
寄生虫に操られて水に飛び込む…なんとも恐ろしい表現だが、秋になると見かける水に浮かぶカマキリやゴミムシはもしかしたら「ハリガネムシ」にとりつかれていたのかもしれない。この寄生虫、非常に面白い生態の生き物なので、見かけた際はぜひとも注意して観察してみて欲しい。ちなみに人間には寄生しないのでご安心を!
●文:ルアマガプラス編集部
宿主を操る驚きの生体
「カマキリを水につけるとお尻から寄生虫が出てくる」
そんな話を耳にしたことがある人もいるのでは?
この寄生虫は「ハリガネムシ」と呼ばれる生き物で、カマキリ以外にもゴミムシやカマドウマなど色々な昆虫に寄生することが知られている。
ではなぜ水につけると出てくるのか?
それはハリガネムシの生存戦略だったのだ。
実はハリガネムシは水中で交尾し産卵する。
卵からかえった幼生は水生昆虫(カゲロウやカワゲラ、ユスリカなどの幼虫)に取り込まれ、やがて成虫になってカマキリなどに捕食されることで、寄生を開始する。
そして驚くべきことに、寄生された昆虫はハリガネムシに操られてしまうのだ。
操られた昆虫は水面から反射した光に釣られるように水辺へと向かい、そして水中に落下してしまう。
こうしてハリガネムシは宿主を利用して陸域を移動して生息域を拡大しつつ、再び水中で繁殖することができるわけだ。
ちなみにカマキリが道路を歩いているのはアスファルトも水面と同じように光を反射するため。つまり寄生されたカマキリが水辺と勘違いしてやってきているのだ。
ハリガネムシが魚のお腹を満たす⁉
とても興味深いことに、このハリガネムシに操られることによって身投げした昆虫はかなりの頻度で魚に食べられているということが研究で分かっている。
京都大学生態学研究センター の佐藤拓哉准教授の研究によると、ある場所に生息しているイワナが1年間に消費するエネルギーのうち、およそ6割がハリガネムシに操られたと考えられるカマドウマ由来だったという。
つまりハリガネムシの行動が魚のお腹を満たす手助けにもなっているのだ。
今の時期、水辺でカマキリなどの昆虫を見かけたらよく注意して観察してみて欲しい。
もしかしたら、ハリガネムシによって生まれる大きな生態系の輪の一部を観察することができるかもしれない。
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