要注意! 釣り場で出会う海辺の危険な魚や生物たち全部紹介します【フグ、ハオコゼ、ウミケムシ、アカエイetc…】



釣りを通して身近に接することができるとはいえ、魚もれっきとした自然生物。自分の身を守るために鋭い牙やトゲを身につけ、あるいは人が命を落とすほど強い毒を持つ魚も数多く存在します。しかも、そういう魚に限ってよく釣れたりするものです。この記事では、釣り場で出会う可能性がかなり高い生き物たちを紹介します。

知らない生き物は触らないこと! 食べないこと!

日本の海・川には魚だけで3000種、他の生き物は数万種もの生き物がいると言われ、毒をもっているものも少なくありません。基本的に見たことのない魚が釣れた場合には、触ったり食べたりしない方が無難です。

釣り場では放置された魚を目にすることも多く、毒魚の毒は死んでも効力がすぐには失われません。子供達が触ったり靴の上から刺されたりする場合もあるので、十分気をつけましょう。

触ると危険な海洋生物

【堤防釣りでよく釣れる!】ハオコゼ

全国に広く分布し、特に内湾域の藻場などに多い小魚。防波堤からの投げ釣りやサビキなど子供達が遊ぶエリアにも多いので、家族連れの方は特に注意が必要です。

ハオコゼは小粒だが、毒性は強い。

背ビレと尻ビレ、腹ビレに毒トゲがあり、刺されると激しい痛みに加え、しびれ、知覚麻痺、発熱や悪心・嘔吐、下痢等が起こります。刺された場合は、傷口を洗浄し、43℃前後のお湯に30~90分温浴すると痛みの緩和が期待できます。

ハオコゼ以外にもオコゼ類は多く、カサゴの仲間なども「オコゼ」と呼ばれる場合もあります。対処療法は同様です。

【綺麗だけど……危険!】ミノカサゴ

防波堤などで良く見かけるカサゴの仲間。長い胸ビレをなびかせながら泳ぐ姿は優雅で美しく、観賞魚としての人気も非常に高いですが、その一方で背ビレと尻ビレ、腹ビレに猛毒のトゲを持っています。刺されると激しい痛みと腫れ、しびれ、知覚麻痺、発熱や悪心・嘔吐、下痢等が起こり、ひどい場合には死亡する場合さえあります。なお、長く綺麗な胸ビレは無毒です。

美しい花には棘がある…を地で行く存在、ミノカサゴ。しかも毒入り。

ハオコゼと同様、熱によって毒の活性が弱まるので、やけどをしない程度のお湯に患部を浸けると痛みの緩和につながります。ただハオコゼなどと比べて毒性の強い魚なので、容態が悪化する前に医療機関にかかったほうがよいでしょう。

【関東でも増加中……ヒレは全部毒針!】アイゴ

広い分布域を持ち、特に内湾域に多いアイゴは雑食性が強く、サビキやウキ釣りなど何にでも釣れてきます。多くの毒魚と同じく、背ビレ、腹ビレ、尻ビレに多くの毒針を持ち、刺されると激痛が起こり腫れ上がってしまいます。

見た目はたいして特徴もなさそうに見える魚だが、各部のヒレのトゲに毒がある。
陸に揚げると毒ヒレを立てて威嚇。不用意に掴んだりしないこと。

アイゴの毒針は鋭く容易に刺さるので、メゴチバサミなどで固定しながら処理するといいでしょう。また死んでも毒は残っているので、クーラー等に入れる場合には、事前にキッチンバサミなどでトゲを切り取っておくことをお勧めします。

【堤防釣りや夜釣りの常連! 胸ビレに強力な毒針】ゴンズイ

海水魚ですがナマズの仲間。磯、砂浜、防波堤などあらゆる場所に生息する毒魚で、特に夜釣りでよく釣れてくる魚です。背ビレと胸ビレに毒性の強いトゲを持ち、刺されると激痛、腫れがひどく、それが数日間続くこともあります。

可愛らしいご尊顔に反して毒を持つゴンズイ。でも、確かによく見てみると黒字に黄色い縞の入った危険色だ。

症状が激しい場合には医療機関で鎮痛剤等の注射をしてもらうのを推奨します。防波堤などに放置されていたものを踏んで刺される事例も多いので、もし釣れたときは絶対に放置しないようにしましょう。

【尻尾の付け根に大きな毒針!】アカエイ

日本全国に分布し、内湾から外洋に面した海岸まで広く分布するエイ。砂地や泥地を主な生息地としており、投げ釣り・ルアー釣り等にしばしば釣れてくる魚です。

アカエイは尾ビレにカエシの付いた大きな毒トゲを持ち、刺されると強烈に痛みます。症状としては失神、筋力低下、悪心、嘔吐、下痢、発汗、全身痙攣、呼吸窮迫等。死亡例も少なくありません。

また針がノコギリ状なので、皮膚がすっぱりと切れて大きな切り傷を負う場合も。毒トゲの破片が刺し傷内に残ることもあり、素人療法は危険。速やかに医療機関に行くべきです。

写真はアカエイ。ウェーダーを履いて立ち込んだり、また海水浴中にも気づかずに踏みつけて怪我をすることもある。

アカエイは釣り以外でも潮干狩りなどで砂浜や干潟に立ち込むときに、間違って踏んづけてしまうことも。このとき柔らかい素材のビーチサンダルなどを履いていた場合に棘が貫通することもあります。「エイガード」など、安全性の高い装備があると安心です。

【ギョエーッ! 見た目通りの凶悪ぶり】ウミケムシ

海底にすむゴカイの仲間で活発に海底で餌をあさるため、しばしば投げ釣りの仕掛けに食いついてきます。そもそもあまり触りたくないグロテスクな見た目なので手に取る人は少ないが、誤って接触すると体表の鋭い毛が皮膚に刺さります。

びっしりと生えた毛に毒がある。まさしく海のケムシだ。

毛に刺されると強いかゆみに加えてミミズ腫れが起こり、時には1週間以上も続くことも。皮膚に刺さった毛はガムテープなどを使って取るとうまく除去できます。かゆみには一般の軟膏タイプのかゆみ止めが効果がありますが、ただれてしまった場合にはステロイド系軟膏が有効です。

【打ち上げられていても触ると危険】クラゲの仲間

代表種はカツオノエボシ、アカクラゲ、アンドンクラゲなど。釣りで針に掛かる事は少ないですが、しばしば目にすることの多い生きものです。見かけは可愛いのですが、強い毒がある種も少なくありません。中でもカツオノエボシは電気クラゲの異名もある毒クラゲで、特に注意が必要です。

カツオノエボシの出現は初夏頃、アカクラゲは夏頃、アンドンクラゲはお盆以降によく見かけます。

カツオノエボシ。打ち上げられてカラカラに乾いた状態でもまだ毒性は残っている。

また、岸際に打ち上がっているものでも毒性は残っているので要注意。クラゲの毒は、毒針で刺す毒であり、強いものでは人を死に至らしめる程の力があります。刺されると、ピリピリした痛みや腫れに伴ってじんましん、呼吸困難や激しい動悸などが起こり、最悪の場合ショック症状を引き起こす事があります。

刺された場合にはすぐに皮膚に張り付いた触手を取り除き、落ち着いて海水で洗いましょう(水道水は逆効果の場合があるので注意が必要)。砂や布などでこするのは刺胞毒を広げてしまうので逆効果です。抗ヒスタミン軟膏などが効果がありますが、症状が強い場合は医者にかかることをお勧めします。酢をつけるという民間療法もありますが、酢に反応して刺すクラゲも存在し、その場合は逆効果となってしまいます。

【カラフルなタコ=危険のサイン!】ヒョウモンダコ

ヒョウモンダコは頭の大きさが大人の親指ほどの小型のタコで、外海に面した暖かい海に生息しています。普通のタコとの見分け方は体を覆う鮮やかな青い斑点。数がそう多くないので釣り針にかかってくる事はあまりありませんが、咬まれると猛毒が注入され、死亡例も少なくありません。

青い輪紋がヒョウモンダコの目印。死亡例も多く、不用意に手を出すべきではない。

毒はフグと同じテトロドトキシン。ヒョウモンダコの毒は咬まれると危険な毒と言われていましたが、最近の研究で肉や内臓にも毒が含まれている事が判明、食べることも厳禁とされています。子ども達にとっては可愛い遊び相手かもしれませんが、手に乗せて咬まれることも多いので近づかないのが懸命です。

かつては沖縄など暖かい地方の生きものでしたが、温暖化や海水温の上昇に伴い、近年は本州での採集例も多く報告されています。温暖な地域でなくても注意しておく必要があります。

安全に魚からハリを外すには“ハリ外し”が有効!

毒やトゲを持ち、素手で触りにくい魚からハリを外すには“ハリ外し”が非常に有効。手軽にすばやく魚からハリを外せるので、危険魚に限らず釣りの際には便利です。同時に魚を掴むメゴチバサミやフィッシュグリップなども用意しておくと、さらに安全に釣りを楽しめます。



食べてはいけない魚たち

【自己判断で食べないでください……】フグ類

クサフグは釣りの外道としてもよく知られている。

代表種はクサフグ・ショウサイフグ・アカメフグ・キタマクラなど。

餌取りの代表・フグの仲間は極めて広い分布域を持ち、岩場から砂地までどこにでも暮らしています。釣り方もサビキで釣れたり、投げ釣りで釣れたりと神出鬼没。種類によって毒のある部位は違うが、多くは皮膚、内臓、血液等にフグ毒テトロドトキシンがあり、加熱しても無毒化できません。

食べると全身麻痺、嘔吐、知覚麻痺や言語障害、呼吸困難を感じ、血圧の低下から意識消失、呼吸停止ののち死に至ります。動物を食べて起こる食中毒死のうち、実に98%がフグを食べたことによるもの。素人料理は絶対避けるべき魚です。

治療は、まず救急で医療施設に運ぶことが先決ですが、死に至る直接的な原因は筋肉の麻痺による呼吸困難。したがって、運搬中の人工呼吸が効果があるとされています。

【でっかいカラフルなカワハギは猛毒】ソウシハギ

大型のハギの仲間。一見するとウマヅラハギの様にも見えますが、体表に青い文様と黒点が散在し、尾鰭が大変長い事で容易に区別できます。温暖化に伴い生息域を拡大していて、船での釣りはもとより防波堤でも釣れる事があります。

フグ以外にも毒魚は存在する。知らない魚は食べないのが安全だ。

毒は内臓に含まれるパリトキシンで、フグ毒であるテトロドトキシン以上の猛毒とされています。肉に毒は無く沖縄などでは食用とすることもありますが、危険を冒してあえて食べる程の美味でもありません。

鋭い箇所に注意! ウツボや磯ではフジツボ、カキなどにも注意

タチウオなど、魚によってはカミソリの様に鋭い歯やエラ蓋などがあったり、毒がなくてもヒレなどに鋭いトゲを持つものも多く存在します。またウツボ・ハモなど積極的に噛み付いてくる魚も。

こうした魚は怪我をしないように魚バサミを使用したり、ハリを飲み込まれた際などは無理矢理外そうとはせず、そのまま糸を切って逃がすなど、極力素手で触らない様にしたいものです。

また釣り場の足元にはフジツボやカキ殻などがよく付着しており、端が刃物の様に切れやすい形状になった場所も多く存在します。転ばない様に注意すると同時に、安易に触れないようにしましょう。服装も転倒時のケガを考えると長袖・長ズボン着用を推奨します。

カキ殻で作った傷は化膿することも多々ある。特に用事がないならなるべく触れないほうがいい。

もしもの時には迷わず医療機関に相談を!

毒魚を誤って食べてしまったり刺されたりした時には、最悪の場合死に至る時があります。近年はフグだけでなく、温暖化で南方のシガテラ毒等をもつ魚が北上してきており、思わぬ魚で中毒する事も考えられます。

またクラゲやハオコゼ等に刺された場合、1回目は大したことが無くても、2回目に刺されるとアナフィラキシーショック症状で命に関わる場合があります。どの事例においても自分で判断する事無く、電話でも良いので医療機関に相談する事が安全です。

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