意外に知られてない⁉池原&七色はバス釣り流行の発信地だった⁉

意外に知られてない⁉池原&七色はバス釣り流行の発信地だった⁉

今我々が使うルアーやリグ、そしてメソッドはどこで考案されたのか。今まで深く追求することもなく、何気なくお世話になってきている場合も少なくない。だが、意外にも紀伊半島のディープセントラル・池原ダム&七色ダム発祥であるものも実は多かったりする。ここでは、長きに渡り最前線を見つめて続けてきたケヴィン宮本さんが池原七色のリアルを語る。

●文:ルアマガプラス編集部

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解説  ケヴィン宮本(けゔぃん・みやもと)
七色ダムの畔でほぼ四半世紀! スロープロクマル名物スタッフ
今年で23年目を迎える七色ダム屈指の人気レンタルボート店・スロープ60の名物スタッフ。同店は国内最高峰JBトップ50及びNBC戦会場としても知られ、トーナメントの最前線からローカル発信の最先端情報までを隈なく網羅。選手としての試合出場経験も豊富で、下北山村移住前は琵琶湖開催のプロ戦でも大活躍。和歌山県出身。

紀伊半島ディープセントラルが生んだ実弾とワザたち

近年、突如現れたホバストの真実とは

2020年の春、突如にして一気にその名を全国へと広めたのが『ホバスト』なるメソッド。その起源は2018年の七色ダム、奈良チャプター戦を控えた前日に遡る。

「ウチ(=スロープロクマル)の桟橋で、新たなリグを堤(治朗)さんが誕生させた瞬間に遭遇しましたよ。当初は“フワフワリグ”と呼んで、ワームはスーパーフィンテール(ティムコ ※廃番、現在は進化版のスーパーホバリングフィッシュを販売)を使っていましたね」

こう語り始めたのは、スロープロクマルの名物スタッフとして知られるケヴィン宮本さん。20年以上もの間、池原&七色シーンの最前線に立ち、様々なルアーやリグ、メソッドの誕生から発展までを見続けてきた、いわば下北山村リザーバーの番人だ。

「2000年代前半に発祥した“ミドスト”がさらに発展していったのも、この界隈じゃないかと思います。スイミングするレンジを中層からボトムへ移した“ボトスト”などもそうかな。以降、いずれの釣りも誰もが試すようになって、魚がスレてしまった結果、堤さんがホバストの元祖へと辿り着いていった。そんな経緯があります」

メソッドに濃密な歴史あり。

ホバスト

hover=ほぼ同じ地点に浮く strolling=彷徨う、歩き回る

『ホバスト』とは、『ホバー・ストローリング』の略称。ベイトフィッシュライクなワームがロールを見せながら、表層などで極端に遅く横移動させて誘う釣り方のことだ。当初はジグヘッドをセットするミドストの軽量バージョンとして認識され、ジグヘッドを削り極端に軽くすることで移動距離を抑制。のちに、専用フック+ネイルシンカーでよりシステマティックなメソッドへと進化を遂げていった。

いわばミドストの発展系として誕生したのがホバスト。当初は表層がメインとされていたが、現在ではやや深めの中層までレンジを拡大した手法も。

全国へと波及させた“ホバスト”の立役者

ジグヘッド・ヴェスパを解体してフックのみを使用していた堤さん、ヴェスパのヘッドを削って軽量化を図っていた山岡さん。前者は細い線径に、後者は特殊な技術を要することに、それぞれ難を感じていた両者が意気投合。2019年にホバストなる名称を山岡さんが考案して、専用フック&ネイルの開発をリューギに提案したのだという。

山岡計文
やまおか・かずふみ/もはや山岡さん特集とも言える今号では、解説不要の七色スーパーローカル。トップ50選手として七色ダム戦含む3度の勝利を獲得。

堤 治朗
つつみ・じろう/ホバスト前身・フワフワリグを考案。兵庫県在住だが長きに渡り池原七色に通い込み、幾度ものNBCローカル戦優勝を果たし続ける強者だ。

よりシスマティック化した現在の快適ホバスト事情
ミドストの定番・ヴェスパを改造することから始まった初期ホバストだが、コロナ禍の2020年に大きく前進。3分割できるネイルシンカーの利便性はホバストのみならず様々なリグへと波及している。

2018 ヴェスパ[リューギ]

2020 ホバーショット[リューギ]

アジャストネイルTG [リューギ]

スーパーフィンテールを超える専用モデルを開発
堤さんのフワフワリグで欠かせなかったのが当時廃番だったスーパーフィンテール。入手困難な状況に手を焼いた堤さんが、ティムコサポートの山岡さんに再発を提案。結果、さらにホバストに最適なモデルとしてスーパーホバリングフィッシュを完成させたという。

スーパーホバリングフィッシュ3in[ティムコ]+ホバーショット#2[リューギ]

スーパーホバリングフィッシュ2.5in[ティムコ]+ホバーショットFG#3[リューギ]

冬・ディープ・ボトム&more

2000年代に池原七色で熟成を遂げたミドスト
「2000年代初頭にまずは琵琶湖界隈でミドスト(=ミッドストローリング)が注目され始めたような記憶がありますね」
以降に全国へと広まり、中でも愛好者が多かったのが池原&七色界隈。
「雪が舞う冬の終わり、皆がディープを攻める中、水深1~3mでミドスト。隠しておきたかったんやけど(笑)」
冬でもミドストが通用することを証明したケヴィンさんの大勝利。
「以降は超ディープで使ったり、ボトムで使う人も出てきたりと様々」
さらなる熟成がホバスト誕生へと繋げた。

池原ダムで行われた2004NBC奈良チャプター第3戦(3月7日開催)では、2位にダブルスコアの3本5kg超でケヴィンさん圧勝!
©NBCNEWS

PDLスーパーホバリングフィッシュ2.5ECO #20 CRシャート【ティムコ】
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ティムコ(TIEMCO)

バスはウナギを見ると一生追いかけます

限界点を突破する求道者たちの骨肉

「釣りって、今あるメソッドを極めたいという楽しみ方もありますけど、山岡(計文)プロを始め堤さんも然り、僕らこの界隈の釣り人は『何か新しいこと見つけたろ!』って常に考えているんですよ。ホバストみたいに全国的に流行るかどうかはさておき『その日その場で何をしたら圧倒的に釣れるのか』を楽しむ釣り人なんです」

下北山村界隈には、いわばバスフィッシングの究極求道者たちが集っている。時に、その時点としてはクレイジーとも思える発想も真摯に受け止め、次なる限界点を突破していくのが彼らだ。
「ロングワームって、近年では12inとか、それ以上でも不思議ではないサイズですけど、2000年代は6~8inでも長いって言われていた時代。そんな頃に10in以上を投げるのは確信を持った一部の人たちだけでしたね」

先駆者たちの積み重ねがいつしか現代のロングワーム隆盛を作った。一方、池原ダムでも近年全国へ波及したメソッドがあるという。

「(サタン)島田さんの“8トラップ”は驚異的でしたね。バスアングラーってテクニックに走り過ぎてしまう傾向があると思うんです。ところが、そんな中でも敢えて釣りの原点に戻り、フィッシュイーターの本能を刺激する釣り方を提案してくれた。海だけじゃなく、バスにも8トラップが効くということに気づかせてくれましたね」

池原&七色が凄いのはでかバスだけじゃない。そこに集うアングラーもまた凄い、凄過ぎるのだ。

ロングワーム

時代で変遷していったロングワームの基準

「ロングワームって、どの長さからロングって呼ぶのか。その基準が今と昔では異なります」
2000年代は6~8inでもロングの部類。現在では珍しくない10in以上はごく稀な時代だった。
「ウナギかヤマミミズをイミテートしていると言われますが…」
真相は闇の中…。
「近年では、食わせやすいスリムなヌードル系も釣れてますね」

「食べられるのかどうかは関係なく、バスはウナギの動きが好き」
一度見つけると、見失うまで追いかけ続けるのだという。
「穴に入ったらジーッと待っていたり…ホント大好き」

10in カットテールワーム[ゲーリーインターナショナル]
本格的にロングとして認識された草分け
「釣れる武器としてアングラーに初めて認識されたのは、おそらくコレですね」
釣れ筋のお手頃サイズからのボリュームアップ版は、池原七色界隈の飛び道具として認知度を高めていった。

山岡プロ考案のヤツメウナギパターン!
「ウナギといえば、七色では春のバックウォーターでヤツメウナギ(スナヤツメ)パターンがありますね」
こちらは山岡さんが考案。「グライドリグにシンカーをセットすることで、クビレを境にウネウネと独特の動きに」。要注目。

ウェイブモーション[ゲーリーインターナショナル]

グライドハンガー[リューギ]

ウナギリグ [エバーグリーンインターナショナル]
近年再注目を浴びつつある最注目リグ!
「ロングワームをよりしっかり食わせるために開発されたリグですね」
フックをボウワーム12in高浮力の中程にセット。絶妙なシンカー位置はスタックを回避。
「特に春に効果があるように思います」

MMZデカ[O.S.P]
自発的な形状変化が大型バスを魅了
「極太のヤマミミズをバスが食ってるかどうかはさておき、この動きもやはり七色バスは好きですね」
ケヴィンさんは初夏以降にノーシンカーやネコリグで多用中。実績◎。

小林知寛
こばやし・ともひろ/2017トップ50七色ダム戦で獲ったのは61cm4315g。小林さんは若き日に七色のレンタル店に常駐の経験もある準地元選手だ。

山岡計文
発売間近のMMZデカで2021トップ50七色ダム戦を制したのが山岡さん。食べ頃サイズのチビやナミではなく、最大サイズのi字引き&フォールによる形状変化が勝利に貢献。

ジャイアントベイト

外観上のインパクト、自在な操作性が奏功

明確な定義は存在しないが、概ね20cm以上かつ3oz以上の大型ビッグベイト&スイムベイトの総称がジャイアントベイト。池原&七色界隈では1990年代後半からモンスターを仕留める武器として注目度は高い。古くはタロン(オスプレイ)やリアルベイトトラウト(キャスティーク)など海外製がメインだったが、現在は国産モデルも数多く揃う。

ジャイアントの代名詞は池原ダムが産み出した
数多く存在するジャイアントベイトの中でも、池原ダム発信かつ全国へその名を轟かせたのがバラム300。
「インパクト大のルアーパワーを持つ上に、サタン島田さんの独自のメソッドが人気に拍車をかけたと思います」

「多関節系はS字系とは異なり、超高速巻きで誘えるのは強み。追ってきた魚に対して、ボート縁で8の字を描くエイトトラップで、まさかバスが食うとは! 衝撃でしたね」

サタン島田

※本記事は”ルアーマガジン”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。