
堤防でクエを狙う。その言葉を聞いて、どれほどの釣人が本気にするだろうか。クエといえば、荒磯。沖磯。巨大な根と荒波に囲まれた選ばれし者のフィールド。舞台は島の小さな堤防。「ここで、20kgを超えるクエがあがったらしい」という幻の噂も。真偽はわからないが、ユーチューバーであるヨネスケさんが挑む。
●文:ルアマガプラス編集部
2025年夏。異常高水温という追い風
挑戦が始まったのは、2025年の真夏。
この年は「歴史的高水温」と呼ばれるほど、海のコンディションが異常だった。
例年よりも3~4℃高い水温。30℃近くまで上昇した海は、魚の活性を一気に引き上げる。
「小型が増える年」とも言われる一方で、「場所によってはとんでもない当たり年になる」
そんな声も聞こえてきていた。
ユーチューバーの釣り師ヨネスケさんは、その「場所によっては」に賭けた。
堤防用に作られた一本の竿
今回のチャレンジには、もうひとつの大きな意味がある。
それが、ヨネスケ自身が開発した専用ロッド「ワイルドシーカー453HH」の実戦投入だ。
過去、堤防から14.9kgのクエを仕留めた経験がある彼だが、その時に痛感した。
MHクラスの石鯛竿では、スタンディングファイトにはパワー不足で、根から剝がせない。かといって硬すぎる竿では、長さや調子が合わない。
ヨネスケ「堤防で立ったまま、デカいクエと真っ向勝負できる竿がない」
このチャレンジのためだけに、ロッドは設計された。
ロッドは単なる道具ではない。それは釣人の覚悟そのものだ。
数投目で起きた異常事態
そして迎えた初日の夜。
ブッコミ釣りは、基本的に待ちの釣りだ。数時間、何も起きないことも珍しくない。
だが…。
竿先が、いきなり叩き込まれた。
ヨネスケ「ん?ウツボか…? キタ!!」
重量感。走らない。しかし、根に向かってジワジワと入り込もうとする、あの感触。
上がってきたのは、紛れもなくクエ。狙っていたサイズではないが、堤防クエとしては完璧な答えだった。
噂話は、この瞬間現実に変わった。
潮が動く時間帯の異様な高活性
さらに異常だったのは、その後だ。
30分後、再びアタリ。そして、その後も連発。
掛ければ、ほぼ100%クエ。ウツボでも、外道でもない。
ヨネスケ「やばい。やばいな。めっちゃいるかも…」
まるで、堤防の下にクエが溜まっているかのような錯覚。
この日は短時間で3本。サイズは控えめだが、内容は濃すぎる夜だった。
ただし、潮が止まると、全てが嘘のように時合が終わった。
釣れる時間と釣れない時間の残酷な差
潮止まり。それまで騒がしかった海が、急に沈黙する。
アタリは一切なくなり、夜はただ静かに更けていく。ここに、堤防クエの難しさがある。
急に静かになった海。潮止まりになってしまうとこれまでの連発が嘘のようだ。
回遊ではなく居付き。潮と水温の影響を極端に受け、タイミングを外すばゼロ。
釣れたから簡単ではない。むしろ釣れた後の釣れなさが、心を削る。
連敗、ボウズ、寝不足。それでも投げる理由
その後も釣行は続く。
ポイントを何度も移動し、試行錯誤を繰り返す。
アタリがあるもウツボ。本命を掛けても、キャッチ目前でフックアウト。
昼に寝て、夜に起きる。完全な昼夜逆転生活。
それでも竿を出し続ける理由はひとつ。
「あの一夜が、偶然じゃないと証明したい。」
最後の最後、焼けクソの一投
そして迎えた、実質ラストチャンスの夜。
ヨネスケ「もうダメだろう…。」
時合も終わり諦めモード焼けクソで遠投し、最後のアタリを待つ。
沖には根があり、普段なら避けるポイント。だが、ワンチャンスをかけてキャストした。
すると
ヨネスケ「来た…」
一瞬で根に入られる。動かない。
食ってきた魚すぐに根に入ってしまった。
しかし我慢比べの末、浮かび上がった魚影。
根から出てくるまで待つという我慢比べを制したヨネスケさん。
小型だが、間違いなくクエ。粘ったものにだけ許された価値ある1本だった。
堤防クエという未完成のジャンル
記録級の20kgには届かなかった。だが、この12日間は決して失敗ではない。
堤防でもクエ釣りは成立し、条件さえ揃えば高活性にもなる。そして、専用タックルは確かに有効だった。
何より「堤防クエは、まだ誰も完成させていない釣り」だという事実。だからこそ、面白い。
誰もが見落としてきた足元。その下に、巨大な影が潜んでいるかもしれない。
この挑戦は終わらない。
次に堤防に立つのは、もしかするとこの記事を読んでいる、あなたかもしれない。
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ヨネスケ
兵庫県出身。日本一周車中泊釣り旅を経て、現在は磯釣りのメッカ、長崎県五島列島在住の釣り三昧YouTuber。2024年から2度目の日本一周釣り旅を再開。最新の動静はYouTube「突撃!ヨネスケの釣り旅ch」をチェック。
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