日本のルアー界に革命を起こしたラインの歴史を「王様」が紐解く! 世界と日本の基準の違い、目的別に使い分けたい現代ラインの選び方を解説!



創業から半世紀を超えアングラーの強い支持を集めてきた老舗ラインメーカー『サンヨーナイロン』。同社を代表する信頼のライン『SUPER GT-R』は今年で20周年の節目を迎える。時代の変遷と共に進化を遂げ、現時点でその名を冠するラインはナイロン・フロロカーボン・PEを問わず実に2ケタ超へ。どう使い分けるべきか? おなじみ村田基さんが徹底解説!

■村田基(むらた・はじめ)

『王様』の称号で知られる日本屈指のスーパーデモンストレーターにしてスーパーレジェンド。釣りの楽しさ、素晴らしさを誰にでもわかりやすく解説するスタイルが人気を博し、国内バス釣り草創期から第一線で活躍し続ける。
常に超多忙を極め、世界を狭しと飛び回る日々。当企画は11月初旬に何とか取材アポを取り付けたが「今日を逃したら、次に空いているのはクリスマスだったね(笑)」
たっ、タフ過ぎる……。

取材は王様のお店『潮来つり具センター』で敢行。村田基さんがお店にいるかどうかはWebサイト『村田基どっとこむ』でご確認を。



1984年、日本のルアーフィッシングを変える革命的なラインが登場

かつて日本の釣り糸はルアー釣りに適していなかった

村田「70年代後半、ルアー専用ラインは世界で4社しか作っていなかった時代。日本ではリール用ラインは存在していたものの、現在のようにしなやかな物はなく、残念ながらルアー釣りには適していなかったんだ」

サンヨーナイロンが創業したのは1967年。今からおよそ50年前のことだ。世界に遅れをとった当時の国内事情を打破すべく、同社が専用ラインの開発に着手したのは言うまでもない。1984年、ついに日本のルアー界に革命が起きる。

村田「初代『アプロード』。現在のGT-Rシリーズにも冠されるブランド名の先駆け。しなやかなのはもちろん、水に馴染むレイニークリアーと呼ばれるラインカラーが画期的だったよね」

80年台後半、それは登場した

そして80年代後半。2代目として登場した『アプロードFX』がその人気を確固たるものとした。

村田「通常のナイロンラインに比べて、スレ強度が13.3倍。とてつもないラインだったね。惚れ込んで使い続けていた矢先、もっと強い、もっと耐久性をと提案し続けた結果、ついに完成したのが……そう、初代『GT-R』なんだ」

1994年、現代へ脈々と続く「サンヨーナイロン×村田基」の系譜となる名作シリーズの幕開け。以降、ルアー専用ライン=GT-Rは数々の進化モデルや派生モデルを輩出して来たのは知られるところだろう。

最新作としては2018年に登場した『GT-Rナノダックス』が存在する。同モデルを含め、数々のGT-Rシリーズをどう使い分けるべきか? そう問うと、村田さんは各モデルの特徴を事細かに解説し始めてくれたのだった。

GT-R nanodaX ナノダックス

海外のラインと日本のラインは、同じポンド表記でも基準が違う

世界の基準はラインの「強度」

村田さんは『GT-R スーパートラウトリミテッド(以下トラウトスーパーリミテッド)』と『Z06』を前にして、こう語り始めた。

村田「まずおさらいしておきたいのは、ラインはパッケージに書いてある数字より弱い力で切れなければいけないということ」

ポンドとキロの換算は、ポンド数をだいたい2で割った数字がキロ表示になる。例えば、20lb表記は約10kg。つまり、それ以下の負荷で切れなければ20lbとは表示できない。それがクラス別タックルの世界共通規格で記録管理を行うIGFAという機関のルールなのだという。

村田「それが世界の基準。基準値を1gでも超えてしまえば、それは20lbのひとつ上のクラスのライン、30lb表記になる。でも、それは記録魚を狙うアングラーの公正さを求める基準であって、誰もが記録申請するわけじゃないよね。でかい魚を釣りたい気持ちはみんな同じだけど」

国内のラインはJAFTMA(日本釣り用品工業会)が定めた標準直径によって号数が定められる。一方でルアー用ラインはポンド表示。主に「ポンド表示÷4=号」と換算され、例えば20lbなら5号相当で標準直径は0.370mm。前述の『トラウトスーパーリミテッド』と『Z06』を見ると、その直径内に収まることが確認できる。

日本の基準はラインの「太さ」

村田「ところが、実際の強さはポンド表記以上。なぜなら特殊な素材を採用しているから。日本は太さで表記が決まるけど、強さに関する基準はない。だから表記以上の強さを持ったラインが仕上がったんだ」

プラスαの強度を持ったラインが『Z06』。同等の素材を採用しながらもIGFA基準にのっとったのが『トラウトスーパーリミテッド』なのだという。

村田「強くて当たり前な上で、しなやかさと扱いやすさを求めた上で開発したのが『HM』、そして最新作の『ナノダックス』。同じ傾向を持ったナイロンラインだと認識してほしいね」

GT-R Trout SUPER Limited トラウトスーパーリミテッド

ZO6(ズィーオーシックス)

GT-RHM ミディアム ハード

GT-R Pink-Selection





進化がさらに加速するGT-Rの系譜

村田さんのお話は初代『アプロードFX』へと遡る。

村田初代FXのスレ強度がとてつもないものだったこと、その素材をさらに追い込み作り上げたのが初代『GT-R』だと先にお話したよね。それが1994年のこと」

世は奈良・池原ダムを発端とする、でかバスブームに涌き始める。早くからこの地で大物との格闘して来た村田さんがラインにさらなる強度を求めたのは必然だった。同時にラインカラーにも徹底注力。

村田透明度が高い水質で魚に違和感を持たせずに喰わせるにはどうすべきなのか。自然界に溶け込む色がどうしても必要だった」

シナモンブラウンを纏った第二世代『スーパー』は1999年リリース。その地で捕獲した数々のでかバスはJGFA日本記録を塗り替え、現在でも6lb・3kgクラスに村田さんの名前がタイ記録として残る。その重量、何と5.22kg!

さらには2012年、最高峰に君臨する『ウルトラ』が誕生。フロロカーボンの耐摩耗性を圧倒的にしのぐ強さとして今も語り継がれる。

村田「とにかく強さ、耐摩耗性に集中して開発してきたモデルたち。障害物周りの釣りでは欠かせない。ボート釣りに比べて、不利な状況は否めない陸っぱりでぜひ使って欲しいモデルたちだね。と、ここまではナイロンラインの話です」

SUPER GT-R スーパー

GT-R ULTRA ウルトラ

王様といえばナイロンライン!?

村田基=ナイロンライン。いつの間にかそんなイメージが僕らの頭の中に刷り込まれている。しかし、必ずしもそうではないと村田さんは声を大にして言う。

村田「誤解を受けがちだけど、フロロもPEも使うよ。ナイロンがいい、フロロはダメという話ではないよ(笑)。その場その場でいろんな種類を使い分けるし、同じナイロンでもいろんな使い分けの方法がある。そこ大切だよね」

そう言いながら、数日後に控えたアマゾン釣行のタックルを準備し始める村田さん。キャリーケースに『プレミアムPE』の50〜80lbを数個しのばせる。

村田「明日は東北でサケ。これはナイロン。フロロはシーバスのジギング用が多いね。で……」

多忙を極める村田さんだが、興味深いトークはなおも続く。各釣行の詳細、そして各ラインの威力はいつかメディアで確認することができるはずだ。

GT-RシリーズにはフロロカーボンもPEも

結論「お気に入りを使ってね(笑)」

しなやかさか、耐摩耗性か。どちらを選ぶ?


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