初心者でもできる津本式講座。劇的に魚が美味しくなる血抜き、仕立て方!【道具なんていらない基本のキ】



さて、津本式、津本式と界隈で騒がれてはおりますが、やり方知らないわからない。という方に、どなたでもサクッと始められる「初心者向け・津本式」の方法を伝授します。必要なものは鮮魚、もしくは釣ってきた魚! スーパーのお魚でもいいので手に入れてきてください。あとは数点どこにでも打っている道具を揃えられれば自宅で試せますよ! 

津本式を体験するための、初心者向けの仕立て道具一式。

以下の道具を用意してください。津本式そのものについては、オリジナルサイトのリンクをごらんください!

1)ホース
2)ビニール袋
3)キッチンペーパー
4)割り箸か竹串
5)捌いていないお魚→初めての方は、アジやサンマ、小さめのタイなどがオススメ
6)お魚を入れておくタッパー(冷蔵庫に入れられるくらいの大きめのもの)
7)包丁

はい、以上7点で、魚が劇的に美味しくなる「津本式・仕立て」の体験が可能です。え? 津本式って、なんか特殊なノズルが必要なんちゃうの??

えっと、いりません。プロ仕立てに高めたいなら、ノズルを購入してください。でも魚を寝かせる程度ならそこまでの器具は必要ありません。では、手順に入りましょう!

手順1.まず、魚をまな板にのせ、エラを切ります

はい、まず、魚のエラを切ります。えと、津本式をマスターされてる方の「脳締め」はどうした「神経締め」はどうした!という怒号もありましょうが、今回はターゲットは何も処理されていない死んだお魚(鮮魚)を例に解説しますので、そちらは無しです。

とにかく、写真のこの部分に包丁を入れてください。魚の構造はほぼ同じですので、写真はブリですがどの魚にも基本、応用が可能です。包丁の刃は背中(背骨)に向けて、ひと突きです。エラを手でせぐりあげてズドン。そこから、刃を背骨に当てて、背骨に沿っている大動脈を切断します。刃を当てるだけでほぼ切れます。

エラ膜と呼ばれるエラを覆う膜が見えますでしょうか? 白い部分です。そこに包丁を穿つのですが、包丁を刺し入れるだけでOKです。
エラの背中の付け根部分にこんな感じで穴を明けます。そして背中に刃を当てるようになで切りすると、動脈がスパッと切れる。これで下準備完了です。

手順2. 尾を切ります

次に魚の尾を切ります。魚は背骨の下側に沿って動脈が通っており、尻尾をズドンと切ると、動脈が露出するんですね。つまり、エラ側で切った大動脈と尻尾の大動脈がこの作業によって開通したことになります。津本式の魚の仕立ての骨格とも言えるのが、水を血管に灌流させて血を洗浄させることなんですが、尻尾の動脈を露出することで、灌流した水をほどよく排出する出口がひとつ出来たことになります。ただし、この穴からすべての血を排出させるわけではありません。ある意味、補助穴です。

背骨の上には神経が獲っており、頭の脳につながっています。つまり脊髄ですね。背骨の下側に少し見えるのが動脈の穴です。ちなみにノズルはこの穴に差し込みますが、今回はスルーしますね。

手順3 津本さんが究極の血抜きと呼ぶ方法を実践しよう。ホース血抜き

次が、津本式の血抜き術、仕立て術で最も大事な工程です。さっき、エラに穴を明けて動脈を切りましたよね。ここに水の出るホースを当てて、動脈に水を流し込むイメージで水圧を加えます。するとどうなるか。体中の毛細血管に、そのホースの水が行き渡り膨らみます! それは内蔵にも及ぶのであります。体中のつながっている血管をめぐりますので、当然、魚はパンパンに膨らみます。とまぁ、その圧力が強すぎると風船も割れちゃうので、割れない塩梅が必要になります。

先程の尾の切断で水がほどよく抜ける穴が出来てますので、ある程度の圧力調整はできているはずです。ちなみに、このホースで圧迫は数秒程度で大丈夫ですよ。圧をかけてパンパンにしておけば、後ほどの工程で自然に血は抜けていきますから。

水で血を抜く原理を間違って覚えている人がいるのですが、水流で抜くのではなく、水圧と魚自身の、身の締りで血を抜くのですよ! それを理解できれば、色々と応用が効くのではないでしょうか。

ただ、ホースが設置できないキッチンも増えてきてますよね。ちなみに記者宅も通常のホースが設置できないキッチンなので、庭からホースリールでひっぱってきてキッチンでやっております。

ちなみに、ブリなどの大きな魚は、しっかりとした圧力を与えられるホースが必要ですが、アジやサンマ程度なら、100円ショップの油差しボトルのようなもので代用可能ですよ。ルアマガでは専用の器具も開発しておりますので、よければそちらをご利用ください。津本さんの専用器具にも接続できるようになっております。

先程と同じ写真です。この穴にホースを当てます。
ホースを先程の穴にこのように当て込みます。その奥の大動脈が切断されているのでそこに圧をかけるのですが、この穴は他の部位にもつながっています(内蔵の隙間だったり、その他の場所に。つまり、不用意な圧がかかりすぎると、内蔵を収めているお腹が破裂することもあります)
こんな感じで水がもれないように抑えることで、しっかりと動脈に圧をかけると、さまざまな血管部にいきわたり、魚が風船のように膨らみます。そうすると水っぽくならないか?と指摘を受けますが、はい、ちゃんと後処理しますのでなりません。ご安心を。ただ、時間をかけすぎると、抜かなくていい旨味も抜ける可能性がありますので、血が抜けないなーと長時間処理をするのはNGです。


手順4 エラと内臓を取り除きます。

ここまでくれば、次はエラをとります。そして内蔵を抜き取ります。このとき、切り口をなるべく抑えるのが津本式のコツです。具体的には肛門から腹ビレまでを開腹して、内蔵をとりのぞきます。そして、最後は背骨に沿う膜を包丁でやぶり、割り箸や竹串などを束ねたもので、そこに収まる腎臓を取り除きます。

エラはつながっている部分を包丁で切断していくだけ。手順は発売されている本をご覧になっていただくのがわかりやすいでしょう! 
肛門部から包丁を入れ、腹ビレくらいまでを割いて内蔵をぬきとります。エラをはずしていれば、すっぽりこの内臓がとれちゃいます。肛門部分を引きちぎってずるっと抜き取ります。
内蔵をぬきとったら、背骨に沿う膜を包丁でカットして、竹串などで、そこに入っている腎臓を掻き出してお掃除します。あとは水道水でガシガシとあらってください。水を存分に使って大丈夫ですよ。

手順5 魚を立て掛けて、脱血、脱水を促す

先程、風船のように魚を水で膨らましましたので、今度は、その水を魚の持つ筋肉の締りや収縮で血抜き、水抜きをします。トレーなどに魚を下にして立て掛けること15〜30分ほどでしょうか。この作業がとても重要です。この作業で、9割程度の脱血、脱水を完了させます。なるべく気温の低い部屋でこの作業は行いましょう。

ホースなどで水を抜くときに、やりすぎないように! と申し上げたのは、このように血管に水圧をかけてさえおけば、自然に血は洗い流されるからなんですね。新しい魚だと血管が破裂して身に水が入るなんてことも少ないですが、鮮度がイマイチな魚は血管そのものが劣化したりして、身に水が漏れる可能性は多分にあります。でも、この処理をしっかり行えば、魚が水っぽくなることは防げます。

手順 6 脱血した魚を寝かせよう!

津本式ではここからの工程も非常に大事です。

立て掛けを終えた魚を、キッチンペーパーなどで包みます。本家津本さんは、お仕事ということもあり業務用のミートペーパーで魚をまずくるみます。そのあとにグリーンパーチ紙という保護紙で覆われますが、家庭ではそこまでする必要はありません。

一応、記事では本家手順を掲載しておきますが、キッチンペーパーでしっかりくるんで、そこから、ビニール袋に魚を入れ、ホースなどで脱気(真空っぽく空気を抜く作業)。その状態で、冷水などに沈めて寝かせるのであります。

キッチンペーパーは寝かせている最中の脱血や水を吸水する役目があり欠かせない。津本さんはミートペーパーを使っている。
2段階目のグリーンパーチペーパーは家庭では新聞紙などで代用できますし、袋に穴を空けない自信があれば、キッチンペーパーだけでOKですよ。魚の保護を兼ねて津本さんはやられています。
その状態を厚手の袋に入れて、こんな感じで袋の中の空気を脱気します。アジサイズの魚などは長細いタイプのジップロップ袋などが100円均一ショップなどで販売していますので、そういったもので代用すればいいでしょう。大きい魚は専用のものか、厚手のゴミ袋で代用してください。
しっかりビニールの封をしめたら、津本さんは専用の冷蔵庫(大型)にコンテナを設置し、そこに水を入れて魚を漬けます。

最後の保管ですが、業務でやられている津本さんは写真のように大型のコンテナに水を貼り、大型の冷蔵庫内で処理をされるのですが、一般家庭ではコレは無理ですよね。

冷蔵庫で小型魚程度なら、大きめのタッパーに冷水を入れ、そこに保存すればOKです。それより大きなサイズや量を寝かせたいなら、魚釣り用のクーラーと氷を用意して、そこで保管しましょう。夏場なら毎日、氷のケアをしてあげればOKです。冬場なら、さほど手入れは必要ありませんが、水温は2度〜5度前後に保つことを忘れずに。津本さんは2度で魚を寝かせられます。

この作業には、いくつかの意味があります。まず、魚を水に浮かせて保管することで、不用意な圧迫を身に与えないので良い状態で魚を保存できる利点。そして、水圧によりほどよい圧力がかかりますので、それによりドリップが進みます。あとは、冷蔵庫の開閉などで水の中だと温度が変化しませんので、比較的安定した冷蔵が可能という利点です。

なので、なるべく沈めてあげるために、津本さんは毛布やタオルを上に当てて魚を沈み込ませています。

脱気をすることで、魚の劣化を抑えます。特に脂などの劣化を防ぐことができます。真空にする必要はないなんておっしゃる方もいらっしゃいますが、やったほうが良い作業です。様々な理屈を抑えた上で省くのはアリかと思います。

ここまでやれば、5日程度の保存は簡単! そこから先は腕次第!

はい。ここまでの処理ができれば、鮮魚として4〜5日程度は素人でも寝かせられます。数日置きにペーパーのケアができるなら、冷水に保存せず、冷蔵庫のチルド室などに安置しておくのもよいでしょう(ただし、フリーズさせるのはNG)。

困ったことに、数日寝かせるだけで魚の味は良い方向に変化します。でも、そのさきの「熟成」に向かわせる技術を施すことでさらに魚が美味しくなります。でも、当然ながら、ある程度の知識と経験が必要になってきますので、その先を目指すならしっかりとした津本式の知識を手に入れられることをお勧めします。

やはり、保存技術として優れていると言っても扱うのは「魚」ですから、食中毒などの危険が伴うからです。すべて自己責任とはなりますが、しっかりと学んで実践し始めた記者の食卓には、魚が並ぶことが多くなりました。仕事柄、食材を週末に1週間分買い込むスタイルなのですが、お肉と同じような感覚で鮮魚を購入し、保存することができるようになったからです。

また、釣ってきた魚を無駄にせずしっかり食べきることができるようになりました。しかも、味の変化を楽しみながらです。

少し程度の味の変化なら見向きもしませんが、保存が効く上に、魚の味が劇的に変わるこの血抜きと仕立ての技術。魚好きにはちょっとカルチャーショックだったのであります。なので! 自分が極めるために、津本さんの技術を書籍化したのであります(笑)。詳しくはぜひとも、書籍の方で御覧ください。宣伝と言えば、宣伝ですが、いろんな人に伝えたくなるコトって時々あるじゃないですか。これは、間違いなくその類の技術です。ぜひ、多くの人に楽しんでもらいたいですね!