【社内の様子もちょい見せ⁉】小野社長が語る「ジャッカルが琵琶湖にある理由」

時代のニーズに対応する新しいルアーを次々と生み出し続けるジャッカル。
そこには「開発スピードの早さとクオリティの高さ」を掲げるジャッカルの基本理念、そして琵琶湖の存在があった。

●文:ルアマガプラス編集部

profile

小野俊郎(おの・としろう)
1999年に加藤誠司氏とともに株式会社ジャッカルを設立。2002年より大津市真野の琵琶湖畔に移転し、バスルアーをはじめその製品は日本のみならず世界40カ国以上で販売されている。現・代表取締役社長。

日本全国のフィールドの中間地点にあたる琵琶湖

琵琶湖の北湖と南湖を分ける琵琶湖大橋のたもとに、昨年完成したばかりのジャッカルの新社屋がたたずんでいる。ひとつのバスルアーから始まり、今や釣具総合メーカーにまで成長したこの会社は、1999年の設立以来、この琵琶湖畔で数えきれないほどのルアーを輩出してきた。

最近バス釣りを始めた釣り人からすると、ジャッカルが琵琶湖発祥のメーカーであるという印象は薄いかもしれない。実際、ジャッカルルアーは日本全国、フィールドを問わず活躍しているし、さらに今では世界40カ国以上で販売され世界中で愛されている。

しかし、ジャッカルは琵琶湖なくして語ることはできない。なぜなら、1999年にジャッカルルアー第1号として誕生したクロステールシャッドから今月発売の新製品まで、ひとつとして琵琶湖でテストされていないルアーはないからだ。

「ジャッカルを琵琶湖の湖畔に作った1番の目的は、日本、いや世界でもっともバスフィッシングの聖地と言えるフィールドだから。釣具メーカーである以上、現場からのフィードバックが新しいモノづくりをしていく上で大切。じゃあ現場としてどこが1番いいか。ジャッカルが琵琶湖にある最大の理由はここだよね。複合的な要素としては、僕はトーナメントアングラーだったので、日本全国をトレイルするときに琵琶湖がある滋賀県ってちょうど中間地点なんだよね。関東や桧原湖に行くのも九州に行くのも、どこに行くにしてもど真ん中。アクセスが非常に良かった。バスフィッシングのメーカーを勃興するには琵琶湖の立地は最高だった」

琵琶湖畔にメーカーとしてのすべての機能を一極集中

ジャッカルが他のルアーメーカーと大きく異なる点として、製品の開発、生産、販売までのすべてをこの琵琶湖畔に集約していることが挙げられる。生産に関しては、同じく琵琶湖にほど近い竜王町に自前の工場をもっているのだ。

「琵琶湖という立地のメリットを最大限に活かすために、本社の機能、そしてモノづくりから販売までを集約して湖畔におきたかった。製品開発というのは日々、いろんな形で進んでいるんだけど、そのテストはすぐに琵琶湖でできる。営業やプロモーションを考えたときも、現場に近い方がより速やかにお客さんのニーズを捉えやすい。琵琶湖畔にすべての機能を集中することのメリットはとても大きいんです。設立当時も琵琶湖以外の選択肢はまったく考えなかったね。唯一無二でしょう。迷いはなかった。僕はもともと関東の出身なんだけど、ブラックバスのメーカーやるんだったらそりゃあ琵琶湖が1番いいよね」

ジャッカル・クオリティを支えるもの

ジャッカルがこれまでに販売してきたアイテム数はなんと千七百(2022年時点)。カラー違いも含まれるとはいえ、単純計算でひと月6アイテムという驚異的な開発スピードだ。開発スピードの早さとクオリティの高さを重視するジャッカル。それを可能にしているのが先に述べた一極集中システムによることは疑いようがない。

「人材と環境。世界的に見てもここまでそれらが整っている釣り具メーカーはないんじゃないかな。それは言い切れる。うちの開発には経験をしっかり積んだ人間がたくさんいるんです。ルアーってこういう形状にすればこういうアクションになるよねとか、プロからこういう表現の要望が来たら、こういうふうにすればいいよねとか。プロからの要望はどうしても抽象的な表現になりやすい。そこを忠実に理解して設計を通してプロが求めるアクションを出していく。あるいは自分自身がイメージしている動きを再現する。まずはそういう技術的なスキルがものすごく大事なんです。そのスキルをもつ人間がこの会社には揃っている。1メーカーで6、7人ものルアーデザイナーがいる時点でメーカーとしては非常に稀有。CADで設計して、モデリングマシンでプロトタイプを作って、会社にある大水槽や琵琶湖でテストして」

そう。

全てが1カ所に集約しているのだ。

「これが例えば水辺から離れていたり、試作品づくりが外注だったり、中国の工場を使っていたりするとそれだけで時間がかかってしまう。優秀なデザイナーが現場で試作品を作って、それをすぐにフィールドでテストできる。ジャッカルでは同じ時間の中でトライ&エラーが圧倒的な回数こなせるんです。だからこそ、より早く良いものができる。なんでそういう体制を作りたいと思ったかというと、フィールドコンディションが刻々と変化するから。バスはどんどん学習していくし、どんどん新しい釣り方も生まれてくる。そこに対応しようとすると、開発のスピードが遅いと、そのときは良かったかもしれないけど、製品化されたころにはもうバスに効かなくなっていることもある。最近発売されたライブダーター(ワインド釣法で使うハードプラグ)もそうでしょう。今、欲しい。まさに今時期に活躍するルアー。これが来年発売だったらもう遅いかもしれない。ジャッカルの開発スピードだからこそなせることなんです。これはジャッカル設立時から変わらない理念。でもそれってメーカーとしては当たり前のことなんだよね。世の中の釣り人に必要とされるメーカーであるためには、当然兼ね備えておかなければならない機能だと思っています。だって釣り人は今この瞬間に1番いいものが欲しいわけじゃない。そして釣り人もバスも日々進化している。どんどん新しくて良いものが必要とされる。そこを叶えるために開発スピードが遅いとお客さんのニーズには応えられない。釣りに限らず全てにおいてそうだと思うけどね」

ジャッカル社屋内に設置されている巨大水槽。開発者が真剣な表情でアクションチェックをする姿は日常風景だ。

ほかとはひと味違うジャッカルイズムとは

「人と一緒はイヤ。『ほかとはひと味違う』っていうことを普段から考えてモノづくりをしているかな。あとは、それでいてより広く、多くの人に理解してもらい支持してもらえるものを作りたい。だから、あんまり狭い範囲のこだわりの押し付けにならないように意識している。いい意味で『仕事』として、自分の趣味の世界にとどまらず、世の中の人にとってこういうルアーで釣ったら楽しいだろうなとか、こういうものを使ってみたいと思うだろうなとか、常にそういうことを念頭に置いてモノづくりをしている。それでいてひと味違うこと。『なにこれ?』っていう驚きもほしいじゃない。この考えは社員にも根付いてきている。会社の中で自分も常に社員に対してそういうものを求めているし、自然と会社の中にそういう哲学は浸透していると思う。例えば、うちのフィッシングショーのブースを見てもらえばわかると思うけど、たいていのメーカーさんは毎年フォーマットって一緒じゃないですか。うちって毎年違うでしょ。大水槽を持って行ったこともあったし。同じことをするのがイヤなの。常にみんなに新しい発見や驚きを体験してもらいたい。ジャッカルはそういうスタイルの会社です」

ライブダーター(ジャッカル)

ジャッカル屋上からの景色。

外注ではなく自社生産を可能にしているジャッカル竜王工場。

100人近いスタッフがジャッカルクオリティを支えている。

屋外に設置された垂直型水槽。フォール系のルアーテストを行える。

開発室。扉には「関係者以外立入禁止」の文字が。

毎回来場者を驚かせるフィッシングショーのジャッカルブース。ここにもジャッカルの理念が反映されている。

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