釣れないといわれている2019年の琵琶湖で、特に夏から秋にトップで釣りまくっている男がいたという。しかもルアーは決まっていつも同じものを使っていたとか…。男の名はご存じ琵琶湖野郎・木村建太さん、そしてルアーはイヴォークゼロと名付けられたニュージャンルのノイジーだった。その正体はいかに?
【Profile】
木村建太(きむら・けんた)
ご存知、日本が誇るシャローのストロングマシーン。釣るだけでなく、ルアーデザイナーとしても非凡な才能を発揮し、これまでにスリザーク、バスターク、イヴォークシリーズなどヒットを連発させている。
完全なるニュージャンル? まずはここに至ったルーツを伺おう
木村「きっかけはアメリカです。やっぱりワッパープロッパーがバスでの火付け役なんです。元々はアメリカ北部でよく売ってるパイク用ルアーの系統で、それは後ろ半分がボディごと回転する構造です。僕はアメリカの試合でもそれを多用してて、日本で使っても釣れてました。
ただ、釣れる条件が結構ピーキーで、水面感度の高い魚しか食わなかった。なんでだろう?と、水中カメラを入れて、どんな音なのか聴いたところ…意外にも静かだったんです。水中の反響音が少ない。
そこで、水を叩く音とバズベイトのような金属音、このふたつの特性を併せ持ったルアーを作ったら絶対ヤバいやろ…というのがきっかけですね」
ーーなるほど。結果的にワッパープロッパータイプとはまったく構造が違いますね。
木村「似たようなのがアメリカのPHカスタムルアーズにあるんですけど、ペラが小さくて弱かった。なら自分で作っちゃえ、ということでファーストサンプルを作ったら…2018年晩秋の琵琶湖で一撃で釣れて。冬の間に作り込んで、ボディは割とあっさり完成しました」
ーーなぜ、ワッパープロッパーのようなペンシルタイプではなく、クランクベイト形状なのですか?
木村「一番起き上がる力が強いからです。大きなプロペラでスクラッチ音を出そうとすると摩擦抵抗が生じる。それでも回転せずに耐えるボディ構造が必要。ボディを起こす力を持たせるには…クランクと同じ形状になっちゃったんです」
よく見ると凝りまくった構造…ディテールを解説!!
木村「ワッパータイプはラインアイの位置がどのメーカーも先端についています。それだと、浮き上がりやすくて、プロペラに入る水が弱くなるんです。とにかく並行姿勢で泳がせたかったので、アイの位置は上気味にしました。
あと、ラインアイとフックには絶対にスイベルをつけたかった。なんせこれ系はバラシが多い。ラージの場合はほとんどフロントフックに掛かるのでバラシ防止のためにフロントだけ4本バリに。
ただ、それだけではあまり意味がなくて、4本をフルに生かそうと思ったらこの回転アイじゃないとダメなんです。掛けたあともエンドレススパイラルで両方刺さって…まずバレません」
ーーす、すごい…。ちなみに、バズベイトとの違いは「水面で止められる」以外に何があるんですか?
木村「素人が!(笑)。あのね、止められるのもリッピングするときにはメリットですけど、そもそもバズベイトとは魚を引き寄せる力が違いすぎます。バズベイトは障害物回避性能が高いんですが、バスを引きつける射程距離は短い。だいたい1メートル未満です。イヴォークゼロははるか下からも浮かせられる。水深3メートルくらいは十分射程圏内。それを速いスピードのただ巻きで引っ張れるので…反則なんですよ、存在自体が」
ーーもはや、ぐうの音も出ない説得力。発売が待ち遠しいです!
片羽根ペラがこのルアーの心臓
バズベイトなどの両側ペラではなく、片側だけなのは理由がある。片側荷重なので、常に遠心力のストレスがかかり、キュルキュル音が大きくなるのだ。
さらに、羽根自体が大きくなるので水面を叩く一撃のパワーが増大する。ペラと擦れる部分は通常のリベットでは2日で壊れれてしまったので、専用のカーラーを用意した。現在もプロペラとカーラーの素材は模索中だという。
イヴォークゼロがバスに見切られない秘密
一定以上のスピードで引くと、大きな片羽根ペラによってボディ後部に「泡のループ」ができる。後ろからチェイスしてきたバスにはボディがよく見えないので…「なんじゃこれ? 食ってまえ!」となってしまうらしい。
木村さんをして「キムケン史上最高傑作ですわ」と言わしめる『イヴォークゼロ』が2020年、サーフェスゲームに新風を吹き込み、旋風を巻き起こすことは間違いない!!
この記事が掲載されているルアーマガジンはこちら!
関連記事はこちら!
ちょっと前の話になりますが、AbemaTVで2016年7月20日〜21日に行われた、「ロクマルを生中継の番組で釣り上げろ!」という、夢というか無謀というか、そんな企画「バスキングライブ」。
あれから1年余り、この企画を皮切りに”釣りライブ中継”企画が続々と実現したわけで、そういう意味でこの日は「バス釣りの歴史が変わった日」だったとも言えるのかな、と。
生中継当日のスタジオでも、キムケンさんが2日間の激闘の末、タイムアップ間際にロクマルを釣…