【リーダーは50cmが最高⁉】最先端スタイル『PEベイトフィネス』の魅力とは?

少し前までは、PEライン、カバー、フィネスというキーワードが並べば多くの人が「パワーフィネス」を想像しただろう。全国各地で同時多発的に誕生・進化を遂げたこのメソッドは、多くのアングラーに採用され、確かな結果を残していた。だがしかし。近年この構図に変化が訪れつつある。道具の進化とともに新たに台頭してきたメソッドが、それまでパワーフィネスを武器にしていたアングラーにも大きな影響を与えているのだ。その名は『PEベイトフィネス』。PEライン、カバー、フィネス、そしてベイトタックルという要素が組み合わさった、次世代の対カバー用メソッドだ。

●文:ルアマガプラス編集部

馬場孝介
ばば・こうすけ/ホームの亀山ダムを中心にその腕を磨くスーパーロコアングラー。カバー撃ちの釣りに一家言があり、凄腕ぞろいで知られるSINZANKAIの年間優勝経験を筆頭に、多数の実績を残す。アイデアマンでもあり、独自のタックルセッティングを編み出し、実戦にも起用している。バリバスのフィールドスタッフ。

バス釣りとカバーフィッシングの発展

釣りの種類は数あれど、目に見える障害物の中にルアーを入れて、そこから魚を引っ張り出す釣りはほとんどないはずだ。つまり「カバー」の釣りはバス釣りが持つ独自性の大きな一因といえる。現に、バスアングラーでカバーフィッシング好きを公言する人は少なくないだろう。

そんなカバーの釣りも、時代とともに進化を続けている。フリッピングの台頭とともに7フィート6インチのロッドが増えたり、左巻きのベイトリールが優勢になったり…。いわばカバーフィッシングの転換点ともいえるその進化だが、近年注目を浴びた例を挙げるとすれば、「ベイトフィネス」と「パワーフィネス」がわかりやすいだろう。

どちらも共通するのはカバーの中へフィネスルアーを入れ込むというもの。年々難しくなっていくバス釣りへの回答として登場した食わせの釣りを、それまで大きな、あるいは重たいルアーで狙っていたカバーで試すのだ。

今回登場してくれる馬場孝介さんもカバーの魅力に取りつかれたひとり。馬場さんはカバーの宝庫でありパワーフィネス発祥地のひとつ・亀山ダムでその腕を磨く凄腕だ。

「パワーフィネスももちろんやってきました。10年位前ですかね。カバーネコが流行る前は本当によく釣れましたよ(笑)」。

そんな馬場さんだが、近年のカバーフィッシングスタイルはベイトタックルが主流になっているという。しかもPEラインを使う、いわゆる『PEベイトフィネス』と呼ばれるセッティングだ。

馬場さんがホームレイクとして通いこむ亀山ダムを筆頭に、房総リザーバーはカバーの数も種類も非常に豊富。だからこそ独自のメソッドが発展したともいえるが、その浸透スピードも速いとのこと。馬場「誰もカバーにネコリグを入れていなかった頃の釣果はすごかったですよ。あっという間に落ち着きましたけど(笑)」

PEラインをカバーで使い切るために

「亀山の試合だけに出ていたころはそこまで感じなかったのですが、新利根川に通うようになって、ベイトタックルの優位性を痛感したんです」。

スピニングに比べて、ベイトタックルのほうが高い精度のキャストが決めやすいのはご存じの通り。しかしそれだけでなく、その構造がゆえの、手数の差も無視できなかったというのだ。

「スピニングだとキャストのために、ラインを指にかける、ベールを起こす、という2つの動作が必要になります。一方、ベイトならクラッチを切るという1動作だけで済むわけです。極端な話、新利根川で1
日釣りをすれば、ベイトとスピニングではキャスト数に倍近い差が生じるはずです」

とはいえ、この部分だけに着目すると、PEラインである必要はないともいえる。

「やはり軽い、フィネスなものを投げるならライン自体が軽いに越したことはありません。もちろん
カバーに入れる釣りですから、強い必要もある。軽くて強い。つまりPEこそがカバーフィッシングに
最適なラインなんです」。

馬場さん自身が導入するきっかけは先述の通り新利根川だが、その背景にはタックルの進化があったことも見逃せない。

「まずPEラインです。近年は強くて使いやすいものや、比重の違うものなど、選択肢が増えましたよね」。

一昔前のPEラインといえば、コシがなく根ずれにも弱い、糸鳴りがすごい、などバス釣りには使いにくいものが多かった。

「現在メインで使っているPEライン『アブソルートPE』ならその懸念もまったくありません。適度なハリもあるしコーティングも強い。滑りもかなりいいですから、吊るしのようなカバーの釣りでも非常に使いやすくなっています」。

そしてもうひとつ。リールの進化も重要な要素だったという。

「ベイトフィネスリールの進化も大きな要因でした。私の場合、アルファスエアが出てくれたこと
で、PEベイトフィネスの釣りが確立したといっても過言ではないと思います。同じベイトフィネス
リールでも、スプール径が28ミリと30ミリでは投げやすさに雲泥の差がありますからね」

現在、カバーの釣りの殆どがPEベイトフィネススタイルとなっている馬場さんだが、フロロカーボンラインの通しタックルを使うことはないのだろうか?

「少なくともホームレイクである亀山だとほとんどありませんね。よっぽど濁ったときにジグ&ポー
クとか、そのぐらいでしょうか」。

それほどまでに、カバーの釣りは『PEベイトフィネス』に置き換えることができるという。

PEベイトフィネスがメインウェポンとなっている馬場さんではあるが、もちろん現在でも従来のパワーフィネスの出番はあるという。馬場
「ベイトだとどうしてもバックラッシュしてしまうので、より複雑な場所の無理やり奥に投げ込む、という釣りならパワーフィネスが有利です。それからスピニングのほうがコンパクトなフォームでキャストできるので、オーバーハングの中に入って釣りをするような水位が高い時のリザーバーみたいなシチュエーションもパワーフィネスがおススメです」

対カバータックルにそのまま置き換えられる!!

ノーシンカー用(写真左)
●ルアー:フリィーイモ55(ディスタイル)+オフセットマスターヘビークラス3/0(バリバス)
●ロッド:ブルートレック DBTC-71MH-PF(ディスタイル)
●リール:アルファスエア TW(DAIWA)
●ライン:アバニ ジギング10×10MAXパワーPEX9 1.5号(バリバス)+アブソルートショックリーダー[VSPフロロカーボン]12ポンド(バリバス)

リーダーレスダウンショット用(写真中央)
●ルアー:ギーラカンス3インチ・プロト(ディスタイル)+リングオフセット1/0(バリバス)+TGスリムシンカークイックチェンジャー3.5グラム(バリバス)
●ロッド:ブルートレック DBTC-71MH-PF(ディスタイル)
●リール:スティーズCTSVTW(DAIWA)
●ライン:アブソルートPE X8 1.5号(バリバス)+アブソルートショックリー
ダー[VSPフロロカーボン]12ポンド(バリバス)

カバーネコ用(写真右)
●ルアー:トルキーストレートHG 4.8インチ(ディスタイル)+本気ネコフック# 3(バリバス)+ネイルシンカー2グラム
●ロッド:ブルートレック DBTC-65M+-PF(ディスタイル)
●リール:アルファスエア TW(DAIWA)
●ライン:アブソルートPE X8 1.5号(バリバス)+アブソルートショックリー
ダー[VSPフロロカーボン]12ポンド(バリバス

ピックアップアイテム

アブソルートPEX8(バリバス)

『絶対』の名を冠したバス用PEの完成形
アブソルートAAAといえば、2024年のタックル・オブ・ザ・イヤー ライン部門を獲得した大人気のフロロカーボンラインだが、それと同じく「アブソルート」の名を持つPEライン。原糸そのものがハイクオリティなのに加え、きわめて精度の高い撚り上げ製法「耐破断性工法」を採用。加えてバリバス独自の加工「SP-V」も施され、強いうえに摩擦抵抗も低いと、いいことづくめのPEラインといえるだろう。馬場「ツートンカラーのマーキングが非常に見やすいのに、目立ちすぎないから非常に使いやすいですよ」
スペック●号数(ポンド):0.8(16),1(20)1.2(23),1.5(31),2(37)

アブソルートショックリーダー[VSPフロロカーボン](バリバス)

ありそうでなかったバス専用リーダー
カバー周りの釣りを中心に様々なシチューションに遭遇するバス釣りを想定した設計のリーダー用ライン。馬場「ひと言で表すなら非常にしなやかなラインです。カバーでもオープンでもあらゆる釣りがこれだけでやりきれます。ライン止めとなるゴムバンドの色が号数に応じて異なっているのも素早く取り出せてうれしいポイントです」
スペック●号数(ポンド):1(4),1.2(5),1.5(6),1.7(7),2(8),2.5(10),3(12),3.5(14),4(16),5(20)●価格:オープン

アバニ ジギング10×10 MAXパワーPEX9

その名の通り、ジギングで人気のライン。8本撚りのセンターにもう1本芯が通ったような設計で、強いだけでなく非常に張りがあるのが特徴だ。馬場「そのおかげで軽いリグをカバー越しにフォールさせてもまっすぐ下に落としやすいのが利点です」

バックラッシュ対策にショートリーダー!

現在、多くのバスアングラーがカバー用タックル、あるいはそれに準ずるタックルを1セットはもっているだろう。馬場さんの『PEベイトフィネス』スタイルは、そこにそのまま置き換えることができるという。

「セッティングが異なるだけで、基本的には普通のカバー撃ちタックル感覚で試してみてください。
フロロのカバー撃ち用とは別に用意する必要もありません」。

必要となるのは、ベイトフィネスリールにPEライン。ロッドはPE対応の物があるとベストだが、従来通りのカバー撃ちを想定したロッドでOKだ。

「先にもお話した通り、年間を通してほぼ紹介しているタックルだけでカバー撃ちが成立します」。
 
PEラインに使い慣れない人からすると、ライントラブルやリーダーとの結束方法も気になる…。

「PEをベイトに巻いた時のトラブルの筆頭はやはりバックラッシュですよね。多くの場合、その原因はリーダーとの結束部がガイドを抜けきれずに発生します」。

そしてそれを回避するためにFGノットのように複雑なノットを覚える必要がある。ということもPEラインの使用をためらわせる一因だろう。

「それらの問題を一気に解決するのが、『ちょこっとリーダー』です。その名の通り、50センチだけリーダーをつけるんです。カバー撃ちならピッチングが主体ですからこの長さなら結束部分はまずガイドに入りません。そしてガイド抜けを気にしなくていいので、結束方法も自由になります」。

ここまで短くするのなら、リーダー無しでも良さそうだが…?

「リーダーは必須です。魚に見切られないためとかそういうのではなく、とにかく手返しが変わります。PEラインだけだと、枝なんかに巻き付いたときに本当に回収しにくい。たった50センチでもリーダーを入れると、劇的にほどけやすくなります。ちょこっとリーダー、試してみてください!」。

馬場「PEラインを使っている際におきるバックラッシュの原因の多くがリーダーのガイド抜けにあります。そこで私は『ちょこっとリーダー』と呼んでいるのですが、リーダーを50センチ程度まで短くして、ガイドに入らないようなラインシステムを組んでいます。逆に言うと、そこまで短くてもリーダーを入れるメリットは大きいです。とくにカバー撃ちではラインがカバーに巻き付いてしまったときに、リーダーの有無で回収率に大きな差が生まれます。結び目を気にしなくていいので、リーダーとPEの結束方法は何でもOK。私はファイヤーノットを使っていて、仕上げに『結び目にシュッ!』を吹きかけています」

なお、ここで紹介しているタックルを使って馬場さんはカバーネコなら1.3〜2.7グラムのシンカー、リーダーレスダウンショットなら2.5〜5グラムの範囲を使用。参考にしていただきたい。

すぐに釣果につながる最新スタイル!

それでは実際に馬場さんはどのようにして『PEベイトフィネス』の釣りを展開するのか? 早春の戸面原ダムにて披露していただいた。

「寒の戻りでどうなることやら…数日前に亀山で試合に出ましたが、カバーで釣れなかったです…。
今日も不安です(笑)」。

そう謙遜する馬場さんではあったが、お昼休憩までに2本のバスをキャッチすることに成功。もちろんカバーの釣りだ。

1尾目の場所をヒントに、30分後にはカバーネコで2尾目をキャッチ!サイズは伸びないものの、春先とは思えないほど健康的な魚だった [写真タップで拡大]

実釣開始から2時間半。馬場さん曰く「そろそろヤバいなと思っていました(笑)」というタイミングでヒットした1尾目。岸際から水中へと伸びる倒木にギーラカンスを落としこんでバイト!コンディションのいいグッドサイズだ。 [写真タップで拡大]

「雨が降った後、しかも朝が冷え込んでいたので逆ワンド状の地形とか、流れの当たらないカバー狙いでまわりました。実際、釣れた魚を含め、反応があったのはやはり奥まった場所でしたね」。

馬場さんのキャストはほぼピッチング。ただし姿勢は立ち、かがみ、しゃがみ、と様々な姿勢だったのが印象的だった。カバーの規模やカバーとの距離、周りのカバーの有無といった要素での使い
分けだ。

ライン性能を高めてくれる「PEにシュッ!」。スプール全体を湿らせるイメージで吹きかけるだけでOKだ。馬場さんは釣りに行く準備段階でまず使用。そして釣行中にも吹きかけていた。馬場「キャストしていて違和感があったら吹きかけてみます。特にスプールからラインが剥がれてくる感覚が違うので、キャスト時やフォール時にその違いを実感できるはずです」。

ルアーの操作はカバーにキャスト後、水面直下に吊るしたシェイクを基準に、その場所の水深に応じて少しずつレンジを下げた誘い。メインルアーはトルキーストレートとギーラカンスだが、ひとつのカバーに対してどちらも投げていることが多かった。

「リグのトータルウエイトが違うので、落とし込みたい水深やカバーに対する抜けやすさの違いでも使い分けますが、吊るしてシェイクしたときのアピールの質が違うので、どちらも投げている感じですね」。

馬場さんが主にカバー撃ちに使用していた2種類のリグ。使い分けのひとつは、リグ全体重量による使い分けで、カバーの濃さや落としたい水深に応じた使い分け。そしてもうひとつが水押し。一見すると表面積の大きいギーラカンスのほうがアピール力が高そうに見えるが、吊るしてシェイクしても水押しそのものは弱め。一方、ネコリグはワーム全体がくねくねと動くことで大きく水を撹拌。アピール力が高いのだ。

カバー戦略とはいえ、このあたりはまさしく「フィネス」な釣りと言えるだろう。

ラストは帰着間近、先行者が撃ったあとのカバーでキャッチして実釣は終了。厳しい状況ながらも、3本キャッチ。『PEベイトフィネス』で見事に釣りきってくれた。

釣り具の進化が、スタイルを変える。

この記事を読んだのなら、この釣りが決して難しくはないことが伝わったはず。2025年、『PEベイトフィネス』デビューしてみてはいかがだろう?

PEベイトフィネスに挑戦ならこちらの動画もチェック!

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