
宣伝ではなく実績と口コミで徐々に評価が広がり、もう10年以上SNSを中心に固定ファンが激増している。
神谷勇紀さんの強烈なこだわりが感じられるロッドブランド、デジーノ。
年末の忙しい工場に潜入し、神谷さんにロッド哲学を語っていただいた。
●文:ルアマガプラス編集部
profile
神谷勇紀(かみや・ゆうき)
1980年、愛知県出身。10代からロッド作りを始めた、天才肌ビルダー。23歳でプロショップ・ナビゲーターを開店し、カスタムロッドビルダーとして愛知では当時から有名だった。2003年JBマスターズ霞ヶ浦戦優勝。2007年、JBトップ50弥栄ダム戦優勝、同年年間優勝。過去にはスパイキーブランドでルアーをプロデュースもしたり、2D魚探のシューティングテクニックを開拓したり、若い頃から才能を発揮していた。
JBトップ50の頂点からロッド設計者へ
今から20年ほど前、記者はJBマスターズの野尻湖戦で神谷勇紀さんに同船取材させていただいたことがあった。当時から使用していたロッドはすべて自作品。超軽量ルアーが驚くほど遠くまで飛んでいったのを覚えている(ちなみに、そのときの戦略はオーバーハングの虫パターンとディープフラットのシューティング)。
さて、今やロッドビルディング界の巨匠と呼んで差し支えない、不動の評価を得ているデジーノ代表・神谷勇紀さん。JBトップ50で年間タイトルを獲得するほどだったが、一旦JBトップ50をお休みして、ロッド作りの世界へどっぷり身を投じたという。
「その後、トップ50の年間も獲ってバスプロとしては一番脂が乗っていた時期に、ブランクスから設計したいという思いもあり、竿作りを真剣に勉強することにしました。バスプロとして一番いい時期に転向することで、あえて自分を悔しがらせたり、奮い立たせたりできる、そんな環境に身を置きたかったんです」。
現役バリバリの一流トーナメンターが自らの手で作るバスロッド、それ自体が極めて稀だ。バスプロの感覚と知識、ロッドビルダーの技術、デザイナーのセンス。それらが三位一体となり1本のロッドが完成していく⋯というのがデジーノ最大の特徴だろう。しかも、継続的に量産して、ブランド運営までする、そんな人物はバスロッドの歴史のなかでは特異点といっていいだろう。能力の問題もあるが、それ以前に人間ひとりでは時間が足りないからだ。
「僕は20年間ほぼ休みはありません。仕事も毎日朝の5時くらいまでやりますね。最近は夕方に仮眠を取ることもありますが⋯」。
そんなロッド作りに取り憑かれた神谷さんと彼のデジーノについて、さらに掘っていこう。
ガイドのコーティング
2液性エポキシ樹脂を薄く塗りながら、均一にコーティングしていく手間のかかる難しい作業。「ウチは低カーボンのライターで炙るんですが、このライター捌きが上手いか下手かっていうのは感覚的なものがある。できる人は上達が早いですね」。
エポキシの山脈
エポキシをガイドに塗る際、筆を整える台がある。何百、何千本と作っていくと⋯ついにはこうなる。「これはまだ全然小さい。この3倍くらいになったら交換です。自分のちょっとした宝物ですね」。
スレッド巻き
一般的にはモーターを使う工程だが、あえて手でやるのがデジーノ流。ロッド1本あたり15分ほどで巻く。驚くほど作業が早い。「これができるようになるのは6〜7人に1人です。もう才能がすべてなので、練習すればできるものでもない」。
EVAを削る
デジーノのグリップはありモノを使うのではなく、すべて自社設計。図面のやり取りだけでなく、実際に神谷さんが削った一番いい形をサンプルとして工場に渡す。「私がデータ化して工場に発注するので、ほぼ一発目で希望通りのものが上がってきます」。
塗装
ロッドのブランクスをエアガンで塗装する工程。「塗装って、垂れるギリギリが一番綺麗なんですよ。それはもう感覚がすべてなんで、できない人ができるようになるってことはないです。私は1日200本とか塗っちゃいますね」。
スレッド巻き作業のために最適化された台。「こういうのがめちゃくちゃ大事です。見せたくないくらいのところですね。結局、品質は良くても数が作れなかったら商売にならないので」。
妥協を生まない環境を作る
工房は至るところ、壁一面がパーツの棚になっている。「朝思いついたことが夕方には形になってる。『もっとこうしたい』がすぐに試せる。それができる環境作りが大事です」。
デジーノの工房を訪れると、まずはその大きさに驚かされる。延べ床面積はやや小さめな体育館くらいはありそうだ。そして、至るところ壁一面にパーツの入った引き出しが設置されている。過剰とも思えるような量だが、神谷さんは何よりもこういった環境づくりを重視したという。
「こだわりよりも『こだわれる環境』が必要でした。誰だってよいものを作りたい。どんなに情熱があっても、知識や経験、資金が乏しかったら? パーツひとつとっても、資金がなければ優れた会社は部材を供給してくれません。また知識や経験がないと製品は進化しない。そこを早くからクリアできたことにより、優れた会社や工場と取引できたうえ、挑戦にも協力してもらっています。一方、ロッド作りは外注で完結した方が安くつく。でも自社工場を作った。それは妥協しないためなんです」。
触ったら最後⋯デジーノロッドの魅力とは?
そんな最高の環境で作られるデジーノのロッドとはどんなものなのだろうか?
「ウチのロッドを表す言葉に『触ったら最後』というのがあるんですが、それは本当です。最初は『そんな大袈裟な』っていわれたんですが、実際に触ってもらうと『本当にそうだった』っていう声が口コミで自然に広がっていきました」。
触ってみると⋯確かに、バランス、感度、軽さ、曲がりなど、ケチのつけ所がない。現場で使ってみたい、という強い衝動に駆られる。ただ、そこまで軽さや感度を強調したロッドでもない。
「ウチでも『感度』というのはわかりやすく伝えるための表現として使っているだけで、本当に伝えたいのは『気持ちよさ』の部分だったりします。使い心地、気持ちよさって、実は表現するのが一番難しいんですが、じゃあその気持ちよさってなんだというと、狙った場所にキャストが決まる、感度がいい、操作していて気持ちがいい、そのトータルですよね。他にもソリッドティップなどウチの強みはありますが、そこはあくまでも気持ちよさを追求するとソリッドティップしかなかったっていうだけの話です。ソリッドティップは後からついてきた手段なんです」。
デジーノなら得られる、本当の感度とは?
感度といってもいろいろな感度があると思うのですが⋯という記者の質問を遮って、神谷さんはこう言い切った。
「感度ってひとつしかないと思っています。結局、伝わるか、伝わらないか、だけ。それを反響とかいろいろ言ってる人もいますけど⋯例えば、今こうやって喋っている、私が声をもっと大きくしたとします。でも、もう聞こえているから、これ以上大きくする必要はないんですよ」。
すでに聞こえている音をさらに大きくする必要はない。過剰な強調はむしろ雑音になる。
「今まで感じられなかった違和感を覚えられるかどうかです。それが本当に必要な感度なんです」。
神谷さんが話してくれた野尻湖のエピソードはいかにもそれを決定づけるものだった。
「もう20年ほど前ですが、私は当時からソリッドティップの竿を作っていて、お客さんが『神谷君の竿、全然乗らないよ』って言ってきたんです。でも、その人はその日の野尻湖で一番釣ってたんですよ。でも、『バイトの半分以上を掛けられなかった』って。水中映像とかでよくあるバスがワームを咥えて一瞬で吐き出す、アレってもう感じることもできないんですよね。でも、ウチのロッドはそれさえも感じることができていたんです」。
掛けられないバイトもたくさんあるが、感じられるからこそ掛けて獲れた魚も相当数いる、ということ。それが神谷さんのいう「本当に必要な感度」なのだ。
デジーノの曲がりと復元力
デジーノのロッドの曲がりについて尋ねると、曲がることよりも曲がった状態から元に戻ろうとする復元力こそが重要、だという。それが魚を寄せる力、リフティングパワーになるからだ。曲がりっぱなしではいくら綺麗なカーブでも意味がない。
「あと、ルアーを操作するためには絶対エクストラファストがいいと思っています。でも、キャストするときや魚を掛けたときはしっかり曲がって戻る方がいい。総合的に考えると、全部の要素が必要なんです。
◎ルアーを操作するための先調子◎手首のスナップを利かせるための先調子◎ルアーの重さを乗せて飛ばすためのレギュラーテーパー◎魚を掛けてからの復元力
ウチのロッドにはこれらが同時に存在しています」。
単純ななんとかテーパーではなく、「エクストラファストでレギュラーテーパー」、そんな夢のような両立こそデジーノが目指すバスロッドの曲がり方なのだ。
デジーノの強みのひとつがソリッドティップ。節のついた多段テーパーで、より繊細な曲がりと反発が可能。試しに折ってみたが、生木のようなみっちりとした強さだった。
ブランクスとリールシートの隙間を埋めるアーバー。これも超軽量の材料を選んで製作した。「カーボンが軽くていいという人もいますが、実は全然重い。これは発泡樹脂で、めちゃくちゃ軽い」。
アートとビジネスの間で
再び、神谷さんのロッドビルダーとしての過去から現在に至る話を聞こう。
「高校の頃からロッドは作ってましたね。ルアーも同時進行で」。
当時はまだロッドビルダーという言葉さえ一般的ではなかったが、神谷少年は気づいたら竿作りにのめり込んでいた。
「市販の竿をバラしてガイド位置を変えたり、マタギさんでパーツを買って組み替えたりしていました。でもいわゆるロッドビルダーって言い方は悪いですが『ありモノを組み上げる』だけ。自分はそこが目標ではなかった。パーツをイチから全部作りたい、それが次のステップでした」。
当時は自社でカーボンを焼くことを考えていたが、あまりにも大量に生産しなければとても採算が取れないし、現実的ではない。ブランクスに関しては「こういうカーボンが欲しい」という設計を海外の工場に伝えて、作ってもらう、という方法に行き着いたという。また、モノづくりにこだわって生産規模やコストを無視してしまうとビジネスとして成立しない、と神谷さんはいう。
「理想だけじゃ続かないですから。ウチはモノづくりとしてのアート的な部分もありますが、ストラーダみたいに海外で組んで出すシリーズもある。どっちも必要だと思っています」。
海外で生産する理由はコスト面だけでない。それ以上に重要視しているメリットがあるという。
「よく『海外=安い』って思われがちなんですけど、全然違います。むしろ国内よりももっと上のクラスのものが作れる。日本の職人さんは設計とか理論は本当にすごいんですが、細かい手作業という部分では年齢的に厳しくなってきている。海外の方が若くて手先が器用な職人さんが多い、っていう現実もあります」。
あえてやらないこと
こうすればもっと売れる、と分かっていてもやらないことが神谷さんにはあるという。
「あえて表現しない、というのがありますね。本当はもっといい言葉の表現があったとしても、あえて謳わない。それを謳ってしまうと他のメーカーさんにヒントを与えてしまうし、今はバックオーダーを抱えるほど注文をいただけている。会社の成長に合わせて、どのタイミングでやるか、っていうだけですね」。
なお、今後はもっとカリカリのトーナメントロッドを出す予定もあるらしい。
「他のメーカーさんのトーナメントロッドにぶつけたいですね。勝負できるロッドは作れます」。
海外進出と日本、同時に見る夢
飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けるデジーノ。今後の目標はなんだろうか?
「正直、海外で評価されているのは嬉しいですし、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの市場に挑戦したい気持ちはあります。でも、一番大事にしているのは日本です。日本でちゃんと評価されて、お客さんに使ってもらうこと。僕のできる仕事のキャパシティも決まっているので、順番を考えながら少しずつやっていきたいですね」。
DESIGNOブランド
LEBEN レーベン
デジーノのフラッグシップシリーズ
ブランドの基軸となる最初のロッドシリーズ。軽く、高感度で、トーナメントで戦えるスペックとなっている。最大の特徴はソリッドティップ。今となっては、各メーカーが採用している機構だが、この潮流はデジーノから始まったといって間違いないだろう。一番人気はDLT-C611M/HRST1S、いわゆる「エムスラ」。
ロッド人生を具現化したモデル
「ドイツ語で『生きる』という意味なんですけど、本当に自分の釣り人生とモノづくりの集大成という意味を込めて、この名を付けました。どちらかというと、テクニカルな操作系のロッドですね」。
SLANG スラング
ビッグベイトの「裏レーベン」
オカッパリ、ビッグベイトという独特のカルチャーに寄り沿ったロッドシリーズがこのスラング。パワーはあるが重くてダルい…という既存のビッグベイトロッドにありがちなネガティブ要素を一掃している。軽いのに強い反発力があり、ビッグベイト、ジャイアントベイトを軽々と遠投できるのだ。
グレーEVAの走り
「ちょうどビッグベイトの再ブームと重なって評価をいただいたシリーズです。今は他社製品にもグレーのEVAグリップがありますが、スラングがヒットしたせいだと自負しています」。
Wraith レイス
第3のフラッグシップシリーズ
絶対的性能のレーベン、ビッグベイト&オカッパリ特化のスラング、その中間的な位置付けなのがこのレイス。レーベンのスピード感とテクニカル、レーベンのパワーと安定感をレイスは引き継いている。なお、この3シリーズは国内工場で設計から最終仕上げまで行われている。
中庸のレイス
「レーベンで出そうか、スラングで出そうか⋯って迷っていたような中間的な役割のモデルをレイスというシリーズにしました。この3シリーズは個性はまったく別モノですが、どれも最高峰です」。
RAISEブランド
WOLF DOWN
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