長年ショートロッド界の王座に君臨してきた名竿1581は、村田さんの代名詞的存在だ。ショートロッド復権と聞いたら、ミラクルジムに話を聞かない手はない! ショートロッドのすべてを知る王が、その本質を明かす!
【Profile】
村田基(むらた・はじめ)
潮来釣り具センター店主。日本のバスブームの立役者であり、シマノのタックル開発にも大きく貢献してきた。世界各国を釣り歩き、まさに日本ルアー界の王様だ。グランダー武蔵の「ミラクルジム」のモデルとしても有名。
ショートロッドの変遷はバスフィッシングの歴史だ!
潮来釣り具センターの店内で、村田さんはまずショートロッドの歴史を語ってくれた。
村田「第一次バスブームと言える1970年代は、バスロッドが一番長くて6フィートだった。そして、グリップはシングルのガングリップが常識だった。シングルでグラス素材だったから、長いロッドは重すぎたんですね」
素材的、技術的な制約が強かった70年代。しかし、時代を経るごとに状況は変わってゆく。
村田「80年代くらいになると、それまで高価だったカーボン素材が普及してきて、6フィート6インチというロッドが出始めた。そこに、フリッピングと言われる釣りが出てきて、7フィート6インチというロングロッドが出現したんですね」
フリッピングが流行したのは80年代後半。しかし、まだ時代はショートロッドが全盛だった。村田さんが愛用していた1581は、84年にマグナムライトGTで登場して以来、スピードマスター、バンタムスコーピオン、スコーピオンXT、シャウラへと連綿と受け継がれていった。
村田「あの平成のバスブームのピークが1995~2000年なんですけど、その後はロングロッドに変わって行っちゃったんですよ。カーボン素材が軽くなったから、ロッドも長くなっていったんですね。ショートロッドも5フィート10インチに移行した。1581も、15101になった」
時代は下り、6フィート以下のロッドは市場からほとんどなくなってしまうことになる。
ショートロッドの歴史を実物で振り返る
バスロッドはブーム黎明期は短く、それから徐々に長くなっていった。
上から「オリーブUL/SC5.5ft」、「グラファイトGR-01504」、「バンタムボロンBC-1553」。この3本は恐らく70年代にリリース。全てガングリップだ。
上から4番目は87年に「直感グリップ」として人気を博したスピードマスターのSM-1552。この時代までは5フィート台が主流だった。
一番下が、スコーピオンXT1653R。97年モデルの万能ロッドで6フィート5インチだ。2000年以降にはロングロッドの流行が始まる。
ショートロッドの優位性
村田「例えば、アシが目の前にあって、それを飛び越えて釣る場合や、川の対岸に投げて釣る場合などは、ロングロッドの方がいい。バスボートからピッチングする場合も長い方が断然有利だよね」
しかし、正確に投げたり、キャストの基礎を覚えるにはショートロッドの方が圧倒的にいい。
村田「オカッパリでピンポイントを狙ったり、スキッピングさせるなら、ショートロッドがいい。本当はどっちも必要だし使い分けが大事なんです。長いロッドの方がパワーがあると思っている人がいるけど、実は魚との引っ張り合いは、ショートロッドの方が強いんだよ」
では、そのショートロッドが最近見直されている理由は?
村田「それは、新しい人が戻ってきたから。2003〜2012年くらいまで、これからバスを始めるという人は本当に少なかった。でも、2013年頃から入門者が増えてきた。そういう人にはショートロッドがいいんです」
村田さんは女性や子供の入門者を考慮して、バスワンXTに5フィート台のモデルをラインナップさせたという。ショートロッドの復権は、バスフィッシングの復権につながるのかもしれない。
バスワンXTの5フィートモデルのヒミツ
バスワンXT 150ML-2(シマノ)
バスワンXTには5フィートモデルがある。これは子供の使用を想定して設計。でも、デザインや性能のクオリティーは高い。グリップはなんと、ブルーのワールドシャウラと同じ型なのだ!
村田さん曰く、「ロッドの長さは身長に合わせる!」
ショートロッドとロングロッドには、長所と短所があり、その使い分けが大事。
でも、入門者に関しては「自分の身長に合わせる」ことが大事なのだ。成人男性なら5フィート6インチ前後が使いやすい。背の高い人は6フィート。
実は遠投競技用ロッドって5フィート台が多い
村田「遠投の競技会で、シングルハンドで一番飛ぶ竿って、実は5フィートなんです。長くても5フィート半。なぜかというと、日本人の力では、6フィートを振り切れないんです」
ダブルハンド部門では13フィートが主流。ショートロッドは必ずしも遠投に不利なというわけではないのだ。