが分厚いウィードの屋根を突き破って炸裂! また琵琶湖以外の場所でもギル型ビッグベイトの威力を発揮して、全国に波及した。

●テールのバリエーション

ブルドーズJr.には「フラットテール」モデル(左)ブルシューターJr.には「シャダーテール」モデルが存在。どちらもウェブメンバー限定販売されたもの。前者はクランキングした時のピッチが更に早くなっている。後者はやや直線的な動きでテールだけがアクションする感じ。それぞれ効果的なシチュエーションがある。

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ノーブランド品

タイニーブルシューター(デプス)

4つあるブルシューターのうち、最小の10cm。小場所での使用、着水音を極力抑えなければいかない状況などで活躍。標準的なタックルで使えるので、ギル型ビッグベイトをより身近なルアーにしてくれた。

フナ系カラーの必要性

ブルシューターファミリーは、ブルーギルだけではなくフナをイメージして使うケースもある。ただ一つ知っておきべきことがある。

奥村「フナを食っているフナパターンのときは、ギルカラーはあまり食わないです。フナカラーのほうが食われます」

できるだけフナ系カラーも準備しておきたい。


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