26kgオーバーの「超巨大カンパチ」を磯のキャスティングゲームで捕獲!“磯の剛力”を獲った5つの勝因とは…



大の男が並んでも見劣りしない巨体。2020年10月中旬、シマノ・ソルトモニターの上津原勉さんがキャッチした全長144cm、重量26.3kgのモンスターカンパチだ。磯のキャスティングゲームで快挙を成し遂げた張本人に勝因を分析してもらった。

【Profile】
上津原勉(うえつばら・つとむ)
1979年生まれ。熊本県在住。釣り好きの父の影響で幼少期から釣りに親しみ、小学生で磯泊まりを経験。その後も磯に通い続け、現在は九州西岸の磯や離島をホームに活躍するロックショアゲームのエキスパートだ。座右の銘は“ケガをせずに家に帰る”。



カンパチとは? 「断トツで獲りにくい最恐の青物です」

カンパチはスズキ目アジ科の魚で顔を正面から見ると“八”の字のように見える暗褐色の線が特徴。釣り人の間ではブリ、ヒラマサとともに青物御三家と呼ばれる人気魚種だ。

上津原「カンパチの今までの自己記録は7kgで今回大きく更新しました。それまではでかいカンパチをかけても獲れる気がしなかった(笑)。というのも同サイズならヒラマサより圧倒的に引く。

しかもカンパチは磯際で喰うことが多く、恐ろしい力で根に突っ込む。釣り人が止めようとするほど抵抗して、体を持っていかれるほど怖いくらいに引きます。断トツで獲りにくい最恐の青物です」

勝因1:夕マヅメ+理想的な地形と流れで釣果を確信

上津原「10月中旬、男女群島のプラッギングやショアジギングのメインターゲットはキハダマグロです。自分もキハダを狙いに行ったんですが、初日に乗った磯の雰囲気がめちゃくちゃ良かった。『サイズはともかく何か釣れる!』と確信しました」

磯の雰囲気が良かった…どんなふうに?

上津原「磯の地形と流れです。立ち位置の沖7、80mに根があって、右側には離れ瀬が2つ。左側にも瀬が張り出している。青物が回遊しやすい入り組んだ地形です。さらに立ち位置の正面から潮が入る当て潮の状態で、しかも左側に水道があって当たった流れが左に抜けて水道に吸い込まれていく。経験上、水道の入り口は釣れる。目の前には流れがボトムの地形変化にぶつかって湧き上がる湧昇流もある。『絶対に青物がいる!』という流れだったんです」

勝因2:夕マヅメの短時間で状況変化に対応したルアーローテーション

上津原「実釣開始は17時をすぎていたので暗くなるまで時間がない。水面でアピールできる大きめのプラグを2、3投ごとに替えて魚の反応をみました」

ヒットルアーは『オシアペンシル別注平政220F』。カラーはキョウリンオレンジ。

オシアペンシル別注平政220F(シマノ)

上津原「別注平政のショートジャークによる小刻みなダイブの連続で喰いました。実は最初に投げて2、3投目に大きなキハダっぽい魚に弾き飛ばされたんです。そのあといくつかルアーを替えて、唯一反応があった別注平政220Fに戻し、カラーも照度が落ちてきたので視認性の高いキョウリンオレンジを結びました。

別注平政はジャーク時のダイビングが浅めで、ショートジャークがしやすい。同じダイビングペンシルのヘッドディップよりもダート幅も狭く小刻みに潜らせやすい。逆に『ヘッドディップ200Fフラッシュブースト』はしっかりダイブしてブリブリ泳ぎます」

オシアヘッドディップ200Fフラッシュブースト(シマノ)

上津原「飛沫でアピールしたいときはカップで泡を立てる『オシアバブルディップ220Fフラッシュブースト』など、どのアクションに反応するかを試すのが基本です」

オシアバブルディップ220Fフラッシュブースト(シマノ)

上津原「カラーは日中の晴天はフラッシングで集魚するナチュラル系カラー。曇りやマヅメのローライト時は視認性重視で膨張色が入るカラーを選びます」

勝因3:根ズレ覚悟で魚を走らせ、ここ一番はハンドドラグで浮かせて寄せる!

上津原「かけた後は、自分が立った磯が前下がりの丸い地形で磯際に立てない。ガマンのファイトで乗り切ったという感じです」

ガマンのファイトというのは?

上津原「自分はいつもドラグは緩めで根ズレ覚悟でファイトします。今回も2回激しく根ズレする感覚があった。ドラグを強く締めていたらその時点で切られていた可能性が高いです。でも最終的には根ズレのリスクが低い右側の離れ瀬と沖の根の間を沖に向かって走ってくれた。

そのままだと沖に走る一方なので、ラインブレイクしないように恐る恐るハンドドラグ。手で加減しながらスプールを押さえたら、頭がこっちを向いてくれたんです。

第1関門をクリアして、そこからはハンドドラグで浮かせて寄せて、暴れたら手を放してラインブレイクを防ぐ。左右の瀬や根に走ったらハンドドラグでコントロールして耐える。そして磯際まで寄せたら大きなカンパチの顔が見えたんです。

ひとりで磯に乗っていたので、寄せてからの取り込みが非常に辛い第2関門でしたね(笑)。ファイトで腕も腰も悲鳴をあげている体でギャフをかけて、海面から1.5mの高さを垂直牽引。魚を磯に横たえたときには腕の感覚がなくなっていました」



勝因4:曲がるけど粘り強いロッドが巨大カンパチの怒りのファイトを沈静化⁉︎

【使用タックルデータ】
●ロッド:コルトスナイパーエクスチューンS106H/PS
●リール:ストラディックSW8000HG
●ライン:タナトル8 5号●スペーサーPE:タナトル8 12号3ヒロ
●リーダー:オシアリーダーEXフロロ30号2ヒロ
※すべてシマノ

上津原「獲れたのは、キハダ狙いのタックルだったからというのもあるかもしれません」

上津原さんはタックルセッティングを勝因の一つとして分析。

上津原「キハダは軟らかめロッドのほうがかけた後、ハリが外れにくい。ロッドのコルトスナイパーエクスチューンS106H/PSは柔軟性があって曲がるけど粘り強い。サオが曲がると支点が釣り人に近くなるからファイトが楽になります。急激に走られても衝撃を吸収して、バットは強いから止めたいときに止められる。ファイト中にカンパチに本気を出させない柔軟性とパワーを備えているのかなとも思います」

そして特筆すべきはハードなロックショアゲームで中位クラスのリールの導入だ。

ストラディックSW(シマノ)

上津原「ストラディックSWででかいキハダを釣ろうというのも今釣行の目的の一つでした。過去にはもっと廉価版のリールを試したこともあり、ストラディックSWで獲れるとは思っていました。実際に使ってみると巻きのスムーズさ、力強さ、ボディの剛性などとくに問題はなし。8000HGで最大ドラグ力が13.0kg。ドラグ力も十分ありますが、もともと自分は磯では今回のようにドラグ緩めで根ズレ前提で勝負。ドラグの効きもスムーズで安定感があります。本体価格3万円台で磯でも十分通用する完成度の高いリールです」

勝因5:運を引き寄せた体力と冷静さ

上津原「今回、26.3kgのカンパチが獲れたのは、魚が瀬に回り込んでラインが巻かれるなど、致命的なピンチに陥らなかったのが大きい。運が良かったのもあります」

運だけであの巨大魚は獲れないはず。数々の経験もいきたのでは?

上津原「そうですね。経験上、磯ででかい魚を獲るにはパワーがいる。自分はトレイルランニングなどで体を鍛えています。それも役立ちました。磯は足場が悪い。足腰が強くないとキャストもファイトも思い通りにできません。とくにファイトは相手がでかいほど踏ん張りが効かないと危険ですからね。今回のカンパチからは腕力強化という課題が出されました(笑)」

ロックショアゲームは体力も重要!

上津原「一番重要なのは、ケガをせずに家に帰ることです。釣れないで気が急くと注意力が散漫になってケガをしやすい。そういうときに自分はライフベストのポケットに忍ばせたお守りをみて心を鎮めます。冷静になれば釣り場を的確に読むこともできる。釣果を出してケガをせずに家に帰ることができます」

まとめ

144cm、26.3kgのカンパチは磯釣りの聖地男女群島でも稀なサイズ。それを引き当てたのは好条件がそろった磯、ルアーセレクト、タックルセッティング、上津原さんの知識と経験と体力、そして運の巡り合わせだ。何より上津原さんが足繁く磯に通っていたからこそ出会えた1尾。ロックショアフリークならホームの磯で腕を磨き、日々のトレーニングを重ね、いつかは絶海の孤島にチャレンジだ。

上津原さんのロックショアゲームに関する記事はシマノwebマガジン『ルアークロス』をチェック!

上津原さんによるNEW ストラディックSWのインプレッション及びショアジギング実釣どうがはこちら!

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