ひと雨ごとに水のなかも涼しさを増し、真夏の高水温から解放されたバスたちは広範囲に散る。だから秋は、広くサーチできる巻き物の季節だと言われる。そしてその最右翼がスピナーベイト。自他ともに認めるパワーフィッシャーマン・黒田健史プロに、このルアーの潜在能力を引き出す活用法を実践してもらった。
【Profile】
黒田健史(くろだ・けんし)
たとえスポンサーのアイテムでさえ、歯に衣きせぬ黒田節で「ダメなものはダメ」と言い切るインフルエンサーにしてJBトップ50プロ。トーナメントプロの節目ともいうべき齢35を迎えた今年、勝負に出るつもりだったがコロナ禍により全試合が中止に…その鬱憤を晴らすだろう来季に注目!!
絶対的秋の王道ルアー
ブレードが水をつかんで攪拌し、フラッシングとともに強めの波動を発生。スカートは艶めかしくたなびき、時にシルエットの変化をもたらす。
構造上、おのずとアームが根がかりを回避するガードの役目をはたし、トリプルフックの付いたプラグとは比べものにならないスナッグレス性能を発揮、障害物周りも果敢に攻められる。
シンキングであるがゆえに使い手が任意にトレースレンジを調整可能…考えてみれば、スピナーベイトほど便利なルアーは多くない。
にもかかわらず、最近話題にのぼる機会が減っていると感じるのは記者だけだろうか。
さまざまなルアーが店頭に並んでいる現在、新規ジャンルについ手がの伸びてしまうのはアングラーの性というもの。ではこの、バスルアーの王道にして定番は、もはや釣れなくなってしまったのか。
答えはノーだ。
投げて巻くだけでもオートマチックに結果を導き出してくれるスピナーベイトは、徐々に適水温へと近づきバスの活性が高まるこれからの季節に欠かせない存在であることは間違いない。そしてアングラー側が意図的に使い方を工夫することで、このルアーの出番とゲームの幅は確実に広がっていく。
今回の取材はボートを使用したが、その特性をしっかりと把握して使いこなせば、岸釣りこそスピナーベイトの恩恵を得られる場面は多いだろう。初秋の長良川(岐阜県)で黒田健史プロが魅せてくれたスピナーベイティングは、あらためてそう感じさせてくれたのだった。
撃つルアーとしてのスピナーベイト
黒田プロが愛用するのは、バンタムスウェジー。
バンタム スウェジー(シマノ)
ヘッド側(ロワーアーム)のワイヤを太く、ブレード側(アッパーアーム)を細くすることで、タフさと振動伝達力の向上を両立。軽い巻き抵抗ながら強い攪拌力を生むオリジナルデザインのBtブレード、ヘッド下部にチューン用アイを配置するなど、斬新なアイデアが満載のスピナーベイトだ。
ロワーアーム(0.95mm)とアッパーアーム(0.6mm)で線径が異なるこのスピナーベイトは、独自形状のBtブレードと相まって無二の使用感をアングラーに与える。ブレードの回転半径が大きく、強い攪拌力(波動)を備えながらも巻き心地は控え目なのだ。それゆえ、速度調整やレンジコントロールが実にしやすい。
たまたまテスト段階でのプロトモデルを使用する機会に恵まれた記者は、その不思議な感触が忘れられず、発売直後に購入。以来、何かとお世話になっている(笑)。
タイプ:タンデムウィロー(TW)
フックサイズ:SB-30 #2/0×1
タフさとバイブレーションを両立するBtスピナーベイト。
今回の取材では、そのヘビーウェイトバージョンであるスウェジーストロングが主役となった。
バンタム スウェジーストロング(シマノ)
今秋、スウェジーのヘビーウエイトバージョンが登場する。ヘッドの重さに合わせ、テーパードワイヤーはオリジナルよりも太い線径で設計。ディープのスローロールはもちろん、シャローの超高速リトリーブでも安定の回転波動を生む。
スピナーベイトというと、広いエリアで投げて巻くルアーという認識が一般的だろう。
ファストムービングならではの手返しの良さやアピール性能を活かせるその使い方は、たしかに理に適っている。
実際に黒田プロも、バンクからブレイクが離れたフラットや直線的な護岸のストレッチを、エレキを踏みながらロングキャスト&ファストリトリーブで流していく場面があった。しかし、そんなふうに広範囲を探る展開は、アプローチ全体の2割にすら満たなかった。
残り8割は、シャローのレイダウンやブッシュなどのカバー周り、あるいは灯標、取水塔、橋脚といった縦ストラクチャーを狙っていたのである。つまり、どこにいるか分からないバスを当てるより、確実に居ると思える場所を中心にチェックしていたのだ。
ブレードの付いたラバージグという考え方
その使用法でとくに興味深かったのは、フォールを多用していたこと。
着水後、水中へと伸びたブッシュの枝に沿わせてカーブフォールさせたり。灯標の向こう側に投げて表層を通し、際まで巻いたらロッドをゆっくり倒しつつバーチカルに近い角度で落とし込んだり。
黒田「ブレードの付いたラバージグと考えれば、こんな使い方もありなんですよ。スウェジーストロングの5/8ozを使えば、1/2ozのジグと同じスピード感覚でフォールさせられます」
これがクランクベイトなら、巻きを止めればアクションは失われ浮上するのみ(それが有効な場面もあるが)。しかしスピナーベイトはフォール中も誘い続ける。回転効率に優れたスウェジーなら、ラインテンションを張らず緩めずのスローフォールですらブレードが回り続けているのである。
昔から横の動きの代表として取り上げられることの多いスピナーベイトだが、縦にも斜めにも誘えるし、泳層と速度の自由度も高い。なおかつ根がかりしにくいときたら、足場も携帯できるルアーの数も制限される岸釣りで、活躍しないわけがなかろう。
この日、黒田プロは、個体数が少なく複数尾のキャッチが困難なことで知られる長良川から、スウェジーストロングで3尾のナイスバスを手にしてみせた。
黒田「浅いレンジであえてストロングを使って超速引きしたり、最近ではスピナベサイトとか…高度な技術もありますけど、もし、スピナーベイトが苦手ならブレードタイプとか難しく考えず、まずはダブルウィローを選び、シンプルにウエイトで狙うレンジを変えるだけでいいと思いますよ」
スピナーベイトを使いこなすためのヒント集
モデルやウェイトによるトレースレンジの変え方
ここに挙げた数字がティップを水面に向けた状態でのミディアムリトリーブにおける深度の目安。巻くスピードやロッドの保持位置でもトレースレンジは変わってくるが、慣れないうちはウエイト変更で調整するといい。
ブレードタイプ別使用基準
タンデムウィロー
ダブルウィロー
マルチダブルウィロー
黒田さんのタックル
■左:スウェジーストロング5/8ozを用いたテクニカルなショートレンジのアプローチ用●ロッド:バンタム169M-FM/2●リール:アンタレスXG●ライン:フロロカーボン14lb
■右:3/4oz用ロングキャスト中心のシステム●ロッド:ゾディアス172MH●リール:アンタレスXG●ライン:フロロカーボン14lb
※ロッドとリールはすべてシマノ製
巻く作業の中にトリックを加える
黒田さんはミディアムリトリーブでもスローロールでも、一定リズムで巻き続けるのではなくピックアップまでに速度変化を与えたり、ロッドをあおるなど故意に動きの変化を与えていた。モノに当てずとも、捕食のスイッチを入れられる可能性があるからだという。
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【Profile】
黒田健史(くろだ・けんし)
1985年生まれ。国内最高峰カテゴリーJBトップ50メンバーであり、昨季の開幕七色ダム戦では見事3位入賞、年間ランキング7位で…