バストーナメントの順位はどう決まる?ルールを知れば国内最高峰戦がもっと面白い【JB TOP50観戦ガイド】



バスフィッシングにおいて、国内最高峰の50人の手練が熱き闘いを繰り広げるJB TOP50シリーズ。試合会期中はJB公式サイトの速報を見れば、どの選手が暫定1位なのかは誰にでもすぐに分かる。が、その順位はどんな方法で算定しているのか、意外と知らない人も多いのではないだろうか。そこで今回、トーナメント観戦をもっと楽しむために、『TOP50ルール』(=試合規則)について改めて解説しよう。

左が毎シーズン前に刊行される『トーナメントブック』(*)。前年各シリーズのスコアはもちろん、その年の開催スケジュール、そしてJB/NBCトーナメントルールも収録。右は年4回発行の専門情報誌『バスマガジン』(*)。NBC会員になれば年間購読が可能だ。*共にNBC(日本バスクラブ)刊行

基本は「1日当たりルアーで釣った25センチ以上のバス5本の重量」

まずは知っておくべきTOP50ルール基礎情報として、『釣った”25センチ以上”のバス”5本”の総重量』(注:桧原湖のみ30センチ以上)で各日の順位が決定するということ。

トーナメントのルールは厳格に決められている。

釣り方はもちろんルアーフィッシングに限定。選手達はボートに備え付けられたライブウェルでバスを『生きたまま』メイン会場へと持ち帰り検量する。制限時間内であれば、より重いバスを釣った場合は軽いバスとの入れ替えも可能。完全デッドは検量対象外。

その他細部に至るまでルールは存在するが、各違反は総重量からマイナスのペナルティ(時に1キロ!)が課されるため、どの選手もバスを釣るだけでなく、様々なケアを怠らないことは言うまでもない。

ここまでは多くのトーナメントファンがご存知であろうルールだが、やはり難しいのは順位の決定方法ではないだろうか。

単純に『5本の重量×3日間の総重量』で数字の大小が順位を決めるならば、観戦する側も実に分かりやすい。しかし、TOP50シリーズは最終的には総重量で決まるものの、予選2日間の順位を算出する方法が少ぉ〜しだけ難しい仕様となっている。

ここを理解しておけば、アナタもTOP50ツウになれる。何よりTOP50観戦がさ・ら・に面白くなるはずだ。

TOP50戦は、最終的には総重量で順位を決定するが、実は全50選手が予選2日間を戦い決勝進出の30選手を決める算定方法がやや難しい。世界基準である総重量制だった時代もあるが、現在はいわば”半重量制”の状態だ。*写真はルアーマガジン2017年6月号の121ページより。

実際の1/10スケール『TOP5』(!?)で予選をわかりやすく

TOP50はその名の通り50選手による戦いだが、ここではよりルールをわかりやすくすべく5選手による10分の1スケール”TOP5”として解説していく。

まずはこちらをご覧いただきたい。大会初日の仮想リザルトだ。

初日の結果、A選手がB選手より1キロリードで暫定首位! 以下、1キロずつ差が開いている。ここまでは何ら難しいことはない。

気になるのは、『DAY1順位得点』の項目だろう。

はたしてこれは何を意味するのか?

実は、TOP50の初日と2日目の2日間で行われる予選は『ポイント制』で順位が決定する。

各日とも1位60点、2位59点、3位58点(〜中略〜)、50位11点と続き、ノーフィッシュは一律5点という得点加算方法が存在する。

事実上は、多く釣った選手が上位に入るため、総重量制と大差がないことも多いのだが、時として『ポイント制によって起きる天国と地獄』も存在する。

それでは、仮想トーナメント2日目へと進もう。

2日目の結果、前日最下位だったE選手が気を吐きトップウェイト! 対して初日首位のA選手がまさかのノーフィッシュ…。B、C、Dの各選手はまずまずの安定したスコアとなった。

『DAY2順位得点』の項目を見てみよう。

1位60点から2位以下は1点ずつ下がり、先にも解説したノーフィッシュは一律5点のルールが適用されているのがわかる。

2日間で行われた予選結果は『DAY1順位得点』と『DAY2順位得点』、そして”もう1つの得点”が加算されることで順位が決定する。この段階では誰が首位なのか、パッと見では判断できない。トップは予選時点での最高ウェイトを叩き出したE選手? それとも…。

予選順位を決定付けるもう1つの得点とは、2日間の合計ウェイトで決まる『重量得点』だ。

予選順位は『DAY1順位得点+DAY2順位得点+重量得点』で決まる!

重量得点の結果は、2日目にビッグウェイトを持ち込んだE選手がやはりトップ。2位B選手が2500グラム差で追う形となっている。

おや? C選手とD選手は同重量なのに、なぜ同順位ではないのだろうか? この辺りは後ほど解説。

重量得点は1位120点、2位119点(中略)、50位71点と続き、ここでも2日間ノーフィッシュは一律5点というルールが適用。

つまり、2日間を連続首位かつ重量もトップであれば『60+60+120』の『240点満点』。対して、2日間ゼロで最下位となればわずかに『15点』となる計算だ。

それでは、いよいよ仮想の予選結果を発表しよう。

予選結果は、初日の最下位から一転してE選手が暫定首位! 2位には堅調なスコアを重ねたB選手、そして…やはり『天国と地獄』は起きてしまった…。

ここで改めて解説しておくが、表組はTOP50の10分の1スケールで表したTOP5。1位は1〜10位、2位は11〜20位、3位は21位〜30位、4位は31〜40位、5位は41位〜50位という意味であることを再度理解しておきたい。つまりこの表組では、極論を言えば、C選手が30位、D選手が31位と考えていいだろう。

前項では、同重量であるにも関わらず同順位ではなく、C選手が3位、D選手は4位となったことを覚えているだろうか。その結果によって両選手の間に、わずかに1点だが差が生まれていた。その1点こそが、決勝進出と予選敗退の分かれ目。

なぜC選手は天国(=決勝進出)へ、D選手は地獄(=予選敗退)を味わったのか。その理由は…

JBトーナメントブックより引用

…というルールが存在するからなのだ!

C選手は前年に年間3位を獲得して、今季のゼッケンNo.は3。対して、D選手は4。ゼッケンNo.は前年の年間順位で決まるものだ。

トーナメントは、今目の前にある現在のウェイトが大切であることはもちろんだが、それだけではない場合も時として存在する。

ここまで解説してきた仮想トーナメント展開では、重量得点を除いた2日間の順位得点で実はE・B・C・Dの4選手は同得点。重量得点で差が付いた形だが、時として重量が重くても下位、軽くても上位という異例の事態も存在する。

仮にTOP50の神様がいるとすれば、それは実に残酷な神だ。ここで解説してきたことはけっして机上の話ではない。現実に30位と31位が1点差で決まることも多々あるのだ。



決勝最終日は完全重量制! 一番重たいヤツが勝つ‼

予選順位はここまで解説してきたポイントの合計で決定して、決勝進出の上位30選手が決まる。
が、しかし! ポイント制もここまでだ。

ここから先は『最も釣った者勝ち!』のルール。F選手は予選でB選手に2500グラム差をつけて首位。いわば、2500グラムの貯金がある。

仮にF選手がこの日ノーフィッシュだったとしても、B選手が持ち込んだのが2500グラム以下、C選手が3000グラム以下であれば、他力本願だが優勝することは可能。一方で、B、Cの各選手が前述の数字以上のウェイトを持ち込めば逆転優勝が可能になる。

このシーンこそが決勝日のハイライト! 会場ではMCが選手のウェイトをコールする寸前、大勢のギャラリーが息を呑む。発表と同時に逆転を決めた選手が咆哮と共にガッツポーズ! そして割れんばかりの歓声と拍手の渦! 何度味わってもトリハダものの瞬間だ。

今季開幕戦の遠賀川で逆転勝利が決定した瞬間、市村直之選手はステージ上で拳を天に突き上げ、全身で歓喜! 思い出すだけで魂が震える。

ルール第1章 第1条に込められたJB/NBCルールの根幹

JB/NBCトーナメントルールの冒頭の一文。競技とはかくあるべし、だ。

スポーツとは、ルールが存在してこそフェアな競技として成立する。

もしサッカーにオフサイドがなければ、おそらくは単なる球蹴りだろう。

TOP50には確かに現状では、わかりにくいルールも存在している。特に予選の得点制に関しては賛否両論あるところだ。

しかし、50人の競技者達はそんな制限内においてもMAXのポテンシャルを発揮すべく、本戦のフィールドに立つ寸前までコンディションを仕上げ続け、3日間の長丁場に挑んでいることを忘れてはならない。彼らは自らを高め続ける競技者であると同時に、我々ギャラリーやファンを昂揚させるパフォーマーでもあるのだ。

次戦は第2戦弥栄ダム。

はたして誰が、どの選手が栄冠を勝ち獲るのか。直前プレビューは試合前日、6月2日(木曜)にお届け予定だ。

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