
「バスやそのほかのあらゆるゲームフィッシュを釣る上で、ルアーを生き物に似せて作っても得るものはない」
その信念の元、世界で初めて市販用ウッドプラグを製造したアメリカの老舗ルアーメーカー「へドン」。2025年9月下旬、その創設者であるジェームズ・ヘドン氏の曾孫にあたるチャック・ヘドン氏が来日。ヒロ内藤さんらと共にベビートーピードだけを使って琵琶湖に挑戦してみた。
●文:ルアマガプラス編集部
profile
チャック・へドン(Chuck Heddon)
へドン一族の末裔。ルアーコレクターとして有名で、FATC(フロリダ・アンティーク・タックル・コレクターズ)の初代会長。1942年1月11日生まれ、フロリダ在住。
ヒロ内藤(ひろ・ないとう)
日本のバスフィッシングの黎明期より活躍し、本場アメリカでの経験を元にルアーの本質的な楽しみ方を追求する伝道師。本名は内藤裕文。1955年6月25日生まれ、フロリダ在住。
玉越和夫(たまこし・かずお)
1970年代から日本のバスフィッシングを牽引してきたパイオニアであり、特に国内トップウォーター界のレジェンド的存在。株式会社スミス専務取締役。1948年2月10日生まれ、埼玉県在住。
宮廣祥大(みやひろ・しょうた)
琵琶湖で「宮廣ガイドサービス」を営み、巻き物などのパワーフィッシングを中心に琵琶湖の魅力を伝えている。ヒロ内藤さんと親交があり、今回ガイド役を務めた。1982年2月18日生まれ、滋賀県在住。
ヘドンの末裔はベビートーピードが大好き
チャック・へドン——。この人物の名前を初めて聞いた釣り人でも、彼があの老舗ルアーブランド「へドン」の家系に属する人物であることは容易に想像できるだろう。何を隠そうこの人物、ヘドンの創設者であるジェームズ・ヘドン氏の曾孫に当たる方なのだ。よりイメージしやすいよう、家系図的には1902年にジェームズ・ヘドン氏とともにヘドン社の前身である『ジェームズ・ヘドン&サン』を設立した長男ウィル・ヘドンの息子がジム・ヘドンという方で、そのジムのご子息がチャック・ヘドン氏ということになる。
琵琶湖大橋の近くにて。2009年に栗田学さんによって世界記録のバス(73.5cm、10.12kg)が釣れたことを説明するヒロさん。
御年83歳だが180cmくらいはあろうかというすらりとした長身で姿勢がよく、穏やかな口調が印象的だ。来日してからここ琵琶湖に辿り着くまでの約1週間、毎日ヒロ内藤さんとともに全国の釣具店などを訪問し、バス釣りやヘドンのファンと交流する姿はパワフルそのもの。今回の2日間の取材でも、お昼前後までの釣行とはいえ、日の出から最後まで、手を休めることなくキャストを繰り返していた。
今回、チャックさんと琵琶湖の湖上で時間を共に過ごすのは、国内トップウォーター界のレジェンド・玉越和夫さん。琵琶湖におけるバス釣りの歴史をよく知る人物でもある。
玉越「今日は2018年にここ琵琶湖で65cm12lb(約5400g)をペンシルベイトで釣り上げた竿を持ってきましたよ」
チャック「今回は私がリクエストしたヴィンテージカラーのベビートーピードを使って琵琶湖で釣りをしてみるよ。楽しみだね」
三者三様のベビートーピード
ガイドの宮廣祥大さんのボートに乗り、最初のポイントに到着すると、皆、思い思いの動かし方でベビートーピードを操り始めた。
ヒロ「チャックは本当にベビートーピードが大好きで、アメリカで僕と釣りをするときも、ほとんどベビートーピードしか投げないんですよ」
宮廣「チャックさん、ウィードマットのキワを狙ったり、すごく細かいアプローチをされていますね。すごい」
チャック「このフロッグスポットというカラーは私が子供から使っていたお気に入りのカラーです」
玉越「ベビートーピードは人によって使い方が全然違いますからね。チャックさんは今、強めにジャッ!ジャッ!って飛沫を上げるように動かしているので、僕はチョッチョッと弱めにアクションさせてみているんだけど、それだと小バスが反応しやすいみたい」
宮廣さんは最近バズベイトで良い釣果が出ているとのことで、ただ巻きで使ってみているようだ。
すると…
琵琶湖の美しい景色と朝焼けに感動したよ。--チャック・へドン
宮廣さんによると、今年の琵琶湖は過去に例がないくらいウィードが大量に発生しているという。
ベビートーピード チャック・ヘドン ヴィンテージコレクション(スミス)
チャック氏が溺愛するルアーであるベビートーピードを、氏が生まれた1942年当時のカラーリングで復刻。往年のカラーリングの再現に定評があるスミスによる精緻な塗装で、チャック氏が熱望した往年のカラー6色を展開。腹部にはチャック氏のサインがプリントされている。
カラーラインナップ
●全長:2-1/2in(6.35cm)
●重量:3/8oz(10.5g)
ヒロさんも別艇で釣りを楽しんだ。50アップをバラし、釣り欲に火がついたが翌日に同場所でヒットしたのはかわいいおチビちゃん。
ひとつのルアーで様々な「変化点」を作れるのが優れたルアー
ヒロ内藤さんが考える優れたルアーの特徴として、ロッドワーク次第で様々なアクションの変化をつけられることが挙げられる。今回の4人のアクションのつけ方も実に多様。ただ巻き、強めのトゥイッチでジュボッと潜らせる、小刻みなトゥイッチでその場でアピールさせるなど、各々が工夫していた。
ただ巻き
初日は残念ながらバスをキャッチすることができなかったチャックさん。2日目も午前中だけリベンジ釣行に出発。美しい朝焼けがチャックさんを迎えてくれた。するとこの日は早速チャックさんのベビートーピードにバイトが。しかし、残念ながらのらず。
チャック「う〜ん、彼(バス)はまだ寝ぼけているみたいだね。ベイビーサイズだったよ」
すると少し間をおいて、再びチャックさんにバイト! 今度はしっかりとフッキングできた。
チャック「私にも琵琶湖のバスが釣れたね。アナザーベイビーだったけど。さあ、お母さんのところにお帰り」
すべてユーモアに富んだ言葉で返してくる何ともアメリカ人らしいチャックさん。最後に、今回の来日を振り返っていただいた。
チャック「日本人はみんな親切だったし、食べ物もおいしかった。たくさんの人が私に会いに来てくれて本当に嬉しかったよ。ありがとう」
①玉越和夫 使用タックル
ロッド:スーパーストライクinnovation SS-TT60M3 トップウォータートラベラー(スミス)
リール:カルカッタコンクエスト100HG(シマノ)
ライン:銀鱗スーパーストロングネオ 2.5号(東レ)
②チャック・へドン 使用タックル
ロッド:ヒロイズム ウィザードCSW2 HIM-W64MH-CSW2(スミス)
リール:アンタレスDC MD XG LEFT(シマノ)
ライン:シルバースレッド バス クランクベイト 18lb(ユニチカ)
③ヒロ内藤 使用タックル
ロッド:ヒロイズム カプリコーンTW2 HIM-C55M-TW2(スミス)
リール:スティーズ CT SV TW 700XH(DAIWA)
ライン:シルバースレッド バス クランクベイト 18lb(ユニチカ)
チャック・へドン、加藤誠司に会う。
〜私のへドン・ストーリーと琵琶湖の魅力〜
2日目の午後は、湖畔にあるレヴォニックを訪問し、ルアーデザイナーの加藤誠司さんとチャック・ヘドンさんが初対面。座談会の模様はYouTube「加藤誠司 擬似餌研究所」で公開される。ここでは、御三方に思い出のヘドンルアーと琵琶湖の魅力についてチャックさんに伝えていただいた。
思い出のへドンルアー
加藤誠司さん
「ザラスプークとトーピードが自分の中では1番大きな存在。そしてスーパースプークもすごいルアー。この3つがすごさを感じるルアー。やっぱり、断面が「円(まる)」っていうのがすごいんですよ。学生の頃からヘドンルアーでたくさん釣ってきたし、マグナムトーピードは琵琶湖の真野あたりのウィードエリアでバズベイトみたく使って本当によく釣れた。思い出は深いですね」。
ヒロ内藤さん
「僕もザラスプークですね。ペンシルベイトはドッグウォークができるようになったら完成ではない。ストライクを作るためにはその先があるんです。僕は早い時期から米国トーナメントを見てきました。そこで選手たちは、釣果に差をつけるために変化点の作り方に工夫を凝らしていました。僕が思う完成度が高いルアーは釣れるルアーではなくて、ロッドワーク次第で様々に豹変するルアー。それを教えてくれたのがへドンのルアーなんです」。
玉越和夫さん
「僕の思い出のヘドンルアーはザラⅡなんですよ。僕が芦ノ湖や相模湖に通い出したとき、当時はまだ40cmでも大きいほうだったから、ザラスプークのボディやフックの大きさを見て『これちょっとでっか過ぎない?』って思ったので、それでザラⅡをだいぶ使い込みました。あと、ラッキー13とかトーピードとか、ボディにウエイトが入っていないでしょう。あれでちゃんと動くから不思議ですよね。いろいろな動きが出せたりするのはそれが秘密なのかなと思うことがあります」。
ザラⅡ
琵琶湖の魅力
「僕にとって琵琶湖は世界一の湖。バスフィッシングを楽しむためのいろんなものが揃っていて、フィールドとしてもシャローエリアから百m以上の深場まであり、そして毎日のように10lbオーバーが釣れている。そんな場所は世界中探してもなかなかないんじゃないかな。チャックさんにはぜひまた来ていただいて、ビッグフィッシュを釣ってもらいたいですね」(加藤誠司さん)
「琵琶湖の素晴らしさは、僕が初めてフロリダに行って釣りをしたときに感じたことと同じなんです。それは『次に投げる一投に、どんな魚が来るか全くわからない』っていうこと。琵琶湖はでかいバスがいる夢のあるフィールドです。年々難しくなってきているとは言え、逆にちゃんとバスを勉強した人にとっては結果を出すことができる面白いゲームフィールドになっていると思います」(ヒロ内藤さん)
「琵琶湖でバスが釣れるようになった始めの頃から通っています。当時は南湖の山ノ下湾でいっぱい釣れて、大橋を渡って北側に行ってみたら、何にも釣れないの。まだバスがいるエリアが限られていたんですよね。2018年9月には65cmの12lbを琵琶湖で釣りました。その年にはメキシコまで行って10lbを釣ろうとして釣れなくて、帰ってきてすぐ琵琶湖でそれが釣れた。海外に行かなくても国内で釣れるじゃないって(笑)」(玉越和夫さん)
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