驚異的な高弾性アジングロッドはブリすら釣れる驚愕スペックだった!【Advancement65/34(サーティフォー×ルアマガ)】



今や、海のルアー釣りの一大ジャンルとなったアジのルアー釣り「アジング」。そのアジングシーンを黎明期から牽引してきたのがサーティフォーの家邊克己さん。そんなレジェンドの力を借りて、ルアマガ編集部の「欲しいロッド」を作らせてしまうという不遜、職権乱用な「限定アジングロッド」開発企画。ついに終盤に差し掛かりましたので報告します。コダワリすぎて高級マテリアルのデパートと化してしまった採算度外視ロッド、解説します!

小は大を兼ねるという二律背反コンセプト
究極の近距離ターゲット決戦兵器!

現在、ルアマガでいくつか進行している釣り竿開発プロジェクト。そのひとつが超最先端なアジングロッドをこの世に送り出すという企画。となると、アジング業界を長く牽引してきたサーティフォーのレジェンド、家邊克己さんにお願いするしかありません。

その家邊さんに共同開発を持ちかけたコンセプトは「小は大」を兼ねる。豆アジも楽しめて、万が一、8kg〜10kgのブリサイズの魚が掛かっても戦えるロッドとしての強度(硬さではありません)を求めました。その初期のやりとりは過去記事からご覧ください。

試してみたい「最新素材」とは?

ちょっとしたトンチのようなコンセプト。豆アジの繊細なアタリをとるには、高弾性が有利。ブリのような大型の魚をコントロールするには中弾性、低弾性の粘りが必要です。ルアマガが求めたふざけた性能を実現するアンサーとして家邊さんが提案してきたのが「ナノアロイ技術」が投入されたカーボンの使用でした。

もともと、サーティフォーの最新ロッドAdvancement63VersionⅢには55tナノアロイカーボンが投入されていて、その特性に目をつけていた家邊さん。高弾性ながら粘りのあるブランクはまさにアジングロッドと抜群の相性といえるでしょう。同ロッドは、作った家邊さんも「違和感を楽しむロッド」と表現したように、いままでにないテイストと性能のアジングロッドとして仕上がりました。



最新素材採用なんてのは、ぶっちゃけプロモーションの方便。
それでも「ナノアロイ」は無視できなかった。

適したロッドに適した材料を配せないなら、ただの技術者の自慰行為です。どころか、「最新素材採用」というキャッチーなセールス文句を使いたいだけのロッドになってしまいます。

そこで、従来素材での可能性も模索して欲しく、それのお願いをすることに。すると、不幸中の幸い。最新素材採用サンプルとして上がってきた最初のサンプル、工場のミスで実はナノアロイ採用ロッドではないということが後に発覚します。

フカポン「でも家邊さん….? 非採用のモデルも抜群にいいんじゃないですか? こ、困りましたね。すげぇ理想に近いです」

家邊「めちゃくちゃバランスいいですねぇ。どうします?」

フカポン「………プロモーションのこと考えると“ナノアロイ”採用の55t高弾性素材ロッドとは謳いたいです。やっぱり最新モデルって気になるのが心情じゃないですか。スペック厨としては…」

正直に書いちゃったな!売りたいから最新素材使いたいって!

でもこれでも自称良心的な釣り道具スキー。最新素材が採用されているロッドのほうが良ければ、堂々と“最新素材採用アジングロッドのほうがやっぱり良い”」ってドヤ顔でセールスできますよね。

ということで、とりあえずナノアロイ技術を採用した55t高弾性モデルを同じコンセプトで再設計していただくことになりました。

抜群の釣り感と、芯の強さ。ほら、やっぱり最新素材で!!
と思ったのもつかの間。問題が発生

ということで、「大きめの魚をコントロールできるか」というところを詰めてから、「繊細なアジを本気で取りにいけるか」というルートでアクションを調整していくことになりました。

サンプルはかなりの量。ひとつひとつ現場で確認。

手始めに、正真正銘の55tナノアロイカーボンを採用したサンプルを、宮崎県の釣り船「タカマル」に持ち込み、ハタ類、青物などアジ以外の大型魚を掛けてみて、無理なくコントロールできるか?をテストです。

船長いわく、具体的にはマダイやオオニベ、イサキなどが釣れているとのこと、アジングロッドではちょっと遠慮したいサイズになる魚。海況次第では青物の可能性もるとのこと。

家邊「だいたいそのへんの魚は0.3号のPEで余裕ですよ。ブリ?ブリですか? 乗り合いじゃなくて今日みたいに他の人がいなければ全然ランディングできると思いますよ」

8kgは最低あるようなブリを?アジングロッドで0.3号でですか!? 

家邊「ブリならいけます。ちょっと時間はかかるかもですけど(笑)」

残念ながら当日のテストでブリはヒットしなかったですが、テスト開始数投で良型のイサキをヒット。おもりをつけてバーチカルに50mラインを狙ったところイサキが幸先よくかかってくれた。重いオモリも背負わせているし、さすがに時間がかかるだろうと思っていたら、そこは家邊さん。一気にランディング。

あれ?むしろ専用のロッドよりランディング早くないですか?

家邊「ファイトの仕方です。あと、ロッドの使い方」

そこで今更なながら気づきます。アジングロッドは繊細なティップばかりが目に行きますが、キャストというところを考えなければメタルジグでも背負えるんですよ….。そう、ベリーがティップだと仮定してみてください。十分に太くて強さがありますよね。

家邊「ティップだけ、バットだけの機能に目がいきがちですが、ロッドはすべてバランスですよ(笑)。ベリーの設計もめちゃくちゃ大事です。そこをいかに働かせるか」

アジングロッドで60gをキャストしろと言われるとそれは機能が違いますが、ボートのようにバーチカルに落とす場合には、多少重いものを背をわせても大丈夫です。実はそのあと、家邊さんはアジングロッドを使い、ガレ場に40gのジグヘッドとシャッドテールを投入し、アカハタをばかばかと岩場から引き剥がしてランディングしていくではないですか….。

家邊「まどろっこしくなければ、小さいワームでも全然喰ってくるんですけどね。深さと潮があるので軽い仕掛けだと釣りに時間がかかってしまう。だから今日は重めのジグヘッドを使っていますけど。ほら、掛けて、アジングロッドなのにアカハタのツッコミを軽くいなせるでしょ?」

40gのジグヘッド。アジングヘッドでガレ場をボトムバンプ。

家邊さんが、大物も意識したロッドというオーダーにすぐに65で作ろうと提案してきたロッドの意味もわかりました。長さがあることで、ベリーを有意義に使えるからなんですね。

AR(ナス型のオモリを使いバーチカルに魚を釣る)。で40cmクラスのギガアジもヒットした宮崎タカマルでの釣果。いい感じのサンプルで安堵していたのだが…

さてやりとりやテストをその後も重ね、実に完成度が高いように思えたセカンドサンプル(とはいえ、3種類あります)。数%のパワーダウンを提示して次のサンプルに移ろうとした矢先、その後もテストを重ねてくれいた家邊さんから一報が。

家邊「かなりデカイ魚を掛けたんですがバットが折れました(笑)ちょっと作り直します」

本日は先に最終OKサンプルで使用したマテリアルスペックだけを紹介!

ということで、紆余曲折。結局、従来素材よりナノアロイ採用マテリアルのロッドの使用感や性能は商売っ気抜きにアングラーに恩恵をもたらすことがわかったので、最新素材の採用は決定。ただ、いい感じだったサンプルはバットが折れたとの一報があり再設計。

そんなテストを経て(その間にまだまだ紆余曲折はあるのですが)、最終的に固まったAdvancement65のマテリアルスペックはこちら!

トップは30tカーボンソリッドのF-tuned
ベリーは、33t T1100Gと30tナノアロイのコンポジット
バットは、40tと55tのナノアロイになっております。

滅茶苦茶複雑になっております。バットの部分は強度を上げるために55tだけでなく40tをコンポジットしています。書きたいことが多岐に渡るので、その解説は次回に譲ります。そして、この出来上がったロッドが、素晴らしかった。

悩みつつも採用サンプル決定後、家邊さんがひとこと。

家邊「めちゃくちゃいいですね。バットを強化したことで、暴れがなくなった。これならだいたいの魚が狙えますね。海外のロウニンアジ(10kgクラス)とか面白いでしょうねぇ。とりあえず、スマガツオが釣れているという情報があるので、これで釣ってきます」

次回はアジのロッドとして、どのあたりが素晴らしいのか。そのあたりを解説します。そう、大きな魚と戦えますが、コレは繊細なアジって奴らを釣る専用ロッドです。あと、ボートアジング用でもありませんw

ぐだぐだと書き連ねましたが、結局の所、現場でしか正解は出せません。安心して買っていただくためにも、どのようなストーリーで釣り竿が作られていったのか。全てに理由があり、雰囲気で作ったものではないことを知っていただければと思っています。

ひきつづき、完成した最終サンプル。つまり製品がどんなロッドなのかを近日、お知らせできればと思っています。

採算度外視気味にコダワリまくったのでたくさんは作れないとは思いますが、それでも最大限にご用意しますのでしばしお待ちを!