アジング人気メーカー、サーティフォーとのコラボロッド。テストサンプルが届いた!【ルアーロッドの開発風景】



欲しいものは作る。それがルアマガブランドのスタンスのひとつ。数年前から作らせてください、作らせてくださいとお願いしていた「アジングロッド」。打診を続けてきたサーティフォーから、ついにサンプルが編集部に届きましたので紹介させていただきます。少し長くなりますが、開発ストーリーも織り交ぜます。ロッドってこうやって作られていくのです。



ルアマガブランドのものづくり。そして今回のアジングロッド。
MXという最新素材の登場。さらに高弾性へ。

第一弾 2ティップ仕様のアジングロッド レジットデザインとの協業

実は。ルアマガブランドでのアジングロッド開発は今回で2本目。正確に言うと3本目になります。ルアマガブランドで開発するロッドの、ひとつの特徴が専門メーカーとのコラボレーションロッドを主軸とし、基本的には世の中にないコンセプトのものを目指しています。

そこで第一弾として生まれてきたのが、ティップ交換型のマルチピースアジングロッドでした。アジングロッドはソリッドティップタイプとチューブラーティップタイプの2種類が存在していたこともあり、「どっちも使えれば嬉しい」という単純な発想で開発がすすみました。

協力してくれたのはバストーナメントで一線を張るようなセンシティブなロッドを開発しているレジッドデザインでした。海のルアーロッドの開発には当時、日本国内では未着手の同メーカーでしたが、そのノウハウを共有しながら一緒にソルトルアーシーンへの扉を開いていこうという協力体制を構築しました。

ファーストモデルは編集部員の欲しいを形にした2つの限定デザインで展開され、数量限定ではありましたが完売。そこで、一部のパーツをコストダウンした小売店用モデルを追加発売しました。それもおかげさまで完売いたしました。因みに再販予定でございます。

ルアーマガジンリンクスと言う自社ブランドとレジットデザインでコラボして作られた、ソリッド&チューブラーティップを交換できるアジングロッド。ソリッドティップは乗せ調子。チューブラーは掛け調子&小型プラグ利用、メバル釣りを意識した、2ウェイ仕様。現在メーカー在庫は無いが、少し装いを変えて再販予定。5ピース(2ティップ)。29,800円。

第二弾  最新素材と最新ノウハウを詰め込んだアジングロッドを!

カーボンロッドに使用されている素材は日進月歩。正直なところ、釣竿という部分を考えると必要以上の高性能は必要ないと考えていたルアマガの開発陣ではありましたが、その考えを改めたくなるテクノロジーが現在主流になりつつあります。それが東レが開発したナノアロイ®️テクノロジーです。

この製造技術が素晴らしいのはカーボン繊維をまとめるレジン(接着剤のようなもの)の性能を劇的に向上させたことです。簡単に言うと強く、軽く作ることができるようになりました。

カーボン繊維の進歩により、弾性率の高い商品が釣り具に採用されもてはやされた時期がありましたが、破損率も高く釣りによって向き不向きがあることが理解され、高弾性=高性能というミスリードからは解き放たれました。が、この高弾性素材とのシナジーが高いのがナノアロイ技術と捉えることができます。

実用域では少々、強度に不安のあった高弾性素材をレジン技術の向上により補完できるわけですから、もともと持っていた高弾性カーボンの長所をより顕在化することが可能になりました。

取り急ぎ、このナノアロイ技術の恩恵を受けたい! とルアマガ・チームで考えました。

中弾性カーボンでありながらナノアロイ技術が投入されたトレカT1100Gマテリアルを採用したエギング用ロッドを、同素材の扱いに長けた国内のオリムピックに製造を依頼し、なおかつエギングの知見に長けたYAMASHITA、川上英佑氏の協力を経て完成したのが、オリムピック・YAMASHITA・ルアマガのコラボレーションロッド「カラマレッティ・エギ王スティック」です。このロッドは想像以上のパフォーマンスで完成しました。

T1100Gはロッドにすると軽くて、粘りがあり、弾性率は中弾性ながら非常に感度が高いという特徴があると感じています。

300本が販売され、即日完売。残念ながら再販予定はありませんが、現在も再販要請がお客様から飛び込む伝説のエギングロッドとなりました….。自分用の折れたらどうしよう…。

ここでナノアロイ技術のポテンシャルを確信。同技術に同じく注目していたアジングメーカーの新モデルに着目しました。そのアジングメーカーこそが家邊克己さん率いるサーティフォー です。

profile
家邊克己(やべかつみ)

ライトゲーム専門メーカーとして人気のサーティフォーの代表として、アジングシーンを牽引するアングラー。絶対現場主義で、常識に囚われず、フィールドに答えを聞くスタンスでこだわり抜いたアイテムを時間をかけて開発。それゆえに多くのアングラーに支持を受ける。

当時、ルアマガとしても認識していたのは、ナノアロイ技術を使用した既存のプリプレグ商品は東レのトレカT1100G。そしてトレカMXシリーズのMX40。MXシリーズのほうが後発で、MX40は、37tを少し超える弾性率のプリプレグになっており、アジングの場合、高弾性素材の特徴を生かしやすい釣りのため、そのMXシリーズを使ってのアジングロッドの開発を持ちかけようと話をしていたところ、サーティフォーの家邊さんが一言。

家邊「次のうちのロッド(昨年末の取材時の話です)、55tのナノアロイ技術採用素材採用してるんだけど、これが面白くてさぁ」

ルアマガスタッフの知っていた素材よりさらに高弾性のマテリアルを使用していることが発覚。そこで持ちかけたのが….

ルアマガ「家邊さん。カリカリの最前線で戦えるアジングロッドでありながら、不意の大型魚にも対応できるアジングロッド….そう、大は小を兼ねるではなくて、小は大を兼ねるというコンセプトのロッドが欲しいんですけど。ただ強い。というロッドというのではなくて….、ほら、家邊さん以前にシーバスを簡単に釣って寄せてらっしゃいましたよね」



トップクラスのアジングロッドとしての性能と、50cmを超えるスズキ、ハタですら「余裕で捌ける」、「小は大を兼ねる」二律背反を実現せよ!

ソルトルアーシーンでは繊細さの極地が求められるアジングロッド。そこを尖らせると、大型の魚を捌ける力はオーバーパワーになります。二律背反を迫られるコンセプト。一見無茶振りではありましたが、ルアマガチームには他力本願でありながら実現の可能性を知っていました。

なにせ、サーティフォーのアジングロッドには、そもそもそのコンセプトに近い設計を新しいモデルに持たせていました。ただ、あくまでも、「あ、でかいのかかってもどうにでもなるよ」という位置付けでした。ただ、アジングという釣りでは無類の性能を見せているハイエンドロッドが同社のAdvancement HSR-63 Version3(2020年8月発売予定)です。<記者もすでに触らせていただいています>

ルアマガ「それを(不意の大物を無理なく釣れる)、より顕在化、顕著にさせてください」

家邊「そもそも、アジングロッドで大概のものは釣れると思ってるんですよね。僕も80cm超えるヒラスズキとかアジングロッドで釣ってるしね(笑)」

そう、スタッフも知っています。アジング取材の時に不意に掛かる大物。ルアーマンがあまり実践しないような巧なファイト技術でシレッと釣り上げてしまう、しかも、それを自社のエステルラインや極細PEでなんなく成し遂げてしまうことを。

ルアマガ「できれば家邊さんの神業的技術はほどほどで、そういった大物を捌けるロッドでありながら、アジングロッドとしてその面白さをスポイルしない変なロッドが欲しいです」

しばし、一考する家邊さんでしたが、

家邊「やりましょう!かなりアバウトな注文ですが(笑)」

呆れ快諾。そこから数ヶ月後、ついにファーストサンプルが上がってきました。

ADVANCEMENT65のネームが与えられています。
はい、サーティフォーのラインナップにはない6フィート5インチという長さで調整されました
ルアマガとのコラボとなっています。

家邊「ごめんなさい、最初、ナノアロイ採用素材のサンプルと申し上げたのですが、今回お送りしたのは通常の高弾性カーボン採用モデルです。7月中に同じテーパーでナノアロイ採用素材のサンプルを再度送りますから、その違いを実感&比べてください

色々考えたのですが、自分的には少しだけロッドを長くしています。6フィート5インチですね。これらな60センチクラスのスズキ、アジングロッドでは荷が重すぎるようなハタ類。問題なくファイトできますよ。もちろん、ご要望通り、アジングロッドとしてアジを掛けても面白いアクションに仕上げましたから(笑)」

ナノアロイの特徴を比較テストできるとか有難い!

いざ、実釣テストへ

サンプルロッドが届いてすぐ、編集部では防波堤でのキャストテスト、フィーリングテスト。そしてボートアジングに二度ほど向かいしました。

ちなみにサンプルはバッド1種、ティップ3種類が到着しております。

番号が若い順に繊細。

初回は低価格帯のアジングロッドとたまたま比較できる機会があり、アジングが初めてという新人編集部員がサンプルロッド触ったところ、値段によりそんな差があるものなのか? と疑念を抱いていたようですが、さすがに倍以上の価格差のあるロッドの性能差に驚いていたようです。当然です。

ボートアジングではサンプルロッドで初めてアジを釣り上げていました。他の編入部員の反応も軒並み良く、特にキャストフィールに注目が集まりました。ティップのブレの収束が早く抜け感がめちゃくちゃいいのです。ナノアロイになるとそれが更に顕著に出やすい特徴があるので、より楽しみです。

ワカシでその実力の片鱗を!

2度目のボート取材はワカシも混じる、ロッドの実力を測るのにはちょうどよい局面に。テストを手伝ってくれたのは東京湾羽田から出船し、ギガアジ釣らせ仕事人としてしられるAnglers stuffの高橋知也船長の船。現在はギガアジの季節ではないですが、それでもその時期のマックスサイズの良型のアジをいつも釣らせてくれる船長です。

profile
高橋知也(たかはし・ともや)

サーティフォーのフィールドスタッフとしても活躍する、東京湾の敏腕船長。最新の魚探を駆使し、豊富な東京湾の釣り物を季節に合わせて的確にガイドする。アジング好きにはギガアジを釣るならAnglers stuffに頼れ!が合言葉。チヌゲームは流行る前から着目し、ガイドにも一日の長あり! とにかく引き出しの多いガイドスタイル。

テスト当日は、ややアジの型は下がり気味との一報。実はそれはそれで好都合。ロッドに持たせたパワーがオーバーならその手のアジで楽しめない。それならばダメだと感じていました。高橋船長の前のテストで数尾、20cm代のアジを釣り上げ、パワーを感じながらも、小型のアジでも楽しめることは確認していましたが、再度確認です。



結論からいくとバッチリ。ただ、3本あるティップのうち、一番ハリのあるモデルは少しパワーが強すぎる感じがしたので、早速、サーティフォーの家邊さんにその旨を伝え、次回サンプルとなるロッドは提示されたうちの柔らかめのティップ2本をベースにしていただくことになりました。

ワカシが沸いてたので、何尾も掛けてテスト! ありがてぇターゲットだ!
20cmクラスのアジもオーバーパワーを意識させない釣り感で楽しい。
バットパワーはしっかり。ティップだけでなくミッドの素材感と感度で釣り味は非常にいい。すでに扱いやすいロッドになっている。あとは釣り込んで細かなフィードバックをする。

そうこうしているとワカシが湧き始めたので狙ってみたところ、パワーでいうと30cmクラス、40cmクラスのアジに匹敵する走りを見せるサイズ。こちらを掛けてみたところ、実に魚をコントロールしやすく、そのバランスに舌を巻きました。

ということで、次回は、設計者の家邊克己さんと一緒にサンプルで釣り込み、次のサンプルに向けての意見交換を行うことになりました。すでに完成度の高いサンプルをどう仕上げていくか。実に楽しみです。かなりキレキレのアジングロッドになりそうですので、お待ちくださいませ!