【日本初のバスプロは誰か知ってる?】バスプロ宣言の核心とフェンウィック

【日本初のバスプロは誰か知ってる?】バスプロ宣言の核心とフェンウィック

日本初のバスプロ宣言から現在まで、吉田幸二さんが変わらず大切にしてきた基準はロッド作りにも息づいている。 61Y、510Y、4ピース。自らの言葉で語られるYの遺伝子は、釣りを職業として続けてきたプライドそのものだった。

●文:ルアマガプラス編集部

profile

吉田幸二(よしだ・こうじ)
1951年生まれ。1983年、日本で初めて「バスプロ」を宣言。霞ヶ浦を拠点にクランキングを軸とした実釣理論とキャスト技術を確立し、後進の育成や環境活動にも尽力。フェンウィックをはじめ数々のロッド開発にも関わる、日本バスフィッシング界のパイオニア。NPO法人 水辺基盤協会代表。

覚悟が時代を変えた、日本初のバスプロ宣言

いまをさかのぼること43年ほど前、1983年、吉田幸二さんは『バスプロ』を名乗った。それは新聞に載るような宣言文でも、壇上で読み上げられたマニフェストでもない。しかし後年、その出来事は確かに『日本初のバスプロ宣言』と呼ばれることになる。

当時の日本に、バスプロという職業概念は存在しなかった。ルアーを作って売る人はいた。メーカー専属として活動する人もいた。だが吉田さんは、そこに強い違和感を覚えていたという。

「彼らは商売してるわけだよね。でもプロとは言わないわけだ。プロってやっぱり責任取らなきゃなんないから」。

誰も名乗らないなら、自分が名乗るしかない。そう考えた。

「誰もいないんだから、じゃあプロになろうって。プロとしてきっちり仕事をしようというんで、プロ宣言をしたわけですよ」。

ここで言う〝仕事〟とは、単に魚を釣ることではない。原稿を書くこと、釣りを紹介すること、フィールドに立ち、説明責任を負うこと。その姿勢は「かっこよく言うとね。責任感ですね」という一言に集約されている。

当時のバスフィッシングは、まだ仲間内の延長線にあった。親しい釣り人の活動の月例会があり、焚き火を囲んで食事を作り、釣果を競う。吉田さん自身、その空気の中から競技性を見出していったひとりだった。だが、競技である以上、そこには責任ある立場が必要だと考えるようになる。勝つことよりも、釣りそのものを説明できる存在であること。その自覚が、プロ宣言へと背中を押していった。

しかし宣言後、すぐに現実に直面する。スポンサーはない。収入も保証されていない。そこで始めたのがガイドサービスだった。

「スポンサーもないし。じゃあ何しようかなって。それでガイドを始めたの」。

プロを名乗った以上、食える仕組みを自分で作る。その姿勢は、現在のプロアングラー像にも通じる。肩書きだけではなく、日々の行動でプロであることを証明し続ける。その積み重ねが次の扉を開いた。

転機は同年。ティムコとの正式な金銭契約が成立するまで、吉田は各メーカーを自ら訪ね歩いた。

「どこもみんな断られて。唯一、ティムコで故・林圭一(※)が『それは面白いですね、やってみましょうか』って言ってくれた」。

こうして吉田幸二は、名実ともに〝契約を伴う釣りのプロフェッショナル〟となった。

「84年、正式に契約して。で、プロ誕生ですよ」。

日本の釣り業界において、金銭契約を結ぶプロアングラーは前例がなかった。

「釣りの人で、金銭契約する人がいなかったから。磯釣りでも、船釣りでもそうだった」。

この出来事は、単なる個人の契約ではない。釣りが職業として成立することを、初めて明確に示した象徴的な瞬間だった。

その後の吉田さんの活動は、ロッド開発へとつながっていく。フェンウィックとの関係も、ここから本格化した。

「いままでのバッシングスピン(バス用スピニングロッド)って柔らかすぎちゃって。バスフィッシング用に、(バスに)負けないスピニングロッドが欲しかった」。

そうして生まれた〝Yバージョン〟は、単なるシグネチャーモデル(冠モデル)ではない。競技としてのバスフィッシングを支えるための道具だった。

「バットが強いってことは、魚が掛かってから耐えられるってことだから」。

グリップの長さ、エンドの形状、素材の選択。そのすべては、一日ロッドを振り続けるプロの身体を前提にした設計だった。

「(手に)マメができないんですよ。一日振ってても」。

釣り方だけでなく、道具の在り方まで含めて示すこと。それもまた、吉田さんが考えるプロの仕事の一部だった。

吉田さんのバスプロ宣言は、派手な言葉で語られるものではない。しかし、その責任を行動で示し続けた結果が、時代を動かした。

「プロって、責任を取ることだからさ」。

このひと言こそが、日本初のバスプロ宣言の核心である。

動画はプライムで公開予定!
ココロに染みわたる吉田さんの言葉が詰まったインタビュー完全版は、近日公開予定。オールドフェンウィックの生き字引でもあるティムコスタッフO氏との掛け合いも必見ッ!

※林圭一氏…(株)ティムコを経て1996年(株)ケイテック創業。

バスプロ宣言から続く、不変のロッド哲学

フェンウィックと吉田さんとの関係は、単なる契約や監修という言葉では説明しきれない。そこにあるのは、釣り人としての思想と、道具に対する責任を長く共有してきた時間だ。吉田さんはフェンウィックを語る際、「フェンウィックっていうと、この色なんですよ」と口にする。

ブラウンカラーのブランクとクロスバットラッピング。その外観は、機能と歴史を背負ってきたブランドの象徴でもある。

そんな吉田さんがロッドに求めてきたものは一貫している。キャストのしやすさ、曲がること、転身して魚に負けないこと。

「バットの強さですよ。魚に負けない」という言葉は、その核心を突いている。強さとは硬さではなく、魚とのやり取りで主導権を渡さないことだ。

「ロッド優先っていうか、釣り人優先で魚を寄せてくれる」。

その考えは変わっていない。

テクナGPでは、そうした意向を背景に、現場での経験をロッドに反映させてきた。クランキングやミノーイングで得た原体験は、確かにその設計思想の中に息づいている。 「50何センチが平気で寄せられた」という記憶は、ロッドに必要な粘りと強さを示す基準だった。 当時ロッドは、『硬いか、柔らかいか』という単純な物差しで語られることが多かった。

しかし吉田さんは、釣り場での実体験を通じて、二極では測れない感覚の重要性を知っていた。キャストのしやすさ、ルアーが水中で受ける抵抗、魚が掛かった瞬間のティップの入り方。そのひとつひとつを積み重ねることで、釣り人が無理をせず、自然に魚と向き合える道具が形作られていった。

そうした経験が反映され、さらに時代の変化と素材の進化を受け止めながら、リンクスというシリーズへと受け継がれていく。 今回登場するのは、進化する現代のフィールドに合わせて再構築された3本。その姿勢こそが、フェンウィックと吉田さんの関係を現在進行形のモノにしている。

まずはリンクス61Y-CLJ。テクナGPの経験を土台にしながら、低弾性カーボンをベースとして組み上げている。しなやかさとバットパワーの両立は、このロッドの核だ。なお、カラーもテクナGPを意識している。

続いて自らの生誕記念となるリンクス510Y-CLJ 75th。

「霞ケ浦でワカサギが産卵で接岸するときにミノーを使えるっていうのが一番だった」。

小型ミノーやクランクを精度高く扱うための一本。軽量ルアーを正確に投げ、一定のレンジを引き切るためのレングスとアクションが与えられている。

「小さいクランクはなかなか素敵です。魚釣りするのに」。

クランキングを最も得意とするその言葉が、バス釣りの楽しさも端的に表している。 3本目は真のマルチピースロッドを意図したワールドクラスビスタ510Y-CL-4J。4ピースで携行性を重視しながらも、釣り味を犠牲にしない設計だ。 「旅行に行くときに持っていきやすい」という理由は現実的だが、扱い方への意識は変わらない。

これら3本に共通するのは〝変わらない〟という価値観だ。

「不変はいいですよ。ブレない」。 流行や数値に左右されず、長く使えること。 「年を取ると、なにもしないでシュッて竿だけで投げられるのが大事」という言葉は、経験を重ねたいまだからこそ持つ実感だ。

フェンウィックと吉田幸二。その関係は過去のモノではない。思想は形を変えながら受け継がれ、現在も更新され続けている。

「一生使える竿です」。 それは、ロッドへの評価であると同時に、釣りに対する姿勢そのものを物語っている。

記憶と性能をつなぐYバージョン
80年代のカタログに記載された若き日の吉田さんとYバージョン。今回吉田さんが被っているキャップも当時をイメージして作られたという。

ショートグリップのこだわり
シングルハンドルでのキャストは、吉田さんを象徴するフォーム。さらなる釣りの精度と再現性を高めるべくYバージョンではグリップ設計がされている。

〝Y〟の遺伝子を継承する3本

フェンウィックリンクスハイパフォーマンスシリーズ LINKS 61Y-CLJ

テクナGP時代に培われた吉田さんの体験を背景に、リンクスとして再構築されたYバージョン。しなやかなブランクと強いバットを併せ持ち、シングルハンドキャストによる高い精度と再現性を支える。タイニークランク、軽量ミノーに最適な1本。 

DATA●全長:6ft 1in●パワー:L●自重:95g●適合ルアー:1/8-3/8oz●適合ライン:6-14lb●継数:1pc●価格:3万1900円(税込み)●発売時期:2026年春

フェンウィック リンクスハイパフォーマンスシリーズ LINKS 510Y-CLJ
〝ヨシダコウジ 75thアニバーサリーリミテッドエディション〟

吉田さんの75歳という節目を記念して作られた、現行Yバージョンの限定モデル。長年磨き続けてきたシングルハンドキャストの精度と再現性を追求し、軽量プラグを確実に操るための操作性を突き詰めた一本。ベースブランクスに軽量UDグラスを採用。

DATA●全長:5ft 10in●パワー:L●自重:101g●適合ルアー:1/8-5/8oz●適合ライン:6-20lb●継数:1pc●価格:3万1900円(税込み)●発売時期:2026年春

フェンウィックワールドクラスビスタ WCV 510Y-CL-4J 〝ヨシダバージョン〟

リンクス510Yの思想を受け継ぎ、携行性という現代的要素を加えたパックロッド。旅先や遠征でも変わらぬ釣りの精度を実現し、長く使い続けられる道具として吉田さんの考える不変を体現する一本。

DATA●全長:5ft 10in●パワー:L●自重:122g●適合ルアー:5/8oz MAX●適合ライン:20lb MAX●継数:4pc●仕舞寸法:54cm●価格:3万3000円(税込み)●発売時期:2026年春

ロッド袋も抜かりなく
フェンウィック伝統のブラウンカラーに、吉田さん直筆のイラストを配し、Yバージョンに込められた歴史と思想を静かに物語る。 [写真タップで拡大]

世界に連れていける
グリップ+3ピースのブランクに分割された4ピースロッド。継ぎ目の自然さと全体バランスが、実釣時の違和感のなさを物語る。 [写真タップで拡大]

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