
日米のトーナメントで数々の華々しい戦績を残し、今なお現場の最前線で活躍し続ける2人のリビングレジェンド。田辺哲男、清水盛三。共にパワーゲーム、とりわけハードベイトやワイヤーベイトを主軸とするスペシャリストたちは今何を考え、何を思うのか。その賢人たちのルーツに迫る
●文:ルアマガプラス編集部
profile
田辺哲男(たなべ・のりお)
1958年7月9日生まれ、横浜市出身・東京都在住。国内のバスフィッシングを牽引してきたプロフィッシャーマン。米国トーナメントで輝かしい成績を収め、帰国後はパターンフィッシングを基盤とした数々のストロングゲームを提唱。バスとの向き合い方や1尾との出会い方を始め、バスフィッシングの奥深さを伝える伝道師だ。ノリーズ代表。
profile
清水盛三(しみず・もりぞう)
1970年5月29日生まれ、大阪府出身。国内トーナメントで数々の成績を残した後、02~18年まで実に17年間にわたる米国ツアー参戦を経て凱旋帰国。究極の現場からフィードバックした経験を注入したルアーは常に定評で、09年に5度の本誌TOYを獲得して殿堂入りしたDゾーンや、世界で最も強いられるジャパンルアー・ジャックハンマーを手がけたことでも知られる。Mo-Doプロデューサー。
第1投目、何を投げるのか
田辺「未だに『スピナーベイトとクランクベイトはどう使い分けるの?』って質問が来るんだよ」
清水「僕にもよく来ますよ、それ」
田辺「そんなのわかんないよ。『まずは投げろよ』って」
清水「僕は『何となく』って答えてます。その場のフィーリングじゃないですか。クランクが効きそうならクランクやし、スピナーベイトならそうやし。釣る魚は一緒。バスはバス。これから狙う魚はどっちで食うかはわからんし」
田辺「みんな聞きたがるんだよ。『どっちなんだ?』って」
清水「僕はルアマガの連載でも言ってますけど『みんな試すことをしない』ですよね。僕や田辺さんは長年いろんなことを試してきた。こんな状況やったらコレが効くんちゃうかという、自分のヒキダシからパパッと出して試して、こんだけやって釣れへんかったらナイなというのを繰り返して来た経験がある。ロケでよく聞かれるのが朝に『今日はどんなパターンで』と。そんなんやってみんとね(笑)」
田辺「俺は聞かれると『コレで釣りたいから』と答える。コレで釣りたいんだよ、ダメだったらまた考えるよ。そんなスタートになる」
清水「それ、いいですね! その手がありましたか(笑)」
田辺「そう答えるしかないじゃん? 朝から今日はコレが絶対釣れるなんて言えないよ(笑)」
清水「わからないですよね」
田辺「でも、俺からすると、盛三の方が、幅があると思う。だって竿の数が違うじゃん?」
清水「確かに、田辺さんのボートの中、めっちゃシンプルですもんね。一方、僕はとにかく釣りたい気持ちが強いから、竿も多くなるし、ルアーも多くなるし、この中に正解はあるはずやしと、ガチャガチャになりがちですもん(笑)。この机の上のルアーたちも、ボートの中と一緒ですわ(笑)」
清水「クランクかスピナーベイトか。投げてみなけりゃ答えは出ない」
手駒スピナーベイトの起源
清水「スピナーベイトとひとくちに言っても、いろんな物がある。クリスタルSもDゾーンも、スピナーベイトというカテゴリーやけど、僕の中では全く別のルアーやと。ところで、さっきのロッドの数の話と同じく、田辺さんが持ってきたルアーも少ないですね」
田辺「全部持ってくるのは難しいって(笑)。スピナーベイトはクリスタルSとディーパーレンジとか持ってきたよ。『クリスタルS』のスタートは『1/2と3/8oz』で『タンデムウィロー』からです」
清水「始まりからして違う。最初の『Dゾーン』は『3/4oz』の『ダブルウィロー』。当時琵琶湖で釣りをしてきたこともあって、こうなった。開発の背景にフィールドの違いってあると思いますね」
田辺「俺はディーパーレンジとか作ったのは、だいぶ後からだもん」
清水「僕はタンデムウィローが出てきたのがだいぶ後。1/2とか3/8が出てくるのも後の話。真逆。面白い話でしょ?」
田辺「色はこんな感じだね」
清水「王道はホワイト系のこんな感じの色って気がしますね。後にいろんな色を作っていますけど」
Mo-Do Dゾーン
3/4オンスダブルウィロー
2000年リリース。盛三さんが手がけたモードブランド初プロデュースとなるルアーにして、代表作の1つ。振動を増幅するアッパーアームの独自形状は大きな話題となり、世を席巻。本誌タックルオブザイヤーで殿堂入りを果たした数少ない作品のひとつだ。
1997年、初冬の名勝負
清水「元々スピナーベイトが好き。少年の頃、ため池でやってた時はスピナーベイトとバズベイトしか投げてなかった。琵琶湖で釣りをするようになって、いざルアーを作ろうってなった時、琵琶湖で釣れるスピナーベイトを作りたいって自然となっていった。琵琶湖とスピナーベイトが得意ってのもあったんやと思います」
田辺「俺が3/4ozを使い始めたのは、琵琶湖へ行くようになってからのことだね。元々関東だから定番の3/8ozを使い始めたのが俺の始まり。俺の場合、90年代はTIFA(*1)ってメーカーで、アメリカからスピナーベイトを輸入販売してた。ブルドックとか、ボッシュ(*2)とか、クリスタルSより前の話」
清水「ボッシュスローローラーとか、琵琶湖でよく使ってました」
田辺「ひと通り琵琶湖とかやって、ノリーズ立ち上げで出したクリスタルSは、俺のスタンダードの3/8ozタンデムウィローからリリースした。関東には霞ヶ浦水系、牛久沼とかあるし、全部ひっくるめて3/8のタンデムウィローだよなと。でも、琵琶湖は3/4のスローロールがスゲー釣れる。いろんな湖でやっていくうちに、カスミでもやり出すようになっていったよね」
清水「田辺さんのスピナーベイトにオールスター(*3)で負けたことがありますわ…。田辺さん優勝で僕が3位のとき。『ヤられたー』って思ったもん。僕はクイを釣ってたんやけど、田辺さんはオダとディープで、帰着してから話を聞いたらスピナーベイトだと」
田辺「水深4mとかやってたね」
清水「勝てるかなと思ってたんやけどなぁ。あの当時、オールスターは7本リミットでしたよね」
田辺「そうだそうだ、7本だった」
清水「僕は7000台ナンボとかいったから、これは勝てるぞと思ったけど、上がいた。その年、JBクラシック(*4)で勝った年やったから、霞ヶ浦水系がめちゃ得意やってん。自信満々で臨んだら、田辺さんに負けてしまったという(笑)」
田辺「冷え込んでくるタイミングで、11月の下旬だった。今と違って、当時のその時期はスゲー寒かった。今ならシャローを巻いてればいい水温だけど」
清水「で、ディープのスローロールだったと。土浦新港から北浦へかっ飛んで行って、面白いことに田辺さんと動きが一緒だったという。練習で圧倒的に魚がおった。7本リミットやったけど、実際の所1日20本くらいは釣って入れ替えとる。今は3本リミットもなかなか厳しい時代やけど…」
田辺「今の時期(=対談当日は10月20日)で水温20度? だいぶ季節に追い付いてきたけど、まだ高いよね」
清水「先月9月の旧吉野川はまだ27度でしたよ!」
*1 TIFA
社名はTokyo International Fishing Associationの略。1985年に田辺さんらが中心に設立した往年の人気タックルメーカー。初期はフェニックスやオールスター、Gルーミスなどのロッドやボッシュなどのルアーを輸入および製造販売。現在も続く、NORIESブランドは1994年の立ち上げで、2003年にマルキユーへと販売権を移管。2025年で31周年を迎えた。
*2 ボッシュ スローローラー
ディープ攻略に欠かせないスローローリングテクニックで注目されたスピナーベイト。クランクしたアッパーアームとヘッドデザインが特徴的だ。画像は1999年TIFAカタログの1カット。
*3 オールスター
正式名称はバサーオールスタークラシック、略称バサクラ。バサー誌主催による国内最大のバストーナメントイベント。1987年に初開催され、2025年で実に38回目を迎える。初回大会は芦ノ湖で開催され、優勝者は田辺さん。以降、1990年と1997年と通算3度の獲得は史上タイ記録。1997年大会では盛三さん7420gで3位、田辺さん7790gで優勝。当時は7本リミットのためそれぞれ1本平均1kg超だった。盛三さんは2022年に悲願の初優勝を飾っている。
*4 JBクラシック
国内最大のトーナメント団体・JB(日本バスプロ協会)主催の年間総決算戦。トップカテゴリー・TOP50からローカルシリーズまでの年間上位のみが出場できる狭き門の大会だ。1997年大会は霞ヶ浦で2日間。河口湖で2日間の計4日間で開催され、霞ヶ浦ラウンドを首位で折り返した盛三さんは勢いそのままに河口湖を駆け抜けてクラシック初優勝へ。画像は国内唯一のトーナメント誌・バスマガジンの1997年12月号(日本バスクラブ発行)だ。
クリスタルS・94年、Dゾーン・00年生まれ
清水「Dゾーンはどんなルアーなのか? んー、よく釣れる(笑)。なんやろ、僕にとっては使いやすい、投げやすい。普通に引いて心地良く手に伝わってくる振動、釣れそうな振動感がある。そこにすごくコダワった。それはアッパーアームの形状もあるし、ワイヤー径もそうやし、フックもそうやし、細かいコダワリはいっぱいある。それに同じDゾーンでもブレードによって変わる。当時は琵琶湖であまりブンブンさせたくないから抑え気味にしたいってところから始まったけど、使う場所や状況で求めるものは変わってくる。この時はコレ、この時はコレ。釣れるスピナーベイトは釣れるし、釣れないのは釣れない。どうしても必要なブレードタイプは増えるから、一概にどれが良いとは言えない。どんな振動なのか? ジャックハンマーもクランクベイトもそうやけど、ルアーから伝わるノックとか振動ってのは、巻いたときに『なんとなく釣れそう』って感覚がある。もちろんそれ以外にも飛ばしやすいとか、フッキングしやすいとかも求められる中での話やけど。結局『感覚』やからさ。感覚でしかわからないことですよね」
田辺「そうだね。先に言った通り、俺は最初アメリカのスピナーベイトを使ってきたわけだけど、アメリカで釣れるスピナーベイトって強めが多いんだよ。で、俺の場合、クリスタルSってブレードの平面を利用したVブレードっていうのを生み出した。ギランギランしてある程度(回転径が)開いてアピールする、THEスピナーベイト。クリスタルSはショートアームからスタートしたけど、実はロングアームの時代もあったんだよ。ロングアームの方がたわんで振動を伝えるとかっていう噂になってさ。でも、それは都市伝説。長いのが伝わるってのはウソ。長いからこそ吸収しちゃって、振動が手に伝わりにくい。短くて強くて回転が開いたら、それが手に一番伝わる。で、1回長くしたのをまた短くして最初の形に近いところへ戻したっていう歴史があるんだ。といっても、もう10年くらいは経ってるけどね。何せクリスタルSは30年以上の歴史があるからね」
清水「そうなんですね! Dゾーンは何年やろ? 25年か? その間、僕は何も変えてないです」
田辺「クリスタルSもDゾーンもそれだけ経ってもまだ釣れるっていうのはさ、ね、スピナーベイトって一番ヤバいルアーなのかなって思うよ。未だにそう思う」
清水「すごいルアーですよね。釣れるからこそ必然的に、二人とも投げる時間が長くなる」
田辺「最近、オリジナルのブレードを1つ下げて小さくして水面を引いちゃうんだ。するとバーンと、スゲー深いバイトになる。ノドまで入ってるぞって。何これと」
清水「僕もそれ好きです。バックリ食いますよね。スピナーベイトというひとつのカテゴリーでも奥は深い。いろんな魚が狙える」
田辺「そんな世界観もありますよと、ね」
清水「ハードベイトを作る人間って、釣ってる経験値が半端ないと思う。田辺さんもアメリカと日本で経験して感じてきたことをルアーに反映してる。魚を見付けたら余裕で釣れるルアー。そういうときに、どんなルアーが釣れるのかが身体に染み付いてる。眼にも頭の中にも手の感覚にも。その経験値があるからこそ、良いルアーを作り続けることができると思う」
田辺「『これで釣りたい』。そこから俺のゲームは始まる」
バスルアーはトラウトが起源
田辺「スピナーベイトって、そんなに歴史の浅いルアーじゃないんだよ。ブレードベイト(*5)はけっけう最近だけどね」
清水「他のプラグと変わらん。子供の頃から使ってましたし」
田辺「俺が中学生の頃のバスプロショップス(*6)のカタログには既に載ってたよ。バスフィッシング用としてのトップウォーターはさ、ウッド製の時代は古いよ、100年以上前とかさ。けど、スピナーベイトもクランクベイトも元々はトラウトから発祥してるから、そこまで古くないにしてもある程度昔からあるよ」
清水「そうなんですね!」
田辺「アメリカのルアーは基本的にトラウトから始まってるんだよ。五大湖(*7)とか北の方で、みんな食う魚をいっぱい釣りたいってところからスタートしてる。それが徐々にバスフィッシングに移ってる歴史があるんだよ、調べていくとね」
清水「おもろいわー、田辺さんのお話は」
田辺「だから、スゲー軽くて投げれないルアーがゴロゴロあるじゃん。それはさ、全部引いちゃうから。飛ばす必要がないんだよ」
清水「トローリングですね」
田辺「そう。昔初めて日本に入ってきたルアーの多くがそうだった。フラットフィッシュ(*8)とか、ベイトタックルで飛ばないよね。プラグは大体ショベルノーズ系だよ」
清水「全然飛ばなくてバックラッシュしてました。そういう歴史を知らんで使ってましたから」
田辺「全部トラウトなんだよ。スピナーベイトだって、スピナーから派生してワイヤーが付いてっていう過程を経て出来上がった。バズベイトも昔からあったよ。ルアーが日本に入ってきた頃には、大体どのルアーも揃っていたよ」
清水「確かにバズベイトもありました。でも、どうやって使うかわからなくて、スピナーベイトと同じかなと、最初は沈めて使ってましたからね(笑)」
田辺「バスフィッシングルアーの中で一番新しいカテゴリーは意外にもワームだよ。俺が中学生の時に出てきた。それまではなかった。プラスチックワーム(*9)ってのが、アメリカでセンショーナルルアーとして出てきたのを覚えているよ」
清水「田辺さんは生き字引やから。今の子らはそんな歴史を知らんでしょ? ルアーを使う時もイメージが変わってくると思います」
田辺「俺さ、歴史的なことに関する取材のオファーがよくあるんだけど、嫌なの。断っちゃう。昔の話を聞きに来られても困るよ、今の話を聞いてくれよと。今回はたまたま話しただけだから(笑)」
*5 ブレードベイト
国内ではチャターベイトと呼ぶのが一般的だが、その呼び方は登録商標のため実は不適切。本来はカテゴリー名として呼ぶべきで、米国ではブレーデッドスイムジグ、ブレーデッドジグ、ブレードベイトなどと呼ばれている。国内ではチャター“系”が妥当だろうか。画像はフラチャット(ノリーズ)。
*6 バスプロショップス
アウトドア用品の巨大大型店舗チェーン。釣り人にはフィッシングタックルショップとして知られるが、その取り扱い品はキャンプ用品や多岐にわたり、スポーツ用品販売業としては世界第3位の規模。現在はオンラインへと移行しているが、かつてはカタログ販売が主流。バスフィッシング黎明期は海外へのオーダーに頭を悩ませたものだった。
*7 五大湖
アメリカ北東部、カナダ南東部の国境をまたぐ5つの巨大淡水湖の総称。スペリオル湖・ミシガン湖・ヒューロン湖・エリー湖・オンタリオ湖の5湖で、米国ではTHE GREAT LAKESと呼ばれる。最大のスペリオル湖の面積は、国内最大の琵琶湖の約123倍でもはや海。その水系の一部ではトーナメントも行われる。
*9 プラスチックワーム
ワームとしての起源は古いが、一般的にバス用として認知され始めたのが、1970年代のこと。初期の代表作と言えば、クリーム・スカンドレル、マンズ・ジェリーワームなど。いずれも現代でも入手できるロングセラーだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
- 1
- 2

















