【JB TOP50同船記】遠賀川戦準優勝! 佐々一真が語る、たったひとつの勝負ルアーとは!?[誇り高き挑戦者たちFILE.1]



JBTOP50緊迫の決勝DAY3、その一部始終を完全公開!

4月7日(金曜)〜9日(日曜)、福岡・遠賀川で開催された国内最高峰JB TOP50開幕戦。結果はゲーリーファミリーの主砲・市村直之選手が見事に6年ぶりの2勝目を挙げ、2017A.O.Y.レースの筆頭候補に名乗りを上げたのは記憶に新しい。

その模様及び詳細は4月26日発売のルアーマガジンをご覧になっていただくとして、今回は惜しくも僅差の準優勝で涙を呑んだ今季最注目の若手選手にフィーチャーしてお届けすることにしよう。
その選手の名とは…

佐々一真(さっさ・かずま)、27歳。熊本産の九州男児。

さっさ・かずま 1989年(=平成元年)7月20日生まれの27歳、熊本県出身・山梨県在住。ヒューマンフィッシングカレッジ福岡校を卒業の後、同校OBでTOP50シリーズ活躍中の早野剛史選手に触発され山梨県へ移住。河口湖及び山中湖のJBローカル戦に参戦の傍ら、2ndカテゴリー・マスターズシリーズへのエントリーを開始。同シリーズ参戦4年目となる2015年には年間14位を獲得して、悲願となる翌年のTOP50昇格権利を獲得。昨季2016年はTOP50デビューイヤーながら最終戦霞ヶ浦で3位の活躍を魅せ、堂々の年間10位に。参戦2年目となる今季は開幕戦から準優勝、そして翌週開催のマスターズ第2戦三瀬谷ダムでは5位と実に快調なスタートを切った。スポンサー:マルチブック、シマノ、G-FISING、センターフィールド。2017TOP50ゼッケンNo.10。

ここまでにご覧になっていただいた2枚の画像は開幕戦2日目のウェイイン時のもの。トップ画像はBIGFISH賞となった2294グラム(50アップ!!)。遠賀川で最高峰戦が開催されたのは今戦で6度目となるが、史上最重量記録を更新した1尾だ。またプロフィール画像はその魚(左手)を含む3尾4855グラムでマークした今戦での最重量ウェイト。初日ノーフィッシュの最下位から、2日目は単日トップウェイトを叩き出し、予選2日間の暫定成績を3位までマクる快進撃を見せ、異例中の異例となる決勝進出も果たした。

最終日の首位との差、わずかに827グラム。

40アップを1尾で優に追いつける、いや逆転できる位置に付けた佐々選手。記者は最終日決勝の同船をオファーすることにした。

佐々一真選手(以下、佐々)「ぜひよろしくお願いします! ただ、持っている場所が少ないので、どうなるかは明日(=最終日)次第。でも、何とか一発当てたいです! ワハハ!!」

今戦の開催地である遠賀川と言えば、TOP50開催フィールドの中でも1・2を争う狭小フィールド。ここぞというスポットは選手が入れ替わり立ち替わりで攻め込み、時を掴むか独自の攻略で1尾をひねり出すという印象が強い。佐々選手が言う「少ない」とは、いったい幾つのスポットなのか。決勝当日、驚くべき真実を知ることになる。

1スポット、1ルアー。「キーは流れの出るタイミング」

早朝7時、決勝のフライトは予選暫定首位から順にスタート。佐々選手は3番手。遠賀川は8時までデッドスロー走行のレギュレーションがあるため、バスボートが連なるカルガモスタートの様相を呈する。

デッドスローで狙いの場所へと向かう間、佐々選手に2日目トップウェイトに至った経緯を聞いてみた。その日は午前中に雨が強まるタイミングが存在したが、やはりバスの活性を高める”雨パワー”が効いたのだろうか。

佐々「晴れている間は無反応で、曇って以降にバイトが出始めて…雨の効果はもちろんあったと思いますが、それによってカレント(=流れ)が出たタイミングにバイトが集中しました。何せスポットが狭過ぎなので、昨日(=2日目)似たような場所を探したんですが、全然なかったんですよ」

大切なのは降雨より流れ…て、えっ!? 狙うのは1カ所のみってこと!?

佐々「はい。それと、昨日3尾を獲ったルアーは1つのシャッドなんですけど、最後にロストしちゃったんですよ。なので、会場に来ていた先輩に同じルアーを1つ譲っていただいて、今日はそれのみで勝負するしかないですね。あ、カラーは違うんですけど」

おまけに使うルアーはたった1つ!? 予備もない!? ボトムには複雑な障害物が点在することで知られる遠賀川。聞いている記者が心配になってしまうが、不安な表情は微塵も見せず事実のみを淡々と語る佐々選手。

これが「先輩にいただいた」というたった1つのルアー、ベビーシャッド50FC(ファイブコア)のカメレオンアユ。2日目の原動力となったライムチャートはロスト。ゴースト系という点では近しいが、けっして似た色味ではない。カラーよりレンジやサイズが重要だったのだろう。●ロッド:エクスプライド266L(シマノ)●リール:コンプレックスCI4+ 2500S F6(シマノ)●ライン:フロロカーボン5ポンド

上流方向へショートキャスト、そして中速リトリーブ

およそ10分で狙いのスポットへと到着。後続フライトの選手を横目にエレキを下ろして実釣開始。その手にはスピニングタックル。カバー対策に太糸のベイトフィネスかと思いきや、細糸による繊細な操作性を佐々選手は追求したようだ。

使用するシャッドプラグは小型とはいえ、巻きの釣り。広範囲を探るのかと思いきや、意外にも飛距離は短く、10メートル程度だろうか。リトリーブスピードは速過ぎず遅過ぎずのいわゆるミディアム。狙っているのは主に上流方向。足下にセッティングされた魚探を見ながら、投げては巻き、投げては巻きを繰り返す。

右写真の正面に見えるのは中間大橋。投げては巻き、投げては巻き、時に魚探をチラ見…のエンドレス。この背中をいったい何時間、記者は見つめ続けただろうか。


「バイトは水中のクイに当てた瞬間。その時だけです」

佐々「ヘラブナの群れがワラワラと入ってきました…今日はバスが入って来づらいかもしれませんね」

実釣開始から30分ほど経った頃、こう呟いた佐々選手。水面にヘラブナの魚影が見えたのだろうか。いや、そうではなかった。

佐々「この魚探、前方向が常時見えるんですよ」

近年、劇的進化が進んでいる魚探だが、通常は画面にボートが狙いの場所を通り過ぎた後の真下の地形、もしくは動いている最中の両サイドが見えるものだ。しかし、佐々選手が使用する『GARMIN Panoptix PS31』(G-fishing)はボートが静止した状態で「前方向の地形がわかる」という画期的な魚探。従来にない驚くべきハイテク機器を駆使していた。

佐々「おそらくここは旧堰跡が(ボトムに)あるんだと思います。朽ちたクイや矢板、それに石積みが川を横切るように並んでいて、特にクイは1本1本を下流側から狙っていきます。当てた瞬間にそれまでの安定したアクションが崩れて、バスのバイトを誘うといったイメージです」

実に、実に繊細なアプローチ! 図で簡単に表すと以下の通りだ(*ド下手な手描きで恐縮ですm(_ _)m )

魚は流れの上流側に頭を向けるのが常。流れが強まれば、何らかの障害物の裏にある流れの緩くなる場所(=反転流)に魚は身を寄せやすい。佐々選手が「流れが出たタイミングが良い」と言うのは、クイの下流側にバスが集中しやすいという理由もあった。右下は魚探映像イメージ。前方の障害物が分かるばかりか、バスやルアーまでリアルタイム動画で見えてしまうとは驚きだ。

守護神・根掛かり回収機が守り切るも”諸刃の剣”…

先にもお伝えしたように、ここ遠賀川はボトムに複雑な障害物が多いことで知られる。どんなにスナッグレス性に優れたルアーでも、どんなに厳選したタックルでも、根掛かりは避けようがない。ましてや今回、佐々選手が使用したシャッドプラグはムキ出しのトレブルフックが2つ装着されているだけにロストの可能性は非常に高い。

佐々「たった1つしかないので、絶対に失くせない!」

シャッドは使いたい。しかし、失くせない。

スタックする度にボートを寄せ、根掛かり回収機で確実に回収するも、そこにいるであろう魚にプレッシャーを与えてしまうことは必至。いわば諸刃の剣。

また『巻きはリズムが肝要』と言われるように、通常なら根掛かりによるストレスはメンタルにも大きく影響を及ぼすだろう。

試合中おそらくは2ケタ回数のスタック&回収を繰り返したが、佐々選手は意に介すことなく淡々と「今やるべきこと」に集中。そして再び、投げては巻きを繰り返す。焦燥感に駆られることはなかった。文字で表せば簡単に思えるが、よほどタフなメンタルがなければ、何事もなかったかのように継続することは難しい。ここでも近い将来の大物を予感させたのは言うまでもない。

「あっ!!」「うぅっ!!」「今度は本気でヤバイかもです…」とは言いながらも「よかったー!(笑)」と確実に回収して「たった1つ」を最後まで守り切った佐々選手。攻めなければバイトはない。しかし、攻め過ぎればロストの恐怖。しかも、予備はない。そんな状況、経験したことがあるだろうか。なお、シャッドもろとも回収したゴミは佐々選手がお持ち帰りしました。

8時33分、つ・い・にその時が来た!

気になるのは、なぜシャッドの巻きが軸なのかということ。潜行深度は水深1.5メートルほど。ライトリグでは答えが出ないのだろうか。

佐々「魚は浮いているんだと思います。ライトリグだとどうしてもボトムに近くなる。初日はそのせいで釣れなかったのではないかと。で、2日目に修正していった結果、答えが出ました」

試合前2日間の公式プラクティスではバンタム・パブロシャッド59SP MR(シマノ)で好感触を得ていたが、試合初日は不発。MAX2.7メートル潜行ではボトムを叩き過ぎていることに気づきローテーションしていった結果、潜行深度が浅めかつ若干のサイズダウンが奏功したのだという。

この日は、クイというピンスポットをシャッドで狙う合間のスパイスとして、より広範囲を狙うべくバンタム・リップフラッシュ115FMD(シマノ)も使用。MAX1.7メートル潜行モデルで、シャッドと同レンジを狙ったが答えは遠い。そのサイズと高いアピール力が、この時はマッチしていなかったとも考えられる。

スタートから1時間半を経過した頃、それまで晴れていた空が一瞬陰りを見せ、北西の風が吹き始める。天候に気圧、現場に明らかな自然の変化が生じた瞬間、つ・い・にソイツは来た!

8時33分、上流方向にキャストしたシャッドがクイに接触した瞬間のバイト! 即座にエレキでクイから魚を引き離し、ボートの左舷から右舷方向のセーフティーゾーンへと! そして無事ネットイン!!

「あれっ? 手が、手が震えて、魚を持てません!(笑)」

ランディングした後、試合中であるにも関わらず「バス持ち写真、撮りますか?」というサービス精神旺盛な佐々選手。しかし、見出しの通り、興奮の余り手がマイクロピッチシェイク状態(!?)で爆笑。

ひと仕事を終え、ナチュラルハイを共有した瞬間。しばし震えが止まるのを待った…。

再びキャストを始めると「あれっ? 流れてますね! やっぱカレントですね!」。

それまでよりシャッドから手に伝わる抵抗が軽くなったことで、強い流れを確認。ヒットは流れ始めた瞬間だったのだろう。

一時は場を休めるべく最上流で1時間弱を費やすも、基本的には1スポット1ルアーで終始。結果的にこの1尾(1174グラム)で試合を終了することになったが、この1尾こそが大きな価値を持った。

優勝を果たした市村選手にはわずかに151グラム届かなかったが、予選暫定3位から準優勝へと1つ順位をアップすることに成功したのだ。

今季狙うのは表彰台の頂点のみ!

参戦2年目、通算6戦目にしてTOP50における自身最高順位を記録。これまでの6戦を振り返ると10・43・17・28・3・2位。昨季2戦目の野村ダムを除く5戦で上位30以内の決勝進出を果たし、なおかつトップ10圏内は実に3戦。もはや準ルーキーを感じさせない実に安定したスコアだ。

佐々「九州出身なのでたくさんの方に『頑張れ』と応援していただいていたのに、初日にゼロをやってしまった時は本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。2日目に何とか見せ場を作れたかなと」

表彰台インタビューでそう語った佐々選手。

今回、頂点には惜しくも届かなかったが、そのパフォーマンスは”故郷に錦を飾った”と言ってもいい。次に狙うのはもちろん、その先にある栄冠。昨季最終戦の3位から、年またぎとなるが今季開幕戦で準優勝と1つ1つ順位を上げてきた…となれば、自ずと期待は高まる。

今戦の翌週末に三瀬谷ダムで行われたマスターズ第2戦では第5位入賞を果たしたとの報も。フィールドのタイプも試合スタイルも異なる2つの試合で2週連続の表彰台。今、佐々選手は日に日に強くなっている自分に薄々ながらも気付いているはずだ。競技者としての才能も存分に揃っている。近い将来、我々は優勝カップを抱える姿をきっと目撃することになるだろう。その満面の笑みと共に——–。

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